Tetsujin RETURNS
【てつじん りたーんず】
| ジャンル | FPS |  | 
| 対応機種 | 3DO interactive multiplayer | 
| 発売・開発元 | シナジー幾何学 | 
| 発売日 | 1995年9月22日 | 
| 定価 | 8,580円 (税込) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | 3DO用審査:E(一般向) | 
| 備考 | 後にWindowsへ『鉄人リターンズ』として移植 (特典を追加した『プレミアムバージョン』あり)
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| 判定 | なし | 
| ポイント | 3DO初期のアート路線ゲームに続編登場 問題視されていたゲーム部分が大きく改善
 ムード重視から一転、映画的なシナリオ路線に
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| 鉄人シリーズ 鉄人 / RETURNS
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概要
3DO初期の専売タイトル『鉄人』の続編。
同作は発売直後から続編が予告されていたが、1作目の1年半後に実現することとなった。
前作は「アートとしての質は良いがゲーム部分には難あり」という、如何にも3DOらしいソフトであった。今作はそのゲーム部分にメスが入り、比較的真っ当なFPSとなっている。
前作で好評だったアート面は味付けが変わり、異なる趣となった。
あらすじ
前作で黒幕を破った鉄人は自らの意思をも抹消し、宇宙空間を彷徨っていた……
鉄人の体を回収した国家組織SCRは、極秘計画遂行のため、鉄人に適応する強靭な精神力の持ち主を捜していた。
同じころ、一人のテストパイロット(あなた)が月面ハイウェイの事故で重体に陥る。
脳波測定の結果、そのたぐい稀な意識が「最適」と判明。鉄人はパイロットの意識を組み込まれ、再び覚醒する。
一方、宿敵アンドロイドも何者かの手によって復活を遂げ、"鉄人"への復讐を決意。
数奇な運命が交錯し、新たな闘いの火蓋が切って落とされる。三つ巴のし烈なバトルが、今、始まった…
(取扱説明書「STORY」より抜粋)
特徴
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構成
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前作は一本のビルを舞台に最上階を目指すゲームだったが、今作は構成が大きく変化。シナリオの進行に合わせ、あらゆる基地を次々と探索する。
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途中には3Dシューティング面や高速奥スクロールステージなど、ミニゲーム形式の展開が挟まることも。
 
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次々と変わる敵勢力を打ち倒し、一連の事件の黒幕を倒せばゲームクリアとなる。
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クリア時間は横スクロールアクションゲーム並で、前作同様そこまで長くはかからない。
 
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武器
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鉄人が一度に装備できる武器は2種類のみ。前作は一般的なFPSのように数種類の武器を使い分ける必要があったが、今作は全く別のシステムとなっている。
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武器のカテゴリはエネルギー系と実弾系に分類され、それぞれ一度に一つずつ装備可能。
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一般的なFPS同様、いずれも弾数には制限がある。
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エネルギー系は時間経過で弾数が回復する。その代わり、実弾系に比べて威力が低い。
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実弾系は威力と引き換えに弾数制限があり、発射の際は一発ごとにリロードを要する。
 
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ステージ内には武器の支給スポットがあり、ここに立ち寄れば何度でも同じ武器を入手できる。
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実弾系は弾の充填も行える。他に充填の手段は無いため、限られた弾を次の補給地点までどう使うかが攻略のカギとなる。
 
 
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体力
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今作では、時間経過に応じて自動でHPが回復するようになっている。
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前作のようにセーブ地点で回復することはなく、瀕死の際に一度だけ攻撃に耐える機能も廃止された。
 
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その他の操作
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Bボタンを押すことで、防御用のシールドを貼ることが可能。ボタンを押してから一定時間だけ被弾を阻止してくれる。
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守れる量はゲージで管理されており、これが空になると防御不能となる(時間経過で回復)。
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連続で使用するまでにはインターバルがあるため、連打しても完全防御はできない。
 
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LR同時押しでターボ(ダッシュ移動)が可能。
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前作は使用回数に制限があったが今回は廃止。好きなだけ使えるようになった。
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ちなみにこの操作は説明書にしか載っておらず、チュートリアルなども行われない。にもかかわらずゲーム後半ではこれが無いと突破できずに詰む場所が存在する。説明書無しの中古品を買ったプレイヤーは要注意である(というか、ここで初めてダッシュ移動できることを知るプレイヤーも多いのでは……)。
 
 
評価点
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コマ送りレベルの描画だった前作から一転、アクション性が十分担保される速さで動けるようになった。
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当時のCSゲーム機向けFPSとして特段速いわけではなく、後述するように粗もあるのだが、前作が前作なだけに続けて遊ぶと感動を覚えるレベル。
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特に改善されたのは移動速度。
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これに関しては同時期のゲームと比べても特筆できるクオリティとなっており、軽快かつ俊敏にステージを移動できる。
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特に敵がほとんどいないステージはフレームレートも高い。ここでターボすると爽快で、3DOソフトでもこうした高速展開はあまりない。
 
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この移動速度ほどではないものの、旋回や発砲も前作よりスムーズで、同時期のFPSとしては及第点の仕上がりである。
 
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武器システムは独自性が強く、そのバランス設定も丁寧。
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実弾系武器の威力は極端に大きいため、気持ちよく敵を倒せる。
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エネルギー系武器で敵を倒すと数回の連打は必須となるが、実弾系なら大半の敵を一発、硬めの敵ですら2、3発で葬り去ることができる。敵に囲まれてもたやすく突破できて爽快。
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それでいて弾数は10発前後のものが多く、使い所を見極めるのは必須と言って良い。うっかり使いすぎてしまい、補給ポイントまでヒヤヒヤしながら進むことも……
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また当時のFPSでは珍しく、リロード必須にすることでバランスを取っているのも特徴である。充填のタイミングを見極める楽しさがあり、戦闘に緩急をもたらしている。
 
 
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起伏のあるストーリー
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今作の敵は国際組織SRC・前作ラスボスの2勢力が存在し、加えて立ち位置のわからない仲間ロボ「ロビィ」も登場する。各々の思惑が入り乱れて戦いの目的も二転三転し、緩急のある展開がプレイヤーを待ち受ける。
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それでいてシナリオや伏線は綺麗にまとまり、見応えのある仕上がりとなっている。
 
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この都合、今作は単純な面クリア型を採用せず、ステージ構成は不規則に変化する。先の展開が予測しづらく、攻略への期待が高まりやすい。
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冒頭のチュートリアルを終えると突然冒険の舞台が変わり、世界観は探索中に見られるディスプレイから少しずつ明かされていく。ミニゲームの発生を始め、時には『メトロイドシリーズ』よろしく爆発直前の基地から脱出するなど、盛り込まれたゲーム性は豊富である。
 
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難易度曲線も入念に考えられている。
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序盤は一本道でサクサク進める面がメインだが、終盤は気を抜くと道に迷う大迷宮が待っており、単調なゲームに陥るのが避けられている。
 
 
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前作の反省か、UI面は特に力が入っていて遊びやすい。
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マップ表示や武器切り替えは他のFPS同様、ワンボタンで操作できるようになった。
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特にマップ表示はアイテムを必要とせず、攻略の快適さは劇的に上がっている。
 
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攻略やストーリーに関係する要素はすべてステージ内のディスプレイで管理されていて、マップでもこれが一律表示される。
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これは「ディスプレイの無い場所は立ち寄る必要が無い」という事も意味しており、探索の手間が大きく省けるようになっている。
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オートマッピングしてくれる範囲も広く、まだ視線に映していない場所もどんどん表示してくれるので、スピーディに探索を進められる。
 
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当時のFPSには珍しく、敵が近づいた際に検知してくれるレーダーを実装。
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背後から理不尽に殺されるのはFPSあるあるで、特にこの時期のゲームでは多々あることだが、これにより不意打ちされることが少なくなり、索敵の手間も省けるようになった。
 
 
問題点
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アート性の減少
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今作で最も多く指摘されている問題点。
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3DCGの質感を押し出した独特の空気は健在だが、前作とは方向性が異なり、尖った個性は薄れている。前作の唯一無二な雰囲気に魅入られたファンからは「没個性的になった」と否定する声が多い。
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評価点と併せ、「ゲーム性と引き換えに大切な部分を失ってしまった」と評する声もある。
 
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前作は実写ムービーと3DCGを織り交ぜた特撮描写が不思議な没入感を生み出していたが、今回は前作の回想シーンを除いて実写は用いられておらず、単なるCG映画になってしまっている。
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明確にシナリオが加えられたために、不気味で謎めいたムードも薄れてしまった。
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前作は嶋田久作氏による淡々とした語り口も独特の味わいを生み出していたが、今作には流用シーンを除いて一切登場しない。ボイスもすべて本職の声優が担当しており、俳優ならではの味が損なわれている。
 
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ただし飽くまで独創性が薄れただけで、当時の3DCGを活かした王道SFとしては決して悪いわけではない。
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CGの質は向上しており、ハードSF世界の雰囲気づくりは今作もいまだ健在である。先述の通りシナリオも起伏が十分に盛り込まれており、王道ながらも決して凡庸には終わっていない。
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今作の批判点は前作との比較に依る部分が大きく、単体で見る分には十分見どころが盛り込まれている。やはり前作が尖りすぎだったというべきか……
 
 
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前作から改善されたとはいえ、FPSとしての基本的な出来は突出しておらず、粗も見受けられる。
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先述の通り、格段に速くなったのは移動速度だけであり、攻撃を始めとする他の処理はそれほど優れてはいない。
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特に敵の動きはコマ数が少なく、戦闘面の爽快感には難がある。
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敵の被弾エフェクトがほとんどなく、攻撃が当たったかどうかがわかりづらい。
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後述するラスボス戦でもこの問題は大きい。それどころかボス戦全般で問題になる要素である。
 
 
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自動回復機能により、今作の攻略を突き詰めると頻繁に待ちゲーとなる。
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瀕死になったら適当な場所で待機するのが得策となり、ゲームテンポが悪い。
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特に酷いのは各種ボス戦。
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プレイヤーの最適解はただ一つ。敵に弾を撃ちこんだら全力で逃走し、回復するまで手元で本でも読んで時間を潰すことである。
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今作の敵は一定距離離れると消滅し、再び近づくまで何もしてこなくなる。
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そして十分回復したら、倒せるまで同じことを繰り返す。もちろん長期戦は必至。
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今作のゲームバランスはこの回復システムを前提に作られており、初見でまともにやり合うのは得策では無い。クリアを目指そうものなら、このように卑怯でしょっぱいヒットアンドアウェイを繰り返すハメになる。
 
 
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上記の問題に輪をかけて、ラスボス戦は不親切な問題が待っている。
    
    
        | + | 攻略のネタバレ注意 | 
このボス戦では実弾の最終装備しか攻撃が通らず、弾が切れるとその場で詰む。
それでも戦いは続行し、仕様に気付ける導線も少ないので、プレイヤーによっては詰みポイントとして立ち塞がる。
一応ゲーム終盤にヒントはもらえるのだが、いちいち武器の名前を憶えていなければならず、弾数制限のある武器だとは気づきづらい。まず被弾エフェクトが特に変化しないので、通常武器が効いていないことを察するのも困難である。
幸い、セーブポイント近辺で該当武器は手に入るため、一切進めなくなることはない。
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その他の問題点
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こちらの体力が尽きかけていても気付きづらく、危機管理に支障が出る。
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瀕死状態によるエフェクトの変化は一切なく、いきなりゲームオーバー演出が流れて意表を突かれることがままある。
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過剰なエフェクトで耳障りだった前作よりはマシなのだが……
 
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一部の重要な会話ムービーを無視してゲームを進められてしまう。
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「条件を満たさないと施設外への脱出ができない」「主人公と同じくモビルの素材にされた人間がいる」など、重要な会話の一部は通らなくてもゲームを進められてしまう。前者は一度ゲームを進めると聞けなくなり、ストーリーの理解にも影響が出る。
 
 
総評
前作はアートとしての支持があった一方、ゲーム部分のお粗末さは否めなかった。
一方の今作はゲーム部分を大きく改善し、無難な遊びごたえが担保されている。システム面も独自の工夫が盛り込まれており、当時の主だった海外産FPSとはまた違ったゲーム性が味わえる。
反面、今作でしばしば批判されるのが「アート方面の魅力が減った」という点である。
先行きの見えない不気味さを押し出した前作に対し、今作は明確なストーリー展開を伴った映像作品となっており、良くも悪くも一般寄りの路線になったのが否めない。
前作の空気感を求めたプレイヤーからはこの点を否定的に扱われている。
しかし方向性が変わっただけで「質感にこだわったCG製メカニック」「没入感を意識したムード」という根本は変わっていない。今作もまた、雰囲気ゲーとしての魅力は別物ながらも備えている。
もしサクッと遊べる映画的ゲームを3DOに求めるのであれば、前作未プレイでも(もしくは前作未プレイこそ)試す余地のある一作である。
最終更新:2024年08月26日 00:24