FLOWERS 四季
【ふらわーず しき】
| ジャンル | 百合系ミステリィアドベンチャー |  
  
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| 対応機種 | プレイステーション4 Nintendo Switch
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| メディア | パッケージ / ダウンロード | 
| 発売元 | PROTOTYPE | 
| 開発元 | Innocent Grey | 
| 発売日 | 【PS4】2019年3月7日 【Switch】2019年11月28日
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| 定価 | パッケージ | 7,800円+税 | 
| ダウンロード | 7,300円(税込) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | CERO:B(12才以上対象) | 
| 備考 | 初回生産分にはドラマCD付属 | 
| 判定 | 良作 | 
 
概要
本作は、PCゲームブランド「Innocent Grey」により制作され2014年4月18日から4篇にわたって分割販売されたWin用ゲームが原作となっている。
春夏秋冬の4篇からなる本作が1篇ずつPSP/PSVに移植され、それらを1本に統合してPS4/Switchで販売されたのが本作である。
全寮制のお嬢様学校という世間から隔絶された花園に入学した女子たちが各々の恋愛と友情に懊悩したり、学園内で発生する不可解な事件に立ち向かいながら関係を深め合い成長していく様子を描くアドベンチャーゲーム。
プロローグ
高い塀と森に囲まれたミッションスクール、聖アングレカム学院。
美しい少女たちが集う閉ざされた学院に、心に傷を持つ少女、白羽蘇芳が入学する。
とある事情から内にこもり家族以外の者と触れ合ったことのない彼女は、
疑似的に“友人”を作らせ学院での全てを共にさせる“アミティエ”と
呼ばれる試みを行う学院に惹かれたのだ。
学院からあてがわれた仮初めの友、彼女らへ向けられる仄かな恋心。
緩やかに流れる学院生活の中で起こる、学院生徒の不自然な消失。
少女たちは学院の中で何を見、何を掴むのだろうか――。
(以上、公式サイトより引用)
用語
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聖アングレカム学院
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本作の舞台となる女学院。全寮制のミッションスクール。
 聖書や礼法といった授業があるほか体育は全てバレエとなっており、上品ないわゆる「お嬢様」が多い。
 「ニカイアの会」と呼ばれる生徒会組織があり、各行事などを取り仕切っている。
 一年生は14才だが3年制と、やや変わった形態をとっている。
 
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アミティエ制度
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聖アングレカム学院で取り入れられている、疑似友人制度。
 入学直後に行われる筆記試験と面接により相性診断されたクラスメイト同士が、「アミティエ」となって寮内での寝食や行事などを共にする。
 何らかの理由でアミティエに欠員が出てしまっても、単なる人数合わせの為に欠員が出た者どうしで組まされたり補充されたりはせず、アミティエがいない生徒もいる。
 
登場人物
本稿では公式サイトで公開されていないシナリオ上のネタバレを極力含まない程度の紹介に留める。
登場人物は全員花に関する名前を持ち、それぞれの花言葉も人物像とは無関係ではない。
    
    
        | + | 白羽蘇芳(CV:名塚佳織) | 
白羽蘇芳しらはねすおう。春篇・冬篇の主人公。
 だが四季を通じてシナリオの最重要人物であるため、夏篇・秋篇でも専用のシナリオがあり出番も多い。
 性格は極めて小心で恥ずかしがりであがり症で心配性。友人を作りたいという気持ちは強いのだが人付き合いが苦手。
 以前の学校生活では友人を作ることができず、アミティエ制度を頼って聖アングレカム学院に入学した。
 しかし群を抜く美人で物憂げな表情をしていることが多いため、周囲からはクールで人付き合いを好まない人物だと誤解されがち。
 映画や小説の鑑賞を趣味としている為、年齢の割に知識や語彙が豊富。
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        | + | 匂坂マユリ(CV:岡本理絵) | 
匂坂マユリこうさか―。白羽蘇芳のクラスメート。
 明るくさばさばとした中性的な性格で、人当たりも佳くクラスの人気者。
 しかしその明るく社交的な振舞いとは裏腹に、ある重大な悩みを抱えて学院に入学した。
 彼女に起きる重大な出来事が白羽蘇芳、ひいては学生たちを大きく変えていくことになる。
 ややリアリストな一面もあり、問題に直面すると冷徹な意見を語ることも。
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        | + | 花菱立花(CV:明島ゆうり) | 
花菱立花はなびしりっか。白羽蘇芳のクラス委員長。
 体育のバレエを含めて学業成績のほとんどがトップクラス。真面目で面倒見が良い。
 彼女が主催で定期的にお茶会を開催しており、匂坂マユリとは別の形でクラスメートの人気を集めている。
 
 お茶会における彼女の紅茶の注ぎ方を見て杉下右京を思い出した人は多いのではないだろうか。しかし生真面目すぎるきらいがあり、不躾な行為を見るとつい声を荒げてしまうことも少なくない。
 表向きは品行方正・才色兼備だが共に過ごしていくうちにいろいろと意外な素顔や弱点を見せるようになる。
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        | + | 沙沙貴苺(CV:長妻樹里) | 
沙沙貴苺ささきいちご。白羽蘇芳のクラスメート。
 クラスで一番の明るさと好奇心を持つトラブルメーカー。
 悪意はないのだが、世間知らずから余計な一言を口走ったり誤解を招いてしまうことがある。
 持ち前の明るさに加えて他人の趣味を学ぶなど人から好かれるための努力も怠らない。
 他人の気持ちの落ち込みなどをいち早く察する観察眼も持ち合わせている為、コミュニケーション能力は非常に高い。
「わたし的には」が口癖。
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        | + | 沙沙貴林檎(CV:長妻樹里) | 
沙沙貴林檎ささきりんご。白羽蘇芳のクラスメートで、沙沙貴苺の双子の妹。
 沙沙貴苺とは瓜二つであり、髪型と目元のほくろを除けばほとんど見分けがつかない。
 しかし性格は全く異なり、ものぐさでいつも眠そうな目と話し方をする。姉と比べると博識で頭の回転が良い。
 他人の気持ちに寄り添う性格をしており、読書という共通の趣味もあって積極的な沙沙貴苺とは別の形で白羽蘇芳と親密になる。
 「わたしとしても」「ですです」が口癖。
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        | + | ダリア=バスキア(CV:高城みつ) | 
ダリア=バスキア聖アングレカム学院の教員兼シスター。
 生まれついてのカトリックであり神学やマナーなどに厳格な部分もあるが本来の性格は穏やかで包容力がある。
 ふわふわとした天然な部分も親近感を抱かせる佳き教諭として生徒から慕われている。
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        | + | 車椅子の少女(CV:佐倉綾音) | 
車椅子の少女公式サイトでは名前が公開されているが、彼女の名前自体が序盤のネタバレとなるため伏せておく。
 白羽蘇芳のクラスメートで、夏篇の主人公。下半身が不自由なため、介護を受けながら車椅子で生活している。
 髪型・口調や表情にボーイッシュな雰囲気を漂わせ、人との関わり合いを好まずぶっきらぼうな話し方をする。
 しかし人が嫌いというわけではなく、内心では他人を思いやっている。
 からかうことは好きだがからかわれることは苦手で、礼を言われたり褒められたりすると分かりやすく照れ始める。
 その性格と口調から、本心とは裏腹に素直になれない男子といった雰囲気の少女。
 読書という共通の趣味を持ち意気投合している白羽蘇芳との会話シーンが多い。
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        | + | 考崎千鳥(CV:洲崎綾) | 
考崎千鳥たかさきちどり。夏篇から転入してくるクラスメート。
 転入前に芸能活動をしていたため、歌や踊りに関して高い実力とプライドを持つ。
 常に人を睨むような鋭い目つきをしており、思ったことは歯に衣着せず口に出す。
 人の感情に配慮しない態度や発言も多くクラスメートの反感を買ったり騒動を起こすことも少なくない。
 しかし、この裏表のない性格は後に彼女の魅力へと転じていく。
 作中でもプレーヤー目線でも登場時とそれ以降で真逆になるイメージの違いが面白く、プレーヤーからの人気も高いキャラクター。
 車椅子の少女とアミティエになり、気難しい性格どうしで衝突しながらも少しずつ関係を深めあい成長していく。
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        | + | 八代譲葉(CV:瑞沢渓) | 
八代譲葉やつしろゆずりは。2年生で、ニカイアの会の会長。秋篇の主人公。
 端正な顔つきにすらりとした長身、腰まで届く美しい銀髪。
 「僕」という一人称に「〇〇君」という二人称、芝居がかった話し方等から女子でありながら「王子様」と形容するに相応しい人物。
 普段はたびたびセクハラまがいの言動で人をからかう変わり者。
 だが、ひとたびスイッチが入れば高いカリスマ性とあらゆる分野における天才的な才能を発揮する。
 しかし、料理だけは努力を重ねていてもなかなか上達しない。学園内に多くのファンがいる。
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        | + | 小御門ネリネ(CV:西口有香) | 
小御門ネリネこみかど―。2年生。ニカイアの会の副会長であり、八代譲葉の幼馴染。
 八代譲葉の銀髪とは対照的な金色のロングウェーブヘアが特徴で、西洋人形のような現実離れした美貌を持つ。
 敬虔なクリスチャンであり、温和で心優しい性格。
 しかし、根は甘えん坊だったり天然だったり怪談を趣味としていたりと人前ではあまり見せない内面を持つ。
 また、悪意が無さすぎるせいか悪気なく地雷を踏むような発言をすることも多い。
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システム
基本は選択肢を選んで物語を分岐させるオーソドックスなアドベンチャーゲームである。
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推理パート
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物語の節目で、背景が切り替わり「Now reasoning」と表示され事件の真相を推理するパートが挿入される。
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と言っても、選択肢から正解を選ぶのはその他のパートと変わらないが、推理パートで選択肢を誤るとその後の学園生活が気まずいものになってしまうなどのバッドエンドに直行してしまう。
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逆に言えば推理パート以外の選択肢で即バッドエンドになることはない。
 
 
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百合ゲージ
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会話ウィンドウの傍らに百合の蕾のアイコンが添えられており、選択肢によって開いたり閉じたりする。
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選択肢にもよるが、社交的で前向きな選択肢を取れば緑色に輝き開花に、内向的で後ろ向きな選択肢では黄色に輝き蕾に向かう。
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百合の花が開いているほどトゥルーエンドの可能性が高くなる。
 
 
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タイトル画面から切り替え可能なORIGINALモードとFOUR SEASONSモード
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ORIGINALは春夏秋冬の4篇を個別に遊べるモード。Win/PSP/PSV版を再現したモードで、それぞれの季節でBAD END以外のエンディングを全て閲覧すると次の季節が解放される。
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FOUR SEASONSは春夏秋冬の4篇を通してプレーできるモード。BAD END以外のエンディングを迎えるとこのまま次の季節に進むかどうかの選択肢が出る。
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収集したCGなどはまとめられるので、どちらか一方で閲覧していれば各モードに保存される。
 
評価点
作品全体から伝わる美しさ・柔らかさ・百合百合しさ
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原画担当のスギナミキ氏が描く少女たちや、ミッションスクールの女学院という舞台設定、さらにはUIまでもが淡く美しい色彩に包まれており、隅々まで百合百合しい。
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立ち絵やイラストにはバレエのレオタード姿やネグリジェ・バスタオルといった煽情的な恰好も多く肌が触れ合うシーンも少なくないが、それでもなおエロティックさよりも美しさが勝るグラフィック。
 
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志水はつみによるシナリオや設定もよく練られており、それぞれの人物が抱える過去やトラウマ、同性愛を禁止するキリスト教の教義など様々な理由から彼女たちは自らの感情や付き合い方について思い悩むことになる。
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聖アングレカム学院は教員以外の庭師や運送業者に至るまで全て女性で構成されており本作に男性は一切登場しないので安心して女の園の世界に没入できる。
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百合描写だけでなく、生徒の失踪事件など不気味で不可解な出来事とその結末もよくできており、推理パートの終わりにはすっきりとした満足感が得られる(微ネタバレ注意→)
 
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テキストも美しい言葉選びが徹底している。
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14~15才の少女が使うとは思えない難しい単語や表現が頻出するが、お嬢様学校であることに加えて四季を通して登場する3人の主人公はいずれも才女かつ読書家であるため違和感は少ない。
 
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声優の演技も絶妙。
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全篇フルボイスだがいずれのキャラクターもセリフは聞き取りやすく、感情表現豊かでありながら演技っぽさを感じさせない。女学生の会話をそのまま聞いているかのように没入できる。
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特に一人二役の沙沙貴姉妹(CV:長妻樹里)の演じ分けは、あえてどちらが話しているのか不明瞭にしたシーンなども含めて秀逸。
 
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BGMも際立って印象的なものはないが落ち着いた学院の雰囲気やおどろおどろしい怪現象の雰囲気をよく表現している。
充実したオプションと機能的なUI
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未読早送りのオンオフ、既読の選択肢や文章の文字色設定、オートモードのページ送りの速度、5種類のテキストフォントなどなど非常に細やかにプレイ環境を設定できる。
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また、EASYモードという"推理パートで正解の選択肢が表示されるオプション"もある。
 
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セーブデータのロード後であっても、そのデータで読んだログをかなり前まで遡って表示することができる。バックログからセリフの再生をするだけでなく、バックログの任意の場所からプレーを再開することもできる。
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各人物のセリフにお気に入りがあれば保存してボイスコレクションから聞くこともできる。
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さらに、ボイスを好みのBGMで連続再生するプレイリストも作成可能。
 
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Joy-Conによる片手プレーやタッチ操作にも対応。各ボタンや操作の機能も細かく設定できる。
賛否両論点
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シナリオ分岐およびエンディングの数が少なめ。
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各季節ごとに8~10種ほどのエンディングがあるが、そのうち約半数は推理パートの選択ミスによる短いバッドエンドである。
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特に春篇は10のエンディングのうち8がバッドエンドなので、まともなエンディングは実質2つのみ。夏篇以降はBAD END以外のエンディングも数パターン用意されていく。
 
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また、シナリオは選択肢による会話のバリエーションが豊富に用意されていたりサブイベントもいくつか用意されているものの
 全体としてはほとんど一本道で、サブヒロインなどのシナリオ分岐は基本的にエンディング直前でのみ行われる。
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しかし本筋のシナリオは長いため、分岐こそ控え目ではあるが作品全体のボリュームは十分にある。
 
 
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ルート分岐の方法がかなりシンプル。
    
    
        | + | ネタバレ注意 | 
基本的に「百合ゲージを全て緑」でメインヒロインのトゥルーエンドになるが、2周目以降でないと見られないケースが多い。
逆にサブヒロインのルートは「百合ゲージを全て黄色」で見られる場合が多く、こちらも2周目以降限定のケースが多い。
面倒なフラグ立てが必要なくわかりやすいともいえるが、攻略のしがいがないとも言える。
夏篇のダリア=バスキアENDだけは全て緑や全て黄色では見られないが、基本的にメインヒロインの考崎千鳥に好かれるような選択肢だけを避けていけば良いので、予想外な選択肢でフラグが立つなどのややこしさはない。
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エンディングの少なさもあわせて考えるとコンプリートにかかる時間は短め。
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もっとも、以上のことはエンディングの分岐条件を知っていればの話である。全てのCGやエンディングをノーヒントで埋めようとすればそれなりに時間はかかるだろう。
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難しい単語や表現が頻出する。
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文脈から意味を察することが難しい使い方で難解な単語が出た場合は続けてどういった意味の一文だったのかが噛み砕いて描写されることが多く、文章の意味を理解するのに頭を使い物語に集中できないということはあまりない。
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また、使われる単語に難しいものはあるものの、不必要に指示語を多用したり文の構成をややこしくするようなことはなく読解の難易度自体は高くない。
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Win版『FLOWERS』のオフィシャルサイトではシーンの一部を読めるようになっている為、予めそちらを読んでみれば雰囲気が掴める。
 
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しかし、バレエの技の名前など「何らかの高度な演技をしているとだけ伝われば意味が通る」という場面では一々その詳細を説明してはくれないため、状況が想像しにくいシーンもないわけではない。
 
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オープニングイベントが少々過激。
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プレイ開始から1~2分で表示される、「ピンク色の背景をバックに躓いて抱き合い赤面している美少女」というベタベタな展開とイラスト。
 推理アドベンチャー目的だったり「百合も少し興味あるので…」程度の覚悟だと少し面食らってしまうかもしれない。赤面する白羽蘇芳の気持ちも味わえるかも。
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このゲームがどういった方向性の作品であるかを開始直後に分かりやすく伝えてくれるイベントではある。
 
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秋篇の推理パートの挿入にやや強引なものがある。
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春~夏は行方不明になった友人の捜索や台本の紛失、アミティエが犯人として疑われる障害事件など主人公の学園生活における身近なトラブルに立ち向かったり、
 そうでない場合であっても事件の真相がメインシナリオに大きく関係したりするものが多い。
 しかし秋篇では「そういえばこういう話を知ってますか?」等と唐突に事件や怪現象が語られ、
 それに対し「学園の行事を滞りなく開催する為」という理由で解決に乗り出すパターンが多い。
 秋篇の主人公「八代譲葉」は生徒会長であるため解決に乗り出す理由はあるのだが、自分や親しい人が直接被害を被る事件ではなかったり、そもそも解決させる必要自体がないため他の主人公に比べ動機づけが少し弱い。
 
問題点
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春篇初期の推理パートが「推理もの」としてはアンフェア。
    
    
        | + | ネタバレ | 
本作初の推理パートは「車椅子の少女がベッドに置いた本から彼女の名前を推察する」というものだが、問題の本のキーワードである「ヒース」がある花の別称であるということを知らない限り正解を割り出せない。
次の推理パートでは「ある外国出身の先輩が出題したクイズ“忌み数(日本で言う4など縁起が悪い数字)”を当てる」というものだが、これも「その国でその数字が忌み数とされている」ということを知らないと正解を割り出せない。
どちらも、推理というよりはクイズに近いものとなってしまっている。白羽蘇芳は読書家でありヒースが示す花の名前や外国の忌み数を知っていたため答えにたどり着いたということになるがプレイヤーがそうであるとは限らない。
この2つの推理パートにおいて不正解の選択肢はいずれも露骨なものであるため消去法で割り出すようなことは可能だが、推理ものを謳う以上は作中に潜ませる形でヒントを提示して欲しいところ。
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 これらの問題点は制作側も認識していたようで、それ以降(特に夏篇から)は本編の描写からプレイヤーが考えて正解を推測できるようなものが増えていく。
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沙沙貴苺の音声ボリュームが際立って大きい。
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沙沙貴苺というキャラ自体が喜怒哀楽が豊かで明るくおしゃべりなので意図したものだと考えられるがそれにしても大きい。
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具体的には、沙沙貴苺の音声ボリュームだけをデフォルトの半分に下げてようやく他のキャラと同じくらいになる。
 
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オプションで調整すれば済むので大きな問題点ではないとはいえ調整不足と言える。
 
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冬篇で回収されない伏線がある。
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主に八代譲葉に関する謎が多く残る。冬篇で新たな謎が発覚したり、回収されていない謎についてあえて口にしながらもはぐらかすような態度をとるなど意図的に残したものとみられる。
 
総評
百合というジャンルに抵抗が無ければ充分に、百合が好きであれば間違いなく楽しめる作品だが、百合成分だけで評価されている作品ではない。
春篇での謎に、1年かけて成長した白羽蘇芳が友人達と共に挑み冬篇で大団円を迎えるシナリオは大きなカタルシスをもって感動を与えるだろう。
それら女学院の空気や謎に迫る雰囲気に自然に入り込めるように充実したオプションや設計も細やかにできている。
同性愛というデリケートな題材であるがゆえに大衆受けしにくい作品だがプレイヤーからの評価は総じて高い。
重苦しい設定や人死にが出るような陰惨な雰囲気から離れて柔らかで優しいアドベンチャーをゆったり楽しみたい方にはお勧めの一作。
最終更新:2023年10月01日 17:00