XIII 大統領を殺した男 / XIII Classic

【さーてぃーん だいとうりょうをころしたおとこ】

ジャンル FPS
対応機種 Windows(GOG、Steam)
Playstation 2
Xbox
GameCube(海外のみ)
Mac OS X(海外のみ)
発売元 UBIsoft
Feral Interactive(OS X)
マーベラスインタラクティブ(CS機日本語版)
ユービーアイソフト(Win日本語版)
開発元 Southend Interactive
Ubisoft Paris
発売日 2003年11月18日
【GC】2003年11月15日
【OS X】2004年6月11日
【Win日本語版】2004年3月13日
【CS機日本語版】2004年8月5日
価格(DL配信) 【Win(Steam)】620円
【Win(GOG)】$5.99
判定 良作
ポイント バンド・デシネ原作のFPS
高いクオリティの楽曲とグラフィック
コミック調の演出が豊富


ストーリー


アメリカ合衆国 ニューヨーク州

盛大なパレードの最中に、突如アメリカ大統領ウィリアム・シェリドンが暗殺された。

その弟、ウォルター・シェリドンが兄の意志を継いで大統領に立候補することを宣言する中、狙撃現場を捜査したFBIはスティーブ・ローランドという名の男こそが大統領の暗殺犯であることを突き止める。

そんな中、ブルックリンのビーチにある男が漂着する。男は銃創を受けて記憶喪失に陥っており、唯一の手掛かりはとある船から満身創痍で海に飛び込む記憶と、ウィンスロウ銀行の金庫を開ける個人鍵、そして胸に刻まれたXIIIのタトゥーのみだった。

ライフセーバーによって小屋に運び込まれ九死に一生を得た直後、小屋はマングースという謎めいた男の率いる武装集団によって包囲される。

辛くも脱出しウィンスロウ銀行に辿り着いた男は、自らの名前がスティーブ・ローランドであることを知ってしまう。マングースからの決死の逃亡の末にアモス大佐率いるFBIに拘束されたローランドだったが、マングースのFBI本部襲撃に乗じて元同僚を名乗る謎のエージェントジョーンズと接触。追跡を振り切り、脱走に成功する。

ジョーンズによれば、軍部とFBIはそれぞれ独自に暗殺事件の捜査を進め、異なる結論に辿り着いたのだという。陰謀を知ってしまったキャリントン将軍は逮捕され、アパラチアの米軍基地へと幽閉。そして彼の元にも、マングースの放った襲撃者が迫りつつあった。

なぜ記憶を失うことになったのか、本当に自分が大統領を殺したのか、ナンバーXIIIのスティーブ・ローランドとはいったい何者なのか?自らに秘められた謎を解き明かすため、ローランドは大統領暗殺の裏に潜む「ナンバーズ」の陰謀に立ち向かっていく。


概要

脚本ジャン・ヴァン・アム、作画ウィリアム・ヴァンスの二人によって執筆され、1984年にベルギーで刊行されたグラフィックノベル(バンド・デシネ)シリーズ『XIII』をベースにした、カートゥーン調のグラフィックを特徴とするFPS。
開発を担当したのは、前年に処女作のSFスポーツゲーム『Deathrow』を開発したSouthend Interactive。同社初のFPSとなっている。
原題はコミックと同じく『XIII』のみだが、日本での発売にあたって『XIII 大統領を殺した男』という副題付きタイトルに改められた*1
ゲームエンジンはUnreal Engine 2を採用している。


ゲームシステム

基本システム

  • 操作スタイルは一般的なFPSと同様。WASDで移動し、マウスで視点移動・射撃・スコープ操作を行う。
    • Rキーでリロードを行い、Cキーでしゃがみ、Eキーでアイテムの使用やスイッチ・ドアなどの操作を行う。カギを使う場所などでEキーを押すと、自動的に使うべきアイテムが選択される。
    • 武器は数字キーまたはZ/Xキーで選択し、アイテムはF/Gキーで選択する。

ゲーム進行

  • 体にXIIIの入れ墨を持つ記憶喪失のエージェントとなり、「ナンバーズ」の陰謀に挑む直線形式のFPS。
    • 全13章34ミッションで構成されている。
    • セーブは可能だが状況は記録されず、再開時はチェックポイントまたは各マップの開始時からの開始となる。

体力

  • 体力は昔ながらのHP+シールド式。シールドは防弾チョッキ、ヘルメットでそれぞれ別カテゴリで計算されるようになっており、装備中はダメージを軽減する。
    • 体力の回復には各種に落ちている(またはロッカーに入っている)メディキットを使用する。

武器

  • リボルバーからピストル、AK47、M60機関銃、ドラグノフ、ロケットランチャー、投げナイフ、UZIなどなど、合計16種類の銃器が登場。
    • また、それ以外にも椅子、灰皿、ホウキといった非殺傷オブジェクトも配置されており、Eキーで取得して攻撃に使用することが可能。主に殺傷不可区域で使用する。
    • 狙撃銃やクロスボウに搭載されているスコープは使用開始時はどの姿勢であってもブレるが、一定時間覗き続けると次第に安定していき最終的にブレなくなる。

アイテム

  • 鍵やキーカード、メディキットといった普通のアイテムのほか、鍵を開錠できるロックピックやぶら下がることが可能なワイヤー発射装置、指向性盗聴マイクといったスパイらしいアイテムも複数登場。F/Gで装備し、マウス右やEキー、Enterキーで使用する。

収集要素

  • 本編中以外の要素として、作中の重要人物たち「ナンバーズ」の所在と生死を示す「Conspiracy」、各種機密情報を閲覧できる「Document」、現在進めている章までのあらすじをダイジェストで読める「Story」、順次解放されていくお助け機能「Skill」の計4種類が存在。
    • これらを閲覧していくことで、より深く物語の内容を知ることができる。

評価点

美しいトゥーンシェーダーグラフィック

  • 原作の雰囲気を極力再現すべく、同時期にしては珍しいコミック調のシェーダーを採用している。
    • リアルさは意識してはいないが陰影の表現などは非常に美しく、また輪郭が協調されるためキャラクターの視認性も高い。

お洒落かつ有用なコミック調演出

  • 爆弾の炸裂やヘッドショット、高所からの落下などといったさまざまなアクションに応じて、画面上にはマンガのコマのようにズームイン演出が入ったりオノマトペが挿入されたりといった演出が挟まる。
    • 壁越しに見える足音のオノマトペ(tap tap tap)で敵の位置を把握する*2、華麗な狙撃やナイフ投擲が命中する瞬間が3カメ表示される、重要なアイテムや登場人物がコミックの一コマとして強調表示され分かりやすくなっているなど、爽快感の演出やゲームプレイの補助に一役買っており、それでいてプレイの邪魔にならない絶妙な加減を維持している。

非常に高品質な各種楽曲

  • 作中楽曲はサンフランシスコの音楽レーベルFuture Primitivesoundのアーティストによって作曲されており、ソウル、ファンク、ジャズといった70年代ミュージックを彷彿とさせる非常にオシャレな内容。
    • ゲーム側でも連動しており、敵との交戦中とそうでないときでシームレスに切り替わるなど演出とのシンクロを意識して各楽曲が挿入されている。
    • なお、本作のサウンドトラックはタイトルにあやかって合計13曲で構成されている。

緻密なストーリー

  • 原作がコミックなだけあって、その内容はFPSにしては異質なほどに緻密かつ巧妙。徐々に取り戻す記憶、各勢力の思惑、謎めいたナンバーズたち、主人公の本当の正体といった様々な要素が複雑に絡み合い、深みのある物語が展開される。
    • コミックではできないゲームならではの演出も多分に盛り込まれており、特に作中のとあるシーンを伏線として用いた最後のどんでん返しは秀逸。

賛否両論点

良くも悪くも堅実なゲームプレイ

  • 波乱万丈のストーリーを考慮せずに単純な本編のみで見ると、その内容は『Half-Life』から変化のない範囲に収まっており革新性はない。
    • 目立った武器バランスやバグの問題はないため終始快適に遊べる作品ではあるのだが、この点は革新性を求める当時の批評家から批判を招くこととなった。

問題点

難易度の高いステルス

  • 道中のアパラチア軍事基地・SPADS軍事基地の二か所では、厳重な警備の敷かれた中を掻い潜って進むステルスパートが挿入される。
    • 見つかって警報のスイッチを押されると即座にゲームオーバーになるため、見つからずに進むか、或いはバレる前に無力化するかのどちらかとなる。そこそこ広いため、ややストレスの溜まる部分。

未完

  • 本作のストーリーは全20巻ある原作のうちのたった5巻分(部分的に8巻までの要素も含む)のみで構成されている。それだけでも十分なほどのボリュームを誇っているのだが、エンディングに辿り着いてもいくつかの謎が解き明かされない。
    • 作中のメインターゲットとなるナンバーズの陰謀自体はほぼキレイに解決するため、1つの章としては申し分のない終わり方となっている。

総評

その破綻のないゲームプレイと緻密なプロット、コミック調で実益も兼ね備えたオシャレなグラフィックなどが高く評価され、コアなFPSファンを中心にカルト的な評価を獲得した作品。
Call of Duty』等のリアルなグラフィックが主流だった当時の批評家からは酷評されることもあり売り上げは思うように伸びなかったが、独自の作風を持つ隠れた名作としての地位を獲得した。

技術的な古さを感じさせないカートゥーングラフィックや緻密なストーリーは、現在でも色褪せることなくその魅力を保っている。コミック特有の独特な作風さえ許容できるのであれば、今でも十分に楽しめる一作と言えるだろう。


日本語版

  • 日本でのCS機版ローカライズ・販売はマーベラスインタラクティブが担当し、2004年8月5日に発売された。
    • 対象ハードはPS2版とXbox版の二種類で、日本語字幕・吹替えに対応している。
  • Windows版は『サーティーン 完全日本語版』が2004年3月13日にユービーアイソフトから発売されている。こちらも日本語字幕・吹替え対応。
  • GC版は海外のみで日本では発売されていない。

余談

  • リメイク版が発売された現在はSteam/GOG.comで『XIII classic』というタイトルで配信されている。
    • 値段は比較的安価なため手は出しやすいが、CS・Win日本語版などとは異なり日本語字幕や吹替え音声といったローカライズはされていないため、ある程度の英語力が要求される。
  • 続編計画は一応存在したのだが、売り上げが低迷したことで残念ながら頓挫してしまった。本作から続くストーリーは携帯向けアプリ『XIII 2: Covert Identity』として補完されたが、こちらは『メタルスラッグ』型の横スクロールのアクションゲームとなっている。
    • 『XIII 2』の開発は、同時期にスプリンターセルやレインボーシックス、アサシンクリードなどといったUBIsoftフランチャイズの携帯アプリ版スピンオフゲームを数多く手がけたGameloftが担当している。残念ながら他のタイトル同様に他ハードへの移植はなされておらず、合法的に遊ぶのは非常に難しい状況。
  • その後、2020年11月には続編ではなくリメイク版の『XIII』(PC/PS4/One)が発売されたが、元のコミックイメージを損なうリアル風グラフィックや相次ぐ多数のバグなどが要因となり各レビューサイトやユーザーからの酷評を受けてしまった。*3
    • これを受け、Microidsは2022年6月30日に「同年9月13日にゲームを大幅に更新するアップデートを配信する」ことを発表。これに伴いデベロッパーはリメイク版を開発したPlayMagicから同じフランスのデベロッパーであるTower Fiveに変更したことを公表している。そして、アップデートパッチも無事予告日通りに配信が開始され、グラフィック面やAI、HUD、サウンドの改良に加えオンラインマルチプレイヤーモードが追加された。
最終更新:2021年08月26日 13:39

*1 サブタイトルが付いてるのは日本のCS機版のみ

*2 ストーリー進行によってスキル「第六感」が解放されて以降に有効となる

*3 当初は2019年11月に発売される予定だったが更なるクオリティ向上のため1年延期された。