THE カードバトル ~Eternal Destiny~

【ざ かーどばとる えたーなる ですてぃにー】

ジャンル アニメーションカードバトル
対応機種 Nintendo Switch
メディア ダウンロード専売
発売元 D3パブリッシャー
開発元 おふぃす5656
発売日 2021年9月30日
定価 1,980円
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 ゲームバランスが不安定
スルメゲー
ポイント あのKOTY携帯版大賞作品の続編
バランスの悪さは相変わらずだが遊ばせ方が大幅変化
THEシリーズ


概要

携帯ゲーム版クソゲーオブザイヤーの2014年大賞の座に輝いたデジタルトレーディングカードゲーム『インフィニタ・ストラーダ』(以下KOTYでの略称だったタダと表記)のマイナーチェンジ版。
タダは執筆不可のソシャゲと判断され現在当Wikiから削除されているが、かつて存在した記事がソーシャルゲーム/スマホゲームカタログWikiに移転しているので、まずは比較情報として目を通してきて頂きたい。(参照)

本作の前にも2016年にSteamで配信された『Eternal Destiny』、Steam版をベースに基本無料ソフトとして2018年にPSVで配信された『インフィニタ・ストラーダ 華』の2作品が存在するが、本項ではこの2つの作品のシステムを統合し更なる追加要素を加えた、開発元曰くシリーズ最終バージョンであるSwitch版について記述する。


システム・ルール

カードの設定

  • いわゆる「モンスター/クリーチャー」のカードのみ存在し、以下のパラメータが設定されている。
    • カード同士の戦闘時の、攻撃側が参照する「AP」、防御側が参照する「HP」、配置時に必要な「COST」。
    • 属性:サイバーズ(人間/黄)、ケルズ(天使/緑)、デモンズ(悪魔/赤)の3種類。
    • 種族:8種類あり、カードによっては1枚のカードが最大4種族を兼ね備える。
      神、天使、悪魔、精霊、不死、人間、機械、旧神。
    • 属性:16種類あり、カードによっては1枚で最大6属性を兼ね備える。
      地、水、火、風、光、闇、善、悪、力場、物理、非実体、炎、冷気、電気、酸、音波。
      • タダでは雑誌「電撃PlayStation」とのコラボカード専用属性として、「電撃」が存在していたがカード諸共削除。
    • 特技:場で常時発動する効果。カードにより最低2種類、最大6種類を兼ね備える。
    • スキル:場への配置後、スキル固有のコストを追加で消費して任意で発動できる効果。
      • タダに比べて全体的に効果対象が制限されたりコストが上昇し、汎用性が下がっている。
  • 「属性」という名前のパラメータが2つあるが、ゲーム内のヘルプによればこれが正式名称である。
    • 「サイバーズ・ケルズ・デモンズ」は「勢力、陣営」などの表記が相応しくはないだろうか…とずっと突っ込まれ続けていたが、とうとう改められることはなかった。
      (以降の本記事では、区別の都合上「勢力」と呼称する)
    • ヘルプのテキストに従うと勢力の方は「カード属性」、16種類ある方の属性は「スキルに対する属性」を指すらしい。 表現が重複していてダサい。

バトルの進め方

  • デッキは同名カード4枚まで・合計20枚まで、ゲーム開始時の手札は5枚。
  • プレイヤーは「指揮官」となり、カード同様にHPが設定される。
  • ターン開始時、デッキからカードをドローし、COSTの消費源となるMPが自動で補充される。
    • ドロー枚数は、手札が5枚以上なら1枚。先攻もドローするので、開始時の手札は事実上6枚。
    • 手札が4枚以下なら、手札が5枚になるまでドロー。(もちろんデッキ枚数という上限はある)
  • 場はプレイヤー1人がカードを5枚まで配置できる「スロット」によって構成される。
    • スロットにも《サイバーズ/黄》《ケルズ/緑》《デモンズ/赤》《中立/白》の4色の属性が存在し、中立以外ではスロットの色と置かれたカード勢力との相性(マッチング)によるステータスの増減が発生する。
    • いわゆる「召喚酔い」があり、「急速展開」の特技を持たない限り、配置されたカードはそのターン中に行動できない。
    • スロット配置済みのカードに対して、カードを重ねることで強化が可能。
      • 支援:重ねたカード分のAPを上昇させる。『遊戯王カードゲーム(OCG)』で言い換えるなら「装備魔法扱いになるモンスター」のようなもの。
      • 進化:同名カードを重ねて、AP・HP両方を上昇させる。こちらは「手札から場へ重ねると融合するモンスター」といったところ。
  • 敵のカード配置済みスロットを選択すると、カード同士の戦闘となる。防御側のHPを攻撃側のAP分減らし、HPがゼロになると墓場へ置かれる。
  • 空きスロットを選択すると「指揮官攻撃」となり、敵指揮官のHPを自分のAP分減らす。
    • 指揮官攻撃されたプレイヤーは、カードを空きスロットへ移動させることで「機動防御」を行うことができる。
      • ただし、機動防御でカードのHPを超過したダメージは、指揮官へ貫通する。
    • 敵指揮官のHPをゼロにするか、敵のデッキ・手札・場のカードが全て墓場へ置かれた場合に勝利。ギブアップコマンドもある。
  • 元々対人戦のみのルールではあるが、手札からカードを捨ててスキルを発動するルールは廃止されている。

ここまでがインフィニタ・ストラーダから続くシリーズの基本ルール。以下がEternal Destiny以降で追加された新ルールとなる。

  • デッキ枚数下限の追加
    • タダではこの制限がなかったが、下限が10枚に設定された。
      • この変更により、1ターン目で必ず特定のカードが絶対に揃うということは起こらないようになっている。
  • 指揮官特技
    • 好きなカードを指名できるスキン以上の意味がなかった指揮官に、全カードそれぞれレアリティによって1から最大5つの「特定の勢力からの指揮官攻撃を回避」、「〇ターン特定の種族のAPを上げる」といった効果の指揮官選択時専用の特技が設定され、使用するデッキや相手の対策に合わせて変える戦略性が生まれた。
    • 指揮官に選択可能となる条件は同じカードを4枚集めること。
  • カードの成長
    • 同じカードや育成素材を重ねることでレベルを上げ、カードのステータスを強化出来る。一定レベルに到達すると新スキルを習得。
      • 原作で強力だった急速展開や墓場送りなどのスキルは軒並み成長して習得する枠に回され、初期から使い放題とはならなくなっている。
      • 初期の上限は60だが条件を満たすことで最大1000まで育成できる。
    • レベルの他に特技とスキル、指揮官特技もそのカードでエネミーを一定数倒すといった行動で経験値が溜まり、1ランク上の性能に強化される。
      • スキルはタダに比べて全体的に効果対象やコストの制限が厳しくなっているが、これも成長により若干緩和される。

ゲームモード紹介

  • シナリオ
    • ADV形式でストーリーを読み進めながらバトルをクリアしていくモード。
    • タダ時代から存在していたメインシナリオの「Infinita Strada 秘蹟の探索」の他、Eternal DestinyのDLCシナリオだった「鬼神討伐」「セイレムの魔女団」「悪魔の小箱」「天使の梯子」「竜の夜明け」に加え、本作で追加された「蛇の紋章」の7篇が収録されている。
  • ダンジョン
    • 対人戦に代わりEternal Destiny以降のメインとなっているモード。10フロア毎に待ち受けるボスカードを撃破して、そのカードを集めつつ育成素材を収集する。
      • 曜日毎に設定されたダンジョンに潜る「デイリー」、指定されたカードをデッキに加えないと探索が出来ない「制限」、メインシナリオクリア後に挑戦できる星4、5のカードが多数出現する「EXTRA」、スロットがカード属性ではなくスキルに対する属性になっていてマッチングのゴリ押しが難しい「属性」の4つの系統のダンジョンが用意されている。
    • フロアボスとは別に毎週更新されるレイドボスという、撃破する度に強くなる星5カードが指揮官の3体の特殊なボスが徘徊している。レイドボスは5ターンの制限があり、撃破出来なかった場合は次の遭遇時にHPが引き継がれる。
      • レイドボスは倒してもカードは手に入らないがその分ドロップする育成素材の量が多い。
    • 指揮官バトルというランダムなカードとマインスイーパのようなミニゲームで対戦するイベントが発生することもある。育成素材の他、女神の石と元帥杖というこの形式のバトル限定の特殊なアイテムが手に入る。
  • CPU戦
    • 「Beginner」「Normal」「Excellent」「Area of the gods」の4つの難度のCPU戦に挑戦出来る。
      • Excellent以上で勝つと1戦毎にそれぞれ限定のカードパックが入手可能。
  • チャレンジ
    • 本作に於ける唯一のオンラインモード。6つのカップで毎週変更されるボス相手に規定ターン以内に出したダメージ量を競う。
      • その週のランキングの上位になると報酬が貰える。中にはこのモードの報酬限定のカードも存在する。
    • なお、対人戦は存在しない。
  • special
    • CPU戦より難度の高い特殊な形式のバトルを楽しめるモード。
    • ダンジョンの指揮官バトルで入手した女神の石を使い5体の女神にスキルを習得させ、お互いオートで発動する支援や妨害を受けながら戦う「女神」。
      指定されたカードを規定枚数デッキに入れて同カード使いのCPUとバトルし、勝つとそのカードのレベル上限を上げられる「Level cap breaker」。
      指定されたカードに加え指揮官もそのカードで固定された状態で戦い、勝つとそのカードの勢力属性が異なるアナザーカードを入手できる「Another battle」の3つのルールでプレイできる。
  • ショップ
    • ストーリーやダンジョンで入手できるゴールドを使用してカードパックや育成素材を購入できる。
    • 更に指揮官バトルで手に入る元帥杖を使って指揮官に任命できるカードのスーパー指揮官と引き換えられる。
    • e-shopに接続し、DLCとして星4〜5のカードが入った有料パックを購入可能。
      • あくまで時短要素であり、収録されているカードは全てゲーム内でも全て手に入る上に開封時にカードを選択できるので、これまでに比べるとかなり良心的な設計。

評価点

いい意味で大味なゲームバランス

  • 最初にはっきり申してしまうと、ゲームバランスは元の作品から相変わらず非常に悪い。
    • 育成による制限があるのでタダほど初めからやりたい放題とはならないものの、レアリティによるステータスの圧倒的な差や、凶悪な先攻1ターンキル戦術や強力な墓場送りといった原作由来のゲームバランスを崩壊させる要素が据え置きとなっている。
      • 墓場送りに関しては一応耐性を持つカードが追加されているが焼け石に水。
    • タダにおける高レア優遇の象徴だった低レアの攻撃を無効化どころか、本作では特定の進化段階の攻撃を無効化(つまり星5でも対象の進化段階だと一律で攻撃が通らない)という特技を持つカードまで現れ、バトルは更にカオスに。
  • そして、このイカれたゲームバランスを更にイカれたものとしているのが、『ETERNAL DESTINY』より導入されたカードのステータスの育成要素。
    • 1レベル上げる毎にレアリティにかかわらず、元のステータスから割合でAPとHPが上昇していくので、最高レベルの1000まで育てると星5超進化カードなら基礎ステータスで30000超えが当たり前というくらい、凄まじいインフレをしてしまう。
      • 更にここから支援と属性スロットによるステータスの増減、特技やスキルによるダメージの倍率アップが加わるので、先攻1ターンキルで10万ダメージといった数値が飛び交うオリジナル版のゲームバランスを鼻で笑うような魔境と化している。
      • レイドボスは倒すごとにHPが倍々式で増えていき最終的に99万に到達するのだが、それすらも育成が極まればデッキ次第でワンパン撃破が可能。
  • しかし、本作の主な目的はダンジョンを周回して素材を集めカードを強化することである。
    • このようなゲームデザインになったことで、高レアカードを雑に盛り込んで相手を圧倒する大味なゲームバランスが、逆にプレイヤーにカードの成長を実感させ肩肘張らずに気持ち良くハクスラに没頭できる爽快感に繋がっており、テンポも良好でプレイ感は決して悪くない。
  • 純粋にTCGとして評価してしまうと難点が多いのだが、本作は「対人戦がメインのデジタルトレーディングカードゲームではなくカード収集RPGへと遊ばせ方を変える」という奇策を取ることで、原作のこの問題点を(ある程度)評価点に昇華した。
  • 対人戦の廃止は普通のゲームなら劣化と評価されてもおかしくないところだが本作の場合、正に英断だと言えるだろう。 バランス取れる訳ないし…

圧倒的な大ボリューム

  • ダンジョンを周回してのカード収集、7篇に渡るストーリーモード、様々な形式が用意されたCPU対戦、スコアランキング、実績埋めなど1本のカード収集RPGとして、とにかくやれることが多い。
  • 特に本作の肝である2052枚もの総数があるカードの育成は、意外なカードが強力なカードに化けたり、アナザーカードを育ててみたらオリジナルと全く違う性能だったり、超進化より格下の進化の方が優秀だったりと何百時間プレイしても全容が一切掴めない果てしなさがある。
  • この不毛とも言えるボリューム感が上記の大味なゲームバランスとマッチしていて、次から次へと出てくる知らない要素を前に、遊んでいて一切疲れないライトなゲーム性のおかげでダラダラ遊び続けてしまうという、独特な魅力を生み出している。

カードイラストのクオリティ

  • 買い切り型のゲームとして改めて評価するなら、露出度の高い美少女イラスト以外にも美青年に怪しいオッサンや老婆、クリーチャー、メカなど様々なバリエーションのカードが684枚、N・E・Sの3段階の姿で描かれ、且つそれぞれに召喚時のアニメーションがあり、決してクオリティは低くはない。低レアは表情が違うだけみたいなのも多いけど
    • タダの更に前身にあたるソーシャルゲーム『無限のストラーダ』から9年に渡る積み重ねの成果ではあるが、この作り込みは素直に評価できる点。

賛否両論点

  • 声優事務所との契約の都合なのか、はたまた新カードの追加ボイス収録の手間を惜しんだためか定かではないが、『華』まで存在していたボイスが全面削除されている。
    • オリジナル版はストーリーも含めてフルボイスで、そうした部分も売りの1つだったのだが…。
    • エンディングもボーカル曲だったのがインストに変更されていて大人の事情を感じる。
    • ただしボイスが無くなったことで召喚時の硬直が無くなり、エフェクトのOFFと合わせてバトルのテンポは劇的に良くなっているので、一概に悪い訳では無い。
  • フレーバーテキストが削除されてしまい、情報としてはすっきりしたものの、そのカードのキャラクター性がよく分からなくなってしまった。
  • 高レアカードの無双が爽快な一方で、星3以下の低レアカードは相変わらずカードプールが充実するまでの繋ぎにしかならない。
    • レベルアップによるステータスの上昇は一律で基礎ステータスから割合なので、レアリティの格差が更に広がる結果になっている。
    • ただし低レアカードを組み込まないと挑戦出来ないダンジョンがあったり、Level cap breakerやAnother battleの各レギュレーションを解放するための「累計n枚のカードを限界突破する」という実績を満たす作業をする時の数合わせとしての出番*1があり、使い所自体は一応増えている。
  • あまりにも壊れ性能すぎる「[スーパー指揮官]調整官シルフィー S」
    • カードゲームのルール自体は変わっていないので、やはりタダと同じく召喚酔いしている相手を一方的に攻撃できる先攻が圧倒的に有利なのだが、その優位性を更に盤石なものとしているのがこのカードの存在。
    • このカードは指揮官特技で先攻確率を100%にするという効果を持っていて、指揮官にすると確実に先攻が取れるようになってしまう。これで先攻1ターンキルデッキを組むとどうなるかは言わずもがな…。
      • 指揮官はカードより更に多い2914枚もの選択肢があるのだが、使用する指揮官を強制されない通常形式のバトルならほぼこれ一択になってしまっている。
      • 但し、相手を倒すことより最大ダメージが求められるチャレンジバトルならその限りではない。

問題点

軌道に乗るまでの過酷さ

  • 墓場送りや急速展開といったオリジナル版で手軽に使えた強スキルが軒並みナーフされたり、高レアカードを高レベルまで育成しなければ使用出来なくなった結果、それらのカードが出揃うまではほぼ搦手無し、ステータス勝負のガチンコで殴り合うしかない。
  • 特に問題となるのがメインストーリー「Infinita Strada」。
    • このシナリオをクリアしない限り、高レアカードの出現するダンジョンに挑戦することができないので、その間プレイヤーは実績報酬で入手できる僅かなNの星5カードを軸に、あまり伸び代がない星3以下の低レアカードを地道に育てることになる。
    • にもかかわらず、中盤以降の章の敵はタダの頃から相も変わらず大量の星4、5のカードを詰め込んでステータスの暴力で押し潰して来るので、毎回有利な勢力のデッキに組み直した上でかなりレベルを上げないと全く太刀打ちできない。
      • 一応、低レアだけでも全体のスロットを書き換えるスキルでアンマッチを誘発しステータスを下げたり、敵に変身するカードで相手の星5をコピーするといった(高レアでゴリ押すより遥かにTCGらしい)戦略が取れるものの安定性に欠ける。
      • タダがこのゲームバランスでもなんとかストーリーを無課金でクリア出来るようになっていたのは、低レアカードでも使えるイカれた性能の墓場送りスキルが存在していたからであり、ここが調整された影響でオリジナルとは別な意味で厳しいゲームバランスに仕上がっている。
  • そのため、あくまで時短とは書いたものの結局本作でも有料パックを購入して高レアカードを仕入れるのがストーリー攻略の最適解である。
    • ちなみに購入するなら女体進化パック×3(250円)を1つ買い、「妖怪 天狗少女S」3枚と引き換えるのがおすすめ。

総評

バランスを取る気がないと思えるほど崩壊したゲームバランスは元の作品からほぼ変わっていないものの、対人戦がメインのDTCGからカード収集RPGへと遊ばせ方を変えたことで、その大味さが成長を経て得られる爽快感に変化し、(ある意味)魅力になっている稀有な一作。
その域に至るまでのカード収集や育成はかなり骨が折れるが、一度軌道に乗り始めると膨大なやり込み要素の数々やまだ見ぬ強カードを求めて、ついつい遊び続けてしまう中毒的な楽しさがある。

KOTYで「無料でもやる価値がない」とまで評された原作から一転、作業ゲーが好きなプレイヤーなら値段以上にはおすすめできる作品だと言えるだろう。

最終更新:2025年01月25日 09:46

*1 このモードではCPUが高レベルの指定したカードを大量に組み込んだデッキを使用してくるのだが、高レアカードを敵に回すと専用のデッキを組まないと手に負えないくらい強くなってしまうため。