この記事はSwitch版の内容を中心としています。そのため、コントローラー表記などにPC(Xbox/PSコントローラー)との差異があります。
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【いふふぁうんど】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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iOS 11.0 Windows(Steam) MacOS(Steam) Linux(Steam) Nintendo Switch
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メディア
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ダウンロード
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発売元
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Annapurna Interactive
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開発元
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Dreamfeel
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配信日
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iOS:2020年5月18日 Steam:2020年5月20日 Nintendo Switch:2020年10月22日
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定価(税込)
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iOS:700円 Steam:1,750円 Nintendo Switch:2,100円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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1個
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レーティング
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CERO:D(17歳以上対象)
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判定
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良作
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概要
開発のDreamfeelはアイルランドのスタジオ。1993年の西アイルランドのアキル島を舞台に若者たちの葛藤を描くビジュアルノベル風ADV。
原則1本道のADVであり、作品の主人公カシオがつけていた絵日記を垣間見る形でお話が進捗していく。
登場人物
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カシオ
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ブロンドのロングヘアが特徴の本作の主人公。23歳。首都ダブリンの大学の修士課程までを終えて故郷のアキルに戻ってきた。生物学的には男性、嗜好は女性というトランスジェンダーである。
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なおカシオはカシオペアからとった自称で、本名が別にある。
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母(ブリード・マキュー)、兄(ファーガル・マキュー)の2人と同居しており、父が死去するところから絵日記が書き始められている。
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家族に男性としてふるまうように要求されてきたがある日を境に家出をして、旧友のコラムが居つく「ビッグハウス」に住まわせてもらうようになる。
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絵をかくことと、宇宙物理学が好きで宇宙飛行士になることにあこがれている。博士号を取ろうとするが家族には反対されている。
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とあることがきっかけでいままでの絵日記を消しゴムで消そうとする。
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コラム
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眼鏡をかけたちょっとぽっちゃりした男性。カシオの同級生。
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バンド仲間とともに廃墟「ビッグハウス」を不法占拠しており、序盤で家出してきたカシオも同じくかくまう。
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彼も特に父親と揉めて外へ飛び出した身。面倒見がよく、自分と境遇の似ている若者仲間も一緒に暮らすに至った。
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マギーという叔母がいる。コラムひいてはカシオの数少ない理解者の立ち居地。
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ジャック
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コラムの同級生でバンド仲間。ややウェーブのかかった髪形が特徴。
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男性ではあるがコラムと交際している。
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シャンズ
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コラムとジャックのバンド活動につれられる形で、ビッグハウスに居つくようになった青年。
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斜めまっすぐに伸びる前髪が特徴。インドの生まれで本名は「イシャン」。
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カシオのことが気になっている。
システム
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基本的な操作方法
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一般的なADV同様、登場人物の対話をボタンで先に送っていくような場面はある。
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一方で一般的なADVとは若干操作方法が異なる場面もある。
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中盤までは、プレイヤーはSwitch画面に表示されるカシオの絵日記の文章やイラストを、スワイプ操作によって内容をどんどん塗りつぶしたり消したりしていく。
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ひととおり塗りつぶし(消し)終わると次のページやシーンへと移行し、またその次のでも消すとまた次へ…というのが主な流れ。
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なおプレイヤー側は塗りつぶしたり消したりする前の絵日記の内容が読めるため、物語の大まかな流れだったり、カシオがどういう経緯で日記を消す決断に至ったかを推察できるようになっている。基本は昔の出来事から塗りつぶしていくので時系列もあべこべにはなりにくい。
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その他、時間や場所や場面を、日記の要領で塗りつぶして切り替えていく操作も必要となる。
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終盤は一転して、カシオが絵日記を新たに描くパートに移る。このパートでは選択肢を選ぶこともできるようになるほか、プレイヤー側のスワイプ操作した場所に文章やイラストが自動的に配置されていく。
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ボタン操作も受け付けている。
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Xボタンを押すと全ページ自動で塗りつぶしてくれたり、Aボタン(あるいはBボタン)長押し+スティック操作でも塗りつぶしや消していく操作ができたりもする。
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なお絵日記には、アイルランドならではの用語が登場することがあり、そういった用語には脚注がついて追加の説明がなされていることもある。
評価点
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ストーリー性
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この時期のアイルランドで、他人種や性的少数者への理解が決して成熟してはいなかったことがきっちり描写されている。
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カシオ目線で、自分の性別に関して家族からの無理解と、数少ない理解者との対比で物語が進む。
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ネタバレ
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堅実に男性として手に職を就けさせようとする家族と、自分の夢との大きな乖離に苦しむカシオの心情も本作の重要なテーマのひとつである。カシオが自らの性質に関してきちんと葛藤しておりリアリティが感じられる。
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ただただ生易しい話ではなく、とある理由から数少ない居場所だったバンド仲間も空中分解し、一時期ではあるが居場所を完全に喪失してしまうシーンもある。
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またカシオはカシオなりに育ての母には感謝を捨てきれていない点があり、一概に自分を認めない周りの人間を憎んで終わるようなストーリーでもない。
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終盤は、きちんとそれらをふまえたうえで、登場人物たちが和解する内容となっており読後感も悪くない。
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日記を塗りつぶす、消していくというゲームギミックをうまく利用している
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中盤までは、自身の絵日記を消しゴムで消していくカシオが、後ろ向きな心情でいることもおおかた察することが出来るようなつくり。
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終盤に、絵日記を明確に処分するタイミングも描かれる。
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絵日記の文字や絵を消したり塗りつぶしたりだけでなく、写実的に描きこまれた背景を新たに塗りつぶしていくようなシーンもある。塗りつぶすことで天候を変えたり、時間を経過させてみたりできるといった要素は、本作の独特な長所である。
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ビジュアル面
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絵日記は消しているときに消しカスが出てきたり、消えそうで消しきれない鉛筆の線があったりと質感がリアルである。
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シナリオの進捗によって、絵日記を消していく時に出てくる消しゴムアイコンも段々と短くなっていく工夫がある。
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落ち着いた色合いの絵日記だけでなく、コラムと仲間たちがバンドをするシーンなど、ビビッドカラーで描かれる一幕もあり、コントラストがとれている。
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全体的にBGMはやさしめ。カシオの特徴を反映してか、どこか宇宙的な雰囲気のBGMもある。
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利便性
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Xボタンを押せばワンタッチで次の画面に切り替えることができる。わざわざスワイプするような作業がわずらわしく感じるときに便利。
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セーブが常に自動でされており、ソフトを中断したところで再開すればさっきまで読んでいたところからのスタートとなる。
賛否両論点
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唐突に宇宙飛行士カシオペアなる人物視点の場面が幾度も挿入される
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カシオの「宇宙飛行士になった自分」という空想のパートなのだが、初見だと空想ということも若干分かりにくい。
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このシーンには、精神的に追い詰められ不安定になったカシオの状況や、カシオの夢について間接的に説明する効果もあるだろうが、前後の日記の流れが寸断されるという弊害もある。
問題点
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物語の理解に差し障る要素
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全体的に序盤のキャラの説明が不足している。絵日記でジャック、シャンズのキャラ紹介がなされるのはわりと中盤以降。
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キャラがしゃべっているときに、どのキャラがしゃべっているかがキャラ名では表記されず、立ち絵の顔だけで表記される。
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早いうちに少なくとも、コラム、ジャック、シャンズ、マギー(コラムの叔母)の外観の特徴を覚えて識別できるようにしておかないと、物語の理解に差しさわる。
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カシオの兄のファーガルもちょくちょく絵日記に登場するが、いちいち作中で実兄であることを説明してくれない。
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主人公のカシオがトランスジェンダーであることも、物語の序盤から開けっぴろげにしている情報ではなく、カシオが実家の自分の部屋に戻るシーンをよく観察しないと気づくのに遅れやすい。
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クリア時にチャプターセレクト機能が追加されるのだが、逆に言うとクリアするまではそれが無く、セーブが自動なせいでちょっと前のシーンすら読み返せない。読んだが理解できなかった、読む前に誤って消してしまったなどの時、そのままクリアまで進める以外の選択肢が無い。
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クリア後に2周目を読み返すこと自体は簡単なので、もう1回読み直してみれば本作の理解が深まる可能性はある。
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日記を描くパートが若干独特
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このパートでは、画面スワイプによる入力推奨。カーソルを左スティックで動かしてA,Bボタン長押しでも日記を書けるが、こちらの入力方法だと文章が変なところで改行された読みづらい日記が完成してしまうことが多い。
総評
日記を消す・描くといった独特な演出で進んでいくシステムが目を引く。
まだLGBTQが世界的に認知されるよりもだいぶ昔の時代を舞台に、自分の夢や趣味思考への無理解に悩む主人公の目線から、生々しい体験をつづる内容のビジュアルノベルである。本作のディレクター・脚本担当であるLlaura McGeeがトランスジェンダー女性であり、実際に彼女が見た90年代のアイルランドが作中の世界に反映されている。
人物相関関係が初見ではいまいち分かりにくい点はあるが、最終的に自分を受け入れてくれる場所を見つけるという内容であり読後感はよい。
最終更新:2024年08月12日 04:02