ゲームボーイウォーズ

【げーむぼーいうぉーず】

ジャンル シミュレーション
対応機種 ゲームボーイ
発売元 任天堂
開発元 任天堂
インテリジェントシステムズ
発売日 1991年5月21日
定価 2,600円
プレイ人数 1~2人
判定 良作
ポイント 新兵器がいろいろ加わってスケールアップ
ファミコン版とは若干異なるシステムだがそれもまたヨシ
通信ケーブルなしで対戦ができる
索敵モードは通信ケーブル非対応がむしろアダに
ファミコンウォーズシリーズリンク


概要

1991年に発売されたゲームボーイの現代戦シミュレーションゲームで、前身はファミリーコンピュータ用のロムカセットとして1988年8月に発売された『ファミコンウォーズ』である。
根本的にはそのゲーム性を引き継いでいるがシステムに一部改変がある。

本項目ではファミコン版との相違点・変更点を中心に扱う。


内容

  • 根本的なゲーム性は『ファミコンウォーズ』から引き継いでいる現代戦のシミュレーションで、敵部隊を全滅させる or 敵の首都を占領すれば勝ちとなる。
  • マップはプレイヤー同士の対戦用と、対CPU用でラインナップが分けられている。
    • 対CPU用のマップが俗にいう「ステージクリア」のゲームで全島を攻略すると、隠しマップが登場し、それを攻略するとエンディング。ここまではファミコン版と同じ。
      本作では、エンディング後にスペシャルマップに突入し、それをすべてクリアして「エンディングマップ」まで制覇して本当のエンディングとなる。
    • プレイヤー対戦用のマップはお互いが公平な条件を期するべく上下左右がほぼ対称的な作りになっている。初期収入も1,000の差があるのが2つあるだけで他はお互い同額。

ファミコン版とのゲームシステムの違い

  • モノクロ表示の都合上、2P側の名前が「ブルームーン」から「ホワイトムーン」になった。
  • 敵索モード。
    • 俗にいう「索敵」で、自軍ユニット周囲の特定の範囲しか見えず、敵を探る必要がある。
    • これをオフにすればファミコン版と同じマップが見えるゲームになる。
  • 便利な新機能。
    • スタートを押すとカーソルが首都に戻せる。セレクトならば全体マップを見ることができる。
    • ターン開始と同時の全補給をオート設定でできるようになった。
    • 前作にはなかった「削除」で、行動前の不要ユニットを削除できるようになった。
  • マップの構成が上下で半分ズレた形のヘックス式になった。
    • ファミコン版から引き継がれたマップ「キメンハントウ」と「タマタマジマ」もこの影響で微妙に変わっている。
    • 全マップクリア後にはスペシャルマップとして「オニギリジマ」「ノアカザントウ」もプレーできる。
  • 占領システムの変更。
    • ファミコン版では都市などを占領しきらないうちに対象ユニットが離れたり全滅させられてしまうと占領度のゲージがゼロになり、再度占領を最初からやり直す必要があった。本作では占領度は耐久度という扱いになり、ユニットが離れてもそれまでの占領による都市耐久度の度合いのゲージはそのまま残る。
    • これにより都市の耐久度を回復させる「建設」というコマンドが登場した。
      • また、ファミコン版では都市などの占領度の耐久度ゲージは、設定でアニメーションをオンにした状態で占領を行わないと視認できなかったが、本作ではアニメーションオフ時やマップ画面でも直接ゲージが常時確認可能になっている。
    • 占領に擁するターンはユニット数が満タンの10の場合で、都市は2ターン、空港・港・工場は3ターン、首都は耐久度が都市の2倍で4ターンを必要とする。
      • ヘックス型になった影響で一列に並べて壁にしても2ヶ所から攻撃されるため1ターンで撃破されやすくなり、それの緩和として撃破されても後続で占領しきれる場合がある。
  • 最初のターンで一切何も生産しないと、次のターンで全滅扱いで負けとなる。
  • 生産のシステムが変更。
    • ファミコン版では5x5だったのが、首都から3マス以内に変更。
    • 前述の「キメンハントウ」もこの影響で生産箇所が増え、レッドスター時の難易度も増加した。
  • セーブデータが3枠になった。
  • いくつかのユニットの兵器に主砲と副砲の2種類の武器が区分設定され、それぞれに弾数設定ができた。これにより捨て駒ユニットで攻撃して強いユニットの弾切れを狙う戦法は取り辛くなった。副砲を持たないユニットもあるが、前作と比較すると全体的に弾数は多めに設定されている。
    • 例えば戦車Aは通常は主砲の戦車砲で攻撃するが、歩兵や航空ユニット相手には副砲の機銃で攻撃するといった具合で、主砲の戦車砲の弾数は歩兵や航空ユニットの攻撃では減らせなくなった。
    • ファミコンウォーズでは、戦闘機の持つ強力な空対空ミサイルも、対地攻撃用の貧弱な機銃も弾数は一緒くたの扱いだったので、歩兵など安価なユニットで攻撃して弾数を減らす戦法が有効であった。
  • ファミコン版では工場からの収入がなかったが、本作では都市同様1,000の収入が得られる。
  • 新規ユニットも登場。
    • 砲台
      • 射程距離6と自走砲を上回るが1歩しか動けないので、拠点の防衛専用となる。
    • 対空戦車
      • この名前での登場は初だが、中身は隣接した空軍部隊への直接攻撃なので、実質ファミコン版の「高射砲」と同じ。
    • 戦車Z(対戦プレー・特定マップ専用)
      • 戦車Aを上回る攻撃力を持ち、直接攻撃だけでなく最大3マスまでながら遠距離攻撃もできる。
    • ロケットランチャー
      • 自走砲Bの対兵士特化仕様。地形効果の高い山中の歩兵や戦闘工兵にも有効。
    • 装甲車
      • ファミコン版の「装甲輸送車」と同じ位置付け。ファミコン版のそれとの違いは、移動力6フルに使えば山に入ることができる。
    • 戦闘ヘリ
      • 爆撃機ほどではないが対地攻撃力が高い。空中に対しては輸送ヘリと同じ機銃で攻撃するので、輸送ヘリ以外にはそれほど強くはない。
    • スーパーミサイル(対戦プレー・特定マップ専用)
      • 攻撃を選ぶと爆発して巨大なきのこ雲が上がり3マス以内のユニットを全滅させる。敵だけでなく自軍も含まれるので注意が必要。イメージ的には完全に核ミサイル。
    • レーダー輸送機(敵索モード専用)
      • 攻撃能力はないが、道路上ならば陸上部隊を2部隊まで搭載降車でき移動力も高い。
    • 空母
      • 航空部隊を2隊まで輸送でき、飛行ユニットに対しては射程6マス以内で強力な攻撃ができる。
    • 輸送船
      • ファミコン版の「揚陸艦」にあたるもの。陸上部隊を2隊まで運ぶことができる。
    • 潜水艦
      • 艦船にしか攻撃できないが、潜水艦と戦艦からしか攻撃を受けず、他の艦には一方的に攻撃できる。最大射程は3だが直接攻撃もできる。
  • 既存兵器も一部仕様が変更。
    • 射程距離6の兵器が登場。ただしファミコン版から続投で登場した戦艦や、新登場の砲台、空母など、これを持っているのは一握り。
    • 輸送ヘリが2部隊搭載可能になった。
    • 補給輸送車が砲台を搭載可能になり、戦闘機Bにも補給可能になった。※余談だがアニメーションオン時だとVTOL戦闘機(垂直離着陸機)だと確認できる。

評価点

  • 大幅に増した兵器ラインナップ。
    • しかもいずれも独特の強みを持ったものが圧倒的に多いので、ファミコン版とは戦略の組み方もまるで変わってくる。
    • 特に個性を放っているのが「スーパーミサイル」でコストは77000と高いが、3マス以内を問答無用で全滅させる超強力なものなので、切り札として持っておくと戦況の思わぬ逆転に役立つ。
    • また、「潜水艦」も相手の港につける所謂「潜水艦ブッ刺し」により、制海権を完全に握ることができることもあって、マップによっては戦略のカギになる。これは『スーパーファミコンウォーズ』にも引き継がれる。
    • 陸用兵器で唯一射程6を持っている新兵器「砲台」は、それまでの「自走砲」とは一線を隔す、拠点防衛特化兵器としての存在感を放っている。
  • ファミコン版から引き続き登場した兵器も使い方が多様化した。
    • 遠距離攻撃としてはやや格が落ちたように思える「自走砲」だが機動性という有利点があるため、それを活かして「砲台」とは違った活躍ができる。
    • 「補給車」は上述の「砲台」を唯一輸送できるという新しい用途ができ、その存在価値を上げている。
    • ファミコン版では戦闘機Bは完全に戦闘機Aの劣化版だったが、本作では垂直離着陸機のVTOL機という設定になり、地上ユニットの補給車からも弾丸・燃料の補給を利用できるようになった。これにより小回りの利いた使い方などで戦闘機Aに対するアドバンテージも出てきた。
  • マップは更に豊富なラインナップに。
    • しかも、それをクリアしても更なるラインナップが登場するなど、やりごたえも抜群。
  • 工場からもちゃんと収入が得られるようになった。
  • 新機能は非常に便利。
    • 特にセレクトでの全体マップは、ゲームボーイ自体がハードの都合上、視認できる範囲が狭いので広範囲を見て戦略を考えるのに不便なだけに、かゆいところにしっかり手が届いている。また、アニメーションオフ時でも都市等の占領ゲージが視認可能になり、マップ画面でもカーソルを合わせれば常時確認できるようになった。
  • 最初から資金を持っているマップが増えた。
    • ファミコン版ではタマタマジマのみだっただけに、初期戦力を充実できるマップが増えたことは、よりエキサイティングな戦闘を早いタイミングから行える。
  • セーブデータが3枠になったことで、友達との対戦の中断と、1Pでのステージクリアを両立が可能に。
    • またファミコン版である意味最大の敵だった「セーブデータの消えやすさ」が克服されている。
  • 通信ケーブルがなくても1台の本体使い回しで対戦プレーができる。
    • 子供にとっては「お互いが同じカートリッジを持ち、少なくともどちらかが通信ケーブルを持っている」となると限られるのでファミコン同様の形で対戦できることは、その対人戦の機会を増やせている。
      • 当時は発売されていないので後の話になるが『スーパーゲームボーイ』(1994年6月14日発売)で対戦ができる数少ないソフトである。

賛否両論点

  • 1P用マップと2Pマップ用が分かれている。
    • 1P用で魅力を感じたマップで対戦ができないのは、その楽しみ方を狭めている。
    • 片や2Pマップは条件が公平なものばかりで、いかにもそれに特化した内容になっている。
      • 公平なら結構と思えるが、裏を返せばそのせいでのっぺりしすぎているマイナス要素にも感じ取れる。
    • プラス面としては他に2Pマップはすべてで戦車Zやスーパーミサイルなどが使えるので性能の把握に役立つ。
  • 占領システムの変更。
    • 自分で占領するとなると、後続部隊に任せてグングン進軍して先行占領できるので、その勢力拡大のスピードが速くなる。
    • その反面、自身の支配下都市を占領されると、敵部隊を全滅させただけでは耐久度は戻らないので、こちらも兵士系でそれを回復させなければならないことを考えると少々煩わしく感じる。
    • また、首都の耐久度が都市や空港などに比べて倍になったので「首都占領勝利」の価値が相対的に下がっている。元々部隊を全滅させた方が手っ取り早かったこともあって、より一層全滅狙い偏重傾向を助長している。

問題点

  • 部隊数上限が40に減少。
    • ファミコンでは48だったが、それが減ってしまったことで広いマップでは不便になった。
    • 特に本作はファミコン版よりも個性ある兵器が増えたこともあって、保有枠はもっとほしい所ではある。
    • ファミコン版から続投のタマタマジマなどでは、その不便さを感じやすい。
  • BGMの出来はかなり劣化している。
    • これはファミコン版が良すぎたと言うべきかもしれないが、曲調が少々単調になっているため序盤の間延びを助長している一面がある。
    • 占領のBGMは、のんびりした雰囲気を感じてしまう。
    • ただSEの方は凝った作りで中々の完成度であった。前作は全部一緒だったユニットの移動時のSEも、部隊ユニット事にそれぞれ異なるなど前作より進化している。
  • CPUの思考時間はやっぱり長い。
    • これはファミコン版よりも長くなっている。
      • 中盤の混戦時など、部隊数が多く酷い時は1ターンで軽く1時間を超える。アダプター直でないと、たった2ターンで電池切れなんてことも。
      • また、敵索モード時は通常よりも処理が重なるためか、更にゲームの進行スピードは遅くなる。具体的にはユニット選択時にウインドウが開くまでに少し間が空くようになる。
  • 通信ケーブルに非対応。
    • 評価点とは逆に通信ケーブルを使わず1台の本体で対戦するということは敵索モードではお互いの手をカンニングできてしまうので、そのゲーム性を殺している。
      • 勿論、片方が行動している間は本体を預けっぱなしにしておけば、敵索モードの醍醐味は消えないが、戦闘時にその結果を見て盛り上がることができにくくなる。
    • 本体1つを回しての対戦もできて更に通信ケーブルにも対応していれば、どちらにも対応できるいいとこ取りになったので勿体なく感じられる。

総評

演出面では頑張ってはいるもののハード性能だけにその貧弱さは否めずBGMに関しては劣化したと認めざるを得ないが、ゲームシステムは順当にグレードアップしている。
ユニットのバリエーションが増え、いずれも個性的なものばかり。このようなシミュレーションの醍醐味を高める敵索モードの登場、更に既存兵器の性能もいろいろと様変わりしたことで、更なる戦略の幅が広くなった。
多少の不便さはあれども、ゲーム自体はファミコン版のウリだった「のめり込める」が進化し「かなりスゴイ」ものになった。


その後の展開

  • 続編にあたる『ゲームボーイウォーズTURBO』が1997年6月27日にハドソンから発売された。製作もハドソン自身が行っている。
    • 発売・開発元こそ違うものの本作の流れを受け継いだ続編である。以後『ゲームボーイウォーズ』はハドソンの発売となる。
    • 基本的にはアレンジ版で「TURBO」とあるように、主にCPU側の思考時間と戦闘アニメーションの高速化により、スピーディーなゲーム性を実現している*1。CPU側の思考パターンにも改良が加えられ、ある程度積極的に攻めるようになっている。新たなマップも程々に高めの難易度で、CPUの強化と相まって、新規プレーヤーにも、前歴あるプレーヤーにも楽しめる仕上がりとなった。
    • 一方で、対人による対戦プレイはできなくなったが、各ターンの初めに自動的に戦況を記録するオートセーブ機能が付いた。通常セーブの「タタカイノキロク」とは別枠で「キロクノフッカツ」という項目が追加されている。
    • パッケージは、当時ハドソンが展開していた「ゲーム缶」シリーズとなっている。
    • 説明書には、ゲームの概略についての漫画が描かれているが、その中には「歩兵には装甲車、装甲車には戦車で対抗せよ!」という基本情報もあれば、「敵の首都に近づいたら、敵の工場や首都に自軍ユニットを居座らせてしまえ! そうすれば、敵は生産不能になって勝ったも当然!」という重要事項についても触れられている。
  • 任天堂自身の名義で発売された続編としてはスーパーファミコンで『スーパーファミコンウォーズ』として1998年5月1日発売。ただしニンテンドウパワーによる書換専用。
    • こちらは、本作よりも『ファミコンウォーズ』からの流れを汲んだものになっている。新規マップも本作からの流用は1つもない。
    • この当時、一般ゲームユーザーのメインハードはプレイステーションとなっていたためスーパーファミコンはハードそのものが斜陽だった上に、ニンテンドウパワーはサービスの利用形態そのものが煩わしい手順を踏む煩雑さから利用者は少なく、後にバーチャルコンソールなどで配信されるまで存在自体を知らなかったという人も少なくない。

余談

  • 発売が5月21日なのに本作のクレジットは前年の「1990 NINTENDO」となっている。
    • 元々1990年内発売を予定していたのが遅れてクレジットが持ち越されたものであり、このようなクレジットが前年表記というケースは他メーカーでも多々あるが大体は1月発売で2月発売でも少ないぐらいなのに、6月近くにもなってというのはさすがに他に例がない。
    • もっともこれは当時のイラク情勢*2のためこうなったのであり、2020年末から2023年初め頃まで深刻だった「極度の半導体不足による発売遅れ*3」とは事情が全く異なる。
      • 実際4月発売のスーパーファミコンソフト『シムシティー』のクレジットは1991年になっている。
  • 「ゲームのCMなのにゲーム画面一切なし」に加えて「キャッチーでノリが良く音感のいいフレーズ」で好評を博したCMは、その良さが踏襲されている。
    • 兵士が男性から女性になりファミコンでは「かあちゃんたちには内緒だぞ」だったのが「父ちゃん一緒に遊びましょ」と、逆に転換されている。
    • ファミコン版の「のめり込める!」が「かなりスゴイ」に代わったのだが、これはこちらの方がインパクトが強かったか、本作のほうが3年も後なので記憶が書き換えられたかで、ネットが普及せず動画サイトもなかった長い時代を経てファミコンウォーズの方も「かなりスゴイ」と勘違いした者も多い。*4
+ CM「ファミコンウォーズを知ってるかい」


最終更新:2024年02月12日 15:01

*1 説明書にも「ゲームボーイウォーズの思考エンジンを改良して、数倍に高速化してサクサクとプレーできる」という事が書かれている。実際には約5倍速。

*2 1990年8月にイラクがクウェートに侵攻し1991年1月に国連による軍事制裁からイラク軍との戦争「湾岸戦争」が勃発。最終的に情勢が落ち着いたのは4月だった。

*3 PS5も半導体不足により、発売開始から2023年1月頃まで抽選販売が続いた。

*4 実際放送されていたCMを録画していたビデオや、そのCMが含まれる「GTV」「ファミマガVIDEO」等を持っていない者にとっては、ネットが普及し動画サイトが誕生した2005年頃まで見る術がなかった。