- 分類:短編連作
- 初出:「出会い」1983年1月号~10月号
- 雑誌時挿絵:未確認
- 収録短編集:『夕萩心中』
あらすじ
第一話 白い密告
窓のむこうは秋、といっても見えるのはただ隣のビルの屋上と空ばかりなのだが、縞田半二郞は今のポストに移って二年、都心のスモッグ空にも季節の色があることをおぼえた。
天下に聞こえた大都新聞――その落ちこぼれ部署・資料第二課、通称「陽だまり課」に、社会部の社員が殺された事件の密告電話が掛かってくる。それを皮切りに、社内では合計二百七十件もの密告電話が相次いで……。
第二話 「四つ葉のクローバー」
「こんな店で送別会をやるの!」
陽だまり課の小川正太が学芸部に異動した。その初仕事が人気デュオ・ララとルルのインタヴューだったが、その直後、なんとララが殺害される。ララの双子疑惑と事件の関係とは?
第三話 鳥は足音もなく
六助は腕時計を見てから街角の電話ボックスに入った。午後十時ちょうど。今朝学芸部の小川から陽だまり課に電話が入って、「六助さん、夜十時にアパートの方へ電話くれませんか――理由? それはその時に言いますから」意味ありげに小声で笑ったのだった。小雨のせいか、夜はいつもより暗かった。東京は昨日から梅雨に入り、電話ボックスのガラス張りに街灯の光と一緒に砕けた雨滴は、たがいに弾きあいながら夏の匂いを発している。雨というより、蒸し暑さに夜が汗を絞り落としているように見えた。
「私のかわりに電話をかけてくれない?」謎めいた女が、六助にそう依頼してきた。それは、潜伏する過激派グループの幹部の居所を密告する電話だった……。
登場人物
- 縞田半二郞
- 細野愛子
- 大友六助
- 小川正太
- 鷲津太郎
第一話 白い密告
第二話 「四つ葉のクローバー」
- ララ
- 人気デュオの片割れ(女)。双子疑惑の中、何者かに殺害される。
- ルル(白木竜次)
- 鳥野一郎
- 戸倉マキ
第三話 鳥は足音もなく
- 柳沢勉
- 過激派グループ「黒の革命軍」の幹部。通称「鉄の雷鳥」。
- 弓月純子
- ユリ
解題
「陽だまり課」の方は、「出会い」という雑誌から、「落ちこぼれをちょっと励ますようなものを」と依頼され、担当編集者だった臼井雅観氏と設定なども相談し合いながら、これで原稿料を貰っていいものかと心配になるほど、誰より自分自身楽しんで書いていたのに、突然雑誌が休刊となって、二話分縮尺して結末をつけなければならなくなったものです。その後大和書房の刈屋政則氏から熱心に継続を奨めてもらったりもしたのですが、この方も結局、連作としては徒花で終わってしまったものです。
(『
夕萩心中』単行本 あとがきより)
経済界発行の雑誌「出会い」に連載され、全五話の予定が雑誌の休刊で中絶となった連作短編。
新聞社の窓際部署の面々が巻き込まれる事件を描いたユーモア・ミステリーである。
同じく二話を残して中絶した
花葬シリーズの三作とともに、『
夕萩心中』にまとめられた。
花葬シリーズとは180度雰囲気の異なる作品のため、この両作をカップリングした判断は何かと言われがちである。
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最終更新:2017年06月01日 02:50