その花びらにくちづけを ミカエルの乙女たち

【そのはなびらにくちづけを みかえるのおとめたち】

ジャンル アドベンチャーゲーム
対応機種 Windows XP/Vista/7/8(32/64 bit版)
発売・開発元 ゆりんゆりん
発売日 2012年11月30日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 DLsite:2013年5月10日/7,109円
廉価版 普及版:2014年12月12日/4,990円
判定 なし
ポイント 萌えゲーアワード2013年12月月間賞・年間アワード純愛系作品部門金賞受賞
商業の中では珍しい百合のいちゃいちゃゲー
様々なカップリングが楽しめる


概要

本作は同人ゲームから商業作品への転換期の作品であり、一部同人作品への言及が含まれています。

同人百合ゲーとして様々な作品を世に発表し続け、百合ゲーとしての地位を固め続けていた「ふぐり屋」の『その花びらにくちづけを』シリーズ。
記念すべき初商業化作品として制作会社をゆりんゆりんへと移し、今までのキャラも総登場しつつ、新たなカップリングをメインにしてストーリーが展開されていく。
同人作品からの続きという形ではあるが、今作初登場のキャラを絡ませつつある程度の解説はされているので公式ホームページのキャラ紹介と共通ルートを丁寧にやればどのようなカップリングかは理解できる作品となっている。

修羅場、欝展開、寝取り要素やふたなり等々のさまざまな特殊性癖を排除して一対一の女の子同士の絡みに集中されておりキャッチコピーの「らぶらぶで、とってもエッチで、百合ん百合んなラブコメディー♪」という言葉に嘘偽り無い内容である。

シナリオは同人時代から引き続きJUN氏が担当しており、作中のイラスト、CGは迷い猫オーバーラン!等でお馴染みのぺこ氏が担当している。


シナリオ

聖ミカエル女子学園 1年雪組のクラス委員長・安曇璃紗(あづみ りさ)は、今日もクラスの問題児・綾瀬美夜と口論をしていた。
生真面目で押しの強い璃紗と馴れ合いを嫌う美夜はとことん相性が悪く、いつも怒鳴り合い寸前の口論になることが多いのだった。

そんな折り、季節はクリスマスを控え校内は浮かれ気分。
カップル&にわかカップルたちがイチャつく中、学生有志たちによる “ミカ女ベストカップル” の投票で沸き立つのだった。
恋人のいない璃紗は他人事と思っていたのだったが…… なんと美夜とペアで選ばれてしまう!?
もちろん恋人関係を否定する璃紗だったが、推薦したクラスメイトたちは「いつも楽しげで幸せそう」と、良家のおっとりお嬢様的思考でニコニコするばかり。

仕方なく “形だけ” と受けるふたりだったが、この後のクリスマス・バレンタインデーの際にも、他のペア4組と共に各種イベントの委員として矢面に立たねばならないらしい。
しかも…… その他4ペアというのが、実質上の学生会である『環境整備委員会』の委員長・松原優菜とその後輩の織田七海。
売れっ子学生モデルの北嶋紗良とその従姉・北嶋楓。
文化祭の歌姫・川村玲緒とその恋人・沢口麻衣。
さらには『リリ・プラチナム』というファンクラブを持つ留学生の粢エリスと、校内一の祐筆と名高い霧島雫……。
校内でも屈指の大物カップルばかり。

この先のイベントを、大物カップルたちに混ざってこなせるのか?
そしてクリスマス・バレンタインという恋人イベントを、美夜と一緒に過ごせるのか?

-公式サイトより引用-


登場キャラクター

+ クリックで開閉。
  • 安曇 璃紗(あづみりさ)
    • 共通ルートの主人公。1年雪組のクラス委員長で、美夜とは同級生。性格は生真面目で努力家。押しが強く、気がつくとリーダー的立場になる事が多い。
    • いわゆるツンデレお嬢様、もちろん成績は優秀で常識人なのだが、美夜が絡むと必ず理屈で論破され、地団駄を踏むことが多い。
    • 人一倍羞恥心が強く、恋愛関係で突っ込まれると、わたわたと慌て墓穴を掘る事しばし。
    • 外資系企業令嬢で母親が英国人というハーフ。モデル並みのプロポーションで、巨乳の持ち主。
  • 綾瀬 美夜(あやせみや)
    • 共通ルートのヒロイン。1年雪組の学生で璃紗のクラスメイト。校内一の才女だが人付き合いが苦手で、璃紗以外の人物とは無難&最小限の付き合い。
    • 璃紗と口を利けば罵詈雑言ばかりだが、実は照れ隠し。他の者とは常に距離を置いた口調と態度。
    • 滅多にデレない&動揺しない。デレる場合は気弱になって上目使いでソワソワ。
    • 口調からそうは見えないが、実はかなり女らしい立ち振る舞い。
    • 校内一の頭脳の持ち主で、海外留学や飛び級の打診もあったのだが、人付き合いを嫌い、さほど学力的には高くないお嬢様学校のミカ女に入学。
  • 織田 七海(おだななみ)
    • ミカ女の1年生で、明るく元気で人見知りをしない性格。上級生である優菜と現在は恋人同士。
    • 実はちょっと妄想癖豊かな耳年増少女。頭の中は、いつも優菜とのラブロマンスでいっぱい!?
    • 優菜相手でも意外と頑固で、軽い口論は常々。イメージと違う優菜を発見しては、また惚れ直すというラブポーション体質。
    • イマイチ育たないおっぱいと、ぷにぷにしたお腹が悩みの恋する乙女。
  • 松原 優菜(まつばらゆうな)
    • ミカ女の2年生で、実質上の学生会である「環境整備委員会」の委員長で、両親は大病院の院長というお嬢様。ややおっとりはしているものの、知的美人で性格も温厚。スポーツ万能で巨乳の持ち主という正に完璧超人。
    • 下級生はもちろん、上級生にまで慕われる学園のアイドル的存在だが、当人にその自覚はなくやや天然体質。
    • ところが……実はかなりの甘えん坊でエロ乙女。で、身も心もめいっぱい尽くさないと気が済まない困った性格。
  • 北嶋 楓(きたじまかえで)
    • ミカ女の2年生で、クラス委員長を務める才女。眼鏡に三つ編みという比較的地味なイメージ。
    • 性格はおとなしめで地味だが、責任感がありクラスの信頼も高い。背も高く胸も大きいナイスバディの持ち主。
    • 眼鏡&三つ編み無しの姿が実は美少女であることが発覚し、現在は有名人に。
    • 従妹の紗良とは校内の公認カップルで、楓からも積極的に愛情表現をする関係に。
  • 北嶋 紗良(きたじまさら)
    • ミカ女の1年生で、楓の年下の従姉。ファッション誌などの人気学生モデルで、母は女優というサラブレッド。 性格は極めて明るく社交的。その人柄と容姿もあり、無意識に人を惹きつけるカリスマ体質の持ち主。
    • いわゆる裏表のない性格と物言いで、ある意味天然体質。特に楓に対する好意は公私ともに全開状態。
    • 人目があろうが真顔で楓に抱き付いて愛情表現しては、その仲の良さを生徒達に羨ましがられている模様。
  • 沢口 麻衣(さわぐちまい)
    • 2年生で、幼稚舎からミカ女に通っている生粋のミカ女育ちだが、両親はフツーの共働き夫婦。
    • 特にクラス委員というわけではないものの、面倒見のいい姉御的性格のせいか、頼りにされる事が多い模様。
    • 当人的には「自分は庶民」と自覚。ミカ女暮らしが長いので、天然お嬢様達の扱いは手慣れている。
    • そんな物怖じしない性格と行動的なところが人気で、下級生や上級生からラブレターをもらうことも珍しくない。
  • 川村 玲緒(かわむられお)
    • 2年生で麻衣の同級生。母方は財閥系の裕福な家庭で、いわゆる箱入りのお嬢様。だが玲緒自身は社交性が薄く、人見知りの激しい性格。
    • 背は低めでかなりのちびっ子という幼児体型だが、ふわふわのロングの髪と整った顔立ちのせいで、可愛らしいと人気が高い。が、麻衣以外にはまったく懐かない、ある意味猛獣の様な超ツンデレ少女。
    • 両親は海外で暮らしており、一人マンション暮らし。ただし家事は一切出来ず、放っておくとジャンクフードばかりの生活。故に麻衣としては通い妻をする事に。
  • 霧島 雫(きりしましずく)
    • 3年生で、幼稚舎からミカ女に通っている、生粋のミカ女育ちの和風美少女。
    • 書道家の父を持ち、当人もミカ女一の祐筆「雫御前」として名高い。性格は生真面目で優秀だが、カタカナ言葉に極端に弱い。
    • 留学生であるエリスと晴れて恋仲になるも、自分の感情に素直なエリスに、人の目があるにもかかわらず、雫はいつでも振り回されっぱなし。もちろんそんなエリスを嫌いになれるはずもなく、苦労が絶えない様子。
  • 粢 エリス(しとぎエリス)
    • 3年生で、雫のクラスメイト。ミカ女に転入してきた留学生で、北欧系の血を引くハーフ。
    • 日本語は堪能で、物怖じしない博愛精神の持ち主という天然ジゴロ体質。
    • その魅力に魅了される女子が続出し、一時校内が騒然となるも、当人にはまったく自覚ナシ。衆人環視も全く気にせず、熱く情愛を語っては、雫にツンデレられる事しばし。
  • 墨廼江 貴子(すみのえたかこ)
    • 「聖ミカエル女子学園、初等部の教師。キャリア数年目にして初担任を持ち、教え子の瑠奈とは恋人同士。
    • 現在瑠奈とは同棲中で、大人としてあれこれ子供らしい振る舞いを教えようとするも、逆に振り回されっぱなし。とはいえ押しの強い瑠奈に迫られ悪い気はせず、瑠奈の外見、高貴な立ち振る舞いに見惚れる事しばし。むしろカミングアウトしたい気持ちを「あの娘は私の教え子なのよ?っ!?」と必死に堪えている。
  • 蓬莱泉 瑠奈(ほうらいせんるな)
    • ミカ女初等部にやって来た転校生で貴子の恋人。高圧的で高飛車な女王様タイプで、大人びた態度と物言いで、周囲を振り回す。
    • 「せんせいはわたしのモノ」と公言してはばからず、そのくせ人の意見は聞かない自己中心的性格。こと貴子に関してはかなりの嫉妬深さだが、直情的に激高するのではなく、静かに脅し文句を言う感じ。
    • 基本的にサドっぽく、なにかと自分の都合の良い様に解釈しては、Sっぽく婉然と微笑む。

評価点

  • ひたすら百合百合している物語
    • 場所問わず色々な場所でイチャイチャしており、主人公達こそ序盤はいがみ合っているものの中盤以降はキャッチコピーの通り、ほぼずっとベタベタしている。
    • また、他のキャラクターは付き合った状態で話が進んでいるため開幕からイチャイチャしているが、周りも気にしない。 ストーリーにもあるようにミカ女ベストカップル、というテーマで話が進んでいくので、砂糖をどさどさと入れたような甘ったるいシナリオが延々と進んでいく。勿論それに嫉妬する人はいないし、他のカップルに手を出す子もいない。
    • エロシーン以外でも一緒に登校したり、お弁当を食べたり等等、常にベタベタしている。
  • 魅力的なキャラが多数登場
    • 概要でも述べた通り、今作は一応同人版の続きとなっている為そちらのカップルも全員登場する。
    • 最初は喧嘩している二人から、王道的な先輩後輩。変則的な組み合わせとして教師と小学生等。これだけ多数のキャラクターがいれば一組ぐらいは気に入るカップリングは存在するはず。
  • 主人公ルートクリア後は別のカップルの話が楽しめる
    • 公式としてもファンディスクのような位置づけであり、同人作品に出てきた今までの全カップリングの物語が楽しめる。
    • また、そのカップルの話になっても主人公たちは出てくるので他のキャラクターから見た視点、としても楽しめるようになっている。
  • オールスターだから出来る展開
    • 同人ゲームへの言及となってしまうが、今までの作品はカップルに焦点が当てられていて他の作品に登場するカップルと絡む事はあまり無かった。
    • だが、今作は1年生組や玲央とエリス等、昔からのファンが購入してもそのキャラの新たな一面が見られるようになっている。
    • 特に評価が高いのは玲央麻衣シナリオ。他のキャラと絡みがある今作だからこそ出来た、という声も多い。

賛否両論点

  • 全体的に優しい世界
    • 所謂、ガチガチに練られた百合作品からすると世界観もふわふわとしていて、同性愛特有の表現も無い。 ありがちな三角関係も無いし、それに対する変な目というのも無い。
      これ自体はそういうのがあるから苦手、や、百合にそういうのを求めている、で対立しがちな意見でもあるがこの作品でも例外ではなく、多少は起きている。
    • それでも公式ホームページ等を見れば所謂ジャンルの違いですませる事は出来るが、一応記載はしておく。
  • 一部キャラのシリアス展開
    + シナリオに関するネタバレ注意。
    • 世界観全体がふわふわしているのにもかかわらず今作初登場の二人の家庭環境は梨沙の母が再婚を匂わせていて家庭にはほぼ帰ってこない、所謂別居状態。
    • 美夜の父親は事業に失敗して荒れて、美夜はそのせいでいざこざが起きて心を閉ざしてしまった。
      幾らメリハリを作るためでもここまで重くする必要はあるか、という話も存在している。
    • 所謂エロゲーのお約束として親を出さないという物があるが、余りにも重すぎて他のキャラと浮いてしまっている。
    • 百合作品にお馴染みの父親が出てこないのはそういうものだと思っていたが、今回そこまではっきりと書かれたことで改めて考えると他のキャラはどうなんだ? となってしまう人も現れた。
    • 追記しておくと、他の作品の父親は何故か余り出てこない……存在はしているようだが、上手くぼかされている。
    • また、別ルートでは普通に女同士で結婚という話も出てきているため、尚更どういう世界観なんだ? となってしまう。
      ただ、これのお陰でメインルートにメリハリが出てきており、今までよりもはっきりと家族の存在を認識出来た、という意見も存在する為賛否両論に記載させて頂く。

問題点

  • 一部キャラの問題放置
    + シナリオに関するネタバレ注意。
    • 安曇璃紗と綾瀬美夜のメインキャラであるが、美夜はご都合感があるものの一応は解決しているのにもかかわらず 璃紗は放置となってしまっている。
      • 後日別作品にてフォローはされたが、物語の山場に持ってきたのにもかかわらず丸投げはどうなんだ、と意見も存在している。
    • 山場を作るためだとしても、それ自体も無理やりな所もあるが、少なくとも今作だけでは璃紗の問題がどうなったかについては触れられる事は無い。
  • 共通ルートでの解説不足
    • 一部のキャラはやはり説明不足が起きていて同人版である過去作をやらないと何故付き合ったか、そうなっているかが分からないキャラもいる。
    • 2周目で開放されるキャラは同人版の続きであり、そちらをプレイしていないと楽しめない、とまでは言わないが若干戸惑ってしまう部分もある。
      • 単体として破綻している訳では無く、物語としても山あり谷ありで評価も高いのだが主人公組との落差が激しいカップリングも多く、新規で入った人がアレ?何だこれ?となってしまった人も。
      • 既存ファンは実質的に三作目でマンネリを感じてしまうからかもしれないが、今作から入った人は唐突にシリアスが入り、主人公組みたいにべたべたして欲しかったとの意見もある。
  • 逐一全てを説明されるとテンポが悪くなってしまうというのもあるが、商業作品として発売され、今作初めて触れる人も多数いたので読み物のような形で実装する事も出来ただろう。
  • 日常シーンとエロシーンの落差
    • このシリーズの伝統なのかもしれないが、それまでは普通の女の子なのに関わらずエロシーンに入った途端に淫語を話し続けたり、そういう普通では無い体位(貝合わせ等)をしたりする。
      • 一部のキャラなら兎も角真面目なキャラからほぼ全員そういう単語を発するので流石にこれはどうなのか、と。
    • 同人時代からシリーズに付き合ってる方なら、こういうもんか、と割り切れるが今作から入った方にはせめてキャラに沿ってもう少し変えて欲しかったとも。

総評

開発元が同人作品で経験を積んでいるからか、シナリオ、CG供に完成度は全体的に高くまとまっている。
特に百合エロゲーは数自体が少なく、更に学園ものとして考えるとまず真っ先にこちらが上がるほどの知名度となった。
万一主人公が合わなくても、それ以外にも魅力的なキャラが多数登場しているので、好みのカップリングには巡り合えると思われる。
取り合えず百合エロゲーというのをやってみたい人や可愛い女の子だけが見たい、という人にはお勧めできる作品となっていて、十分なクオリティが約束されているだろう。


余談

  • 2014年12月12日に普及版(廉価版)が4,990円(税抜き)で発売されている。
  • 2017年10月27日よりAndroid移植版が配信された。
  • 2013年12月20日に次回作である『その花びらにくちづけを 白雪の騎士』が発売された。
  • 2013年の萌えゲーアワードでは12月の月間賞と年間アワード純愛系作品部門金賞を受賞している。
    • 選考に携わったデザインスタジオ威風堂の高木敬介は、「思春期の少女恋愛で求められる、純情な感情やもろさ、少女たちの子心の揺れが淡く描かれた、王道的な百合を楽しめる」とし、「主人公のほかにも、上級生や教師といった上の立場の人間からの恋愛模様も描かれており、それが独特の耽美的な世界観になり、秘められた楽しみを味わうことができる作品である」と、選考理由を挙げているとの事。
  • 2015年に公開されたインタビュー気維持「聖ミカエル女子学園 コラム 第1回 ー 百合あるある(その1)」において、基本的にキャラ2体を描き体位も限られる百合ゲーの作画は困難だと述べられている。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年06月18日 17:56