世界一長い5分間
【せかいいちながいごふんかん】
ジャンル
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アドベンチャーRPG
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ Steam(Windows) ニンテンドースイッチ
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メディア
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PSV:PSVカード
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発売元
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日本一ソフトウェア
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開発元
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シュウプロデラックス
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発売日
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PSV:2016年7月28日 Steam:2018年2月14日 Switch:2018年4月26日
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定価
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PSV(通常版):4,298円(税込) PSV(限定版):6,458円(税込) PSV(DL版):2,160円(税込) Steam(DLのみ):1,000円(税込) Switch(DLのみ):3,086円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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セーブデータ
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50個
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判定
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なし
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ポイント
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独特なシナリオ構成 RPGの存在意義が弱い
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概要
RPGとADVを取り合わせたゲームシステムおよび、開幕早々魔王と対峙するシナリオが特徴的なゲーム。
スマホ向けのゲームアプリ開発を中心的に行っているシュウプロデラックスが開発を担当する。
あらすじ
魔王との対決を目前に、勇者バックは何もかも忘れてしまった。自分が何者なのか、今何をしているのか…。
魔王と対峙中の5分間のうちに、ともに歩んできた仲間の助力も受けつつも、勇者は今までの冒険を思い出し、魔王を倒すことができるのか…。
システム
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ゲームの流れ
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ADVパートとRPGを行ったりきたりしながら物語が進んでいく。
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両パートはゲームの進捗に応じて自動に切り替わるものであり、プレイヤーが能動的にどちらか選べるものではない。
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ADVパート
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現在進行形で魔王と対峙しているシーンはテキスト形式のADVゲーで再現される。
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仲間たちの会話や、魔王の攻撃、回想など、シナリオが進む何かしらの出来事があるたびに、時間が少しずつ経過していく。
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選択肢があわられることがあり、何を選んだかで戦闘の状況やエンディングに影響がある。
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RPGパート
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ADVパートでの勇者の行動や、魔王や仲間の発言をきっかけに、勇者バックがいままでの冒険を思い返すシーン。
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4人からなるパーティーで2Dのドット調で表現される街、フィールド、ダンジョンを移動しつつ、目的地にたどり着くか特定のボスを倒すことが目標。
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スティックあるいは十字キーで移動。ナナメ移動不可。Aボタンを押しながら移動することで移動速度が上がる。
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バックは固定メンバーではずせないが、サブのメンバーはシナリオの進捗状況に応じて入れ替わりが発生することがある。
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街以外ではランダムエンカウント形式で魔物に遭遇する。ドラゴンクエストのように1ターンにすばやいキャラから順に行動していく形式。
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あくまでバックが見ている記憶の世界であり史実ではない。そのため多少の捏造や美化が可能。
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なおRPGパートごとに勇者たちのレベルや所持品は変化する。シナリオの後半に進むにつれて勇者たちのレベルが自動で高くなっているほか、良い装備を身につけている傾向。
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敵を倒していくと、「思い出補正」と称して勇者たちが一括でレベルアップする。宿屋に泊まると全快できるほか、装備を街で整えてもいい。また道中で拾える宝箱からは大抵強い装備品が手に入る。
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ひとつのRPGパートで得た経験値、所持品・金などは、他のRPGパートに持ち越されない。またADVパートに影響を与えることも少ない。
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RPGパートごとに、メインのミッションが1つ、サブのミッションが2つ程度提示される。メインのミッションをクリアするとRPGパートが一区切り終了となる。
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メインミッションの内容は、特定の地点までにたどり着く、ボスを倒す等様々。
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シナリオを進行にかかわるNPCには「!」マークが配置されている。
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戦闘不能になった味方は戦闘終了後にHP1の状態で復活する。また一部の状態異常は戦闘が終わっても継続する。
その他操作方法
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△ボタン
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ADVパート・RPGパート共通で、オプションを開き、ロード・セーブ・おもいでアルバム・チャプターセレクト・音量調節等できる。
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□ボタン
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ADVパート中ではバックログを開く。
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RPGパート中ではメニューを開き、ステータス・道具・魔法・装備・所持金の確認、荷物整理が可能。
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このときLボタンを押すとパーティを全快でき、Rボタンを押すと目的が表示される。
評価点
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シナリオプロット関連
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いきなり魔王と戦うことになるというシナリオ構成には独自的な要素があるといえる。
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RPGでバトル画面で済まされてしまうような「対決」部分が物語となっており、斬新さはある。
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魔王となぜ戦わなくてはならなかったのか、という謎も序盤を進める上でのテーマとなる。
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なぜバックが記憶を失うことになったのか、魔王は何者なのかといった伏線がきちんと終盤で回収される。途中でメンバーチェンジをともなうやや超展開なイベントもあるが、そういったイベントが発生する理由についても、きちんと理由は説明される。
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最終盤ではバックをとりまく仲間たちが総集結して、魔王との対決に尽力してくれるので熱い展開となる。
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その他、タイトルどおり5分間の出来事なので、右上の戦闘開始からの経過時間がゲームの進捗を表してはいる。
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立ち絵での工夫
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キャラクターはドット絵でしか表示されないが、ドット絵の動きは豊富。
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喜怒哀楽表現、技を放つとき、ダメージを食らったとき、倒れているとき等モーションなど多様。
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難しいことを考えずにプレイできる
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純粋なRPGとしては物足りないという見方もできるが、関係ない場所にはいけないようになっており、かつダンジョンも迷わすような嫌らしい設計のものはほぼない。ストーリーに集中してプレイすることが可能である。
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各キャラに最低2回程度は焦点があたる機会があり、影が薄いキャラは少ない。ストーリーもひどくむずかしい設定や文章が盛り込まれているわけではないので、没入自体はしやすい。
賛否両論点
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RPGパートの戦闘バランスが大味
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RPGが苦手な人からすればとっつきやすいが、戦略性はあまり期待できないという仕上がり。あくまでADVをメインとしたゲームと見たほうが無難。
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雑魚敵と戦いを繰り返していれば回復の必要は確かに出てくるが、結局たたかうのごり押しで何とかなる。
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各キャラが独自の大技を習得している中盤以降のボス戦では、回復を怠らずその大技でごり押しすれば大抵は勝てる。
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ボスの行動パターンも大してバリエーションがなく、HP減少によるパターン変化も特にないので戦略性はない。ボスの体力も高めに設定されているので、特に変化の無い戦闘風景が長引きやすい。
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最終決戦時に、だれをサブメンバーにするかを選ぶ機会があり、このときにわずかながらの戦略性がある。(誰が攻撃力が高くて誰が回復役とできるかを考える等。)
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独特なシナリオ構成にしたこと
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いきなり魔王と対峙する所から始まるRPGという見方をすれば、独自性は強くつかみのインパクトはあるといえる。ここまで魔王と会話しながら対決できるゲームはあまり存在しないだろう。
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RPGパートの影響で中盤はだれるが、きちんと終盤にかけては伏線を回収していく。
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主人公、魔王、ひいては勇者以外のキャラクターの掘り下げがしわよせを受けて省略されている。物語ひいてはサブキャラクターへの没入感は低め。
問題点
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RPGパートの必要性
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実質 本作はADVパートがメインであり、RPGパートはテンポ悪化の要因といえる。
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ADVパートでは衝撃の事実が次々に明らかになっていくのに対して、とくに終盤以外RPGパートでは情報量が薄すぎる。レベリング、装備の準備もやる意味が特に無いので、RPGならではのだだっ広いフィールドを歩き回る時間も無駄に感じやすい。シナリオの都合上、不自然に封鎖されている関所も多く、プレイヤーが能動的に活動領域を広げていくという楽しみも無い。
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RPGで体験したシナリオはバックログに残らないので、長期間RPGパートをこなしているとストーリーの大筋や目的も忘れやすい。
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賛否両論点でも述べたとおり、キャラクター(特に主人公の仲間)の掘り下げが弱い。
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仲間との会話シーンはサブイベントのみにほぼ限定される。フィールドを歩いている最中などに、キャラクターに話しかけて雑談できるようなシーンがほぼない。
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RPGパートでどんな行動をしたのかが、魔王との対決パートに直接影響しているわけではない。
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RPGパートのサブミッションが作業的
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話すべき登場人物は基本記号で表記されるので判別は楽だが、それでも探し回る必要はある。
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ADVと打って変わってこちらにはバックログがない。地図を見ても地名表記がない。
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RPGパートではどこで何をすべきというメインミッションが2~3個表示されるが、途中経過として何をすべきかのヒントになってないことも。結果意味もなく彷徨う事態も発生しかねない。
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サブのミッションも特に回想パート上での報酬がない。クリアすることで物語性が広がるわけでもなく、おつかい感が強い。
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終盤に唐突に出現するキャラクター
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ネタバレなので詳細は伏せるが、終盤にようやく登場するキャラクターがいる。
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いちおうバックの記憶喪失のため忘れられていたキャラだった、という補足説明はされるが、バックの記憶喪失がなぜ発生したのかまで根本的な原因は作中では示されない。
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いままでのストーリーの流れをかなりひっくり返す存在であり、やはりシナリオ運びを強引に感じやすい。
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このキャラはバックにとっては非常に大切な人であり、バックがとあるパーティメンバーとデートさながらな出来事を体験するイベントがあるが、このイベントとも若干齟齬をきたしている。
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経過時間の表記
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ゲームを進行する上で問題があるわけではないが、ADVパートでは秒単位で経過していく時間表記に対して、テキスト量が多い。1秒の間にいろんなキャラが喋ったりするのでやや不自然。
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△ボタンと□ボタンの使い方について
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RPGパートとADVパートとで、△ボタンと□ボタンがもつ役割が変化する。この2つのボタンだけで結構いろいろなことができるので、ゲームプレイして間もない頃は混乱しやすい。
総評
魔王との対決からスタートする独特な冒頭部、さらに冒頭から投げかけられた伏線を終盤にかけて回収されていくストーリー構造はよく作られている。
RPGとADVを抱き合わせたゲームシステムも特徴的だが、実質機能しているのはADVパートのみで、RPGパートはおまけに近い。中盤はとくにRPGでだれるきらいがある。
移植版
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2018年にSteamとニンテンドースイッチに移植されている。いずれもDL専売。
最終更新:2021年04月22日 13:09