OVERLORD: ESCAPE FROM NAZARICK
【おーばーろーど えすけーぷ ふろむ なざりっく】
ジャンル
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2D探索型アクション
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対応機種
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Nintendo Switch Windows (Steam)
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発売元
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KADOKAWA
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開発元
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エンジンズ
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発売日
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2022年6月26日
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定価
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【Switch PKG】4,378円 【Switch 限定版】8,118円 【Switch/Win DL】2,980円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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5個
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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アクションとしてのクオリティは高め ボリュームに乏しい 原作ファンからすると微妙に釈然としない箇所も
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概要
丸山くがね氏の人気異世界小説『OVERLOAD』を原作としたアクションゲーム。
いわゆる「メトロイドヴァニア」系統の2D探索アクションゲームである。
プレイヤーキャラは原作の主人公であるアインズ…ではなく、原作小説2巻でアインズにサバ折り決めて殺されたクレマンティーヌである。
このまさかの人選に原作ファンからは割と戸惑いの反応も出たが、シナリオはちゃんと丸山氏監修のIFストーリーである。
ストーリー
クレマンティーヌが目覚めると、そこは見知らぬ玉座の間であった。
全ての記憶を失って戸惑う彼女に、突如として骸骨の風貌をした魔道士が話しかけてくる。
曰く、実験に付き合ってもらうと…。
果たしてクレマンティーヌは自らの記憶を取り戻し、この恐怖の実験場から抜け出すことはできるのか…。
システム
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基本的にはスタンダードな2Dアクションゲーム。広大なナザリック地下大墳墓をクレマンティーヌを操って冒険しながら、脱出を目指す。
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最初は丸腰のクレマンティーヌだが、すぐに基本装備のスティレットを入手できる。スティレットは強制装備となり、それ以外にメニューから剣やハンマーなどのサブウェポンを1つ設定可能。装備の持ち替えはワンボタンででき、装備の種類は各地で拾うことで増えていく。
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強制装備としてもう1つ、ゲーム途中でモーニングスターが手に入る。武器としても使用できるが、それ以外に特殊な壁や天井に突き刺して掴まって移動することもできる。モーニングスターは持ち替え無しでワンボタンで使用可能。
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ダッシュも標準搭載されており、ゲームを進めて武技を習得すると、壁走りや小さな穴に潜り込むなどの特殊能力も使用できるようになる。
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クレマンティーヌ自身は魔法を使えないが、ゲーム進行に伴いスティレットに魔力を込めて使用できるようになる。炎、雷、氷の3種類の魔法がある。
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魔法は装備を切り替えるだけで該当する属性へのバリアとなり、炎魔法を装備していれば炎の壁を超えられるなどの能力が得られる。また、発動すると一定時間飛び道具として魔法を使用できる。
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これ以外にも、炎で氷を溶かす、氷で敵を凍らせて足場にするなどのギミックがある。
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敵を倒したりオブジェクトを壊すと「マナ」が手に入る。これはお金の代替品のような存在で、各地に存在する「泉」に投じてクレマンティーヌが武技を覚える(正確には思い出す)ことでステータスを向上させたり、「炉」に投じて武器をパワーアップさせるのに使ったり、ワープポイントを解放したりするのに使う。
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各地では探索要素として「記憶の片鱗」というピースが集まる。これを手に入れると、クレマンティーヌの記憶が少しずつ戻っていき、原作アニメのスティール画像が見られるご褒美がある。
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グラップリングビームならぬモーニングスターで掴まったり、モーフボールのように狭い隙間を通り抜けるアクションがあったりと、一部『メトロイド』シリーズをオマージュしたようなアクションが含まれているのが特徴。
評価点
原作要素
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まず「主人公がクレマンティーヌ」というのが意外なようで「わかっている」人選である。
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クレマンティーヌはその実力の高さと相反するような外道っぷり、そしてあまりにも凄惨すぎる最期から、原作のシナリオ全体としては「主人公の強さを見せつける噛ませ犬」程度の存在でありながら妙に人気が高い存在である。
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そして、原作者公認で「現地人としては世界最強クラスの戦士」であるため、このような実験のモルモットに選出されることにもさほど違和感はない。
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「単身であらゆる汚れ仕事をこなしてきた伝説的な暗殺者」という出自故に、身軽なアクションやあらゆる武器を使いこなすことへの説得力も十分。
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何より、IFストーリーとはいえ石橋を叩いて渡る余波で現地人皆殺しなノリのアインズなら、このような実験をやっていたとしても何もおかしくないのもある。
原作未読者には信じられないかもしれないが、このガイコツが主人公なんです
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ドット絵で再現されたナザリックの面々のクオリティが単純に高く、動きも非常に細かい。
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戦闘時は強大なボス敵としてその力を振るってくれるが、これも原作要素をキチンと意識して再現されている。
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原作のパワーバランスを考えると、クレマンティーヌ程度の実力でナザリックの階層守護者を倒すことはおかしいが、これについてもちゃんとシナリオ冒頭から伏線は貼られており、原作から考えても矛盾は生じないようになっている。
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ナザリック内の温泉や、アルベドの抱きまくらのような小ネタもちゃんとドット絵で再現されており芸が細かい。
アクション
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全体的に軽快で、操作性は良好。空中ポイントに掴まって回転後大ジャンプするパルクールアクションでは、ジャンプ前に行き先を8方向から選択できるようになっており、タイミングを図らなくても良いのも非常に動かしやすい。
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細かい段差ならダッシュで乗り越えてくれるため、いちいちジャンプする必要もない。
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強敵との戦いでは回避を用いて攻撃をうまくいなしながら隙を突いて攻略することが求められる。
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正直に正面から挑んでもあっさりやられるが、上手くさばいていけば意外なほどスムーズに倒せるなど、腕前の上達を実感しやすい。
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セーブポイントは豊富に配置されており、セーブポイントを通るたびに全回復するため、リトライなどは容易である。
問題点
原作要素
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舞台がナザリックなので仕方ないのだが、クレマンティーヌ以外はアインズ・ウール・ゴウンに属するメンバーばかりで、原作的に重要な人間キャラなどの出番は一切ない。
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それは仕方ないとしても、ボス敵として出現するのがユリ・アルファ、ナーベラル・ガンマ、ハム助、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ、コキュートス、シャルティア・ブラッドフォールン、アルベド、ラスボスのアインズのみ。武装メイドプレアデスの他のメンツや、残りの階層守護者の出番は一切なし。
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原作で戦闘描写がほとんどないデミウルゴスや、戦闘能力がないことが前提になっているヴィクティムなどはともかく、原作でしっかり戦闘しているアウラ&マーレやセバスチャンと戦えないことや、ザコ敵として普通のリザードマンは登場しているのにザリュースの出番がないことなどはかなり寂しい。
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記憶の片鱗で集まるスティールは単に原作アニメをキャプチャーしただけのもの。
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特に解説などはないため、本当に「見ることができる」だけのものである。
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「クレマンティーヌの記憶」という設定なので仕方ないかもしれないが、見られるスティールはクレマンティーヌ関連のエピソードのものばかり。全く無関係な他人の記憶が混ざるのもおかしいとはいえ、ご褒美としてもあまり集めがいがない。
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ストーリーは実質あってないようなもの。原作を考えると特に矛盾はないが、「原作で明かされなかった裏設定が!」的なものを期待すると少々ガッカリするかもしれない。
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CERO:B(12歳以上対象)なので仕方ないかもしれないが、原作のグロ要素はかなりオミットされている。
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特にクレマンティーヌといえば原作ファンなら絶対外せないだろうサバ折りシーンは一応ドット絵で再現はされているが、かなりソフト気味。原作アニメの鬼気迫る描写はあまり再現されていない。
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ゲームとして売る以上ある程度はソフトに変換せざるを得ないだろうが、「レーティングを上げてでももう少し再現したほうが良かったのでは?」と思われる部分はある。
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クレマンティーヌ以外にボイスはない。クレマンティーヌのボイスも掛け声程度で、ストーリーのセリフは無音声。
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ただ、伝統的な2Dアクションを意識してあえて音声なしとしている可能性もあるので、これに関しては演出として受け入れられるかどうか、と言ったところか。
アクションとして
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全体的にヌルゲー気味。序盤はそこそこシビアだが、中盤を過ぎた辺りからかなりヌルくなる。
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マナはよほどザコ敵を無視したり、隠れたマナを見落としたりしていない限り完全な供給過剰状態になる。武器と武技をフル強化しても余裕で余る。
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回避の性能が高すぎるため、基本的に回避を連打していれば割となんとかなる。
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終盤で覚える武技「流水加速」が完全なバランスブレイカー。一定時間、クレマンティーヌ以外の時間経過を極端に遅くするというもので、ボスの隙に合わせて発動し一気に攻撃を叩き込めばほぼワンパンできてしまう。発動制限は一応あるが、時間経過で回復する。
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むしろ、トラップの方が凶悪であり、かなり繊細な操作を要求される場面も多い。
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ただ、こういったシビアな操作が求められるのは大抵寄り道要素であり、メインシナリオを進めるだけなら素直に進めていけば詰まる場面はほとんどない。
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武器バランスはあまり良くない。
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クレマンティーヌの代名詞であるスティレットがかなり弱い。攻撃速度は速いが、リーチが短く威力が低い。前述のように、このゲームは回避が高性能なので、「近づいて高速で攻撃を叩き込む」よりは「リーチギリギリで高威力の攻撃を入れて即回避」の方が色々と都合がいい場面が多い。
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そのため、序盤はブロードソード、中盤以降はデススピア辺りを重点的に強化してメインで使っていったほうがかなり楽。
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問題なのは、魔法を発動するとこの弱いスティレットに強制的に武器が切り替わること。原作的には正しい描写だが、いちいち切り替える手間がかかって煩わしい。
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武器の性能差は攻撃力、リーチ、攻撃速度、連撃数ぐらいで、あとは打撃系武器に「アンデッド特効」効果がついている程度。「あとから手に入った武器のほうが基本性能が高い」というシンプルなシステムで、あまり使い分けができるものではない。
その他
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ボリュームはこの価格帯のゲームとしては少々寂しめ。ものすごく薄くはないが、割とあっさりとエンディングに到達できてしまう。
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クリア後のやりこみ要素や隠しボスなどは一切ない。難易度変更による再プレイと記憶の片鱗集めぐらいである。
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処理落ちがそこそこ気になる頻度で発生する。難しいアクションが求められるシーンだと、操作ミスに繋がりやすい。
総評
原作ファンからすると、「クレマンティーヌを操ってナザリックを脱出する」というシチュエーションだけで燃えるものはあり、基本的なアクションとしての土台もしっかりしているため、全体的なクオリティが低いわけではない。
ただ、少々ゲーム的にデチューンされすぎている感があるナザリックは「本当にあの恐怖の魔宮?」と首を傾げたくなるほどに低難易度気味。キャラゲーとしては間違っている方針ではないが…。
やりこみ要素の乏しさや、登場キャラクターの少なさなどの気になる点も多いが、原作ファンなら一度手にとっても損はしないだろう。
最終更新:2023年07月20日 16:00