グイン・サーガ 豹頭の仮面

【ぐいんさーが ひょうとうのかめん】

ジャンル ADV
対応機種 PC-8801
PC-9801
FM7
発売元 ビクター音楽産業/クロスメディアソフト
開発元 ジャスト
発売日 1987年4月
定価 7,800円
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 少しだがキャラがしゃべる
発売当時すでに古臭さあり
プレイする際は原作小説必須


概要

  • 栗本薫の長編小説「グイン・サーガ」の第1巻「豹頭の仮面」をゲーム化。
  • 亡国の王子レムスの視点で、ルードの森およびスタフォロス砦からの脱出を図る。
    • 原作の主人公である豹頭の戦士グインとは、原作どおり序盤で邂逅する。

ストーリー

  • 中原の王国パロに隣国モンゴールが奇襲をかけた。思いがけないルートからの侵攻にパロの守備軍は完全に不意を突かれ、なすすべもなく首都クリスタルが占領されてしまった。国王や王妃など国の重鎮が次々と殺害されていったが、「パロの二粒の真珠」と称えられた王族の美しい双子の姉弟リンダとレムスは王家に伝わる古代機械によって脱出に成功した。しかし、古代機械によって転送された場所はモンゴールの領内にある、悪霊が棲みつくルードの森であった。

特徴

  • コマンド入力式アドベンチャーゲームだが、画面右端に単語リストがあり、それらに限っては選択することができる。
    • 単語リストは動詞と名詞が混在している。単語リストには使用頻度の高いものもあれば、重大な局面で一度しか使わないものもあり、ゲームをクリアする上で重要なヒントも兼ねている。
  • 原作小説に忠実な作りになっていて、コマンドを入力するとほとんどの場合で原作内の文章がコメントとして返される。
    • 小説を読みながらゲームを進めることがコンセプトとなっているため、小説を読んで先の展開を把握しないと、ゲームの進行が大変困難になる。
  • ゲームは一部を除いて紙芝居形式である。1枚の絵が示され、その絵の状況に見合った正解のコマンドを入力すると物語が進行し、次の絵に切り替わる。
    • 他の類似したシステムのアドベンチャーゲームにありがちな、前の場面で何かやり残して次の場面に進んでしまうとクリア不可の詰んだ状態になる、ということはない。
  • アドベンチャーゲームではおなじみの「もちもの」という概念がない。
  • 開発は『天使たちの午後』『くりいむレモン』『エリカ』等のアダルト系アドベンチャーゲームを代表作に持つジャスト社。本作はアダルトゲームではないが、フォントがこれら諸作品から流用され、雰囲気がとても似ている。
    • そのため、ジャスト社が販売していた音声合成システム「ジャストサウンド」にも対応している。ごく一部であるがセリフの読み上げがある。

評価点

  • 1つの場面で正解のコマンドが入力出来たら次の場面に進む、という紙芝居のような形式であり、画面に表示された絵に集中してコマンドを考えることができる。
    • それでいて、原作を一読すればすぐ答えが分かるといった安直なものではないため、答えが分からず悩みながら小説を何度も再読することが多々ある。その点、読書の醍醐味を体感することができる。
    • アイテムや場所移動といった他のアドベンチャーゲームでは定番の要素を盛り込まず、原作を読むのと同じような一本道のストーリーをたどっていくことになるため、後に「問題点」で指摘する部分を除いては難易度は比較的低く、脱落者を減らそうという作り手の配慮がうかがえる。
  • ジャストサウンドの機能では不十分だが、それでもキャラが少し喋ることでアニメを視ている感覚に少しは近づくことができる。グインの声はなんだか若々しすぎる感があり、イシュトヴァーンは幼すぎる感があるが、リンダの声は声優を起用したかのような、アニメのヒロインに近い声である。なお、レムスの声は確認できなかった。

問題点

  • 主人公はレムスであるという設定が序盤から崩壊している。
    • グインがルードの森に現れモンゴールの騎士と戦う場面では、まさしく「たたかう」というコマンドが次の場面に進む正解である。実際に闘うのはグインでありレムスではないのに。
    • スタフォロス砦の塔にリンダ1人が閉じ込められる場面など、レムスがその場にはいない場面がいくつもあり、もちろんその場面でのコマンド入力はレムスの行動ではない。
  • 原作に依存する傾向が強く、原作本がないとクリアはほぼ不可能といっていい。たとえば、グインがスタフォロス砦の地下に連れていかれ、獰猛な大型猿と格闘を強いられる場面では、その戦いを傍観していた騎士のひとりであるオロが剣を投げ込んでグインにそれを使うよう促すことを知らなければクリアは到底無理だろう。
    • その時の正解のコマンドは「たすける オロ」である。前述したレムスの行動でないばかりか、これではまるでオロを助けるみたいな行動である。実際にはオロに助けられるのである。
  • 紙芝居のように場面が1枚ずつ切り替わる展開だったのに、先に倒したモンゴール兵たちの馬を探す場面にて突然「まえ すすむ」「みぎ いく」のような移動が必要な場面がやってくる。それまでのゲームの進め方が根底から覆されてしまうため、ここで移動のコマンドを入力することに気付かなければ、原作を何度読み返してもゲームは進まない。

総評

  • 1987年はADVやRPGが高難度偏重から娯楽性重視へと転換を進めた時期であり、本作にもそのような転換の意向が散見されたものの、結果的には理不尽な難易度で自力クリアが相当困難なものに仕上がってしまった。
  • ほぼ同時期に『ジーザス』が発売されたこともあって、BGMがなく、画面切り替え時の描画速度の遅い本作の時代遅れ感は顕著なものだった。コマンド入力式ADVとしても末期の作品であった。

余談

  • 本作はビクターが立ち上げたD-PHOTONというブランドの2作目である。1作目は『敵は海賊海賊版』で、本作と同じハヤカワ文庫から原作が出版されている。なお、同ブランドでの作品は本作が最後となった。

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1987年 ADV PC88
最終更新:2024年08月18日 05:34