いるかにうろこがないわけ
【いるかにうろこがないわけ】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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月刊湿地帯
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開発元
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わくわくゲームズ
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発売日
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2024年7月25日
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定価
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300円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC3+
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備考
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Steamにて無料版が先行配信されている
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判定
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良作
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ポイント
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シンプルだがストイックなゲームデザイン コンパクトなゲームだが熱中できる
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ストーリー
むかし、いるかにはうろこがあったよ。金剛のようなうろこ
そのいるかが、今日ではつるつるの肌をあらわにしているね
それはね、わたしたちの遠い祖先、ひとりの女の仕業なのさ
(ゲーム内オープニング画面から引用)
概要
『ファミレスを享受せよ』で人気を博したインディーズディベロッパー「月刊湿地帯」による短編シューティングゲーム。
本作は2023年11月3日にSteamにて無料公開されているが、Switch版ではいくつかの要素が改善されている。
ゲーム内容の解説
シンプルな2Dシューティングゲーム。ゲーム内容を概説すると以下のようになる。
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固定画面形式のシューティングゲーム。画面のスクロールはせず四角形のフィールドの中で自機を操作する。
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自機は左スティックで360度好きな方向に移動でき、右スティックで攻撃方向を指定する。
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自機の弾数は1発のみ。残弾を回復させるには条件を満たす必要があり、撃った弾が外れてしまうと基本的には被弾が確定となる。
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1~5体いる画面上の敵を全て倒すとステージクリア。本作ではこのステージの単位は「ページ」と呼ばれるため、本記事でも以降それに倣う。
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全64ページ。4ページクリアごとに武器とスキルの付与チャンスがある。
以上を踏まえて、以下にゲームの細かい仕様を解説する。
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ゲームを開始すると、プレーヤーキャラクターである魚と1~5体の敵が表示され、敵を全滅させることで次のページへ進める。
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敵の数はページによって決められているが、敵の種類や配置はランダムとなっている。
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敵はページが進むほどアクションが複雑化し、攻撃も激しくなっていくが、HPは全て1。
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魚には「イノーチ」と呼ばれるライフが初期値で3つ与えられている。
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敵や弾に触れるとイノーチを1つ失い、短時間無敵になりつつ大きく吹き飛ばされる。
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イノーチが全て無くなるとゲームオーバー。コンティニューはなく、再プレイ時は1ページ目からとなる。
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ゲームオーバー画面ではおまけイラストがランダムで表示される。
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右スティックで攻撃の方向を指定し、R/ZRで弾を飛ばして攻撃する。
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右スティックによる照準の角度はオプションによって8方向・16方向・32方向・無制限のグリッド設定が可能。
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一見すると無制限の方が好きな方向へ攻撃できて有利そうに見えるが、右スティックによる照準がブレやすくなるのでプレーヤー側に正確なエイムが要求されるようになる。
射角のグリッドを粗くし、細かいエイムは本体の移動で行うのも選択の1つ。
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前述の通り、自機の持ち弾数は1しかない。
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弾数を回復させるには「敵を倒した場所に出現する弾丸を回収する」「ダメージを受ける」「残弾回復スキルを使用する」などのアクションが必要となる。
つまり、撃った弾を外し、残弾回復スキルや攻撃系スキルも持っていない場合、次弾を撃つにはわざとダメージを受ける必要がある。
これは本作のゲーム性を象徴する要素であり、弾を撃つことに相当の重みがある。
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敵本体に体当たりすることでも敵を倒せるため、いざとなれば敵の弾を食らうより敵に体当たりを仕掛けた方がお得。
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ちなみに固有の敵に付随する壁(バリア)の方に当たった際は、ダメージのみ発生し弾の回復は行われない。
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L/ZLで「スキル」を使用することができる。
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初期状態ではスキルなしなので、下記のボーナス画面で取得してから使用可能となる。
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スキルは発動に必要なエネルギーがそれぞれに設定されており、敵を倒すかダメージを受けるとエネルギーが1増加する。
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スキルは多岐にわたるため全ての紹介は割愛するが、「敵の動きを一瞬止める」「残弾を回復させる」「短射程の弾を一発発射する」「高速で体当たりを繰り出す」「イノーチを消費して周辺広範囲にダメージを与える」など様々な種類がある。
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4の倍数のページをクリアするとボーナス選択画面になる。
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ボーナスは「ランダムに選ばれた武器1つ+おまけでイノーチ」「ランダムに選ばれたスキル1つ+おまけでイノーチ」「何もしない(おまけなし)」の3種類から選択できる。
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武器やスキルは現在使用しているものと入れ替える形になる。後半ステージになるほど強力なものが出現する。
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イノーチが最大の状態でおまけのイノーチを獲得すると、イノーチの最大値が1つ増える。
ただしその時点で増えるのは「最大値の枠のみ」であり、増やした枠にイノーチを補充するには続く4ステージをノーダメージで進む必要がある。
イノーチは最大5まで増やせる。
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「イノーチは欲しいが今の武器やスキルを変更したくない」という場合はプレーヤーの判断次第でおまけのイノーチを諦め「何もしない」を選ぶことも必要になる。
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16の倍数のページでボスキャラクターが出現する。変則的な動きや激しい攻撃を行うがHP自体は1しかない(一部例外あり)。
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ボスページも4の倍数なのでクリアするとボーナスが得られる。
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各ステージの最下部には一行の文が表示されている。
これが本作のタイトルでもある「いるかにうろこがないわけ」を語る物語となっており、全64ページの文を順番に繋げることで1つの物語として完成する。
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プレイ中は読むひまが全くないが、一度でも表示させたことのある文はタイトル画面から閲覧できる。
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全ページをクリアすると、エンディングとしていくつかのイラストと短い後日談が表示され、2つのモードが追加される。
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クリア後の特典モード
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1つは「サウンドギャラリー」。ゲーム内で使用されているBGMが聞ける。
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こちらも「ファミレスを享受せよ」同様おいし水による作曲で、今回もローファイ風の聞きやすい音楽となっている。
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もう1つは、「いるかモード」。
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このモードでは4の倍数ページのボーナスが発生しない。つまり初期装備の貧弱なショット、スキルなし、イノーチ回復なしで挑むという高難度モードとなっている。
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尤も、本当にボーナスが利用できないかどうかは、筆者が30ページくらいまでしか進めていないため不明。いるかモードの後半ステージないしクリア後の特典を目にすることができたシューターがいたら編集求む。
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ちなみに、いるかモードになっても自機は魚のまま。
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評価点
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プレーを繰り返し促す様々な工夫があり、ワンコインゲームだが熱中できる。
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1ページ数秒、1ゲームを通しても数分というテンポの良さ。
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敵の種類や配置、ボーナスの内容(武器やスキル)にランダム性があるため、ゲームオーバーになっても「次はもっと先へ進めるかもしれない」という期待感が持てる。
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よく練られたゲームシステムとゲームバランス
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「ページごとの操作開始直後は敵が攻撃してこない」という特徴があり、敵が攻撃を仕掛けてくる前に速攻で1~2体の敵を倒せれば趨勢が大きく有利に傾く。
その一方で弾を外すことは被弾することとほぼイコールという仕様なので、焦って弾を撃ち外してしまうと逆に自分の首を絞めてしまう可能性もある。
この「できれば時間をかけずに仕留めたいが、弾は確実に命中させたい」というジレンマが強いゲーム性を生み出している。
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ゲーム内容の解説では触れなかったが、弾の射程もデフォルトではかなり短い。弾を確実に命中させるためにも、危険を冒して敵に接近する必要がある。
長射程の武器も存在するが、長射程の武器を使用したところで着弾した弾丸を回収するためには着弾地点へ移動しなければならないし、そもそも敵との距離が遠ければ弾の命中率はそれだけ下がるため射程が長いことが一概に利点になるとも言い難い仕様となっている。
これらの「弾の射程、弾丸の回収、弾の命中率、被弾の危険性」といった様々な要素が絡み合い、シンプルなゲームシステムでありながら奥深さを生み出している。
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ボーナスで得られる武器やスキルがランダムなことと、イノーチが欲しければ武器かスキルを変更しなければならないなどのシステムは、最も使いやすい装備でゴリ押しするだけのゲームになることをある程度回避するものとなっている。
なかなか欲しい武器やスキルが来ないもどかしさがあるからこそ欲しい装備が手に入った時の嬉しさがより強まり、ある種の中毒性を生んでいる。
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この点を意識しているかは定かではないが、作者も「特別強い武器があっても問題はないと思っています」とブログで述べている。
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作者の おいし水によるユニークなストーリー。
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タイトルにもなっている「いるかにうろこがないわけ」は物語形式で明らかになっていくが、「ファミレスを享受せよ」で評価されたユニークな言葉選びの文章は健在。
自機の体力の名称「イノーチ」からしてユニークで面白い。
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物語は進んだステージに応じて1行ずつ解禁されていくので、これもプレー継続の原動力になる(言い換えれば、この物語に「この文の続きが読みたい」とプレーヤーに思わせるだけの魅力があるということでもある)。
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なお、Steam版では閲覧済みの文をまとめて表示するモードが無かったため、敵と戦いながら文章を読まないといけないという非常に大きな問題点があったが、これが改善されたのがSwitch版の最も大きな改善点と言えるかもしれない。
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なお、ゲームオーバーになると短いコメントつきのおまけイラストがランダムで表示される。
これもまたユニークかつシュールでおもしろく、ゲームオーバー時のストレスを和らげてくれる。
賛否両論点
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クリアできない時の救済措置が一切ない。
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ゲームバランス自体はよく調整されており、根気強くリトライしていけば少しずつ上達していくし、敵の配置やボーナスの内容にランダム性があるため、ゲームに慣れたプレーヤーなら運によってもそのうちクリアできるであろう難易度になっている。
特にステージ1~16は慣れるとサクサククリアできるようになり、上達を顕著に実感できる。
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反面、低難度モードやコンティニュー機能、最終ステージまで到達できなくても物語を閲読できる救済措置などはなく、ライトゲーマーには厳しいストイックな仕様。
問題点
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エンディングで表示される文章やイラストはギャラリーに保存されない。
Switchであればゲーム機本体の機能で撮影できるが、そのあたりはプレーヤーに丸投げした形となる。
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もっとも、クリア後にエンディングを自由に閲覧できるようになるゲームというのはそう多くはないためそれほど大きな問題点ではないかもしれないが、裏を返せば後から改めて見てみたいと思わせる文やイラストとなっている。
総評
「ファミレスを享受せよ」で評価されたシュールな世界観やユニークな文章は現在。おいし水が描く独特の雰囲気が好みであれば本作も楽しめるだろう。
それでいて今作はアクション性が強いゲームとなっているが、それでも基本的には肩の力を抜いてミニゲーム感覚で遊べるものとなっている。
暇潰しに軽く遊べるワンコインゲームを遊びたいという人にもお勧めできる一作。
余談
『ファミレスを享受せよ』のページにて月刊湿地帯のゲームは全て1人で製作されていたと紹介したが、
本作のSwitch版よりプログラマー1人を加えた2人体制での製作となっている(Steam版は1人で製作されている)。
最終更新:2024年11月06日 16:31