SHADOW TOWER
【しゃどうたわー】
ジャンル
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3DリアルタイムRPG
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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フロム・ソフトウェア
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発売日
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1998年6月25日
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定価
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5,800円(税別)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) ※ゲームアーカイブスで付加
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配信
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ゲームアーカイブス 2007年9月27日/628円(税10%)
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プレイ人数
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1人(VSモードのみ2人)
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セーブデータ
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2ブロック(1枚のメモリーカードに5つまで)
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備考
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アナログコントローラー対応(振動のみ)
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判定
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スルメゲー
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概要
『KING'S FIELD』(以下、『キングス』)3部作完結の2年後に発売された、同シリーズのシステムを流用して作られた新規シリーズの第1作。
雰囲気はホラーで閉塞感の強い『初代キングス』寄りになった他、更に尖ったゲーム性となっている。
操作系統・多くを語らないフロム節などは『キングス』と同様なので、当該記事を参照のこと。
ストーリー
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説明書2~4ページから引用。長いので格納。
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PROLOGUE
大陸イクリプス。ここにはゼプターと呼ばれる聖地がある。 その地には封印の塔があり、周辺諸国の王達は旧くからの言い伝えを守り、その塔を護衛していた。 あの災いが再び起こらぬようにという祈りを込めて。
それは旧い時代の出来事であった。 遥か昔、この大陸の名前の由来である王国イクリプスに悲劇が訪れた。
単眼の王冠。 それは巨大な穴を残し、一夜にして王国イクリプスを消し去った忌まわしき瞳。 隆盛を誇っていた王を破滅へと導いたその恐るべき力。
国王は満足げな顔をし、常にそれを身につけていた。 「この冠こそが、予に力を与え、覇者とならしめたのよ。」王の口癖であった。
かつて怪しい光を放っていたその単眼は閉じられ、今は塔の中で静かに封印されている。 あたかも永遠の眠りに就いたかのようであった。
古の悲劇がいかなる物であったのか、今となっては知る術はない。 聖地ゼプター、平和な時は永遠に続いていくかのごとく思われた。 まるで呪われた土地である事など忘れられたかのように…
STORY
最近大陸には『傭兵』と呼ばれる者がその数を増やしていた。 国には所属せず己の利益のためだけに行動し、己の力のみで道を切り開く。
その中の一人であるルース・ハーディは、新たな仕事を探して、旅に出ていた。 各国の中継所であるゼプターの町には彼が駆け出しであった頃に世話になった宿屋のばあさんがいた。 「久々にばあさんの所で飯でも食わしてもらうか…」 ルースの頭の中には厳しく、やさしいあの笑顔が浮かんでいた。 それは両親を知らぬ彼が初めて感じた暖かみであり、いつの日も彼の支えとなっていた。
しかし夕闇迫る森を抜けたルースの目に飛び込んできたのはただの瓦礫の山だった。 近くには人の気配すらしない。はっと気づいて空を見上げた彼の目に、いつも偉そうに立っていた塔の姿は写らなかった。 そこにはすべてのものがそこに吸い込まれたかのようになぎ倒され、塔の根本だけが寂しげに残っているだけであった。
呆然と立ち尽くすルースは人の気配を感じ振り向いた。 「誰だ!」 そこに立っていたのはローブ姿の一人の老人であった。 「私はこの塔を代々守ることを宿命付けられた僧侶。そなた、その長剣から察するに マルスのウェディン爵であろう。この事態を察するとはさすがに素早い事じゃの。」 ルースは人違いだと言おうとしたが、老人は言葉を続けた。 「ここにいた者達は魂を喰われてしまった。この塔の下にある魔の世界の者達にな。 魂を取り戻せれば救う事もできるのだが、儂に魔の者と対峙するほどの力はない… 何人かが降りていったが、おそらく生きては帰るまい。人が造った武器など奴等には役には立たぬのだから…。」 「しかしもう時間がない。あと幾日かもすれば塔の下にある闇への扉は閉ざされ、魂を喰われた者が救われることはない。 今はもうそなたに全てを託すしか手だてがないのだ。ここで貴公が行かぬと言うならばそれは仕方ない事なのだが…。」
「どうすれば魂を救える?」 ルースの問いかけに老人は答えた。
「闇の者に喰われた魂は、その者の力としてつながれている。それを解き放つには魂を縛っている闇の者を倒せばよい。 そして何より重要なのは解き放った魂を元のさやに収めるための鍵、単眼の王冠を見つける事。そうすれば自然と導かれるであろう。」 「これは我らの一族に代々伝わる宝剣。闇の者の剣だというが…本当の所はわからぬ。 しかしこの剣だけが希望となることだけは間違いない。持って行くがよい。」 そう言うと老人は古びた短剣を差し出した。
「こんな短剣一つで穴に降りろだと?」 ルースは頼りなさげな武器を見つめ、呟いた。 どうやら闇の者と言うのは御伽噺に聞く魔物と言うやつらしい。しかも人が造った武具では太刀打ちできぬほどの…。 この穴に入って自分は果たして帰ってこられるのだろうか?人違いだと言ってさっさと逃げてしまうのが得策ではないのか?
だがその時に浮かんだのは、ばあさんの笑顔と暖かい食事であった。 「仕方ない。」 ルースは小さくため息をつくと、塔の地下部分へと降りていった。
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『キングス』シリーズからの変更点・評価点
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「盾を構える」アクションが追加。
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『キングス』でも装備品として盾が存在したが、防御パラメータに影響するのみで敵の攻撃は「回避or被弾」であった。能動的にダメージを軽減させる行動が取れるようになりアクション性が増した。
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飛び降りた高さに応じた落下ダメージが無くなった。(ただし一定以上の高所から飛び降りると残りHPに関係なく即死)
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主人公には「装備できる限界総重量」の概念があり、超過重量に応じたHPのスリップダメージが発生する。
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レベルの概念が無い。その代わり敵を倒すと、敵の種類毎に決められたパラメータがUPし主人公が即時強化される。
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主人公の強さは、このパラメータと装備品に強く依存する。
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この自キャラパラメーターは「ソウルポット」というアイテムを使用しそれに設定された数値を自由に割り振る事でも強化される。
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装備品に「耐久度」の概念が追加。
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武器なら攻撃、防具なら被弾の度に耐久度が低下し、ゼロになると壊れてしまい装備不可能となってしまう。ダンジョン内に点在する修理屋に持ち込むと、耐久度を回復してくれる。壊れると費用が2倍になるので、壊れる前に直してもらうのがセオリー。
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修理費用は「主人公のHP」である。有用な装備品ほど費用も高い。
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修理屋の代わりにその場で修理する役目を果たすアイテムもあるが、かなり貴重。また、壊れたものは修理屋でないと直せない。
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本作は敵の持つ属性と異なる属性で攻撃すると与ダメージが増加する(プレイヤーの被ダメージも同様)。一度遭遇した敵はメニューから「クリーチャーブック」で属性や能力を閲覧できるので、対峙する敵によって適切な武器・防具を選択することが耐久度の浪費を抑えるために重要である。
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全てが有限の世界。
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敵はリスポーンせず有限なので、マラソンにより好きなだけアイテムやパラメータを稼ぐといった行為が不可能。
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HP/MPを回復する手段は以下の通り。本作に回復魔法は存在しない。
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回復アイテムを拾う: 落ちているアイテムも、ドロップする敵も有限。
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回復アイテムをショップで買う: クーン(本作の通貨)が有限であり、必然的に買えるアイテム数も有限。(ショップの在庫も有限)
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装備品→回復アイテムに交換: 点在する交換屋で可能だが、交換可能な装備品が有限。
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自動回復効果を持つ装備を身に着ける: 入手は中盤以降。また回復できるのはHP最大値の半分まで。
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HP回復ポイント: 中盤の1か所のみ。起動にはサブイベントをこなす必要がある。
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主人公強化の為にはいかに有限の敵を探し出して倒すかが重要だが、逆に(特に序盤は)割に合わない敵をスルーする事も必要。
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攻略の自由度が高い。
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本作のダンジョンはタイトルにもなっている「暗黒塔」を中心として、それを降りる螺旋階段に6つのエリアが接続されているという構造。攻略の大まかな流れとしては「6エリアの各ボスを撃破→ラスボス」だが、各ボスの攻略順序は決まっていない。炎による継続ダメージや強敵によって一見通れないように思えても、プレイヤースキルと装備次第でシークエンスブレイクも可能。
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「重量超過によるスリップダメージ以上の自動回復を備えた重装備の脳筋」「弓と魔法に全振りした遠距離攻撃キャラ」など、主人公の育成にプレイヤーの個性が反映できるのも嬉しい。
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『キングス』から向上した3Dグラフィック。
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ダンジョンの床・壁や敵のテクスチャの質感は滑らかで、PS初期に発売されたシリーズゆえに粗削りな面が見られた『キングス』からの進歩が見られる。
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敵の造形はオーソドックスなスケルトンや鎧戦士といったものから言葉では表現し難い奇怪なものまで多種多様。本作の大きな個性の一つになっている。
賛否両論点
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中盤から急にヌルゲー気味になるゲームバランス。
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「HPと耐久度へのWダメージとなるので敵との交戦は避けたいが、かといって敵を倒さないと主人公が強くならない」というゲームデザインと、「敵の死角に回り込んでヒット&アウェイ」という『キングス』から続く立ち回りがうまく噛み合っている。またHP回復アイテムは最大値によらず全回復という効果なので、修理費用の事も考えればHP最大値に影響するパラメータ成長を優先しながらの慎重な探索となる。総じて序盤は「遭遇した敵を片っ端から倒していたら、武器が壊れて詰み」「HPがジリ貧で修理費用を確保できず詰み」などの死に覚えを経てルート構築することになる。これが装備品維持の為にHPを犠牲にするというヒリヒリした緊張感、修理屋やショップに辿り着いた時の安堵感などプレイヤーにメリハリを持たせることに成功している。
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しかし中盤のHP回復ポイントを使えるようになった途端、そこを拠点に「近場の敵をチマチマ倒して主人公を成長させ、最寄りの修理屋で装備を直したら、払ったHPを回復して…」という死ににくいサイクルが出来上がる。更にHP/MP自動回復効果を持つ装備を入手すると死亡リスクが一気に下がり、ゴリ押し上等の大味なプレイになりがち。
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このように、全てが有限の世界の筈だったのが急にHP無限供給というバランス変化によって難易度が大幅低下する。ただし、これはゲームを進めて慣れてくるとリソースも豊富になって半ば死に要素となるサバイバル要素を、いっその事取っ払う処置とも言える。この処置が無ければ中・終盤でも詰みが発生し、マゾゲー・無理ゲー扱いとなるのが必至であっただろう。
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本作では序盤の緊張感を維持する「修理屋・ショップ・交換屋禁止」「敵のドロップアイテム禁止、拾っていいのは最初から落ちているものだけ」「遠距離攻撃禁止」「裸」など様々な縛りプレイも可能であり、自分で遊び方を見つけられるプレイヤーにはリプレイ性が高いシステムと言える。
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地図に該当するアイテムが無く、自力でのダンジョンの構造把握が必須。
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自力での把握が難しければ攻略本や攻略サイトの外部情報に頼るしかない。
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この突き放しぶりもゲームの個性との1つともいえる。
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ゲーム本編でBGMが流れない。
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『キングス』では全体的に重々しいものの、メロディアスなBGMが雰囲気づくりに一役買っていたが、本作ではムービーシーンや後述のVSモードを除きBGMが一切流れない。
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これを物足りないと感じるプレイヤーがいる一方、BGMなしで歩行音や武器を振る音、敵の鳴き声などの効果音のみで構成された本作のサウンド面を個性として受け入れるプレイヤーも一定数はいると思われる。
問題点
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弓攻撃が強すぎる。
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前述の通り被弾・防御ではHPと耐久度へのWダメージとなる本作においては、遠距離から一方的に攻撃できる弓攻撃が重宝する。更に自分中心に範囲攻撃を行うボスが多いのも拍車をかける。「両手装備品なので盾が構えられない」「使用回数=耐久度」というデメリットを感じることも無い。
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弓の攻撃力は他の近接武器より明らかに弱く調整されているのだが、バグなのか「右手に魔法を装備すると、弓攻撃の威力が異様に高くなる」という現象もあり、ほぼ全てのプレイヤーが知らずともこの恩恵に与っていたものと思われる。
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本作には多種多様な近接武器が登場するのだが、序盤で入手できる弓の有用性に気付けばほぼ全てが交換屋行きの産廃扱いである。せいぜい弓の修理費用を気にして倒しやすい敵に使い捨て感覚で出番がある程度。
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「盾を構える」アクションで視界が大きく遮られる。
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盾を構える間は盾の造形に応じたグラフィックが画面前面に大きく表示されてしまう。
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敵との間合いやモーションの見切りが重要なゲームである以上、視界に悪影響を及ぼす仕様は致命的なため、このアクション自体使わなかったプレイヤーもいたと思われる。盾のグラフィックを半透明にするなど改善できる余地はあったはずが、リアル志向が優先されたのだろうか…。ただし、視界に悪影響が無ければ盾を常時構えて移動するのが当たり前になり、せっかくのアクション要素が無意味になってしまうことを防ぐ処置とも考えられる。
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撃破率100%、アイテムコンプリートが困難。
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敵は主人公がエリアに入ると必ず登場するわけではなく、ランダムで登場する敵もいる。また一度に広大なエリアをロードする影響もあるのか、エリア内に同時に存在できる敵の数に制限がある。これらの要素を理解していないと、目当ての敵と全く遭遇出来ないという事態も起こり得る。どうでもいい敵の数をある程度減らすという作業も必要。
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2周目は所謂「つよくてニューゲーム」で開始されるが、倒した敵は復活しない。残る目的は倒していない雑魚敵の討伐と、拾い残したアイテムだけ。よってアイテムコンプリートを目指すなら「ランダムドロップする敵は現れるまで(エリア入り直しorリセットで)粘り、更に目当てのアイテムを落とすまでリセットを繰り返す」という途方もない修行となる。勿論、どの敵が何を落とすかは外部情報頼りである。故に撃破率100%はまだしも、アイテムコンプリートは殆どのプレイヤーが早々に見切りをつけた。
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せめて「倒してもパラメータが上がるのは初回だけだが、アイテムドロップするまでエリアに入り直すと復活する」といった仕様であれば快適さも違っただろう。
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敵の麻痺攻撃が強力で、麻痺状態を直すアイテムを持っていないとハメ殺されることもしばしば。
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その他、細かい点。
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知っていれば攻略が少し楽になる程度のものだが、「敵を一撃で倒せば武器の耐久度は下がらない」「例外として、指輪だけは壊れていても修理アイテムで修理可能」等、取扱説明書にも書かれていない仕様がある。
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入手可能な265個の装備品のうち、獲得した装備品の累計がメニューから見られるのだが、その数字が1バイト管理らしく全ての装備品を集めると9/265と表示される。
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やり込みの末に表示されるのがコレでは興醒めであろう。1バイトさえ容量が惜しいファミコン初期でもあるまいし、単なるミスなのか、256個以上集められるプレイヤーはいないだろうと高を括っていたのか…
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誰得おまけモード「クリーチャーVS」。
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これは他のプレイヤーとメモリーカードを持ち寄り、所持アイテムを賭けて特定の敵キャラ同士を戦わせるモードである。使う敵キャラを選択後、対戦相手の所持アイテムから欲しいアイテムを選択すると3D対戦格闘ゲーム風のサイドビュー画面となり、本編と同じ操作で移動・攻撃・防御・キャラによっては魔法を駆使して勝利すれば指定したアイテムがメモリーカード間で移動するという仕組み。
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「せっかくこれだけの敵キャラをモーションまで拘って作ったのだから…」という制作側の遊び心なのだろうが、他に本編でやるべき事があった筈である。前述の通りアイテムコンプリートが困難なことに対する救済措置の意味合いもあっただろうが、賭けるアイテムを対戦相手が選ぶという仕様では、本当にレアなアイテムを所持したデータを馬鹿正直に持ち寄るプレイヤーはいないだろう。
そもそも、これほど人を選ぶゲームを遊んでいる知り合いが近所にいるのかという問題がある。
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ちなみに本作の装備品は全て「1点もの」であり、一度入手するとそのセーブデータ内では再度出現しない仕様である。例えば「道中に落ちている」「敵がドロップする」いずれかで入手できるアイテムの場合、敵からのドロップで入手後に落ちているはずの場所に行くと消失している。交換屋やクリーチャーVSで手放しても状況は変わらない。
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総評
開発側が「『キングス』でも物足りないプレイヤーに贈る挑戦状」とばかりに尖った方向性を追究したのか定かではないが、
同シリーズ経験者でも戸惑うような仕様と難易度を前面に押し出した作品である。
慣れるまでの序盤が非常に厳しく、プレイに余裕が出てくる中盤までにプレイヤーを篩にかけるゲームバランスも同シリーズ以上。
いかにもハクスラ&アイテム収集を促す仕様でありながら、それを妨げるような要素が目につくが、
独特のリソース管理がもたらす緊張感と達成感は、アクションRPGとして他に類を見ないものがある。
『キングス』の死んで覚える高難易度と陰鬱な世界観に免疫があるなら、手に取ってみる価値はあるだろう。
「パラメータを割り振る『ソウル』ポイント」「HP最大値の半分で行動するのが当たり前になる」「装備重量超過によるペナルティ」
「豊富なパラメータや装備品による自由なキャラ育成」等、後のDARK SOULSシリーズに見られる要素の幾つかは本作が初出である。
同シリーズの原点の1つとしてプレイするのも悪くない。
余談
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2003年10月23日に続編としてプレイステーション2用ソフト『SHADOW TOWER ABYSS』が発売された。
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グラフィックが大幅に強化された他、「右スティックによる縦斬り・横斬り・突き攻撃の直感的な使い分けと、それを利用した敵の部位破壊」「近接武器・魔法に次ぐ第3の攻撃として銃が登場」等の新要素も追加。回復アイテムや弾薬のドロップ率が高いなど、前作と比較してかなりマイルドな難易度となっている。
最終更新:2024年06月25日 12:39