「信長の野望 覇王伝」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

信長の野望 覇王伝 - (2017/08/13 (日) 10:25:55) の編集履歴(バックアップ)


信長の野望 覇王伝

【のぶながのやぼう はおうでん】

ジャンル SLG

対応機種 PC-9801、X68000、Macintosh、DOS/V、FM-TOWNS、Windows 95~2000、
スーパーファミコン、メガドライブ、メガCD、3DO、プレイステーション
発売・開発元 光栄
発売日 1992年12月
判定 なし
ポイント 初のパワーアップキット(以下PK)
「介錯を願おう」の連発
プレイヤー泣かせの仕様・新システム
あまりにも弱すぎる本願寺
固有顔画像を持つ武将の基準が謎
信長の野望シリーズリンク


概要

  • 「信長の野望」シリーズ第5作。
  • 前作『武将風雲録』までは国取りだったが、本作から城取りになった。
  • PC98版とWindows版(『「信長の野望」30周年記念歴代タイトル全集』収録分とSteam版)のみだが、初めてPKが発売された作品である。
    • 新シナリオ及びこのシナリオにしか出ない武将が追加される・ゲーム中にユーザーの作成した新武将を登場させられるなどの特徴がある。
    • FM-TOWNS版には、PK版のシナリオと武将がデフォルトで収録されている。MCD・3DO・PS版も一部のシナリオが収録されている。

評価点

  • 戦闘に「向き」の概念が追加。部隊は凸型で表示され、後ろへの長距離移動はできない(一旦向きを変える必要がある)・横や後ろから攻撃されるとダメージが増える等の特徴がある。
    • 凸型表示は、その後の作品には長らく取り入れられず『創造』まで採用されなかった。
  • 論功行賞システムの導入。金、領地、家宝、「一字拝領」などで褒美を与えたり、無能な家臣を追放・切腹させたりできる。
  • 大名が、他の大名を従属させられる。
    • 武力で他大名を全て攻め滅ぼす以外に、自大名が征夷大将軍になり他大名を全て従属大名にすることでもクリアできる。
  • 家宝と官位の導入。
  • 東北が細分化され、蛎崎(松前)・南部・安東(秋田)家などが『全国版』以来、久々に登場。
  • 城マップはそれぞれ個性がある。
+ これが征夷大将軍ED(5:50から)。ネタバレ注意。後述の理由で自力では見ることは難しいのでどうしても見たい人はクリックを。

  • 前作で追加された歴史イベントが、本作(PK含む)でも追加されている。中には当時の日本政治を連想させるネタイベントもある。
    • そのネタイベントは条件こそ非常に厳しいが、実は強力な効果がある。

問題点

新システム関係

  • 城が多い上に、一つの戦争につき一つの城しか攻めることが出来ないため、統一するまでに時間がかかる。
    • 宝島社文庫『戦国武将』によると、光栄社員曰く「『覇王伝』という作品では170の城が出てきたんですが、それらの城をすべて攻略するのはいかにもしんどい」
      • つまり、公式でも何も考えずに城の数を多くしたのは失敗だと認めている。
    • コンシューマー版では城の数が減っている代わりに、CPUの思考時間が長くなっている。
  • 征夷大将軍EDを見るためには武力統一以上に膨大な手間がかかる。そのため、普通に武力で統一したほうが早い
    • 理由は2つあり、1つは征夷大将軍は官位扱いであるため、征夷大将軍になるためには他の官位と同じ様に朝廷に大量の金を献上しないといけない。しかも征夷大将軍は最上級の官位であるため他の官位を手に入れるより手間がかかる。*1
      • さらに献上するにも官位を受領する(コマンドは朝廷工作)にも気合を最大分使用する必要がある。気合は最良でも最大値の三分の一ずつしか回復しないので再び朝廷工作出来るようになるまでに最短でも3ヶ月かかる。
      • おまけに何回も献上する必要がある。1回だけだと最大金額献上しても官位は従六位上までしか貰えない。しかも貰った官位はたとえ征夷大将軍であろうが基本的に1代限りなので大名が亡くなったら一からやり直しである。
    • もう1つは自分以外の大名を所属させるには自分の大名が圧倒的に優位でなければいけない。そのような状況であれば、なおさら武力で統一が容易である。
    • これだけ手間がかかるくせに、征夷大将軍EDの音楽や最後の部分は通常EDと同じ。
  • 家宝を購入できるかはランダムな上、値段が高いので購入が難しい。
    • 商人が来た時に限って家宝を購入するお金がない、という事も。
    • 前作では初期状態で茶器を持ってる武将が多かったが、今作では初期状態で家宝を持っているのは松永久秀と1568年の織田信長*2だけである。
  • 論功行賞システムに問題点がある。
    • 領地と家臣が増えるほど手間がかかるようになる。
      • 地域によっては国主に任せられる事もある*3が、自分で論功行賞を決めなければいけない場合もある。
    • 「一字拝領」も、名前が変わらなかったり、あるいは、織田信長が高坂昌信に一字拝領で「高坂信信」になるなど、奇妙な名前になる場合がある。
  • 雑兵システムは、雑兵を混ぜると士気や訓練度が下がる上、行軍速度が遅くなり、弱くなるだけでほとんど意味がない*4
  • ウリにしていたCPU思考のニューラルネットワークは『覇王伝事典』で「鉄腕アトム幻想の残骸」と評されるほどの失敗システムだった。
    • やたらと攻撃的で攻め込みまくり、しかも部隊に大量の雑兵を入れるため、どんどん疲弊していく。
    • そのためか98版PKのエディタにはニューラルがあったのだが『「信長の野望」30周年記念歴代タイトル全集』収録版では削除されている。
    • 次作『天翔記』もニューラルネットワークを採用していたらしいが、その次の『将星録』からは完全にニューラルの語は聞かれなくなった*5
  • 東北では前作にも登場した伊達・最上・蘆名の三強*6になりやすい。蛎崎・安東はおろか南部ですら伊達の餌である。

人材関係

  • 大名の存在をなくすには、全ての城を落として大名を自害させるしかないため、一度大名になった武将は基本的に他大名の家臣にできない。
    • 脅迫により大名を従属させることは可能だが、完全に屈服させて配下にすることはできないためである。
      • 前作および前々作では、大名の能力値が高いかつCOM大名でない限り、外交で脅迫して屈服させることで配下にできたため退化している。
    • マルチプレイで始めて配下にしたい大名を隠居させた後、メインの大名で捕らえて登用するという方法があるが高い忠誠度を下げておく必要があり、論功行賞で領地を与え、それを召し上げるといったことが必要で一手間かかる。しかも時期や大名によってはそもそも隠居できない場合もある。
    • なお、大名である武将が他大名の家臣になる唯一の例外が、前述したネタイベントである。
  • 前作では豊富だった自害時の台詞が、前作からの使い回しの「介錯を願おう」と、松永久秀専用の「貴様にこの平蜘蛛を奪われるよりは……」の全2種のみ。つまり、実質「介錯を願おう」の1種のみ。
    • 自分の大名が滅ぼしたor滅ぼされた場合はもちろんCOM大名が別のCOM大名を滅ぼした場合も自害の台詞が流れる仕様であるため、大名が減るたびに「介錯を願おう」を見る事になる。
  • 浪人(在野)武将を見つけるためのコマンド「取立」は、発見成功率が極めて低いという地雷コマンド。浪人武将が仕官を志願してくる方が圧倒的に高確率。
    • そのため、浪人武将が志願してこないと浪人武将の登用はおろか、対面すらおぼつかない。
    • コンシューマー版では、現在の城に近隣の浪人武将が来るよう呼びかけるコマンド「募将」が追加された。これと「取立」を組み合わせることで、ある程度成功率が上がるようになった。
    • そのくせ、浪人武将が空城を乗っ取る事が多い。前述の通り、本作では大名は強制的に自害するため、浪人武将が城を乗っ取るとその武将はほぼ確実に無駄死にとなる。
  • 忠誠度が表示されず、忠誠度の判別方法は気力の回復量から何となく推察するだけ。そのため裏切りの危険性が判別しにくくなった*7。裏切って独立した場合は前述の理由のためリセットするか諦めて死んでもらうしかない。
    • それなのに論功行賞では、非常に手間がかかる癖に忠誠度が少しずつしか上がってくれない。
      • 「加増」「報奨金」は勲功に見合った量+αを与えないと効果が薄く「感状」は忠誠度そのものがほとんど上がらないのでほとんど意味がない。「宝物」「官位叙任」は低い物でも効果は高いが前述したように入手が面倒。
      • 「一字拝領」は効果が高く無料だが、前述したような問題点がある上に一度限り。
      • また家臣に勲功に見合った量を大きく上回る褒美を与えると他の家臣の忠誠度が下がるので平等に行う必要がある。
    • 武将が謀反を起こした場合、他の武将が殺されることがある。しかも謀反を起こした武将の一門でも容赦しない。
  • 武将が内応されてないのに寝返る(さすがに総大将は寝返らないが)。しかも籠城している武将が寝返った場合は城からの脱出に失敗して殺されることがある。

それ以外の問題点

  • 野戦マップが使い回しばかり。そのため、高山が多いマップだと自軍を満足に配置・移動できないことがある。
  • 篭城戦での城がただの大きい的でしかない。野戦と篭城戦との差がほとんどないため、自分が攻められたときに篭城戦を選ぶメリットはほとんどない。
    • また、防御度の意味が薄いため、防御度を上げるコマンド「作事改修」はほぼ無意味。また「築城普請」というコマンドもあるが、こちらも実行できる条件が厳しい(「作事改修」で防御度を上限まで上げる必要がある)という空気コマンド。
    • 雑兵を少しだけ率いた武将を何人か特攻させると、簡単に防御度が0になって落城してしまうバグがある。
    • 篭城側は雑兵を動員できないにもかかわらず、COM大名は足軽がいなくても打って出ずいきなり篭城する事があるため、兵0で簡単に落とされてしまう。
    • なお、篭城戦のマップは使い回しばかりの野戦マップと違って城ごとに異なっている。
  • 武将の顔画像の基準がメチャクチャ。
    • 長宗我部元親や石田三成など、一部の有名武将ですらモンタージュになっているのに、知名度のあまり高くないマイナー武将が固有の顔画像になっていたりする。
      • 『覇王伝』で初登場した武将(南部信直など)や過去作では『全国版』のみに登場した武将(一条兼定など)は固有の顔画像を持っていることが多い。
+ どれがどの武将のものか分かるかな?(ヒント:全て有名な武将です)

画像の上にマウスカーソルを載せると答えが出ます。

  • 勢力分布では本城を持っている勢力しか表示されず、支城しか持ってない勢力がわからない。
    • PC版だと、近くの勢力はわかるもののコンシューマ版だと一切不明である。
    • PK版ではすべての地域が見れるように改善された。
  • 武将がいない城を攻めた場合、防御側にどんなに兵士がいようが確実に城を取ることができる。当然逆の場合もありうる。しかもその場合援軍を送ることすら出来ない
    • 城に武将がいないと前述したように浪人や裏切った武将が城を乗っ取る可能性もあるので城を空にするメリットはない。
    • 但し大名または国主の城しか武将に直接命令できないので武将が少ない時はリスク覚悟で大名または国主の城以外を空にして武将を集中させる必要もある。
  • PK版の新シナリオにバグが見られる。
    • 改名前の斎藤道三(長井新九郎)が裏切った際、1度斎藤家の家紋になるがまた別の家紋になってしまう。
      • 改名時に斎藤家の家紋か否やに関わらず家紋が変わるようになっているためである。
    • 名前にスペースが入っている武将(大崎 義隆*8)も存在している。
  • Windows版でも敵城を越えてその先の城に攻め込めてしまったり強制終了しやすいというバグが存在する。
  • 一向一揆の効果が前作では一つの国で起こせたが、今作では一つの城のみなので相対的に弱体化している。
    • そもそも発生条件の一つである本願寺家は今作では長尾(上杉)家や朝倉家はおろか神保家や能登畠山家にすら勝てないほど弱く、10年もしないうちに滅亡することが多いため東国や西国の大名でプレイした場合一向一揆の被害を受けることはあまりない。被害を受ける場合のほとんどが本願寺家の遺臣が神保家や能登畠山家の後を継いだ場合である。
      • ガイドブックでは当然ながら「このゲームの本願寺には、史実での活躍を期待してはいけない。領地は加賀だけでその加賀の貫高も隣の越中より低い。大名も家臣もまったく戦闘向きではない。鉄砲は多いが数回戦争して減ったらそれまでである。」と辛辣な評価。
      • あまりにも本作の本願寺が弱すぎたためか、次作での本願寺は大幅に強化された。
      • ちなみに、本願寺光昭(准如)が出てくるのは、シリーズ作の中では本作と『将星録』のみ*9本作の本願寺はシリーズ屈指の弱さであるにも関わらず
  • 彌助が出るイベントがあるのだが、黒人差別といわれても仕方がない扱いである。
    • 言葉が一部除いて記号のみ。しかも彌助がいる状態で本能寺の変イベントを起こすとなんと織田信忠の身代わりになる。そして生き延びた信忠が、織田家を継ぐことになる。
    • この扱いにクレームが入ったのか、長い間シリーズ作品に登場することはなかったが『創造』のダウンロードコンテンツで「弥助」として再登場。
    • ちなみに作品が出た当時は黒人の扱いが社会問題になっている時期である。
      • 肌の色が黒いのを信長が化粧と勘違いして体を洗おうとしたというエピソード自体はかなり有名であり歴史小説等でもたびたび目にするシーンではある。この点では時期が悪かったとしか言いようがない。
+ 彌助が出てくるイベント。ネタバレ注意。

総評

論功行賞や雑兵など、日本史に実在したものをゲーム上で再現しようとした意欲作だが、ゲームシステムにうまく昇華できなかった。
そのためだろうか、前作次作に比べ評価は高くない。
近年、信長の野望の新作の評価が下がりつつあるが、当作品は未だにシリーズの中でも低い評価である。
例えばコーエーテクモゲームスが実施した「あなたの好きな『信長の野望』を教えてください」という公式アンケートでも当作品は「嵐世記」「初代*10」「将星録」の次に票が少ない。