Portal 2

【ぽーたる つー】

ジャンル 一人称視点パズルアクション



対応機種 Windows
Mac OS X
プレイステーション3
Xbox 360
Nintendo Switch
発売元 【Steam】Valve
【PS3/360】エレクトロニックアーツ
【Win】サイバーフロント
開発元 Valve
Nvidia Lightspeed Studios(Switch)
発売日 【Steam】2011年4月18日
【Win】2011年4月22日
【PS3/360】2011年5月19日
【Switch】2022年6月28日
定価 【Steam】1,200円
【Switch】1,950円*1
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
ポイント 『Portal』続編
ストーリー部分が大幅強化
新ギミックも複数登場
Portalシリーズ
1 (Still Alive) / 2 / The Lab / Bridge Constructor Portal
Aperture Hand Lab / Aperture Desk Job
Half-Lifeシリーズ


概要

2007年に発売された一人称視点パズルアクション『Portal』の続編として、4年後の2011年に発売された作品。
最初からスタンドアローンタイトルとして開発が進められ、前作では8人だった開発スタッフは40人に増加した。
前作同様にSourceエンジンを使用しているが、独自改良が施されグラフィックや物理演算などの表現がより緻密になっている。
本作もサラウンドサウンドシステムに対応しているが最大5.1chまでの対応に留まっており、前作で対応していた7.1ch出力には対応していない。


ストーリー

地中深くに建造された、人間の被験者を利用したテストを行うAperture Science(アパチャーサイエンス)社の巨大試験場・Enritchment Center(エンリッチメントセンター)。

人の管理から離れたテストチェンバーでは、管理AIである「GLaDOS (グラドス)」がプログラムに従い被験者を目覚めさせてはテストを行い、用済みとなった被験者を処分していた。

被験者でありながらテストチェンバーからの脱出に成功し、死闘の末にGLaDOSを機能停止にまで追い込んだ主人公「Chell (チェル)」だったが、ロボットによって施設に連れ戻されてしまう。

それから、いつとも知れぬ長い時が経った…。

コールドスリープを経て再び目覚めたChellは、被験者の管理を任されていた人格コアの1つ「Wheatley (ウィートリー)」に遭遇する。

間抜けなWheatleyと共に脱出を試みるChell。しかし、Wheatleyは手違いで機能停止していたGLaDOSを再起動させてしまい、2人は離れ離れになってしまう。

柔らかい殺意に満ちたGLaDOSに再び囚われたChellは与えられた「テスト」をこなしながらも、Wheatleyと協力して研究所からの脱出を模索するのだが…?


ゲームシステム

操作方法

  • 基本的な操作は前作と同一。マウスで視点を操作し、左/右クリックでポータルガンを発射。Spaceでジャンプ。
    • Eキーでスイッチの始動やアイテムの持ち上げを行う。

ポータルガン

  • 前作同様にポータルガンが登場。白い床・壁・天井(白い「変換ジェル」が塗られた地形も含む)といった平面に放つことで、ポータルを開くことができる。
    • 左クリックで青、右クリックでオレンジのポータルが発射され、両方のポータルが開いた場合に2つのポータル間を行き来可能になる。
    • 位置エネルギーの維持や無制限射程、あらゆるギミックもポータルを経由できるといった性能は前作同様。
  • ただし、バランスの一環あるいは目印としての意味合いを増すためか、白い平面の比率は前作と比べて小さくなる。

ゲーム進行

  • 基本的には前作同様に一人称視点のみで進み、テストをこなしてゴールのエレベーターを目指す方式。
    • ただし、前作よりもそういった「テストチェンバー」の枠に留まらないステージが多く、荒廃したチェンバーに巨大施設の裏側、さらに地下に放棄された旧研究施設跡といった様々なロケーションが登場する。

新登場ギミック

レーザー

  • 前作のエネルギー球の代わりに登場したギミックであり、常時照射されている・同時に複数のレーザーをポータルに通せるという点以外のギミック的な構造はほぼ同じ。
    • ポータルを繋げれば異なる場所に貫通し、レーザー用スイッチに接触すると起動させることができる。
    • エネルギー球とは違い、一瞬接触しただけではダメージを受けて後ろに弾かれるだけで、長時間触れない限り死ぬことはない。
    • また、新たにレーザーを任意の方向に屈折・反射させるキューブも登場。これを用いた複雑なパズルも登場している。

ジャンププレート

  • 人やアイテムを例外なく特定の方向に弾き飛ばすジャンプ台。方向を変えることはできず、常に一定の力で一定の方向に吹き飛ばす。
    • そのまま乗って移動に使用するほか、アイテムだけ載せて輸送に使うステージもある。

ハードライトブリッジ

  • 特定の装置から照射されるエネルギー状の橋で、射程制限がなく壁に接触するまで伸びる。
    • プレイヤーは足場または遮蔽物として利用でき、ポータルを介して異なる高さへも接続が可能。

欠陥タレット

  • 白い装甲が付いておらず、男性っぽい声と口調で話すタレット。
    • 機関銃が故障(というより弾切れ?)のため攻撃してこない不良品で、通常は焼却炉に投げ込まれてしまう。

ジェル

  • 新しい要素として、“壁面や床、天井などに塗る” ことで効果を発揮するジェルが登場。
    • 青色:反発性ジェル…プレイヤーや物体をトランポリンのように跳ね飛ばす*2
    • 橙色:推進性ジェル…上で走るととんでもないスピードで駆け回れる。
    • 白色:変換ジェル…塗られた部分にポータルを配置できるようになる*3
    • ジェルはポータルを介して別の地形に塗ることができ、付着した地形にはジェルの効果が表れる。プレイヤーには塗られないが、反発性ジェルは一部のオブジェクトに塗ることも可能。
  • ジェルを洗い流す水も存在する他、同じ場所に複数のジェルが重複する事はない(あとに掛かった方に上書きされる)。

輸送ファンネル

  • 一定方向(発射口からまっすぐ放出)に青いチューブのような波を作る装置。入ることで重力を無視して移動できるほか、ポータルを介して角度を変更したりキューブやジェルを輸送したりできる。
    • 一部ファンネルはスイッチにより推進方向を逆(発射口側へ吸引)にすることも可能で、逆になると色がオレンジに変化する。

評価点

練りに練られたパズル

  • 前作同様、パズルの完成度は非常に高い。一目では解くことはできず、されど絶対に解けないわけでもない絶妙な難易度ばかりであり、パズルゲームとしてのやりごたえは十分。

徹底的に掘り下げられたストーリー

  • 前作の時点で「設定がしっかりと練られていた」ことは劇中の演出や開発者のインタビューで幾度か示唆されていたが、本作では前作では埋もれていた裏設定や伏線を余すことなく明示・回収している。前作では謎の研究所に過ぎなかったAperture Scienceの歴史や管理AIの存在意義、研究所が実験を始めた経緯など、その舞台設定は非常に緻密。
    • 崩壊の一途を辿る研究所、刻々と状況の変化する逃亡パート、明かされる研究所の過去、最終決戦での熱い伏線回収など、ただのパズルゲームに留まらない秀逸なシナリオは本作最大の見所と言っても過言ではない。
    • 特に、前作では断片的だった研究所の管理AI「GLaDOS」のキャラクターは徹底的に掘り下げられ、前作以上にGLaDOS愛好家を多数生み出すこととなった。それ以外にも間抜けだがコミカルで憎めない「Wheatley」のみならず、サイコな言動の目立つAperture Science社長「Cave Johnson (ケイブ・ジョンソン)」や、あるキャラクターとの繋がりを垣間見せる「Caroline (キャロライン)」に加え、終盤の脇役にもかかわらず異様に目立つ通称「宇宙コア」など、個性豊かなメンツばかりでプレイヤーを飽きさせない。

お楽しみ要素の増加

  • ファン待望の2人協力プレイと、独自パズルマップをゲーム内で制作・共有できる「コミュニティテストチェンバー」が登場。クリア後も楽しめるようになり、ボリュームがさらに増えた。
    • 2人協力プレイでは、プレイヤーキャラクターが「Atlas (アトラス)」と「P-Body (Pボディ)」というロボットになっている。この2体も、1人用プレイのどこかでその存在が示唆される場面がある。

使いやすくなったポータルガン

  • 弾速が上がって瞬時にポータルが開けるようになり、体や物体をポータルに通した際の物理演算処理もよりスムーズに働くようになった。
    • また、遮蔽物越しにポータルが視認できるようになり、どこに付けたか分からなくなっても探す手間が省けるようになった。

賛否両論点

雰囲気が明るくなった

  • 前作は閉塞感や孤独感に満ちた不気味な雰囲気が特徴的であったが、そういった要素はかなり薄れている。
  • ほとんどの場面でパートナーとなるキャラと行動を共にすることになり、それを通してセリフやシチュエーションもコミカルなものが増えた。
  • BGMも多くのステージで流れるように。その中には曲調の明るいものも増えている。

旧Aperture Science施設跡の複雑さ

  • 明確にゴールが示されることがほとんどだった前作よりも、中盤ステージは道なき道を進むが如く広大な空間が集中的に登場する。ここでは次に進むべき方向を見失いやすくなりがち。

ワークショップマップのプレイヤーキャラ

  • コミュニティーテストチェンバーでは、ポータルを使って見ることのできるプレイヤーキャラの姿がデフォルトでPVの棒人間に差し替えられている。本編と繋がりがないことを示す演出と思われるが、結構不自然。
    • Sourceエンジンの開発キットを使って作られたMODコミュニティーマップでは本編と同じようにChellや他キャラクターに変更されているものもある。

問題点

酔う人は酔う

  • ただでさえ酔いやすい3DFPSの形式を採っている上、前作よりもさらに全方向を見回して解法を探し出す場面が増えた。このため(カメラワークは多少改善されたとはいえ)前作同様に普通のFPSで酔ってしまうような人には向かない。

実績の誤訳

  • 実績の中に「ガラス製ドアをすべて見つける」というものがあるのだが、イメージとはぜんぜん違う。
    + ネタバレ
    • 実はこれ、旧Aperture Science跡で見つかる「Vitrified (ガラス化)*4」と記された金属製ドアのこと。

総評

前作からさらに美しくなったグラフィック、奥深くなったパズル、重厚になったストーリー、増加したボリュームと、あらゆる面でパワーアップを成し遂げた作品。
発売前の期待に恥じない高い完成度が絶賛され、ゲーマー、批評家双方から高い評価を獲得、数多くの賞を受賞するに至った。

シングルプレイの高い完成度はもちろんのこと、フレンドと遊んだり、マップエディタで追加マップを造ったりと、遊び方の幅もさらに広がっている。
現在はSteamにてWin版が比較的安価で購入可能。敷居の低さも相まって、今なお高い支持を集め続ける、PCゲームの新たな定番となった作品である。


余談

  • 本作もまた「Valveは『3』を数えられない」のジンクスの1つだが、本作の後もスピンオフや他作品とのコラボは複数行われている。
  • Valveの他作品との繋がりを示唆する小ネタも豊富。
    + ネタバレ
    • 本編中盤のある場所ではなんと『Half-Life 2: Episode Two』終盤に登場する、時間移動型ポータルを搭載した砕氷船「ボレアリス号*5」の格納庫跡を見ることができる。

その後の展開

  • 2022年2月に『Portal』シリーズ2作をセットでSwitchに移植した『Portal: コンパニオンコレクション』が発表された。ダウンロード専売で2022年6月28日に発売された。
  • 2022年3月2日にValveの携帯機型ゲーミングPC「Steam Deck」の発売と同時に、シリーズのスピンオフ『Aperture Desk Job』が無料で配信開始された。
    • プレイヤーはAperture Science社の新入社員となり、人工知能・グレイディと共にトイレの便器をひたすら検査していく。
      • Steam Deckでのプレイを前提に開発されているため、PCでのプレイはコントローラーが最低限でも*6必要となる。
最終更新:2024年05月01日 15:15

*1 『Portal:コンパニオンコレクション』として初代『Portal』とセット販売されている。

*2 プレイヤーは着地するときにしゃがみキーを押していると、跳ねずに地上に降りることが出来る。そしてオブジェクトに反発性ジェルを塗るとスーパーボールのように跳ね回り始める。

*3 ゲーム中の発言から、どうやら月の石が混ぜ込まれているらしい(入手経路は不明)。

*4 実験施設が溶融して封印されたことを表していると思われる。

*5 『Half-Life 2』より以前、コンバイン侵攻時の「7時間戦争」中に起動され、アパチャーサイエンス研究員らを乗せて10年後の南極へと逃げた船。

*6 同作はジャイロコントローラー対応であるため、PS4/Switchどちらかのコントローラーか、発売終了となったSteamコントローラが実質推奨といえる。