「もののあはれは彩の頃。」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
もののあはれは彩の頃。」を以下のとおり復元します。
*もののあはれは彩の頃。
【もののあわれはさいのころ】
|ジャンル|和風すごろく体感ADV|&amazon(B01NALCYKI)|CENTER:&amazon(B08JH27S1N)※普及版|
|対応機種|Windows Vista~10|~|~|
|発売・開発元|QUINCE SOFT|~|~|
|発売日|2017年9月29日|~|~|
|定価|9,800円(税別)|~|~|
|レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~|~|
|廉価版|普及版:2020年11月27日/3,800円(税別)|~|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~|
|ポイント|京都を舞台とした双六&br()男女9人の真剣勝負&br()特殊なゲームシステム|~|~|
----
CENTER:&font(120%){''『吉』と出るか『京』と出るか『縁』も『ゆかり』も『賽』次第''}~
----
#contents(fromhere)
----

**概要
萌えゲーブランド「Lump of Sugar」の姉妹ブランド「QUINCE SOFT」の処女作。~
パッケージ版とダウンロード版が同時発売された。

-原画家及びライターは「Lump of Sugar」で活動していた人物である。
--『恋想リレーション』『コドモノアソビ』等で、複数原画の一人であった「ななろば華」が本作の原画家を担当。~
ただし、男性キャラやSD絵は他の人物が担当している。
--『[[Magical Charming!]]』『[[運命線上のφ]]』で複数ライターの一人であった「冬茜トム」が単独で企画・シナリオを担当している。

----
**ストーリー
#blockquote(){
サイコロを振って駒を進め、盤上のあがりを目指す。
それは、日本人ならば誰でも知っている絵双六のルール。
しかしながら彼らは、自らが “駒” となる世界に招かれてしまった。
記憶を失くした “双六” の参加者たち。 彼らはたった 1つの “あがり” を目指して競い合う。

他者を蹴落としてこの双六を踏破しない限り、決してこの世界からは出られない。
祇園、西院、嵐山── 秋が彩る京都の街を、賽を振ることによって進んでいく。
そして行く先々で、マス目に定められた “宿命” が参加者に課せられる。

<誰かを 6マス戻す> <水難の相に遭う> <衣服を着てはならない>──
彼らは固有に持つ “戒” を駆使しながら、盤面に潜む危機を切り抜けていく。
壱面、弐面と、盤面を進めるにつれてよみがえっていく “現実” の記憶。

“双六” と “現実”── 2つの世界はなぜ存在しているのか。
そして、いったいなぜ彼らはここにいるのか──
双六に集う 9人がそれぞれの “縁” を結んだ時、世界の真実が明かされる。

(公式サイトより抜粋)
}

----
**舞台設定
-目的が不明なまますごろくに参加した男女の若者9人による勝負。

-順番にサイコロを振り、「あがり」への到達を目指す。
--道中のマスには「振り出しに戻る」「誰かを五マス戻す」などが書かれており、これに従う必要がある。
--「怪異 土蜘蛛」のようなイベントが発生するマスも存在し、出現した怪異を退けるまで次の順番が回ってこない。

-キャラクターは各自「戒」と呼ばれる能力を持っている。
--「触手による攻撃」「身体の回復」「バリアの展開」などキャラごとに様々で、これらを駆使して攻防を行う。

-同じマスに止まった者同士は接触することが可能で、交渉や攻撃を仕掛けられる。

-「あがり」に到達する手段は複数あり、到達方法によってその後の展開が大きく変わる。

-時々、回想が挟まれる。
--すごろくの参加者の現実である学校生活の1シーンなどが描かれる。

-すごろくは複数あり、それぞれ特殊なルールが用いられる。以下に2つを紹介。
--獅子身中の虫「すごろく+人狼」のようなルール。
---1人だけ他キャラを喰う役割の虫で、3順ごとに任意で1人を食う。他の8人はあがりに到達するか、虫のキャラを指名する必要がある。
--「すごろく+オセロ+陣取り」
---長方形のマスが敷き詰められたボードを使用。止まったマスを自分の陣地とし、自分の土地で挟むことで他人の土地を奪える。

----
**ゲームシステムの特徴
-あくまで「すごろく''体感''ADV」であって、プレイヤーが干渉できる要素は少ない。
--プレイ時間の大部分はノベルパートを読み進めるだけである。
--基本的にサイコロの目は自動で決まり、他の要素もプレイヤーの意思を反映させることは出来ない。
--本作の舞台設定上、1人の行動が他のキャラにも大きく影響するため、仮に主人公1人のサイコロの目をランダムにするだけでもパターンが膨大になってしまう。そのためこの仕様はやむを得ない。

-分岐
--特定の場面では画面中心にサイコロが出現し、プレイヤーの対応によってその後の展開が変わる。

#region(分岐方法 一応ネタバレ防止)
-サイコロをクリックするか、サイコロ以外の部分をクリックするかで目が変わる。
--サイコロ以外を2回クリックすることで分岐する場面もある。

-一通りのエンディングを迎えるとTrueルートが解禁される。

-一般的な選択肢も存在する。
--最後の個別ルートはこれで分岐する。

#endregion

-エロシーンの扱い
--進め方によっては10時間以上エロシーンにたどり着かないことも十分にありえる。~
そのためか、シーン回想には「全解放ボタン」が用意されており、これをクリックするとエロシーンが全て解放される。
---ただし、一部ではあるがネタバレを含むために、なるべく使わないことを推奨する。
--個別エンドを迎えることで、本編に存在しないエロシーンがシーン回想に追加される。

----
**評価点
-二転三転しながらも世界の真相に近づく構成
--本作の大きな特徴として、キャラクターが自分をすごろくのコマだと認識していることが挙げられる。~
そのため、そもそも何故すごろくに参加しているのか? ここはどこなのか? といった疑問をプレイヤーとキャラクターが共有できる。
--時折挟まれる回想シーンは、時系列や舞台を把握するためのヒントとなっている。徐々に情報が解禁されるため、最後までプレイする意欲をわかせる。

-共通ルート
--共闘するキャラや盤面のルールが全く違うため、それぞれ違う立ち回りを楽しむことができる。
--本筋に繋がる伏線を貼りつつも、共通ルート内でも細かい伏線回収や大きな見せ場がある。~
そのため、伏線ばかりで飽きが来てしまうといったことがなく、それぞれの共通ルートも相当な完成度を誇っている。

-キャラクター
--「人の縁」がテーマの一つということもあり、キャラの行動や心理にしっかりと理由付けされている。
---現実とすごろくの2つの面からキャラを掘り下げるため、内面や心情を理解しやすくシナリオに深みをもたらしている。
--男性のサブキャラも例外ではなく、各自に印象的な一枚絵が用意されている。見せ場は全員にあるといっても過言ではない。

-テキスト
--エロゲとしては硬めな文体であり、雰囲気に合致している。
---ある場面を境に読み返すと大きなトリックが仕込まれていることに気が付く。
--「てか、LINEやってる?」のような近代的なパロディネタといった緩さも共存している。
--基本的に同じマスに止まらない限り、コミュニケーションを取ることは不可能である。
---しかし他者を妨害するマスや間接的な援護が可能な要素が存在するため、間接的にもキャラ同士の繋がりや性格が描かれ、上手く連絡を取れないもどかしさなども表現されている。

-グラフィック
--目パチ・口パクを搭載しており、表情の変化が多い。
--女性は可愛らしく、髪の色が違うので最序盤から判別も安易。同年代の萌えゲーヒロインにも引けを取らない。
--男性は目つきの細さや体格の違いからこちらも判別が安易。
---序盤から登場人物が多いために、書き分けが出来ていることは大きい。

-エロシーン
--なんといってもエロシーンに入るまでが長く、共闘して精神的な繋がりが強いヒロインとのエッチなので興奮も倍増するというもの。
--ヒロインの性格を尊重しており、4人それぞれ違った趣向となっている。やや斜め上の方向に進んでいくが、ヒロインにはそういう一面もあると思わせる説得力は十分。
--主人公が受けに回るシチュエーションが数枠ある。嗜好に合えば堪らない。
--日常の1シーンからエロシーンに移る流れであったり、長年の思いの吐露であったりテキストの良さは健在。

-舞台背景
--陰陽などの実在する要素も多分に含まれており、シナリオを構築する一つの要因となっている。
--「子子子子子子子子子子子子」の読み([[正解>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90%E5%AD%90]])など雑学も多く、興味を惹かれたプレイヤーは外部媒体で詳しく調べるのも一興。

-秋の京都
--三次元でも観光地として人気のある京都の実在の地を上手く二次元に落とし込めている。
--昼夜も表現されている背景からは風情を感じられる。

-演出
--基本的に出目こそ固定だが、随所に挟まれるサイコロを振るムービーは緊張感がある。
--京都の各所を舞台とした地図は見やすい。要所要所でキャラが地図を見返すため、現在の状況を把握しやすい。
--重要な伏線回収時には対応した伏線のシーンが回想される。
--句点を使わずに垂れ流す長文による高速思考の表現・インターネットのチャットサイトを通じた会話・ゲームシステム上は無意味だがシナリオ上は意味のある選択肢など、テキストウインドウに捉われない表現が一部にある。なお、特殊な長文はバックログで黒文字となり、冒頭だけが表示される。

----
**賛否両論点
-一部の展開
--存在そのものが反則気味のキャラや盤外戦術等が存在する。
--「獅子身中の虫」は意外性はあるものの、説明が付かないと思われた部分の解説がご都合とも取れる。
--ただ、無難にまとめたルートも存在するがやや影が薄く、強引気味なルートの方が印象に残りやすいのも確かである。
---このあたりは評価が分かれがちで、前述した意外な伏線回収や展開として評価するか、強引と捉えるかはプレイヤー次第である。

-終盤
--最終決戦はこれまでの経験を踏まえた上に成り立つ総力戦であり、定番ながら熱い演出である。
--しかし黒幕の正体やエピローグの短さについては難を示す声もある。

-グラフィック
--前述したように書き分けは出来ているが、複数原画のため男性やSD絵は違和感を指摘されることもある。

----
**問題点
-分岐が分かりにくい。
--プレイヤーが干渉できる要素は少ないが、特殊な分岐方法のためエロゲ慣れしたプレイヤーでも戸惑う。
--攻略情報さえ知っていれば簡単に対処できるが、発売直後は分岐点が分からなかった人もいた。
--修正パッチで分岐方法が表示されるようになり改善されたが、発売当初の評価を落とした一因である。

-設定ミス
--基本的にテキストの評価は高いが、「窺う」と「伺う」の誤変換などの誤字脱字もいくらか見受けられる。
--一部設定の齟齬や、あるCGの主人公の服など明らかなミスと思われる箇所も存在する。
--一部は修正パッチにて改善する。未適用で配信されているため、ダウンロード版にも適用した方が良い。

-コンフィグ
--派生元である「Lump of Sugar」のエロゲと比較すると明らかに項目が少なく見劣りする。
--テキスト速度設定・音声の個別設定など最低限は揃っている。しかし2017年のフルプライス作品は洗練されて細かく設定できるものも多いため、エロゲ慣れしたプレイヤーは気になってしまう。
--メニューバーにのみ「次の選択肢へ進む」ボタンがあるが、気が付きにくい。

-オープニングムービーの見返し機能がない
--OPを繰り返し見たい場合はムービー直前でセーブを残す必要がある。もしくは公式でアップロードされたYouTubeの動画を観るという手もある。
--本作より10年以上前に発売された「Lump of Sugar」の処女作『[[Nursery Rhyme -ナーサリィ☆ライム-]]』ですらOPの見返し機能はあったので、削られたことは理解に苦しむ。

----
**総評
「すごろくと現実」2つの舞台によるキャラクターの掘り下げは「人の縁」をテーマとしたシナリオと合致しており、キャラゲー・シナリオゲーとして高いレベルでまとまっている。一部に賛否分かれる要素もあるものの致命的な欠点はなく、面白いが故に気になってしまうと言える。~
独特な舞台設定、優れたテキスト、鮮やかな伏線回収の数々により、最後までプレイする意欲をわかせる構成も見事である。~
シナリオゲーマーだけではなく京都に興味のある人や可愛いキャラクターに惹かれた人にもお勧めできる。

----
**余談
-Lump of Sugarの姉妹ブランドとして発売されたのは、姉妹ブランドとしてLumpのよさを継承しつつ、まったく新しいカラーの作品を制作するためである。(インタビュー記事「【TG SCOOP】Lump of Sugar初の姉妹ブランド誕生!」より。)

-コラボ
--発売日の近い『タユタマ2 -After Stories-』(Lump of Sugar)と本作の予約で、描き下ろし色紙をプレゼントする企画があった。
---同じ読みのキャラ、本作の「琥珀」と『タユタマ2』の「こはく」をそれぞれの原画家が描いている。
--本作の作中にも『タユタマ2』の小ネタが存在する。

-現実の四条通や鴨川などは無料で訪れられるため、聖地巡礼はハードルが低い。

-ライターの冬茜トム氏は本作の発売後にTwitterアカウントを開設し、本作に関する補足情報などを呟いている。
--以降の氏はきゃべつそふとで『[[アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-]]』『さくらの雲*スカアレットの恋』のシナリオを担当している。本作とはブランドも違うが、ファンサービスなのか同じようなギャグ要素や地名が登場している。

-体験版では1面分のすごろくとエッチシーン1つが配信されている。

-公式サイトの「登場人物」の項目は、紛らわしく嘘に近い記述がある。

-公式アップロードされたオープニングムービーが2つ存在する。
--これは発売延期した影響であり、後からアップロードされたムービーは発売日が変更されている。

-2019年2月26日に''石川県''の伝統工芸品である九谷焼とコラボしたアートパネルが「銘品零号」から発売された。([[参考リンク>https://zerogo.net/?category_id=5c74a19fc2fc2851b69959f4]])

-2020年11月27日に3,800円の普及版が発売予定。

復元してよろしいですか?