ユニコーンオーバーロード

【ゆにこーんおーばーろーど】

ジャンル シミュレーションRPG


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Xbox Series X/S
発売元 アトラス
開発元 ヴァニラウェア
発売日 2024年3月8日
定価(税10%込) 通常版: 8,778円
モナークエディション: 17,578円
ダウンロード豪華版: 13,178円
プレイ人数 1~2人(オンライン対戦)
セーブデータ 【Switch】10個
【PS5/PS4/XSX】99個
【共通】+オートセーブ1個
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 良作
ポイント 戦略性と遊び易さを両立したRTS
美麗な2Dグラフィック



これは、運命に抗う絆と愛の幻想戦記



概要

オーディンスフィア』や『十三機兵防衛圏』など、ユニークかつ遊びやすいゲームで人気を集めたアトラス×ヴァニラウェアタッグが開発したシミュレーションRPG。
架空のファンタジー世界「フェブリス大陸」を舞台に、亡国の王子アレインが圧政を敷く新生ゼノイラ帝国から世界を解放する戦いが、リアルタイムストラテジー形式で描かれる。


あらすじ

五つの国家からなるフェブリス大陸。
コルニア王国でのヴァルモアの反乱によって巻き起こった戦火は
やがて大陸全土を覆い尽くし世界を支配する。

主人公は亡国コルニアの王子として生き残り、解放軍を率いることになったアレイン。
伝説の「一角獣の指輪」を手に、民を導くため、自軍の旗を掲げる。

巨悪の手に堕ちた世界の命運は、亡国の王子と指輪に託された─

(公式サイトより引用)


登場人物

※味方キャラだけでも60人以上居るため、主要キャラのみ抜粋

  • アレイン
    • 本作の主人公。旧コルニアの王太子でイレニア女王の息子。
      幼い頃、ヴァルモアの反乱で母イレニアを失い、ジョセフと共にパレヴィア島へ逃れる。
      以後剣や軍隊戦術を学び十七歳まで育ってきた。
  • スカーレット
    • パレヴィア島の大聖堂に務めるパレヴィア正教の司祭で、アレインの幼馴染。
      幼い頃から修行を積み若くして司祭に就任した。アレインの旅立ちに伴い、島を出る。
  • ジョセフ
    • 旧コルニアの聖騎士。
      十年前のヴァルモアの反乱の際にイレニアよりアレインを託され、パレヴィア島へ逃れる。
      以来、旗上げの準備を進めてきた。
  • ヴァージニア
    • アレインの従姉妹。彼の母親であるコルニア女王・イレニアを尊敬しており、彼女の親衛隊である薔薇騎士団の団長を務めていた。
      ヴァルモアの造反によってコルニア王都が陥落した際に行方知れずとなっていたが、ドラケンガルド王国にかくまわれていたことが判明する。
  • ベレンガリア
    • コルニア王国に拠点を持つ傭兵団「三角獣傭兵団」の元団長。凄腕の戦士で、傭兵団を立ち上げるや否や、屈強な部隊に育て上げた。
      だが、ある時突然団の解散を宣言し、姿を消してしまう。
  • ギルベルト
    • 山岳地帯と砂漠が広がるドラケンガルド王国の第二王子。ルートヴィヒという兄がいたが、彼が行方不明になったことで王太子となる。
      ゼノイラ軍との戦いで命を落とした先王に代わり、王国再起のため密かに兵を集めている。
  • ロザリンデ
    • 緑豊かな国・エルヘイムに住むダークエルフの鳥占官。
      巫女・エルトリンデの姉で、彼女を補佐している。
      首都陥落の難から逃れ、反撃のため戦力を集めている。
  • エルトリンデ
    • 緑豊かな国・エルヘイムに住むエルフの巫女。
      首都陥落の際に行方不明となり、ロザリンデやエルヘイムの住民たちから安否を心配されている。
      なお、ロザリンデと種族が違うのは、父親がエルフで、母親がダークエルフであるため。
  • モラード
    • 北部の寒冷地域にまたがる獣人国家・バストリアスの反ゼノイラ組織「雪花団」メンバーの獅子獣人。
      屈強な肉体と筋力を誇り、雪花団実戦部隊の中核を担っている。
  • ユニフィ
    • 「雪花団」のメンバーで、団の中では唯一の人間。数年前に雪花団の団長であるラモーナに引き取られ、育てられた。
      家族や出自を含めた過去の記憶が一切欠落している。
  • ガレリウス
    • 新生ゼノイラ帝国皇帝。
      元はコルニアの将軍でヴァルモアと名乗る優れた武将だったが、突如反乱を起こす。
      コルニアを廃し、新生ゼノイラ帝国を興す。

システム

ステージ
敵味方のユニットがリアルタイムに進軍していく戦闘パート。複数のキャラクターで組まれた味方ユニットを指揮し、勝利条件を満たすとステージクリアとなる。
ユニットや拠点は、味方が青、敵が赤、中立が白、第三陣営(味方)が緑、第三陣営(敵対)が黄色で色分けされている。
尚、ゲーム進行の早送りも可能。

  • 拠点
    • ユニットが駐留できる場所の総称。紋章付きの旗が立つ「本拠地」と、「町」「砦」の拠点からはユニットの出撃・撤退が可能。本拠地を制圧された方が敗北となる。
    • 拠点にはユニットを駐留させることが出来る。旗がある拠点は敵対ユニットが居ない状態で駐留すると、その拠点を制圧できる。
    • ユニットは駐留した拠点の種類に応じた「駐留効果」を受けられる。ユニットの出し入れが可能な拠点では一定時間駐留させることでユニットのHPとスタミナを回復させることが可能。
    • その他、指定したエリアに特殊効果を発生させる「祈りの像」、アシストのリーダー効果を強化する「見張り台」、範囲内に入った敵を弾がある限り自動で攻撃する「バリスタ」等の拠点が存在する。
  • ユニット
    • 「ユニット編成」にて、最大5人までのチームを組むことが出来、その中からリーダーに設定したキャラに応じた「リーダー効果」と「スタミナ」が適用される「駒」。
    • リーダー効果は兵種毎に設定されている。例えばアレインであれば「敵撃破時のブレイブゲージ上昇量増加」、弓兵がリーダーであれば「周囲の味方の戦闘開始時にアシスト射撃で追加ダメージ」、グリフォンライダーなどの飛行兵種であれば「地形とギミックを無視して移動できる」など。
    • スタミナは戦闘やアシストを行う度に減少し、0になると移動できなくなる*1
      回復するには特定の拠点に駐留させるか、ウェイト状態になるのを代償に「休息」のコマンドを実行するなどの方法がある。
    • また、ユニットには前列後列が存在し、前列にキャラが居る場合は「遠隔」属性を持つ攻撃でしか後列を攻撃対象に出来ない。また、貫通攻撃であれば前列後列を同時に攻撃できる。
  • 戦闘
    • 敵と接触するとエンカウント状態となり、画面下部のメニューから下準備を整えた上で戦闘を行う。戦闘で決着がつかなかった場合は残りHPの割合が少ない方が敗北となり、敗北したユニットは弾き飛ばされて「ウェイト状態」になる。
      • 戦闘の下準備では編成・武器の変更、アイテムの利用、前述のアシスト射撃などの別部隊からのアシストの指示を指定できる。また、近くに味方のユニットがいれば位置を入れ替えて戦闘を肩代わりさせることも可能。
      • ウェイト状態になると一定時間動くことが出来ず、敵からの攻撃を先制攻撃*2で受けてしまうため、上述した「休息」コマンドは周囲の状況を考慮して行う必要がある。
      • 戦闘によるHP変化量が戦闘前に表示される。
        回避やガードなどの確率で発生するものも含まれた結果となっており、戦闘前画面でアイテムを使用した場合はその結果もすぐさま反映される。確率で発生するものについては戦闘が一度起こると乱数が変わり結果が変わり、アシストを指示した場合も乱数が変わる。
        表示されるのはHP変化量のみのため、戦闘不能になるメンバーが存在するかまでは把握できない。
      • ユニットの移動選択時にも敵を選択すると、その時点で戦闘を行った場合のHP変化量が表示される。この表示結果にはアシストは含まれていないため、アシストがある場合、戦闘の下準備で表示される結果は変わる。また、前述の通り戦闘が一度起こると乱数が変わり、戦闘の下準備で表示される結果は変わる可能性がある。
    • 敵との戦闘は自動で進行する。
      各キャラクターは「行動速度」に応じた順で敵味方入り乱れて順番に行動し、行動順が回ってきたキャラは「AP」を消費してアクティブスキルを使用する。アクティブスキルのターゲットは前列の一番近い敵が優先されるが、スキルに「作戦」で条件*3を設定していた場合は、その条件に合う相手を優先して攻撃する。
      • また、「戦闘開始時」や「攻撃を受ける際」等の条件を満たすことでパッシブスキルが自動的に発動する場合もある。パッシブスキルの発動には「PP」を消費する。
    • 尚、同じユニットに組み込んだキャラは戦闘に勝利すると「親密度」というステータスが相互に上昇する。
      親密度が一定以上に上昇したキャラ同士を同じユニットに編成するとクラスごとに決められたパラメータに補正がかかる(これは固有キャラでも傭兵でも同様)ほか、特定の組み合わせではフィールドに「親密度会話」イベントが発生し、その2人によって繰り広げられる小話を見ることが出来る。
  • ブレイブ
    • 敵を撃破したり町などの拠点を制圧するなどすると「ブレイブゲージ」が上がり、「ブレイブ」が最大10個まで溜まっていく。
      溜まったブレイブは味方ユニットの出撃や、ユニットの行動メニュー「ブレイブスキル」の発動に使用する。
    • ブレイブスキルは兵種毎に設定されている。例えばアレインであれば「自身or周囲の味方ユニットを1つ選択し、そのユニットの次回戦闘時の取得経験値2倍」、ハンマーを持った兵種であれば「指定の範囲に障害物を破壊させる攻撃を行う」等。
  • 会話
    • 会話が可能なユニットが特定のキャラに近づくと行動メニューから会話を行うことが出来る。
      殆どの場合、会話を行えば解放軍のユニットとして操作可能になるため、積極的に狙った方が良い。

フィールド
ワールドマップ上でアレインを自由に操作し、次の戦闘に向けての準備や採取ポイントの収集の他、クリアすることで名声を上げられる「クエスト」の受注をしたりするパート。

  • 名声ランク
    • アレインが率いる事になる「解放軍」の名声を示すランク。
      クエストやバトルステージのクリア、街の復興等によって得られる名声ポイントを一定量貯める事でランクが上がり、砦で行える拡張・強化機能がアンロックされていく。
    • 新しい仲間の「雇用/解雇」や編成枠を増やす「ユニット拡充」、選んだキャラを上級クラスへ昇格させる「クラスチェンジ」、自軍ユニット同士を戦わせる「模擬戦」が行える施設。
      模擬戦以外の3つは全て「勲章」を消費して行う他、ユニット拡充の拡張上限追加とクラスチェンジは名声ランクを上げてアンロックする必要がある。
    • 砦毎に雇える兵種と初期Lvが異なり、雇う際は「キャラの名前*4」「成長タイプの設定」「服装や身体のカラー設定」「ボイス*5」をプレイヤーが設定することが出来る。
    • クラスチェンジは名声ランクBで利用可能になる。クラスチェンジするとステータスが上昇するほか、修得スキル・AP・PPが追加される。
      • 上位クラス以外の兵種へのチェンジは出来ず、成長パラメータはクラスと成長タイプごとに一律固定となっているが、イデアの手鏡というアイテムを使うことで成長タイプを変化させられる。ただし、イデアの手鏡は終盤に入るまでは入手回数に限りがある貴重アイテムである点には注意が必要。
    • 武具や消耗品の購入、アイテム納品、守備兵の配置が行える施設。
    • ゼノイラの勢力に支配されている町や砦等ではステージが出現し、クリアすることで町を解放して武具屋等の施設を使うことが出来る。
    • ただし、解放直後はゼノイラの支配によって荒廃しているため、復興援助の為に納品を行う必要がある。復興すれば名声が上がる他、復興した町には守備兵を配置でき、配置するとステージクリア毎に配置場所周辺の採取ポイントの素材と報酬金が入手できるようになる*6
      • また、守備兵として配置したキャラには贈り物を渡すことでアレインとの親密度を上昇させることが出来る*7
    • 尚、「城塞都市」や「城」に分類される町では上述した砦の機能に加えて「宿屋」も利用できる。
      宿屋ではキャラを選んで料理を食べることで、その選んだキャラ同士全員の親密度が上昇する。 そしてヴァニラ飯による飯テロを食らう羽目になる。
  • 未開放の地域
    • 町や砦が解放されていない、フィールドに敵が徘徊している地域。該当ステージをクリアすることで安全を確保すれば敵が消え、消えた敵の分の勲章を獲得できる。
    • 尚、未開放地域で敵と接触した場合は戦闘になる。 フィールドでの戦闘は一戦で決着をつけないと敵シンボルを消すことが出来ず、敗北or引き分けになった場合は最後に立ち寄った場所へ戻される。
  • フリーステージ
    • 幻影の兵士と戦い経験値を得られる。何度も挑戦できる。
      初回クリア時のみ追加報酬アリ。
  • 採掘場
    • 各国に1か所ずつ存在する。納品で使用する鉱石や天のかけら等の他、まれに強力な装備の隠し場所を示した「宝の地図」が手に入る事も。
  • 闇商人
    • 夜のみ取引できる商人。他ではあまり見ない貴重なアイテムや装備品を購入できる。
      闇商人ごとに取り扱う商品は異なる。
  • 天のかけら交換所
    • フィールド各地に落ちていたり、一部イベントで入手できる「天のかけら」を集め、それと引き換えに貴重な装備やアイテムを交換できる場所。闇商人と違い、品揃えはどこでも共通。
  • 鍛冶師
    • 「フェブライト」という鉱石と勲章を消費することで、装備品の性能を強化してくれる。
  • 闘技場
    • ドラケンガルド王国にある闘技場。勝利する事で「闘技場コイン」を入手でき、アイテムや装備品と交換できる。ここでしか手に入らない貴重な装備も存在する。

その他

  • ユニット詳細
    • ステータス情報の確認や装備品の変更、装備に描かれる紋章の編集、戦闘時の「アクティブスキル*8」と「パッシブスキル*9」の発動優先順位と条件の設定が出来る。
      装備は「武器」「盾」「アクセサリー」に大別され、どれをどれだけ装備できるかはクラスによって異なる。
      • 装備はステータスを底上げしたり、物によっては装備者にスキルを追加する物もある。
        ただし、アクセサリーは装備可能なクラスが設定されており、装備出来ない物は暗い状態で表示される。
      • 条件には「敵/味方が〇体以上の場合のみ発動」「HPの割合/実数値が一番低い敵/味方を対象に発動」「敵/味方の特定の属性を持つ相手に対してのみ発動」といった様々な内容が用意されており、アクティブスキルとパッシブスキルで設定可能な内容が異なる。
        序盤は技の種類が少ないためそこまで重要ではないが、ゲームを進めるほどスキルが増加し、スキル発動に必要なポイントの管理が必要になっていくため、この条件を設定する事によってスキルを管理し戦略を練る必要がある。
  • 親密度
    • 「ユニットに配置されたキャラ同士で戦闘に勝利する」「宿屋で一緒にご飯を食べるキャラに設定する」「守備兵として配置してるキャラに贈り物を渡す(アレイン限定)」「イベントで上昇する(アレイン限定)」といった事で溜まっていくゲージ。
      一定以上蓄積すると「親密度Lv」が上がり、そのキャラ同士でユニットを組んだ際にステータスにボーナスが入る他、特定の組み合わせでは「親密度会話」が発生する事がある*10
  • 契約の儀式
    • 物語終盤で、アレインと心から想いが通じ合っている仲間とのみ行える儀式。
      アレインとの親密度会話があるキャラで、親密度が最大値に達している相手なら性別を問わず行うことが出来る*11
  • 難易度設定
    • 初期から選べる難易度は、「CASUAL」、「NORMAL」、「TACTICAL」、「EXPERT」の四種類。難易度を上げるほど敵の能力が高まり、作戦時間や敵の増援の間隔が短くなる。
      • さらに、一度クリアすると最高難度「ZENOIRA」が選択可能になる。EXPERT以上に敵が強力になっているほか、味方の部隊が全滅すると特定のアイテムで回復するまで出撃不可、ゲーム中の難易度変更が出来なくなる等、非常に厳しい制約が課される。

評価点

  • ユニット編成の楽しさ、奥深さ
    • ユニット編成の自由度が非常に高く、選択するキャラ、装備、作戦を細かく設定できる。
    • クラスの総数そのものが膨大で、しかも各々に明確な長所と短所が存在する。単体では使いどころに困るようなキャラでも他のキャラと組み合わせることでシナジーが発生することが多く、これを利用することで推奨レベルより高いレベルの敵ユニットを圧倒する事も可能。
      • こういったキャラの取捨選択や作戦の構築などはこのゲームの肝と言える部分でもあり、プレイヤーによっては戦闘そのものより楽しいという声も聞かれた。
  • 複雑でありながら初心者にもとっつきやすい戦闘システム
    • 本作の戦闘は最大10人ものキャラが入り乱れる複雑なものであるが、序盤の内は編成上限や戦闘中に発動できるスキルも少なく、単純なものとなっている。それがシナリオの進行とともにチュートリアルを挟みながら徐々に複雑化していくため、初心者でも理解しやすい親切なつくりとなっている。
    • 戦闘前にあらかじめ結果が表示される点もとっつきやすさに拍車をかけている。
      • ファイアーエムブレムシリーズなどの1対1の戦闘とは違い、最大10人がそれぞれに複数のスキルを使用する本作の戦闘結果を予測することは初心者はおろかよほどの熟練者でもなければ困難であり、これがなければ非常に厳しいゲームバランスになっていたことだろう。
        戦闘を行う前に隊列やスキルを調整したりアイテムを使用することでも戦闘結果を変えることもできるため、複雑な仕様を全て理解しなくとも「とりあえず良い結果になるように隊列を変えてみる」ということも可能。カジュアルゲーマーにとっては嬉しい仕様である。
      • 結果があらかじめわかってしまうのは上級者にとってはものたりないと思われるかもしれないが、戦闘前にわかるのはあくまでも最終的なHP増減量のみであり、敵味方ともに誰がどれだけのダメージを受けるかまではわからない。そのため、効率良く敵を倒すためには各キャラの特性を理解してスキルを組み立てることが重要であり、決して戦略性は失われていない。
        戦闘シーンもただの結果の確認ではなく、それぞれの行動をきちんと確認して「何故このような結果になったか」を理解するために重要な要素となっている。
  • 「圧政からの解放」を主眼に置いたシナリオ
    • 本作のシナリオは、強大な帝国の勢力を切り崩し、圧政に苦しむ人々を救うというのが主な流れとなっている。基本的な部分はシンプルな勧善懲悪ではあるが、だからこそヒロイックなアレインたちの活躍が光ると言える。
    • 帝国の圧政から領地を解放するにつれて、住民が救われていく様子が見られるのも見どころの一つ。本作ではフィールド上で住民との会話を行えるのだが、解放直後はその荒廃ぶりから意気消沈している住民が多く、復興支援を終えて平和を取り戻すとそれを喜ぶ声が多くなるため、話を進めるモチベーションへとつながる。
    • また、物語を進めるにつれてライブラリが更新され、その都度キャラクターや時事の進行などを鑑賞できる。
  • 作り込まれた世界観
    • 登場人物の項で軽く触れたとおり、フェブリス大陸では主人公の出生国である「コルニア王国」、大陸全土を制圧し圧政を敷いている「新生ゼノイラ帝国」のほか、帝国の侵略が始まる前はコルニア王国と緊張状態にあった強国「ドラケンガルド王国」、森と泉に囲まれたエルフ、ダークエルフの住処である「エルヘイム」、年中雪が降り積もり、獣人と人間が共存している北の大地「バストリアス」、「天使」と呼ばれる有翼人が住むパレヴィア正教の総本山「アルビオン教国」が存在する。
    • アレインたちは各地を巡ることになるが、そこで加入・雇用するユニット達はその地方特有の種族であることが多く、物語を進めるにつれて多種多様な部隊編成が可能となる。
      また、ショップの店員も国ごとに異なり、その国ならではの応対を見せてくれる。
      • 中でもバストリアスのショップ店員は、本作屈指の癒し系として高い人気を集めている。
    • 更に、それぞれの国と地域は発祥の理由がはっきりと明かされており、人間以外の種族が誕生した理由も明確に語られている。
  • 多種多様な魅力を持ったキャラクター達
    • 前述した種族を抜きにしても、幼馴染、褐色、高身長、荒くれ等、様々な個性を持ったキャラクターが登場し、その誰もが魅力的。
    • 彼らの詳細は、親密度会話や物語の進行に応じて明かされ、いずれも非常に魅力的。
    • 敵も、新生ゼノイラ帝国から受けた「支配の術」によって敵対する者や、領地の存続のためにやむなく付き従っている者、戦いの中で名を上げて成り上がろうとする者など様々。
      取ってつけたような薄っぺらい人物造形は一切されておらず、全員しっかりとキャラが立っている。
  • 会話システム
    • 進行が自由であることが鑑みられており、会話の差分も非常に豊富。
      • 例えば、序盤に敵対するも後に仲間になるキャラクターであるギャメルとマンドランは、先にいずれかを仲間にした場合の専用の会話が用意されている。
    • イベント会話は全編を通してフルボイス。アレイン役の浦和希氏をはじめ、今を時めく豪華声優陣による名演を終始楽しめる。仕草の変化も緻密に描かれており、戦闘アニメにも決して劣らない臨場感を楽しめる。
    • 親密度会話も、キャラの新たな一面が見えたりすることもあり(後述する不満点こそあれど)好評。
      また、親密度会話のある者同士の組み合わせでユニットを組んでいくと概ねバランスが良くなるようになっているため、編成のヒントに使える点も嬉しい。
      • 契約の儀式は全キャラクター分の反応が用意されているだけではなく、終盤のイベントでは実際にアレインと契約相手の2人が主役となって活躍する。こちらもまた全員の差分が存在しているという豪華ぶりで、さらに「間違えた」という選択の反応まで全員分用意されている。
      • なお、契約の儀式を終えた後にアレインが女性キャラと最後の親密度会話を行うと「夢オチ」という展開になる。これは「既に心に決めた相手がいるにもかかわらずほかの女性とロマンスをするのはおかしい」が故の処置だろうが、地味に笑えるシーンともなっている。
  • プレイヤーの食欲をそそる食事シーン
    • ヴァニラウェアこだわりの一つといえる食事シーンは、本作も健在。本作では、チャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」を手掛けているYoutuber・リュウジ氏が監修しており、以前よりさらにリアルな料理を鑑賞できる。
    • 前述した通り親密度を大きく上げる効果があるため、攻略要素としても非常に有用。
  • 迫力ある2D戦闘アニメーション
    • 戦闘シーンでは、さまざまなキャラによる多種多様な技が迫力たっぷりに描かれる。
      • 戦闘中はいつでも早送りが可能で、スキップもできるため煩わしいと感じさせられることもない。
    • 敵として撃破したり仲間になったキャラはクラス図鑑に登録され、モーションを鑑賞することができる。
  • キャラクターグラフィック
    • 従来のヴァニラウェア作品と同じく、キャラクターデザインはシガタケ氏が担当。
      男性キャラクターは渋さと格好良さが両立されており、女性キャラクターも美麗さと煽情的な面が前面に押し出されている。
    • 前述した戦闘でのアニメーションやポーズも、その魅力を最大限に引き出している。
  • BGM
    • こちらも従来のヴァニラウェア作品と同様に、ベイシスケイプが担当。フィールドからステージ、戦闘に至るまで、優れた楽曲で楽しませてくれる。
      • フィールドの曲は国ごとにことなり、昼と夜で同じミュージックラインの別の曲に差し変わる。さらに、それぞれの国の最終マップは、フィールドの曲を勇ましくアレンジしたものになっており、クライマックス感を演出する一助となっている。
  • 全く感じない機種格差
    • マルチプラットフォーム展開された作品でありながら、セーブデータのスロット数以外の面でSwitch版が劣っているといったような要素は全く見られない。

問題点

  • 部隊編成の保存機能がない
    • 本作最大の問題点。 作戦を保存する機能はあるのだが、部隊自体を保存することはできず、一度解散させるとまた手動で組みなおす必要がある。
    • シナリオの敵や地形によって部隊を一時的に変更したくなる事が多々あり、特に闘技場では相手チームに合わせた編成変更や試行錯誤がほぼ必須となるため、「この組み合わせに対抗する編成を即時呼び出す」といったことができない点は非常に窮屈と言える。
      • また、部隊を丸ごと並び替える機能もない。例えば使用頻度の高い部隊を番号の若い方に持って来たい場合などもあるが、そういう時は1人ずつ手動で入れ替えなくてはならない。
  • スキルの条件内容に漏れがある
    • 「前後列に並んでいない敵」「自分がバフ/デバフ状態ではない」「状態異常の敵を優先」といった条件が存在しない。
  • 大陸の攻略順がほぼ固定
    • 一応攻略順は自由ではある*12が、推奨レベルの都合で攻略順は実質固定化されてしまっている*13
      • 難易度や戦術次第では推奨レベルを大きく下回る戦力でも攻略が可能であるため、最初から推奨レベルが高い国から攻略することはできる。だが、そうすると元々推奨レベルの低い国を簡単に攻略できてしまうため、根本的な解決にはならない。
      • またシナリオにおいても各国をクリアすると「次は◯◯に向かいましょう」と言われるのだが、その際該当の国を攻略中であっても、まだ向かっていないかのように言われてしまう*14
  • フィールドの隠し通路がノーヒント
    • 山奥の離れた場所や隔離された海岸にお宝が落ちている事があるのだが、そう言った場所は近くの山間部などにある隠された通路を通らなければ行くことが出来ない場合があり、そしてそういった通路はマップに一切表示されない。
      「アレインは主人公だからもう一段階ぐらいクラスチェンジしてペガサスに跨るのではないか」「空を移動できる手段が入手できるのではないか」といったような勘違いをしたままいつまでも回収できずにもやもやしたユーザーは少なからず存在する。
      • 「後に港町を解放・復興する事で、船で行けるようになる」と言うエリアも有り、こちらは上とは逆に復興完了まではどうやっても行けない。そのどちらであるのかは初見では分からない。
  • 仲間加入の選択肢の意味合いが薄い
    • 本作では「特定のキャラクターを仲間に加えるかどうか」と言う二択が発生するイベントが多く存在し、それによってストーリーの流れが変化するように見える(実際そのようなプロモーションが行われていた)。だが実際には、この選択肢の結果で後のシナリオが変化するような事は基本的になく、『伝説のオウガバトル』のようなマルチシナリオ的な楽しみ方はできない。
      • そもそも仲間にしない選択肢を選ぶメリットが薄い。一応、仲間に加える事を拒否した場合には引き換えにアイテムや資金が手に入る事もあるのだが、そこまで貴重な品は手に入らない。ゲーム的な有利不利を考えれば、仲間にする以外に有り得ないと言う状況になってしまっている。
      • さらに、改心の素振りを見せたキャラクターや、結果的に敵対しただけで大して悪くもないキャラを処刑するかどうかなど、プレイヤーの心理的にも実質的に一択でしかない選択肢も非常に多い。
      • 選択肢無しで強制的に仲間になるキャラクターや加入を断っても処刑されないキャラクターも多く存在するが、それらと選択肢が必要なキャラクターとの差は明確ではない。外道プレイ・縛りプレイのような楽しみ方をするにしても中途半端。
  • 成長タイプ関連
    • 前提として、前述した通り、ユニットの能力値はクラス・成長タイプ・レベルが同じなら常に同じであり、固有キャラでも傭兵でも同じである。
    • 傭兵は雇用時に自由に成長タイプを設定できるが、固有キャラはレアアイテムの「イデアの手鏡」を使う必要がある。つまり(能力値の有利不利を考えられる知識があるなら)適正な成長タイプを持たず専用クラスではないキャラは、実質的に傭兵より使い勝手がよくない、と言う事になってしまっている。これは、固有キャラが好きなプレイヤーには決して小さくない問題と言える。
    • また、成長タイプ2つを同じもので重複させると 2つ目のタイプの伸び補正が半減する 点も無視できない。
      • この点はチュートリアルで明確に説明されないため、この罠に知らず知らずの内に引っかかってしまうと(マイナス補正は変わらないため)その分損をしてしまう。
        しかも、このような成長タイプを持つ固有キャラは実に13人も存在する*15
      • 成長するにつれて次第に差が出てくるため、特に下記のオンラインバトルで勝ち抜くためにはこの仕様に対する理解が不可欠。幸い、後半になれば手鏡を勲章で購入出来るようになるので、対処は容易。
    • なお、こういった仕様上、本作では「クラスごとの個性」は明白だが「ユニットごとの個性」という概念は薄い。イデアの手鏡を前提にすると尚更である。 「好きなキャラクターを気兼ねなく使える」利点でもあるが、「豊富なキャラクターがいるが誰を使っても同じ」とも言えてしまう ため、好みが分かれる部分だろう。
  • オンラインバトルに潜らないと闘技場の商品コンプリートが面倒
    • オフラインステージでも初回攻略完了まではある程度まとまった量の闘技場コインが貰えるのだが、その後は貰えるコインの量が雀の涙レベルになってしまい、1日10戦*16しか挑戦できないオンラインバトルにて、他の誰かが登録した強いユニットを倒していかなければ厳しいと思える量のコインが必要になる。
      • アプデでコインが1500枚貰えるイベントも追加されたが、それでも焼け石に水と言わざるを得ない。
  • ライブラリのコンプリートにおける取り返しのつかない要素
    • 残念ながら、該当する要素が2つ存在する。
    • 「条件を満たしていない状態で特定の場所に入った場合に追い出されるイベント」があるのだが、 そのイベントすらも図鑑の登録対象である ため、コンプリートしたい場合はこのイベントをわざと発生させる必要がある。
    • そして、上記のイベントはシナリオを進める労力が必要になるのに対し、もう1つの「ノルベールというキャラの図鑑埋め」は 序盤で行う必要がある上、普通のプレイでは絶対あり得ない&手間のかかる縛りプレイを要求する 内容となっている。
      + その面倒な解放条件。ネタバレのため格納。 その条件が「“司祭の行方(推奨Lv8)”をクリアせずに“一角獣の覇王(推奨Lv40)”をクリアする」というもの。前者は最初にクリアするコルニア編の節目であり、後者はラスボス戦である。
      一目でわかる無茶な条件であるうえ、都合上 入手経験値に大幅なマイナス補正が掛かる格下の相手を狩りまくってレベリングする必要がある *17ため、条件がわかっていても非常に面倒。
      • そもそも、最初からこの条件を満たすためのプレイをすると本作のゲームプレイ体験に著しい支障を伴うのは間違いない。ライブラリはセーブデータが別でも共有されるため、あくまで2周目のやり込み要素と割り切った方が良いだろう。
  • 店で調達できる武具が有限&説明不足
    • 装備品の店在庫は二度と復活しない買い切り式で、実は調達できる数に限りがあるのだが、それが全く説明されない。
    • なお、十分な数がいるので問題ないが、砦で雇用出来る傭兵は解雇しても補充されず、それについてもやはり説明はない。
  • 守備兵の仕様
    • 前述の通り町を最大まで復興すると守備兵を置く事が可能で、それには大きなメリットがある。だが、それぞれのキャラが守備兵を務められるのは当然だが1箇所のみであり、そして町の数は固有キャラの数や自部隊の上限数より遥かに多い。その結果、全ての町に守備兵を置くためには「守備兵を務めるだけの初期レベル傭兵」を大量に雇用する必要が生じてしまう。
      • 当然、それらの傭兵達もキャラ選択画面には登場する。見た目の悪さもさる事ながら、特に「加入順」でソートした際に守備兵用モブと後半加入キャラがぐちゃぐちゃに混在して並ぶのでとても煩雑。
  • Switch版とそれ以外の機種のセーブデータ数の差
    • 作品情報を見て驚いた人も居るだろうが、セーブデータのスロット数に10倍もの差がある。
      これはゲームハード毎の仕様の違い*18故に仕方ない面があるものの、細かくセーブを分けたい人にとってはSwitch版のスロット数は物足りないものとなる。
      ゲーム性自体はSwitchの方が相性が良いため、この点が非常に悔やまれる。
  • 親密度会話関連
    • イベント会話と異なり、フィールド上での会話に終始しているうえ、ボイスも一切ついていない。せめて親密度3の会話だけでもフルボイスにしてほしかったという声も。
    • また、ラストステージ後半とクリア後の隠しステージで解放される隠しキャラ達は、その全員に親密度会話が一切用意されていない。
      「IFでもいいから見てみたかった」と感じたユーザーは数知れず。

アップデートで改善された問題点

  • ソードマン、ソードマスターの性能
    • ソードマンは高い命中率と回避率を併せ持つユニットとして重宝し、ソードマスターは二本の剣を装備して高い攻撃力を発揮できる…はずだった。
      だが、 二本目の武器は攻撃力上昇の効果がなく 、低火力で使いづらい不遇な存在であった。
      • 4月22日に実施されたアップデートで二本目の武器の攻撃力もある程度加算されるようになり、この問題は無事に解消された。

総評

優れたゲームバランス、魅力的な世界観とキャラクター、編成の奥深さなど、SRPGとして大切な点がしっかりと凝縮されている傑作。
幅広い難易度選択が功を奏し、初心者から上級者まで楽しむことができる。
SRPGというジャンルを好むプレイヤーや、ヴァニラウェアが手掛けた作品のファンであればぜひともプレイすべき一作と言えるだろう。


余談

  • 本作の体験版はSwitch版が2024年2月22日、他3機種版が翌日に配信。冒頭5時間、もしくはメインクエスト「司祭の行方」クリアまでをプレイでき、製品版を購入するとその続きから再開することができる。
    5時間という制限時間があるものの、 メニュー画面や編成画面を弄っている最中は残り時間が減少しない仕様 となっており、好きなだけ戦略を練ることが出来、販促効果は十分な成果が得られたものと思われる。
  • 本作は先着購入特典として、『十三機兵防衛圏』『オーディンスフィア』『ドラゴンズクラウン』をモチーフにした紋章セットのDLCが付属していた。
  • 本作の限定版モナークエディションにはオリジナルカードゲームが付属しており、その付録 のみ の宣伝案件をYouTuberのとりっぴぃ氏と愛の戦士氏が担当していた(動画リンク)。
  • 本作の主人公であるアレインを演じた浦和希氏は、本作発売の翌日に開催された第18回声優アワードで主演声優賞を受賞した。

最終更新:2024年09月28日 16:46

*1 戦闘は可能。

*2 ウェイト状態のユニットの行動速度に関係なく攻撃した側が最速で行動できる状態。

*3 「〇〇系の敵」「HP割合が一番低い敵」「前後列に並んだ敵」等

*4 リスト一覧からの選択式

*5 男女共に「熱血」「誠実」「粗野」「冷静」「無気力」「高潔」がそれぞれ3パターンずつ

*6 守備兵として配置したキャラもステージ出撃は通常通り可能。

*7 アレインは隠しキャラを除く全固有キャラとの親密度会話が用意されているため、その救済措置。

*8 行動順が回ってきた際に発動する赤色の技

*9 発動条件を満たすと発動する水色の技

*10 会話の発生対象キャラはステータス画面で確認可能。

*11 クリア後の要素で契約の儀式をリセットできるようになるため、コンプリートするために周回を行ったり儀式前のセーブデータを残しておく必要はない。

*12 最初の国だけはクリアしないと次に進めない。その後は特定の国境または港をクリアする事で侵入出来るようになる。

*13 経験者向けに言うなら、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のようだと言えばわかりやすいか。

*14 例えば、3番目の国を最終面以外全部クリアしてから2番目の国をクリアしても「次は3番目の国に行こう、そのためにはこういうルートを使うと良い」と言われる。当然プレイヤーもキャラクターもそんな事をとっくに知っているのにもかかわらずである。

*15 その中にアレインも含まれている。ただ、彼に関しては固有の強クラスであるが故にそれを実感することはないだろう。

*16 勝敗に関わらず10回。

*17 「司祭の行方」をクリアしなければコルニア以外の領地には行けず、名声をBにしてクラスチェンジで戦力強化する必要があるため、コルニア領内にある推奨Lv38のフリーステージを解放するための「ソームの町解放戦(推奨Lv38)」をクリアする戦力を整えるまでひたすら推奨Lv13のフリーステージを周回し続ける必要がある。

*18 Switchはセーブデータの保存領域をあらかじめ確保しておく必要があるという仕様。それ以外はセーブデータの数に応じてデータ容量が膨らんでいくという仕様。