登録日:2018/05/09 Wed 15:05:47
更新日:2025/03/26 Wed 22:10:59
所要時間:約 8 分で読めます
東映不思議コメディーシリーズとは、石ノ森章太郎原作・東映制作で、1981~93年にかけて
フジテレビ系列にて
日曜朝9時から放送されていた全14作品の通称である。
●概要
基本全て独立した作品なため、これといった共通点を探すのは少し難しいのだが、トータルとしては、
「子供向けという建前のファンタジーと言うわりには妙に現実的なコメディというかシュールコントドラマ」
……という作風で一貫しており、「小学生のレギュラーキャラがいる」という共通点がある。
シリーズを語る上で外せないのが全作に参加し、3作分を除いてメインライターを務めた脚本家・
浦沢義雄。
「
やけに説明的なセリフ回し」「ホモネタ」「物が
擬人化とかではなく普通に喋る」など、後の『
はれときどきぶた』などにも通じる独特すぎる感性が爆発している。
またサブキャスト陣が妙に濃く、主に小劇団系の俳優が多数参加している。
常連の柴田理恵氏を筆頭に、浦沢氏の盟友喰始の率いる「劇団東京ヴォードヴィルショー」や「ワハハ本舗」の所属者が複数出演していた。
●一覧
◆マスコット編
ロボット8ちゃん(1981)
ロボットが一般化した世界に現れた謎の
記憶喪失「迷ロボット」8ちゃん(名前の由来はフジテレビのチャンネルから)。
彼はロボット修理を営む春野家に居候し、野良ロボット解体を仕事とする公務員バラバラマン(演:斎藤晴彦)に狙われながらのほほんと日常を過ごしていく。
シリーズ第1作目にして、
「バラバラマンや『私を殴って』とせがむドMロボットを出したせいで監督と脚本家が揃ってメインの座を下ろされた」という伝説も作った作品。
ドMロボを出した浦沢氏は2クール目から復帰したが、
進学塾で8ちゃんとバラバラマンが銃撃戦を繰り広げ、その背後でモブ学生が脇目も振らず勉強をしているというエピソードを書くなど、反省したかは疑わしかった。
バラバラマンについては「主役ロボを解体したがるオッサン」というアイデアがスポンサー的によろしくなかったらしいが、宿敵ながら中年の哀愁も漂わせたバラバラマンは人気を得たという。
彼のテーマソングでもある前期
エンディングテーマ「赤い夕陽のバラバラマン」は名曲。
ただし演じる斎藤氏のスケジュール調整がつかなくなってしまい、その結果人気キャラなのに長期間にわたって出番がなくなるという事態に。
また、8ちゃんの声と春野家の息子役が途中交代している。どうやら視聴率低迷によるテコ入れらしいのだが、声がより少年っぽくなった8ちゃんはまだしも、春野家の長男は演者が変わって何か効果があったのかは不明。
同じくテコ入れの一環としてヒロインロボットのマイロディの衣装のマスクが作り直されているのだが、石ノ森氏のデザインをそのまま落とし込んだ結果
黒目が大きくなり、やけに不気味に見えるようになってしまった。
春野家の
お母さん役が榊原るみ氏で、彼女の元カレで8ちゃんを最初に拾った科学者・青井博士役が団次郎(現・団時朗)氏……となぜか『
帰ってきたウルトラマン』ネタもあったり。
バッテンロボ丸(1982)
舞台は人間とロボットが一緒に暮らし、そればかりか
恐竜まで放し飼いにされている変な町「カリントニュータウン」。
ある日、町の野球大会で出たホームランボールに当たって円盤が落下し、その中から出てきたのはマンマル星から来た「正義の味方」を名乗るロボット・ロボ丸だった。
件の円盤「バッテンソーサー」が壊れて帰れなくなったロボ丸は、ホームランをたたき出した少女・海野ナナコ(演:富岡香織)の住む家の庭にバッテンソーサーを停め居候となり、町のため働いてみたり、いらんトラブルを起こしたりする。
気合や感情によって頭の形が変わるという親しみやすいデザインと、本格的にメインライターとなった浦沢氏のノリが合わさって生まれた快作。
前作の春野夫婦(演:朝比奈尚之・榊原るみ)が花屋さんの海野夫婦として続投している。
前作のバラバラマンに相当するキャラとして恐竜ポチザウルスを飼う町内会長・比間田寝太郎(演:佐渡稔)と町に住むロボット達を作った屯田博士(演:市川勇)が登場し、中の人2人は本シリーズの常連俳優となる。
比間田会長と屯田博士が
視聴者の子供達にロリコンについて説明するため、実際に公園で笑みを浮かべながら幼女に声を掛けるシーンは必見。
また短編だがシリーズ中唯一劇場版が作られ、本編でも一部未公開シーンを追加して第46話「お化けを飼う少女ユメコ」として放送された。
舞台となったカリントニュータウンの住人は
ケーブルテレビの放送に煽られて町中の子供達がマスコットキャラ・ネクラゲを捕獲するべく暴徒と化す、
町中の夫婦が夫陣営・妻陣営に分かれて取っ組み合いの大喧嘩をするといった感じで非常に攻撃的かつ血の気が多い。
また、町の時報を担当するロボット・バズカンが故障により町の至る所で空砲を打ちまくったり銃を持ったギャングが出没するなど、常に何らかのトラブルに見舞われている。
結果、東映特撮YouTube Officialで配信を見た視聴者からは
「血と喧騒と硝煙の町」と評されていた。まぁ浦沢作品だからね。
ペットントン(1983)
UFOによって
地球に捨てられた宇宙生物・ベットントン。
彼は小学生・畑ネギ太の家に引き取られ、「タイムステッキ」「友だちの輪」といった髪の毛が変じる様々なアイテムで活躍する。
当時人気だった映画『
E.T.』にあやかって、主役がロボットから謎生物に置き換わった。
過去2作に輪をかけて人間サイドのキャラの濃さが
暴走増し、シリーズ中最大視聴率を獲得。終了後、『月曜ドラマランド』枠でのテレビスペシャルまで作られ、まさかの
香港ロケまで行われた。
序盤は斎藤氏演じる畑家の元気すぎるおばあちゃん・セロリ(本名)が『8ちゃん』で出番が少なかった鬱憤を晴らすかのように暴走を繰り広げ、キャラが出揃った中盤以降は
- ネギ太を心から愛し、ヒロインに向かって満面の笑みで「ネギ太の子供は俺が産む」と宣戦布告したガチホモデブガキ・ガン太(演:飛高政幸)
- ヒーローのコスプレをして町に混乱と悲鳴をもたらす意識高い系変態ストーカー少年・根本(演:玉木潤)
- ヒゲ面を真っ白に塗りたくって梅沢富美男の『夢芝居』を踊り狂う怪宇宙人・オミッチャン(演:福原一臣)
の3名による恐怖のローテーションが完成し、視聴者をめくるめく浦沢ワールドへと誘い続けた。
『おしん』でおなじみの小林綾子氏が歌うED「一度だけの魔法」は隠れた名曲。
また、シリーズで唯一石ノ森氏による漫画版が存在する(他はキャラデザと主題歌の作詞くらい)。
どきんちょ!ネムリン(1984)
小学生の大岩マコ(演:内田さゆり)は、不思議な夢で妖精の女王ネムリンとそのお供2人を8億年の眠りから覚ましてしまう。
あとは……まぁ、今までとほぼ同じ。
本格的に女の子向けに舵を切った最初の作品。何気に
ヤクザ屋さんこと井上敏樹氏の特撮デビュー作でもあったりする。
マスコットの造形が着ぐるみからマペットに切り替わり、これは次作『カミタマン』まで続いた。
番組自体は好評だったのだが、当時スポンサーだったおもちゃメーカーが工場の手配に失敗し、ネムリンの人形の大量生産がかなわず利益が出せなくなったという世知辛い理由で、7ヶ月で放送終了してしまった。
特筆すべきはマコの兄・玉三郎(演:
前作から続投の飛高政幸)。
メタボのくせにアイドルデビューを夢見て堀越学園への進学を目指し、しかも女装趣味という実に浦沢指数の高いキャラで、
「松田聖子ちゃんや堀ちえみちゃんも行った堀越へ入ろう(要約)」と高らかかつ執拗に歌い上げる彼のテーマソング「夢のサクセススクール」と、第20話でそれを玉三郎自身が熱唱する場面は伝説となった。
そしてマコ役の内田氏は後に『
鳥人戦隊ジェットマン』で
ブルースワロー/早坂アコを演じる。
ネムリンの声を担当した深雪氏は、前年に放送された『
超時空世紀オーガス』にて当時のアニヲタ人気ナンバーワンだった美少女キャラ・モームを演じていたのだが、本作が
大きなお友達を取り込めたか定かではない。
コメディ作品なのに何故か
次回予告のBGMがやたらと不穏で怖いことでも有名
勝手に!カミタマン(1985)
- 主役:カミタマン(声:田中真弓)、根本伸介/ザ・ネモトマン(演:岩瀬威司)
ある日、どこにでもいる冴えない小学生・根本伸介が拾ったカップ麺の容器にお湯を注ぐと、その中から故郷の島を追い出された三流神様・カミタマンが現れた。
カミタマンの力で伸介はヒーロー「ザ・ネモトマン」となるも、空を飛べる以外何もできないネモトマンは華麗に活躍するどころかムチャクチャな騒動を引き起こす。
マスコットものに変身ヒーロー要素をプラスした、後の変身ヒロイン路線にも繋がる作品。
前作の影響か、カミタマンの悪友・
モスガ役で当時人気絶頂にあった
矢尾一樹氏がレギュラー参加。さらに本多知恵子氏や島本須美氏が顔出しでゲスト出演している(本多氏は佃煮博士の下から
ゴキブリと駆け落ちして逃げた元妻役)。
その他、
- 毎度職が変わるとらばる聖子(演:小出綾女)
- 全身真っ黒なタイツ姿の「サラ金苦」に文字通り追い回され、金を返す手段としてモスガを佃煮にするべくつけ狙う佃煮博士(演:及川ヒロオ)
- 伸介の友人だが彼の妹に執拗にセクハラを繰り返す変態ストーカー少年・横山(演:末松芳隆)
……などの濃いキャラが番組を彩った。
また、過去作にちょくちょくゲスト出演していた石井愃一氏(『
ウルトラマンメビウス』の
トリヤマ補佐官役)が根本家のパパ役でレギュラー出演している他、以降のシリーズで常連となる柴田理恵氏が珍々亭の
おばさん役で初参加。
余談だが、とある回のシナリオに記された
笑うシンスケ、カミタマン──その笑顔には戦後の日本の教育が産んだひずみがまったく感じられても感じられなくてもいい。
というト書きは、浦沢文学の極致として半ば伝説化している。
科学者・知蘭博士(演:市川勇)が作り上げた動物とロボットが共存する理想郷「知蘭ランド」。
しかし動物とロボットのいがみ合いは大きく、博士はロボットのぼっくんに争いを止め両者を仲良くさせる謎の存在「サムシング」の探索を託す。
この物語は昇る朝日に友情を誓い、沈む夕日に愛を叫ぶ、誠のロボット・もりもりぼっくんの真実の記録である。
石ノ森作品としては『ロボット110番』にも近い、これまでのシリーズ作品にはない「主役の明確な目的」を持たせた作品。
人気アイドルだった伊藤かずえ氏が主題歌を担当し、本編にも登場するなど話題性を作ろうという試みは感じられたものの、1年間完投できず3クール放送に留まった。
◆探偵団編
エブリデイマジックな世界観から離れ、「少年探偵団VS謎の怪盗」というジュブナイルドラマへと変化した時期。
シリーズ中では一番「小学生の一般人レギュラーキャラ」が主軸となっている時期でもある。
なお、『
仮面ライダー』を始め、数多くの名作を世に送り出した平山亨がプロデュースを手掛けた最後の作品となった。
- 主役:覇悪怒組、落合先生(演:秋野太作)
竹早小学校に通うヒロシ・サトル・ススム・タケオ・ヤスコの5年生5人組は、行く先々でいたずらや騒動を巻き起こす名物グループ。
ある日、新しくやってきた担任・落合先生の何気ない発言から、5人はヒロシの
パソコンでオリジナルキャラクター・
魔天郎を主役にした映画を製作、ゲリラ上映してしまう。
ところがその直後パソコンが盗まれ、犯人は架空のはずの魔天郎!
5人は探偵団「覇悪怒組」を結成して魔天郎に立ち向かうが、魔天郎はどこか落合先生を思わせる雰囲気で……。
メインライターが浦沢氏から『
仮面ライダー(新) (スカイライダー)』などを手掛けた江連卓氏へとチェンジし、多感な時期の少年達の冒険と成長を描いた作品。
(一応)悪人でありながら、覇悪怒組に試練を突き付け成長を促す存在でもあり、かつ無茶苦茶かっこいい魔天郎は「正体は落合先生かも?」という疑惑も込みで人気を集めた。
「親と子の関係」「争いのむなしさ」「自然の大切さ」といった多様なテーマに正面から切り込み多数の秀作を生んだ、かの
宮内洋氏の金言
「ヒーロー番組とは教育番組である」に最も近い作品の一つだが、それがかえって異色という声も。
放送から四半世紀後になって、『魔隣組』と2枚組で
シリーズ初となるサントラCDが発売された事も、本作の評価の高さをうかがわせる事例であろう。
- 主役:魔隣組、シャーロックおじさん(演:渡辺篤史)
勉強の出来はぱっとしないが元気はあり、周囲から邪魔者扱いされながらも元気にやっていた5年生5人組。
ある日世間を見返すため、日ごろ世の中を騒がせる怪盗ジゴマに風船レターで挑戦状を送り付けたら、なんと本当にジゴマが挑戦を受諾。
5人は地下に埋まるUボートを根城に探偵団「魔隣組」を名乗り、自称小説家のシャーロックおじさんを巻き込んでジゴマと対決する。
そして時を同じくして魔隣組の前に現れた謎の少年・雨宮タロウ(演:河野大輔)の正体は?
前作の好評を受けて作られた第2弾で、メインライターは浦沢氏と並んでシリーズ常連の大原清秀氏。
探偵団の1人として、後に
仮面ライダー響鬼のスーツアクターになる
伊藤慎氏が出演している。
寺の地下で見つけた防空壕に家具を持ち込んで秘密基地にしていた覇悪怒組と違い、Uボート=潜水艦を秘密基地として使っているのが最大の特徴。
OPではなんとこのUボートが空を飛ぶカットまである
が、本編では最後まで飛ばず。
この事からも分かるように、より従来の路線に近いキッチュでナンセンスな世界観を前面に出した作風となった。
魔隣組からシャーロックおじさんへ、そして視聴者へ贈るメッセージを思わせるED「憧れミステリー」はガチで泣ける名曲。
後続の『ぱいぱい』→『いぱねま』を除き前後作で関連のない当シリーズとしては珍しく、終了直後には正月特番として、中学生になった覇悪怒組と共演する1時間の特別編が放送された。
ちなみにこの特番は、再放送や再編集番組を除けば、昭和64年に放映された唯一の特撮番組であった。
色々と変わり果てたヒロシの姿は必見
◆美少女編
1988年秋、『
スケバン刑事』から続いた「新人アイドル主演のアクションドラマ」枠が『
花のあすか組!』をもって終了。
この路線がシリーズに合流した事で、不思議な力を持つ美少女が活躍したりしなかったりする作品群が生まれた。
中華魔女2部作と『うたう!大龍宮城』が、異世界から人間界にやってきた
魔法少女が騒動を巻き起こす『コメットさん』にも近いエブリデイマジックもの。
残りの『ポワトリン』『トトメス』『シュシュトリアン』は、ごく普通の人間の少女が突然授かった超パワーで戦士に変身して悪と戦うバトルヒロイン路線となった。
後の『
美少女戦士セーラームーン』『
プリキュアシリーズ』の先駆的存在として大きな影響を残した作品群である。
前述の通り、当シリーズでは『ぱいぱい』→『いぱねま』を除いて作品毎の世界観の繋がりは無いものとして扱われているが、
『いぱねま』で「フィクションの国」に歴代不思議コメディ―シリーズのキャラ(後述のてれもんじゃも含む)が登場したり、
『シュシュトリアン』で「正義のヒロインが学校の成績を下げながら戦ってきた」例として『ぱいぱい』~『トトメス』が紹介されるシーンが存在する。
なお、この美少女編は関西地方ではフジテレビ系列局の関西テレビではなく、独立局の
サンテレビとKBS京都で放送された。
魔法少女ちゅうかなぱいぱい!(1989)
異世界「中華魔界」に住む中華魔女ぱいぱい。彼女は悪の支配者・五目殿下(演:石井洋祐)に惚れられたせいで、彼氏レイモンド(演:あらい正和)を
ラーメンに変えられ人間界に送られてしまった。
ぱいぱいは人間界の高山家でお手伝いさんとして働き始め、レイモンド(ラーメン)を探しながら高山家のトラブルを魔法で解決していく。
『あすか組!』で人気を博した小沢なつき氏を主演に迎えて好評を得たものの、
色々あって2クールに急遽短縮された。
高山家の3
バカ兄弟から煙たがられている通称「三軒茶屋のババァ」を柴田理恵氏が熱演、
ボンデージ姿で鞭を手に「私もぶってぇ~」と乗り込んでくるシーンはまさにコメディエンヌの面目躍如と言ったところか。
また、ここから『トトメス』まで斉木しげる氏が連続レギュラー出演している。
魔法少女ちゅうかないぱねま!(1989)
ある日裕福だった家が没落し、一家離散してしまった中華魔女いぱねま。
彼女はぱいぱいが自分の問題を解決し去った後の高山家に新しいお手伝いさんとして入り、没落しても呑気な両親や自分に淡い恋心を抱く召使のユーフラテス(演:渡辺博貴)と関係しながら魔法で活躍していく。
前作が短縮したせいで急遽制作されたシリーズ第2弾で、主役は後に『
オールスター感謝祭』で知られる島崎和歌子氏。
浦沢氏によれば「『ぱいぱい』から主人公が変わっただけ」という考えだったらしく、シリーズ上唯一人間サイドのキャラが前作と完全に共通している。
三軒茶屋のババァの暴走も相変わらずで、第2話にしていきなり
高山家の先祖の墓を電飾でデコり、墓場を舞台にいぱねまとバトルを繰り広げるという見せ場が与えられている。
ある日神社にお参りしたら、神様(演:鈴木清順)からご町内の平和を託されてしまった女子高生・村上ユウコ。
彼女は正義のスーパーヒロイン・ポワトリンに変身し、世間を騒がす様々な悪人や変態怪人、そして暗黒宇宙の帝王・ディアブルと戦っていく。
「たとえ宇宙が許しても、この美少女仮面ポワトリンが許しません!」
舞台劇的な大仰な演技を意識したポワトリンの独特なキャラクター性や美少女が変身して戦うというその筋立てで後の「セーラームーン」の誕生に影響を与えた。
不思議少女ナイルなトトメス(1991)
ある日、実はエジプト人だったという先祖のピラミッド型墓にお参りしていた中島サナエは、墓から恐るべき(?)「ナイルの悪魔」を解放してしまう。
サナエは先祖の跡を継ぎトトメスとなり、51匹のナイルの悪魔を再び
封印するため奮闘していく。
「美しく戦いたい。空に太陽がある限り!不思議少女・ナイルなトトメス!」
前作の好評を受けて作られた第2弾。
「不幸のどん底」が具体的な場所だったり、後半で登場するレギュラー悪役・ワルサの薄幸っぷりが半端なかったりとより癖を増した。
実は本作は当初
- ゲストキャラの誰にナイルの悪魔が憑いているのか分からない
- トトメスに変身したサナエが推理
- ナイルの悪魔を炙り出す
……という流れの
ミステリーものだった。
ところが浦沢氏が
「自分はミステリーは書けない」と直談判し、
わずか2話で路線変更を果たす
よくそんな人物に『名探偵コナン』のスタッフは脚本を発注したな。
第16話~第18話には、リアルガチで俳優を目指していた頃の
出川哲朗氏が出演している事で知られ、本人もバラエティ番組でこの件を話題にしている。
また、サナエの妹の同級生の小学生女児2人が取っ組み合いの喧嘩をしながら
「子供の産めない体にしてやる!」と啖呵を切ったせいで(悪い意味で)話題となり、物議を醸した。
細かい話だが、番組途中から作内のテロップが写研の石井太ゴシックからナールに変わっている。
うたう!大龍宮城(1992)
両親が長期出張する事になった少年・浦島タロー(演:大野修平)が、助けた亀こと
タクシー運転手の亀山海吉(演:斉藤暁)に連れられやってきたのは、地上の会社の過剰な開発により壊れてしまった竜宮だった。
タローは竜宮の跡継ぎ・乙姫を家に居候させ、様々な
擬人化海産物達と出会っていくが、実は竜宮崩壊の原因は会社社長であるタローの祖母と父が行った事業にあった……。
「人生は二度ない、三度ある!」
「変身ヒロイン」から少し離れ、ドラマとしては異例の
ミュージカルコメディを描いた作品。
ただし、合間合間に歌が入る事を除けばいつもの浦沢脚本。
乙姫の赤ちゃんを産みたいと執拗につけ狙うUFO(男性)や
悪の秘密結社扱いされる農協など、カオスここに極まれりな内容となっている。
各話のサブタイトルがゲスト海産物の名前で統一されているのも特徴で、
「カメ」から始まり
「イカ」「フグ」「ブリ」「ヤドカリ」「コバンザメ」「ムツゴロウ」「シーラカンス」etc……ときて
「リュウグウノツカイ」で終わる。
しかもタイトル読み上げ時にナレーター(『
人造人間キカイダー』『七星闘神ガイファード』の岡部政明氏!)がその海産物の生態や
美味しい食べ方までも説明してくれる。もうわけがわからない。
第9話では一種の
中の人ネタで
快傑ズバットがゲスト出演しているが、果たしてメイン視聴者であるはずの女の子達は、突然現れたさすらいのヒーローを見て何を思っただろうか……。
有言実行三姉妹シュシュトリアン(1993)
- 主役:山吹雪子(演:田中規子)、山吹月子(演:石橋けい)、山吹花子(演:広瀬仁美)
1993年、酉年。輝かしい年明けにも関わらず両親の不仲に悩まされる山吹家の3姉妹は、気晴らしに来たカラオケで、なんとカラオケ中毒になった酉年の
神・お酉様(演:麿赤児)と遭遇。
お酉様は3姉妹を両親の仲を治すのと引き換えに正義の味方に任命し、3人はお酉様の使いである
フライドチキン男(演:吹越満)の指令の下、妖怪退治の正義の味方シュシュトリアンとして酉年の平和を守るべく奮闘していく。
「古人曰く『過ぎたるは猶及ばざるが如し』!」
前作の癖が強すぎた結果視聴率面で苦戦を強いられたため、再びバトルヒロイン路線に戻ったシリーズ最終作。
少女3人組によるグループヒーロー路線で、主題歌もヒロインチーム名を盛り込んだいかにもな特撮ソング風と、3作品の中で特撮アクション色が強められている。酉年を舞台にした筋書きらしく『和』をテーマとしており、ヒロインの衣装は金と黒と赤という鮮やかな色調をベースとした豪華絢爛なイメージの着物スタイルで、アクション性の向上や主題歌の派手さも含め、ヒロインの可愛さよりもカッコよさが前面に押し出されている。
後に円谷プロダクション社長となる円谷一夫氏のたっての希望により、第40話で円谷怪獣や
ウルトラマン(演:黒部進)とのコラボが描かれた事も大きな反響を呼んだ。
一方で、EDはまさかまさかの矢野顕子氏が担当。
『ポワトリン』後期と『大竜宮城』を除き、美少女編のED映像は主演キャストのPVとしての性質も持っていたが、
本作ではピアノの弾き語りによるシンプルで物静かな曲をバックに、3姉妹(の中の人)それぞれの乳児時代→幼児時代→小・中学・高校入学時の写真を交えつつ、ウェディングドレスを着た3姉妹の門出を暗示するように進行する、不思議……というか少し陰鬱さすら漂う内容で、派手な曲調のオープニングと劇中のドタバタ劇とのコントラストで爪痕を残した(総集編と最終回を除き、曲は前期後期も変化なし)。
内容面では相も変わらず懲りない浦沢氏によってますます狂気を孕んだゲストキャラが増加の一途を辿り、本作では
- 「僕もパンツ見せるから君もパンツ見せろ」と言って山吹家に乗り込み脱ぎだす花子のクラスの委員長
- シュシュトリアンを鯉のぼりにして吊るし、パンチラ撮影会開催を目論むカメラ屋
……といった変態どものオンパレードである。
円熟を極めた感のある凄まじい突き抜けっぷりはある意味は必見。明らかに女児向けじゃねーだろコレ
中には「悪い妖怪が暴れている」では済まないレベルの犯罪行為を働いている質の悪い連中もちらほら。
他方、吹越満氏演じるフライドチキン男はどうもかなりアドリブが多かったらしく、よく見ると画面の端っこで花子役の広瀬氏が素で笑いを堪えている様子が映り込んでいる姿を見られる。
視聴率は復調したものの、おもちゃが売れなかったため3クール42話に短縮され、『セーラームーン』に役割を譲り渡す形でシリーズの有終の美を飾る。
●番外
TVオバケ てれもんじゃ
自宅のテレビがフジテレビしか映らないせいで周囲の話題についていけず、鬱屈した日々を過ごす少年・林トンボ。
彼がテレビを壊そうとすると、中から出て来た謎のお化けがてれもんであった。
林家のテレビを最新型に買い替えさせようと目論む電器屋の主人が電気大明神に祈りを捧げ、怪人ザ・グレートデンキに変身しててれもんを倒そうとしたり、
トンボのクラスメイトのラドンがトンボの母・アゲハに恋をして結婚を目論むなど、トンボの日常はてれもんの出現を切っ掛けにカオスの一途を辿ってゆくのである。
『ペットントン』の成功を受け、平日のゴールデン帯でも不思議コメディーシリーズをやろうという息込みで製作されたが、視聴者事情が違った事もあってか、わずか11話で
打ち切りとなった。
書籍によっては本作もシリーズの一部にカウントされる事もある。
次回予告にネムリンがゲスト出演したり、逆に『どきんちょ!ネムリン』のおたよりコーナーにてれもんじゃがゲスト出演した事がある。
美少女戦麗舞パンシャーヌ ~奥様はスーパーヒロイン!~
高校時代、神様(演:鈴木清順……ではなく猫ひろし)から命じられてご町内の平和を守るスーパーヒロイン「美少女仮面フローレンス」をやっていた新庄由美子。
大学入試を機に引退してすっかり普通の日常に戻り、今やただの人妻(28歳)と化した彼女の前に、ある日再び神様が現れ、スーパーヒロインに戻るよう命じる。
2007年、「ファミリー向け特撮ドラマの王道復古」を目指して
テレビ東京系で
唐突に放送された。
ぶっちゃけて言えば『ポワトリン』の二次パロみたいなもんである。
東映制作ではないものの、シリーズを担当していた読売広告社のプロデューサー・木村京太郎氏と浦沢氏が関わっているため、併せて紹介。
既に28歳にして一児の母であるパンシャーヌが自分で「美少女」なんて名乗っちゃうイタさをギャグにしていた。
ちなみに、本作のオマージュ元である『ポワトリン』で主演した花島優子が怪人役でゲスト出演している
追記・修正は日曜日の朝9時に思いを馳せながらお願いします。
- 建て主ですが、PC不調で十分な書き込みができないので追記などお願いします -- 名無しさん (2018-05-09 15:08:22)
- シュシュトリアンは面白かったがセーラームーンに負けたのはしょうがない。同じ放映局というのは皮肉だが… -- 名無しさん (2018-05-09 15:25:59)
- 若い頃の柴田理恵を見れるけど、三軒茶屋のばばぁは良いキャラしてるわw -- 名無しさん (2018-05-09 15:53:59)
- 不思議コメディは後に浦沢先生が関与した特撮作品の通称とされる。 -- 名無しさん (2018-05-09 16:03:18)
- 柴田理恵と浦沢先生がマジ基地空間作り出しちゃってるよねこのシリーズ -- 名無しさん (2018-05-09 19:35:03)
- ある程度観たことがあるが、子ども向け番組であるにも関わらず性善説を信じていないかのような作風をしているよね。作中で登場する人物の大半はどちらかというと「愛されないバカ」寄りで、そんな彼らの起こす騒動を不快感を感じさせないギリギリのラインでコメディとして描いている。遊川和彦氏の書くコメディ系ドラマと通ずるものを感じた(っていうか、遊川和彦より何年も早くこんなのを描いてた脚本家さんがいたということか…)。 -- 名無しさん (2018-05-10 00:01:33)
- 「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」を読み切り版清村くんと杉小路くんで知ったのは自分の他にもいると思いたい -- 名無しさん (2018-05-10 02:23:10)
- 大龍宮城の楽曲がカッ飛んだの多くて印象に残ってる 「御骨になっても忘れはしない~♪」とか -- 名無しさん (2018-05-10 10:38:06)
- ↑後サブタイトルも。魚介類の名前だけでもうちょい捻れよと笑ったwwwww -- 名無しさん (2018-05-10 21:26:29)
- 海賊よりもカミタマンがすきすぎてつらい・・。モスガは大工だし・・・こっちが好きなのに。 -- 名無しさん (2018-05-15 10:11:56)
- 東映不思議コメディシリーズで個別記事が作られているのがポワトリンだけという。ポワトリン以外の個別記事も欲しいなあ。特にシュシュトリアンはリュウソウジャーでフライドチキン男ネタが来たんで作られるべきですね。 -- 名無しさん (2020-05-12 00:53:20)
- 第一作目からいきなり逸話がブッ飛んでるの凄い -- 名無しさん (2022-08-04 14:09:13)
- てれもんじゃは、ネムリンのおたよりコーナーに出てきた事があった -- 名無しさん (2024-07-14 21:18:17)
- 恐ろしいことに、これ一通り見ると、浦沢先生がボーボボの脚本家になった理由がわかるから困る -- 名無しさん (2024-12-05 15:43:38)
- 夢のサクセススクールの歌詞がそのまんま載せられてたので、少し書き換えました -- 名無しさん (2025-01-29 18:35:07)
最終更新:2025年03月26日 22:10