鉄道模型シミュレーターNX

【てつどうもけいしみゅれーたーえぬえっくす】

ジャンル シミュレーション
対応機種 Windows 10
発売・開発元 アイマジック
発売日 2019年6月21日(プレリリース)
定価 無料(スターターキット制)
判定 スルメゲー
ポイント 鉄道シミュレーターとしても使える
Pythonに対応したプログラム制御
Do it Yourself精神ゆえの不親切さ
備考 パーツを追加するための各種有料パックあり


概要

広大な仮想空間上で鉄道模型を楽しむことを目的にしたソフト。略称は『VRM(Virtual Railroad Models)』。1998年に初代が発売され、NXは6バージョン目となる。
模型ゆえの制約(単位がmmで実寸の1/150になっている等)はあるものの、鉄道自体のシミュレーターとみなすことも十分可能な仕様になっている。


特徴

  • 始めるためのスターターキットは公式サイトから無料でダウンロード可能。基本的なレール、建物等と485系特急電車が利用できる。
  • 別途パーツセットのパッケージを購入することによって使用可能な部品(レール、建物、列車等)を追加することができる。
    • 前作(バージョン5)を所持している場合は移行料(アンロック)を支払うことでNXでも利用可能になる。
    • 一部部品はNXでは未発売のため、新規者でもバージョン5用を購入→アンロックが必要になる。
  • システムは部品配置等でデータを作成する「レイアウター」と実際に走行する「ビュワー」の2つで成り立っている。
  • 複雑な制御はプログラミング言語Pythonによって制御可能。
  • CLOUDアカウント(月500円、税別)を登録すると自作車両が作成可能。
    • 自作ストラクチャー(建物)機能も予定されているが4年経った2023年6月現在でも未実装。

評価点

  • スターターキット無料化
    • 前バージョンまでの基本パッケージはフルプライスゲーム並みの値段であり、(一部雑誌の付録と後述のオンライン版を除き)気楽に始められるものではなかった。NXでは無料になったことで体験しやすくなった。
  • 精密に再現された3Dグラフィック
    • 列車や建物のモデルは緻密に再現され、陰影や大気の描写も高度なものとなっている。
      • ただし、過去バージョン時代から引き継がれている部品は粗いものもある。
    • 収録列車は国鉄/JRが中心とはいえ、ないものは自作する方法も用意されている。
  • 広大な空間を再現できる
    • NXからはPCのメモリが許す限りいくらでも部品を配置できる。
  • 複雑なプログラム(スクリプト)制御
    • 列車や信号の自動制御、カメラの移動などがスクリプトを書くことによって自由自在に制御できる。また『電車でGO!』のようなゲームなども作成可能である。
    • 前バージョンまでは独自仕様だったが、NXからは一般的なプログラム言語であるPythonに変更された。外部ライブラリも利用できる。
    • 学習しやすくなった半面、前バージョンのデータを開いてもスクリプトの互換性がなくなったため実行されない。

問題点

  • 多機能すぎるゆえに不親切なシステム
    • まず起動すると真っ黒な画面が表示される。レイアウターがまさに設計用のCAD仕様なのだが、慣れていないと何からしてよいのかすらわからない。
    • 部品を重ねて置いた場合ジオメトリのY軸(高度)で管理されているのだが、どう配置されたかは数字で判断するかビュワー(試運転)で確認する必要がある。
      • きちんと設定しないと高架プレートに載せるべきレールが埋没する、などが起こりうる。しかしこれを逆手にとって建物を埋没させて別の建物に見せる等のテクニックも。
    • 列車の行き先表示を書き換えるにしても仕様に沿った画像を作って登録するなど、とにかく仕様を理解しないことには何もできないのがもどかしい。
    • 頼みの綱のマニュアルも未完成の部分がある。
  • Do It Yourself(自分でやろう)の精神
    • 自作車両を作りたいなら3Dモデリングの知識が必要だし、スクリプト制御したいならプログラミングの知識が必要である。何でもできるとしても簡単にできるとは限らない。ほぼユーザー任せである。
    • 簡単な制御のための自動センサーは用意されているが、これも多機能ゆえにパパっと設定できる代物にはなっていない。
  • パーツを購入しないと他人の大作を遊べない
    • 自分で製作する場合は当然であるが、他人のデータを開く際にも自分が未購入のパーツは利用できない(表示されない)。
    • したがってパーツを大量に購入して作った豪華なレイアウトほど逆に正しく見てもらえる人数が減っていくという悲しい状況になってしまう。
    • 対策としては動画/静止画等の別媒体を利用する、スターターキットのパーツのみで作るという方法になる。
    • 無料で遊ぶ専用に特化したAndroidアプリ「鉄道模型シミュレータCLOUD」もリリースされたものの、これも未だに前バージョン(5)にしか対応していない。

総評

作りこむ熱意と技量があればトコトン本物志向の3Dシミュレーターが作成可能ではあるものの、言い換えれば理想とのギャップに挫折しやすい内容であり、知識の乏しいユーザーが一から始めて継続するにはかなりの覚悟を要すると言える。とはいえ今作から始めるだけなら無料になったため、鉄道好きでものづくりに精を出すことのできるユーザーなら試してみる価値は十分あるだろう。


余談

  • 工学社はタイアップに積極的で月刊I/Oという雑誌でこのソフトを使いプログラミングを学ぼうという記事が掲載された。それを再構成した「鉄道模型シミュレーターNX 入門」等の関連書籍も何冊か刊行されている。
  • 実在する鉄道模型メーカー「TOMIX」の製品が収録されているのも売りのシリーズ。2014年を最後に長らく新製品が収録されていなかったが、2021年12月よりようやく新製品が登場した。
    • NX用TOMIX製品はバージョン5(以前)の同名パーツとは別として扱われるため直接の互換性がない。新旧両方を購入+アンロックした場合のみ変換機能が利用できる。
    • 設計のみに特化した廉価版「鉄道模型レイアウターNXF2023」も実に10年ぶりに販売される。列車は走らず画面も単色で出力される仕様になっている。
  • このソフトと機能はほぼ同じだが一部システムの違うサービスがオンライン版としても運営されている。
    • 2008年~2022年までは別会社が運営していたが、直営になり多くの違いが解消された。そのため現在ではバックアップサーバーとしての側面が強い。
      • 以前は入会金1500円で、部品が先行リリースされたり、単価は高いが個別に部品購入できるなどの違いがあった。
      • もともと2008年にバージョン4(前々作)からの移行先としてオンライン版がリリースされたものの、月額制などの仕様変更があったために既存ユーザーの評判がよろしくなく、結局従来通りのパッケージ版バージョン5(前作)も併売することになった。
      • 月額制自体は2か月ほどで廃止され、入会金さえ支払えば無料継続可能に変更されたものの、ほぼ同じソフトを共有不可能な2種類の形態で提供するという分かりにくい状態が14年間も続くこととなった。
最終更新:2023年06月28日 21:13