F-ZERO FOR GAMEBOY ADVANCE
【えふぜろ ふぉー げーむぼーいあどばんす】
ジャンル
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近未来SFレース
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 高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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任天堂
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開発元
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エヌディーキューブ
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発売日
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2001年3月21日
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定価
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4,800円(税別)
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プレイ人数
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【GBA】1~4人 【3DS/WiiU】1人
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セーブデータ
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3個(バッテリーバックアップ)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) ※バーチャルコンソール版より付加
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周辺機器
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GBA専用通信ケーブル対応
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配信
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【3DS】アンバサダー・プログラム 【WiiU】バーチャルコンソール:2014年4月3日/702円
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判定
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良作
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ポイント
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GBAのロンチタイトルの一つ ブルーファルコンが登場しない数少ない作品 完成度は高いがマイナー
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F-ZEROシリーズリンク
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概要
GBAのロンチタイトルの一つ。
過去のレーサーの活躍から25年が経過した設定になっているため、シリーズで唯一キャプテン・ファルコンが登場しない作品となっている。
しかし、原点回帰を狙ったコース設計やルール構築などから、今作もファンの期待を裏切らないゲームに仕上がった。
特徴及び評価点
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ゲームシステムはスーパーファミコン版『F-ZERO』と同一。更に具体的に説明すると『F-ZERO』のコースとマシンをリニューアルした作品である。
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マシンは隠し含めて10台、コースは4カップ20コース+αとボリュームアップしている。爽快なスピード感、手に汗握るタイムアタックの熱さはSFC版譲り。
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マシンのスペックもかなり細かく設定されている。最高速度やブースト速度、マシンの耐久力、ブースト持続時間、コーナリング性能およびバランス、加速性能のグラフまであるので一目見るだけでマシンのおおよその傾向がわかる。
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ただしブースト終了時の減速速度は表示されないので、加速状態が維持しやすいかどうかは使ってみないとわからない。
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ロケットスタートが採用され、スタート前にアクセルを踏み、エンジンの最大出力とスタートのタイミングが合うと、ロケットスタートが成功する。
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マシンの加速性能によってもアクセルを踏むタイミングも異なり、またスタートとのタイミングさえ合えばアクセルを離して途中で調整する事も可能。
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アクセルを踏むタイミングが早すぎると、ロケットスタート同様の出だしで発進するが、その直後に大幅に減速してしまう。
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SFC版では他のマシンに後ろから追突してもらうしかなく、N64版に至っては加速重視にすれば素早いスタートは可能だが、ロケットスタートではない。正式なロケットスタートが採用されたのは本作からである。
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世界観はSFC版・Xから一新され、時系列としてはキャプテン・ファルコンの時代よりも未来にあたる。
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ビッグブルー・ポートタウンといったお馴染みの地名は出ず、ミュートシティは「全覇権を別の都市に奪われてしまった」というかわいそうな設定に(おまけにゲーム中では未登場)。
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SFC版ベースのためか基本的にパイロットは姿を見せず(名前も出ない)、スタッフロール後に公式イラストが表示されるのみ。
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BGMは『F-ZERO X』と同じハードロック系。
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GBA音源を生かしたギターの音色や、疾走感のある熱い曲調は他のシリーズ作同様評価が高い。
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SFC版と比較しての本作からの新要素としては、通信機能を生かした4人までの対戦プレイがある。
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いわゆる「ゲームシェアリング」として1カートリッジのみを使っての対戦も可能。
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ある条件を満たすとチャンピオンシップというモードが出現。「専用のコースでタイムアタックを行なう」というもので、コースレコードを更新した場合、そのリプレイが保存される。
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専用のコースはトラップ盛りだくさんで、難易度が非常に高いがうまく各セクションをクリアしていくことで高いスピード感の味わえるレイアウトであり完成度は高く、地雷を踏むことによる加速や合力走行と呼ばれるテクニックなど、SFC版のミュートシティIを彷彿とさせる攻略が行われた。
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任天堂公式タイムアタック大会も開催され、高い盛り上がりを見せた。公式サイトにはチャンピオンシップの攻略資料のアーカイブが残っている。
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SFCと同じく都市や大地の上空にコースが建設されている設定だが、都市部の背景がコースと全く一緒だったSFC版とは異なり遠近感が生まれるように描写されるようになった。特にコーナリング時は必見。
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プレイヤー以外のマシンもコースアウトするようになり、邪魔なライバルや周回遅れを意図的にコースアウトさせる事が出来るようになった。
賛否両論点
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『F-ZERO』と付いていながらいつものブルーファルコンやファイヤースティングレーといったマシン、ミュートシティやビッグブルーといったお馴染みのコースが何一つ登場しないことに嫌悪感を示し、「『F-ZERO』として楽しめない」という人もいる。
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一応『F-ZERO』の象徴と言えるキャプテン・ファルコンとブルーファルコンについては「ファルコンMk-II」なるブルーファルコンに似た青いマシンが登場する。しかしパイロットの設定は日系の少年(青年?)であり、キャプテン・ファルコンとの関係は何なのかは一切不明。
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テクニック「合力走法」
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SFC版以来LRボタンで水平移動(スライド)するのがF-ZEROシリーズのお約束だが、水平移動すると斜めに移動するため正面方向への移動速度は低下する、というのが基本であった。
しかし、今作では水平移動しても正面方向の速度が一切減速しないという仕様になっている。そのため、単なるストレートでも機体を斜めに向けて水平移動しながら進むほうが僅かに速くなる、という現象が発生する。早期からこのテクニックは発見されておりプレイヤー間で「合力走法」と名付けられ、後にチャンピオンシップモード公式大会の攻略記事において公式にも認知されるに至った。
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関連するテクニックとして、あえて機体を横滑りさせてカーブとは逆方向に水平移動させながら曲がる「ドリフトターン」などのテクニックが存在する。
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基本的にテクニックの1つなのだが、真っ直ぐ進むより斜めに進んだほうが速いというのはレースゲームとしてはかなり奇妙な仕様。
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仕様なのか不具合なのか判断に困るが、GBAシリーズは一貫してこの仕様で統一されていることや明らかに機体を横滑りさせやすい機体が存在することから恐らくは意図的なもの。
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今作最速機体であるジェットバーミリオンは特にこの合力走法との相性が良く、その低すぎるカーブ性能をドリフトターンでカバーしながら走ることが可能となっている。
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そもそも公式ページに「ジェットバーミリオンのスライド移動力は128km」と明記されており、他車と比べて明らかに速く、また、根本的にドリフト(もしくは苦し紛れのブレーキ)を使わない限り多くのコーナーでクラッシュするというイロモノ機体の為、どう考えても意図的な仕様。
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つまり、一見SFC版F-ZEROに似ているが、その実態はドリフト重視の作風に生まれ変わった全くの別物であり、その特徴はGBA版3作全てに当てはまっている。
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なお、ドリフトする方法はゲーム中は一切説明されない。また仕様上LRボタンのスライドを酷使することになるので、ボタンの初期配置の「LR同時押しでブースト」が非常に暴発しやすいものとなっている。幸いキーコンフィグはあるので変えた方が無難。
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『ブラストターン』の存在
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コーナリング中、横滑りが発生している時にアクセルを入れ直すと滑りがリセットされるという仕様。
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これの存在により、ドリフトを使わなくても十分曲がれる、コーナリング性能に優れた機体は「アクセルボタンを連打しているだけでどんなコーナーも簡単に曲がれるレースゲーム」状態。
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初代にも似た仕様はあり、グリップ力の低いマシンはそれを使わなければまともに走れなかったが、あちらでは高速になるほどライン取りが重要になっていくシステムやゲームバランスが既に出来ており、アクセルボタンを連打していれば安心、などという事は無かった。
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あとはブーストを使うタイミングを間違えなければいいだけだが、コーナリング性能の高いマシンで上述のドリフトを使えばブーストのタイミングを間違えても幾らでもフォロー可能なバランスに仕上がっている。
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苛烈と言われるグランプリ・マスタークラスの他車からの追突も、そもそものゲームバランスがこれなので見極めればそこまで鬼畜なバランスというわけでもなくなっている。
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「地雷を踏むと一時的に通常最高速を大きく超える仕様」と「通常最高速を超えた時、通常最高速までの減速が遅いマシン」のコンボ
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後者は後述の最速マシンが該当する為、これの存在により最速を目指す場合は地雷踏みが必要不可欠となっている。
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地雷を踏めば当然横に吹き飛ばされるので、ブラスト(再噴射)で横滑りを瞬時にリセットしなくてはならない。
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右から当たったか左から当たったかでも当然、吹っ飛ぶ方向は違う。「地雷との闘い」が、このレースゲームの肝。
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更に他車からの追突やグランプリ中にランダムに設置される爆弾でも通常最高速を超える為、このゲームのレコードは運に大きく委ねられている。
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その為、TAS動画では琥珀色の車が常に爆風や追突を受けながら爆走している。
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他車やランダム設置爆弾が存在しないチャンピオンシップでは驚く事に「TASでも人間とほぼ同じ走法」で走っている(つまり、並大抵の人力では再現がシビアな域)。
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上記の通り、このゲームは一般的には「奇妙で特殊なレースゲーム」の色が非常に強くなっている。
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CPUのマシンの挙動
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画面外にいる自分より順位が一つ下のCPUのマシンは自機より一定以上は離れないようになっている。どれだけ自分のマシンの速度が出ていようが、大幅なショートカットをしようが、明らかに追いつくのが不可能な状況からでもワープして追いつき、1つミスをすれば抜き去れる位置にまでついてくる。
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また、敵のマシンにはエネルギーの概念がないようで、コースアウトでリタイアすることはあるが、どれだけぶつかってもエネルギーがなくなってリタイアすることはない。
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この仕様そのものはSFC版『F-ZERO』から引き継がれている。やはりGBAのマシンパワーでも画面外の全てのマシンの状況やエネルギーまで管理しきるのは難しかったのかもしれないが、理不尽に感じるかもしれない。
問題点
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マシンのコーナリング性能が偏り気味で、性能A・Bのマシンはそれぞれ1種類のみと少ない。
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性能表記自体はA~Eの5段階なのだが、D以下は隠しマシンでしか存在せず事実上Cが最低ランク。
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マシン性能差がかなり大きい
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本作には10台のマシンが登場するのだが、他作品とは違い明確に「序盤から登場するマシンは弱く、後半のマシンの方が強い」という性格付けになっている。
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特に初期カーソルになっている「ホットバイオレット」の性能は悲惨の一言であり、そもそもの最高速が非常に低い上、本作で極めて重要になっている加速状態からの減速しやすさ(「惰性」と呼ばれる)が最低クラス、ターン性能もマシン耐久力も平均程度で優れているのは加速性能だけ……と初代のゴールデンフォックスに匹敵する悲惨さ。マスタークラス攻略は全マシン中最難関と言われている。
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ちなみにCPU操作時に上位に上がってきやすいところまでゴールデンフォックスにそっくりである。
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一方、後半になって解禁されるマシンは非常に高性能で
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最高速がかなり高く惰性・ブースト持続時間もトップクラス、ターン性能こそやや悪いもののドリフトターンへの適正が高く練習もしやすい「ザ・スティングレイ」
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総合バランスが非常に良く走りの安定性においては右を出るものはない「ファルコンMk-II」
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ブースト性能と惰性に全てを注ぎ込み、通常時の最高速とターン性能を犠牲にしたじゃじゃ馬「ファイティングコメット」
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タイムアタック性能ダントツトップの「ジェットバーミリオン」(後述)
とどれも優秀。とにかくこれらを解禁する前後で全く難易度・快適性が変わってしまうほどの性能差がある。
グランプリの優勝記録はマシンごとに記録されているため、やり込みという観点においては初期マシンの存在意義がなくなるというわけではないのが救い。
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最後の隠しマシンであり、タイムアタックに必須の性能を持つジェットバーミリオンの出現条件が困難。
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ジェットバーミリオン以外の全てのマシンでマスタークラスの全てのカップをクリアする、またはチャンピオンシップで何百回も完走するというもの。
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過去には公式サイトで「バーミリオンコード」というジェットバーミリオンを出現させるパスワードを配布するページがあったが、現在では配布が終了している。。
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非公式のパスワード解析サイトもあったものの消滅していたが、また別の有志が作成し公開しているため非公式ながら一応生成は可能である(参考リンク)。
総評
「SFCの『F-ZERO』をほぼそのまま携帯機で楽しめる」というのは、新ハードであるGBAの性能の一端を示すには十分であるし、SFC初期の名作と呼ばれた元のゲームと同じかそれ以上のクオリティを本作においても発揮できていると言える。
そして、N64『F-ZERO X』が高い人気を博していたことや、10年前ほぼそのままの見た目から本作を見て受ける印象がいまいちであったにもかかわらず、蓋を開ければレースゲームとして非常に高い完成度を誇った今作はGBAの普及に一役買ったと言えなくもない。
しかし、本作の特徴である世界観の一新が今後の作品では全く触れられることがなかったため、シリーズ中では本流から外れた地味な位置づけとなっている。
その後の展開
最終更新:2024年11月01日 07:37