CARRION

【きゃりおん】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 Windows(Steam)
Nintendo Switch
Xbox One
PlayStation 4
PlayStation 5
発売元 Devolver Digital
開発元 Phobia Studio
発売日 2020年7月23日
【PS4】2021年10月22日
【PS5】2023年4月28日
定価(税別) Switch/Win 2,050円
One 2,350円
レーティング CERO:D(17才以上対象)
アイコン:暴力
判定 良作
ポイント モンスター側に立つパニックホラー
探索ゲーとしてのクオリティは高い
謎めいた世界観


概要

ポーランドのゲーム開発会社によって開発された、ダウンロード専売のアクションアドベンチャーゲーム。
日本語版ローカライズは架け橋ゲームズが担当。
基本的な舞台設定自体はよくあるモンスターパニックもの……なのだが、「主人公はモンスター側」という異色の配役となっている。
その設定から「逆ホラー」「リバースホラー」と呼ばれることもある。

2020年のクリスマスごろに追加ダウンロードコンテンツとして、『Gratest Time Of Year』が配信された(無料)。

特徴

  • 基本的なシナリオは、「謎の研究所に捕まっていた新種の生物が暴走して脱走、研究所の職員や警備員を食い殺しながら外の世界を目指す」というもの。
  • システムは『メトロイドシリーズ』や『悪魔城ドラキュラシリーズ』などの系譜にあるいわゆる「メトロイドヴァニア」系統のもの。
    • 研究所内を行き来しながら、攻略に必要な能力(DNA)を集めてパワーアップしていく。パワーアップの度合いに応じて最大体力も向上する。
    • 基本的な進行としては、各エリアに点在する「巣穴」を全てチェックすると、次のエリアに進むための扉をこじ開けることができる……という流れ。巣穴は以降セーブポイント兼回復ポイントになる。
  • 主人公はグチョグチョした赤黒い触手の塊に牙や眼が乱雑についたもの、と悪夢に出てきそうな代物。特に名前はない。
    • 基本情報表にあるパッケージ画像が実は主人公のグラフィックである。その事から斬新さを感じて欲しい。
    • 出自については一切説明されていない(一応作中に推察できる材料はあるが明言はされていない)。
      • 台詞や心中描写は一切なく一見知性などなさそうに見えるが、実際の所作中の描写を見る限り下手な人間を遥かに上回る知性を持っている。
    • 人間どころか一般的な生物離れしたその外見からわかる通り、動き方はかなり独特。壁や天井を自由自在にはい回ることができ、狭いダクトにもあっさり侵入できる。
    • 人間が強いのか主人公が弱いのかは不明だが、見た目に反して耐久面はかなり脆く、普通のピストル数発で瀕死になるレベル。あまり無理は効かない。特に炎にはものすごく弱く、基本的に水に触れないことには燃え続けて死ぬ。
      • 全形態共通の基本モーションとして、「触手を伸ばす」アクションができる。これで扉やスイッチを作動させたり、あるいは敵を捕食したりできる。可愛い女の子や美女に絡み付いて「ぐへへへへ!」はできない。残念。
      • 特徴的なのは、現在の体力値に応じて形態が切り替わること。最初は一番小さい形態から始まるが、能力を集めるにつれて最大体力も上がり、形態も増えていく。
        原則的に大きい形態の方が体力も多く、戦闘に有利だが、当たり判定が大きくなる弱点もある。小さい形態でしか使えない能力が謎解きで求められるシーンでは、大抵近くに培養槽があり、ここでバイオマス(自分の体)を切り離すことで任意に小さい形態になれる。もちろん、バイオマスを回収すれば元の大きさに戻ることもできる。
      • 一部の能力はエネルギーを消費。エネルギーは、配電盤からチャージ可能。
    • その他、ゲーム進行に伴い、以下の能力を得ていく。
+ 主人公の能力
  • 全形態共通
    • エコーロケーション
      • 呻き声をあげて、捕食できる死体の位置を感知していく。
    • ハイドロフィリア
      • 水中でイトミミズ状の形態に分離し、細い隙間を通過できるようになる。
    • パラサイティズム
      • 触手を伸ばして任意の人間を操作できるようになる。
  • 小形態専用
    • アラクノブティシス
      • 糸を吐き出すことができる。糸は細い隙間を通過できるため、レバーを操作したりできる。一応戦闘にも使えるが、攻撃力はなく敵を拘束するだけ。
    • フォトキネシス
      • 透明になってセンサーをやり過ごす。エネルギーを消費。
  • 中形態専用
    • ザイフォーリア
      • 全身に鎌を生やして突進。脆い木の障害物や、栓を押し出して破壊できる。直撃すれば生身の人間は一撃必殺。
    • アカントーシス
      • 全身に棘を生やして攻撃。エネルギーを消費。各形態専用の能力の中で唯一の戦闘用能力で、謎ときに必要な場面はない。
  • 大形態専用
    • ハルパゴーリア
      • 全身を銛のような形にして攻撃。栓を引っこ抜けるが、なぜか押し出すことはできない。なんでだ
    • ケラトーシス
      • 全身をケラチンの殻で覆って防御する。エネルギーを消費。
  • 他、本編クリアには必要ない隠し能力もある。
  • 本作の敵は当然「人間」となる。
    • 当初こそ非武装・無抵抗の研究員を一方的に倒していくことになるが、ステージが進むと、ピストルで武装した研究員・警備員、マシンガンや火炎放射器を持ち耐久力のあるアーマーを着た警備員、電磁シールドを持ち正面からの攻撃を無効化する警備員、マシンガンを装備した機動兵器、 ポンコツ 無人ドローン、などが登場するようになる。
    • 特にアーマー装備の警備員は死体を捕食(=HP回復)できないため、ダメージを喰らいながら倒してから死体を喰らって回復と言うゾンビアタックが通用しないためとても厄介。隙をうかがってからのステルスアタックが重要となる。

評価点

  • 単に普通のアクションアドベンチャーの主人公をモンスターにしただけ、というわけではなく、ちゃんと「モンスターらしさ」が表現されていること。
    • 前述のように、主人公の動き方は非常に独特であるが、その分自由度も高い。基本的に「トラップで進めない」という箇所以外は画面内の全てを這いまわることができる。
    • 戦闘面でも、「モンスターらしさ」が存分に発揮されている。大抵の場合、敵がいる部屋はダクトや水中から安全に様子を窺える場所がある。こういった箇所から敵の様子をじっくりと観察し、油断したところを背後から襲い掛かる……というモンスター映画のテンプレのような狩りを自分でできるのは結構楽しい。
      • パラサイティズム習得後は、パラサイティズム無双になりがちな面が若干ある。洗脳してしまえば、ほぼ一方的に同士討ちさせまくることができるためである。今まで苦戦していた歩行戦車を乗っ取って撃ちまくる爽快感は抜群。
        とはいえ、機械系の敵には一切無効であるし、洗脳しきる前に他の敵に対処されるシーンもあるので、強力ではあるが万能ではない。
  • 謎解きの難易度はほどほど。初見では頭を捻るが、能力を駆使すればちゃんと解ける程度の難易度になっている。
    • パラサイティズムを使った攻略では、他の場所から人間(死体)を持ってくる必要がある場面もあり、一筋縄ではいかないが、推理でなんとかなる範疇である。
    • 想定された一周のボリュームは大体初見で4~6時間程度。値段を考えれば相応だろう。また腕前の向上を実感しやすいゲームデザインであり、再プレイで改めてわかる隠し要素もあるので、再プレイのモチベーションも上がりやすい。
  • 割と容赦なく死にまくるが、セーブポイントは多く、リトライも非常に速いのであまりストレスは感じない。
    • 総合的なアクションアドベンチャーとしての難易度は初心者~中級者向けといったところ。奇異な外見に反して、意外とユーザーフレンドリーである。
    • また、マップを切り替えても倒した敵はそのままなので、「自爆覚悟で1体でも仕留める→引き返して回復&セーブ」の繰り返しでも割となんとかなる(終盤は全滅させるまで出られない部屋もあるので通用しないことも多いが)。
      • 追加ダウンロードコンテンツの『Gratest Time Of Year』では能力が隠しも含めて全てそろった状態で始まるが、それが前提の高難易度になっており、実質的に本編クリア者に向けた挑戦状となっている。
  • グラフィックはドット絵(風)だが、クオリティは高い。
    • 敵(人間)を攻撃するモーションについても、頭や胴体に触手を突き刺す、触手で掴んで手足を引きちぎる、死体を掴んで振り回したら上半身が吹き飛ぶ、 HP回復の為に死体を捕食する 、など、リアルではないがヌルヌル動くドットのため非常に生々しい。
    • 特に人間の捕食シーンは小さくて粗いドット絵でよかったと思わせるぐらい遠慮なくグチョグチョに捕食してくれる。
    • 主人公の動き方も変幻自在ながらちゃんと表現されている。
  • 基本BGMは環境音だが、交戦時は緊迫感あるBGMになる。
    • 普段は隠れ潜みつつ、一気呵成に襲うときは襲う、というモンスターっぽさが表現できている。
  • 考察のしがいのある世界観。
    • 主人公の出自含めて、本作の世界観には謎がかなり多い。しかし、作中で描写されている手がかりだけでも推察することは可能であり、この手の考察マニアにはなかなか興味深いものとなっている。
      • 特に各所にある分析装置に入った際に追体験できるとある人間の過去については本作の設定の根幹にかかわる重要なファクター。
    • 最終的に主人公は「ある方法」で研究所を脱出するのだが、人間側から見たホラー作品としてはバッドエンドであるが、モンスターが主人公の本作ではハッピーエンドである。逆転した構図が非常に面白い。

問題点

  • マップ表示機能がない。
    • 今時のアクションアドベンチャーゲームとしては、ちょっといただけない問題点。隠し能力を求めて過去のステージに戻ろうとするとかなり面倒くさい。
      • 一方通行のダクトがかなり多いので、下手に入ると戻るためにかなりの遠回りを強いられることもしばしば。
    • これは世界中からレビューで要望されているのだが実装される気配はない。ゲームデザインの一環として、あえてマップを排除していると思われる。
  • 特にボスに当たる存在はない。最終ステージも、ちょっと手ごわいが今までに登場した雑魚の総まとめに過ぎない。
    • 例えば「暴走した生物を鎮圧するための最終防衛システム」のような存在があっても世界観的には矛盾はしないように思えるのだが……。
    • 機動兵器や無人ドローンなども配備されているのだが、機動兵器は人間がいないと動かない上にパラサイティズムで操った人間を乗せればこちらの手駒になる、無人ドローンは性能がポンコツと、結局のところ中盤から登場する電磁シールド警備員が最後まで一番やっかいな相手であり代わり映えがしない。
  • 大形態に進化できるようになった後は、中形態の出番がほぼなくなる。
    • 実質的に、ザイフォーリアで栓を押し出す場面以外に能力が必須となるシーンが皆無なためである。小形態の能力は謎解きでそこそこ出番があり、場合によっては小形態での戦闘を強制されることもあるのだが……。
      • 一応後述のように大形態の操作性は微妙なので、扱いやすい中形態で進むのもありではあるが、ぶっちゃけそこまで劇的な違いもない。
  • 基本的なアドベンチャーとしての作りは前述のように親切だが、ちょっと親切すぎるような点も……。
    • 例えば背景の非常口マークをひたすら追っていくだけでもゴールにたどり着けるようになっている、隠し能力がある格納庫の入り口にわかりやすくマークがある、各エリアの入り口にそのエリアの隠し能力の奪取の有無が電光掲示板で表示されている、など。これ自体は確かにユーザーフレンドリーなのだが、「研究所内部の情報」としてはやや違和感がある。
      • 本作の主人公は「脱走中の新種の生物」であり、一切の味方がおらず単身で逃げなければいけない、という境遇なのだが、その割に妙に主人公のためになるガイドが多すぎるきらいがある。例えばゲームシステム側からのシステムメッセージとしてのガイドだったり「主人公の特殊能力で出口の場所がわかる」という形式ならさほど違和感はなかっただろうが、本作の形式だと「なんでこんなに親切に情報開示してくれるの?」という違和感がどうしても付きまとう。
  • 3段階目の大形態の移動がやや不便……というか、なんだかよくわからない。どこが操作の起点になるのかも見た目からは判然としない。
    • 特にこれが致命的な操作ミスの原因となる、ということはあまりないのだが、とにかく何とも言えない操作感の奇妙さがあり、違和感は拭えない。
      • もっとも、恐らくこの辺は意図的なものだろうが。
  • 『Gratest Time Of Year』を始めると、ゲーム自体をリセットさせないと通常ゲームに戻れない(逆もしかり)。

総評

ぱっと見の印象から奇ゲーに見えなくもないが、実際のゲームとしての方向性はまっとうに完成度が高いメトロイドヴァニア系統のアクションアドベンチャー。
しかも単に奇をてらっただけでなく、ちゃんと「主人公がモンスターであること」を活かしたゲームデザインになっており、その方面もぬかりはない。
グロ表現が多いので人は選ぶが、遊びやすさと面白さをちゃんと両立しており、この手のジャンルに興味があるならばプレイして損はない一作である。

余談

  • Switch版のアイコンは、発売後しばらくして女性器を想起させるという理由でアイコンが変更された。
  • 主人公のデザインが、2025年大阪万博のロゴマーク「いのちの輝き」に似ているとたまに言われる。
    • これはそもそもの「いのちの輝き」それ自体が、「赤いドーナツ状の不定形の物体に無数の目玉が付いた代物」という公共物のロゴマークとしてどうなのか、という方向性なのが原因であり、決して意図的なパロディではない…はず。
最終更新:2024年06月09日 16:58