DOME

【どーむ】

ジャンル ノベルウェア
対応機種 PC-8801mkIISR,X1,FM-7/77,X68000,PC-9801,MSX2
メディア フロッピーディスク
開発・発売元 システムサコム
発売日 1988年1月
定価 9,800円
プレイ人数 1人
配信 プロジェクトEGG
【PC-8801】2001年11月24日/550円
判定 ゲームバランスが不安定
ノベルウェアシリーズ

ドームに描かれた反核二元論は、
人類存続への希望かもしれない。



概要

システムサコムが当時行き詰まりの様相を見せていたアドベンチャーゲームの新しい形として提案した「ノベルウェア」シリーズの第1弾となるソフト。
本シリーズはPC上で小説を読ませるというコンセプトで展開しており、後のサウンドノベルビジュアルノベルの源流ともいえる作品。
本作は夏樹静子原作の『ドーム 終末への序曲』を題材としており、そのサイドストーリー的な位置づけの作品となっている。
プレイヤーは原作小説に登場する広告代理店「広通」のPRプロデューサー・林となり、ドームプロジェクトを成功に導くために奔走する。


ストーリー

1984年12月。

翌年の3月に迫った筑波科学博覧会を控えて、広通は大いそがしの一年であった。あと4箇月もない開幕日にそなえて、現地筑波には事務所もでき、広通の主力はほとんど博覧会にかかりっきりになっていた。

広通と、スポンサーの会社と、現地と、この3つの地点をいったりきたりしているだけでも、あっというまに時間がなくなってしまう。

しかし、仕事はもちろんそれだけではない。いつもの仕事、そしてそれ以外にも新しい仕事、体を休める暇もないのである。

今日もまた新しい仕事が一つやってきた。

専務直々にご指名がかかった打ち合わせ、そしてその内容については一切不明。極秘事項が多いこの業界ではあったが、、これほどなにもわからない話も珍らしいことであった。

いったい専務直々の打ち合わせとは何だろうか?会社に向かう道すがら、そんな思いが脳裏をよぎった。

打ち合わせの相手は日清建設。日本でも最大手の建設会社である。専務のお相手としては不足はない。

しかし、広通にはすでに日清建設の担当チームが存在している。それを差し置いて、なんで別の打ち合わせがあるのだろうか?多分、普通の広告やPRの話ではないのだろう。

それにしても、わざわざ暮れも押し詰まった今ごろ・・・・・・。

よほど、大きい話に違いない。


システム

  • シリーズ共通のシステムとして、以下の点が挙げられる。
    • メッセージ・イラスト共にマルチウィンドウ形式で展開される。
      • メッセージについては登場人物ごとにウィンドウが割り当てられる*1
  • 本作固有のシステムとしては以下の通り。
    • 時間の概念があり、1日に4つの時間帯(早朝・昼前・午後1時・午後3時)のパートに分かれており、その時間帯ごとに情報収集・行動を行う。
      • 選択するコマンドにより実行にかかる時間が異なっており、必然的にパートごとにとれるコマンドは制限がかかる。
    • パラメータとしてはドームプロジェクトに対する理解度と寄付金額が設定されており、各章の区切りごとに規定まで達しない場合は強制的にゲームオーバーとなる。

評価点

  • 完成度の高いストーリー
    • 20万文字という当時としては破格の文章量を持つシナリオで、さらに登場人物も72人と非常に多く、それらの織り成すストーリーの完成度は見事。
    • 問題の解決が終わったかと思うと次の事件が発生していき、その解決に奔走していくといったのも魅力的。
    • 原作小説の魅力も損なわず、原作のサイドストーリーとしてもとても高い完成度を誇る。
  • 高品質のBGM
    • 桜井邦子氏・斎藤学氏両名が担当する楽曲はどれも高評価を受けている。
    • 流れる局面は少ないものの、それだけにBGMが流れる場面での印象も強調されている。

問題点

  • 難易度が高い
    • 問題になってくるのは前述の通り登場人物が72名と非常に多いこと。さらにその人物の所属も完全に把握したうえで適切なコマンドを実行する必要がある。
    • さらに問題を厄介にしているのがコマンド実行に要する時間が決まっているため、総当たりも通用しない。
      • また登場人物72人のうち顔写真があるのはごく一部に限られているために情報の整理をメモなしでやるのは非常に困難。
        ある意味リアルの広告代理店の営業業務を再現しているともいえるのだが…
    • その上前述のフラグパラメータを各章の区切りごとに規定以上まで上げないと容赦なくゲームオーバーで、その条件も結構厳しめな内容となっている。

総評

当時行き詰まりを見せていたPCのアドベンチャー界隈において、パソコン上で小説を再現するというコンセプトの下、読ませる作品として圧巻の充実度を誇る。
原作物のサイドストーリーとしてもしっかり作られており、原作既読でも違和感なく十分に楽しめるストーリーは評価が高い。
しかしながらゲーム的な面も充実させることをコンセプトにも入れていたからなのか、難易度がかなり上がってしまったのが惜しまれる。


余談

  • 本作の登場人物や背景の画像については実写取り込み画像を使っている。
    • また、人物の取り込み画像についてはシステムサコム社員のものを使っている。
  • 本作は全3部作で展開する予定であったが、残念ながら続編が出ることはなかった。
  • 本作はノベルウェアシリーズでは唯一終了認定証を発行していた。認定証はベストエンドを迎えたゲームのセーブデータを記録したディスクを送付することでもらうことができた。

最終更新:2025年01月09日 01:02

*1 ただし、シリーズ作品の中では『CHATTY』のみ例外