救え!邪神ちゃんドロップキック
【すくえ じゃしんちゃんどろっぷきっく】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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株式会社東京通信
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開発元
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MASK合同会社
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発売日
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2024年1月18日
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定価
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980円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC:7+(7才以上対象)
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備考
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ダウンロード専売
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判定
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バカゲー
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ポイント
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(ギリ)クソゲー寸前のバカゲー 意図的なクソ要素以外の作り込みは◎
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概要
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COMICメテオにて連載中のWeb漫画「邪神ちゃんドロップキック」のアニメ版をベースとした、スマートフォン向け基本無料ゲームの買い切り移植版。
原作は「中二病女子大生ゆりねによって地球に召喚された邪神ちゃんが元の世界に戻るために彼女を殺そうとするも、そのたびに返り討ちにあう」という日常コメディ。
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そして何より最大の特徴は、
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アニメの切り抜き違法アップロードに対して、公式自ら切り抜き動画を放映前にアップする
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アニメアワード2023の投票方法の解説やランキングの中間報告などを通して露骨な投票呼びかけをX(旧Twitter)上で行い、ランク圏外から単独1位へ躍り出る
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公式グッズの転売に対し、公式自ら転売以下の価格で同グッズをオークションサイトに出品する
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……など、アニメ公式による行動が原作に劣らぬカオスぶりを発揮してしばしば話題になる点だろう。
そんな中で突如世に放たれたのが、どこかのWeb広告で見たようなチープな外見のこのゲーム。
何を隠そう東京通信の子会社が発売した「線を引くクソゲー」こと有名バカゲー「Save them all」のグラフィックを邪神ちゃんに差し替えたものである。
当然というべきか、
色んな意味でマトモなゲームではない。
特徴・システム
【ゲームの進め方】
1) ステージをしっかり見て「邪神ちゃん」に迫っている危険を確認しましょう
2) 危険から「邪神ちゃん」を守るように一筆書きで線を描きましょう
3) 「邪神ちゃん」を守れたらステージクリア、次のステージに進めます
4) 失敗しても成功するまで何度も同じステージにチャレンジできます
(以上、公式より抜粋)
以上の基本ルールを踏まえて、以下にいくつか補足する。
遊び方について
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線引きは画面のタッチ操作、またはZRを押しながら左スティックで行うことができる。
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描かれた線はその位置に固定されるのではなく、書き終わると重力に従って落下する。
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ステージ開始時点で空中に配置されている邪神ちゃんも線引きが終わると同時に落下する。
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線引きの始点が壁の中など線を引けない箇所だった場合、そこからどうなぞっても線は引けない。
にもかかわらず、操作を終えると線引きが完了した扱いとなりギミックが作動する。
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このため、床や壁に密着した線を引きたい場合は、一度空中に筆を下ろしてから壁に向かって引くと良い。
例えば床面と平行な足場を作りたい場合、長方形を描くよりも、水平な線の下に垂直な脚を数本引いてテーブルのような形状にした方が安定した足場を作りやすい。線を壁と密着させて左右に動かないように固定したい場合も同様。
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上記の通り線引きは一筆書きであり、長さに上限はないが書き終えるとギミックが作動する。
しかし「線は1本しか引けない」とはどこにも書いておらず、線引き完了後、ギミック動作中に線を追加することができる。
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追加の線は書いている途中には判定がなく、書き終えて筆を離さないと壁や床として機能しない。
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自分が引いた線も、邪神ちゃんに当たるとミスになる。
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例外として邪神ちゃんの足元だけは線に触れても大丈夫なようになっており、足場を作ることは可能。
ただし線が傾いていると邪神ちゃんが倒れてしまいミスとなる。
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3回ミスするとステージスキップが可能。
コインと着換えについて
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ステージクリアのたびに50コインが手に入る。
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1回500コインを支払い、ランダムで1つ邪神ちゃんの着せ替えを入手できる。
正義と書かれたTシャツやスノーボード、全身金メッキなどシュールなものもあるが、大抵原作等の再現。
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コスチューム入手の際、入手済みのものは選ばれない。コンプリートするまでは必ず新規コスチュームが手に入る。
問題点
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元がスマートフォン向けアプリであることを差し引いても、背景やオブジェクトが凄まじいローポリ・低画質である。
ステージによってはコウモリやワニといった動物が現れるが、初代プレステレベルのクオリティ。
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引いた線の判定が安定せず、キャラクターや敵の攻撃が容易に壁を貫通する。
特に銃と手裏剣は貫通が半ば常態化しており、壁を幾重にも張る必要がある。
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地形や敵と複雑に干渉するような線を描くと凄まじい処理落ちが発生する。
酷い場合はコマ送りなどというレベルではなく、秒間1~2フレーム以下まで落ち込むことがザラにある。
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地形判定の不安定さと激しい処理落ちの合わせ技により、引いた線が壁を無視して吹っ飛んだり、敵が本来とるべき挙動を取れず、邪神ちゃんを無視して虚空や画面奥へ走り去っていったりすることがある。
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BGMは1曲のみ。ゲームを起動したら最後、ステージをクリアしようがミスしようが、同じBGMがゲームを終了するまで永久に流れ続ける。
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声優によるボイスは一切無い。クリア時にフリー素材感あふれる拍手喝采のSEが鳴るのと、邪神ちゃんがやられると「ア"ッ」「ヴー」という声なのか音なのかよくわからないSEが鳴るのみ。
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線を引かずに放置していると、敵キャラが徐々に回転していったり、体がだんだんねじれていったりする。
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コインで入手するコスチュームをコンプリートしたあと、コスチューム入手ボタンがグレーになって押せなくなるとか「全てのコスチュームを入手済みです」といった表示が出ることもなく、普通にコスチューム入手の操作ができてしまう。
もちろんコスチュームは手に入らないが、コインはしっかり消費される。
コスチューム入手以外に使い道はないので実害はないが…
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基本的には敵やステージギミックに動きがなくなった時点で邪神ちゃんが生きていればクリア判定になるが、ステージによっては邪神ちゃんが生きていてもギミックを完全に停止させるような線引きをしないといつまでたってもクリア扱いにならない。
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特にステージ23は多くのユーザーがこの挙動で苦戦させられている。左から走ってくる車を止めるだけなのだが、明らかに止まっているように見えてもいつまでたってもクリアできないことが多い。
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ステージスキップをしてもクリア時と全く同じ演出が流れ、50コインも獲得できる。
…以上のように普通のゲームとして見ればクソゲー判定待ったなしのクオリティなのだが、公式が公式なので、どこまでが意図した内容なのか理解に苦しむ部分がある。
一例として、原作には影も形もないサングラス姿の暗殺者や目玉が飛び出た忍者が登場し、例によって1990年代のCGレベルのクオリティなのだが、これは実在するWeb広告の再現となっている。
「公式のゲームとは思えない」というツイートに対して「そこが、いいんじゃないですか!」と公式がリプライしたり、公式が「本作は日本語に対応していません」と言いながらゲーム内に表示される英単語の和訳をSNSに投稿しているが、ハッシュタグに「クソゲー」が付いているなど、低クオリティは半ば意図したものだと思われる(だからと言ってプレーヤーが許容できるかは別の話ではある)。
その他、
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スマートフォン向けゲームのほぼベタ移植のためか、携帯モード・テーブルモードでは縦画面固定になる。
この2モードでコントローラ操作で遊ぶ場合、スタンドなどに立て掛けない限り、本体を床やテーブルに寝かせて置くしかなくなる。
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なお、ドックを用いてTVモードにすると左右の空白に邪神ちゃんとゆりねが配置される形で横長の画面に対応したレイアウトになるので、なおさら携帯モード・テーブルモードでもこのレイアウトに対応して欲しかったと感じてしまう。
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ステージセレクトがない。
といった問題点もある。
少なくともこちらはゲーム内容とは別の、正しく(?)問題点と言える部分。
評価点
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(激重処理落ちが発生しなければ)1ゲームは10秒前後で終わるのでサクサク遊べるため、妙な中毒性がある。
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ステージ総数が凄まじく多く、1ゲームが短いわりにAllクリアにかかるプレイ時間はけっこう長く、暇潰しとしてはコスパが良い。
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邪神ちゃんを始め、花園ゆりね、メデューサ、ミノス、ぺこらといった原作キャラクターが登場し、これらのキャラクターは背景やオブジェクトの低コスト感に反してちゃんとかわいらしく作られている。
ミノスの「ビーフ100%」シャツなど細かい原作再現もされている。
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かなり進めないとみられないが、様々な恰好の邪神ちゃんが向き合っている、通称「邪神ちゃん脳内会議」を再現したステージも。
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邪神ちゃんはクリアした時やミスした時にちゃんと表情が変わる。…評価点?
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なお、メデューサ以外のキャラクターは全て邪神ちゃんを殺しにくる。しかもステージによっては平然と分身や巨大化して襲って来る。
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メデューサは居るだけ参戦で、ステージに配置されていても何もしない。
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雲から大量のトゲ鉄球が降ってくる、噴水から噴き出た水滴が1粒でも触れると死ぬ、狼やワニに始まり馬やカニ、果てはカンガルーやコアラなどあらゆる生物が邪神ちゃんに襲い掛かる、ステージ開始時点で邪神ちゃんが落とし穴の上に浮遊している、壁を作って襲い掛かる敵を防いだと思ったら時間差で上から爆弾が降ってくるなど、不条理極まりないシチュエーションの数々は非常にシュールで笑える。
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上記の通り敵の種類は豊富で、ギミックも様々に用意されている。
序盤は邪神ちゃんを囲んだり屋根を作るだけで解決するステージもけっこう多いが、ステージを進めていくとなんだかんだ頭を使うステージも出てくるようになる。爆弾や鉄球を敵に当てて倒すことも可能。
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マップ(背景など)も豊富であり、ある程度ステージを進めていくと切り替わる。
なんとステージ500を超えてから初登場する敵などもおり、外見自体はチープなくせに使いまわしは少なく、見た目やシステム面以外の部分ではクソゲーにならないように力を入れたであろう印象は伝わってくる。
背景や敵、ギミック等の変化に富むため、単調なゲーム内容に反して意外とマンネリ感を覚えにくく、気が付くと数百ステージ遊んでいたりもする。
賛否両論点
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問題点に「複雑な線を引くとバグや処理落ちが発生する」「ある程度線を重ねないと敵や攻撃が貫通してくる」という2つの相反する問題点を記載したが、これによりある種のゲーム性が発生している。
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つまりは、引いた線が少ないと「処理落ちを回避できる」というリターンの代わりに「敵を防げない可能性がある」というリスクが生まれ、線が多くなると「敵の攻撃を防げる」というリターンの代わりに「処理落ちする可能性がある」というリスクが生じる。
これらを踏まえて「敵やギミックを防げる程度に線を引きつつも処理落ちやバグが発生しないよう最低限の線引きに抑える」という遊びを楽しめるかどうかは本作の評価にかなり影響すると思われる。
総評
チープな見た目や頻発する処理落ちなどからくる「クソゲー」という第一印象に反して、非常に膨大なステージ数と、それに対してマンネリを感じさせないよう配慮された背景・敵・ギミックの数々、そして何よりかわいらしい邪神ちゃんなどの原作キャラクターの作り込みにより、徐々に「ただのクソゲーではないんじゃないか」という感想を抱かせてくる。
そう思わせる理由の1つに、公式SNSの言動や購入前から一目で伝わるチープさなどからくる「このゲームがまともであるはずがない」という前提・先入観があるのは間違いない。
狙ったバカゲーはそれなりにあるが狙ったクソゲーというのは前例が多くなく評価が難しいが、少なくとも遊べないゲームではないため、「原作再現度が高いクソゲーを模したバカゲー」と評するのが妥当な作品。
余談
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公式略称は「救邪」らしく、X(旧Twitter)にて同ハッシュタグを調べるとプレイ動画が色々と見つかる。
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ステージ総数とALLクリアについて(一応ネタバレ回避のため格納)
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ステージ総数は650ステージ。
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650ステージをクリアすると普通に651ステージが始まるが、以後は既出のステージがランダムで出現する。
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本作が発売される前に基本無料アプリとして配信されているのは冒頭で説明した通りだが、アプリ版の攻略サイトによるとアプリ版とはステージ数が異なっている。
Switch版の発売に際してステージの追加や調整等が行われている模様。
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ALLクリア後の仕様もSwitch版と異なり、アプリ版ではステージ1からループするようになっている。
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最終更新:2024年08月29日 21:22