信長の野望 将星録
【のぶながのやぼう しょうせいろく】
ジャンル
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歴史シミュレーションゲーム
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対応機種
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Windows 95~XP Windows8.1、10(steam) プレイステーション セガサターン ドリームキャスト プレイステーション・ポータブル
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発売・開発元
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光栄
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発売日
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【Win】1997年3月 【PS】1997年11月27日 【SS】1998年4月2日 【PSP】2005年12月22日 【Steam】2017年7月26日
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象) |
判定
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なし
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ポイント
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シリーズ初の箱庭内政 武将&城数が激減 箱庭内政以外の様々な要素は厳しい クソゲースレスレの危うい出来
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信長の野望シリーズ
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概要
『信長の野望』シリーズ7作目。
戦国時代の大名となって全国を統一する目的は変わらないが、前作『天翔記』までの流れを切り、新たなシステムに刷新された。
特に本作を象徴するシステムとして日本全体を巨大なマップに見立てた箱庭内政の要素が挙げられ、以後のシリーズにも影響を与えている。
また、BGM担当が前作までの菅野よう子氏から山下康介氏へと交代した。以後、山下氏はシリーズ13作目の『天道』まで担当し続けた。
特徴
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本作では日本全体がクォータービューで表現される1つの巨大なマップになっており、そこに城や町並みなどが点在する形になっている。
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本作では「内政」や「軍事」といったコマンドを実行するのではなく、「城」から武将一人で結成される「ユニット」を作成して移動させて命令を与える形になっている。
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「委任」や「人事」といった一部のコマンドを除いて、大半のコマンドは「ユニット」を使って行うものとなっている。
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ユニットの説明
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軍勢
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第1~5部隊で構成される戦闘用のユニット、部隊にはそれぞれの位置や兵科を設定でき、第1部隊が全滅すると壊滅となり、武将が捕虜になるか、移動ユニットに解体される。 敵の「軍勢」や「城」を攻撃したり、内政中のユニットを攻撃出来る。 また、点在する「金山」の確保も軍勢ユニットで行える。
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輸送
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兵士や物資などを運ぶ。消耗した軍勢ユニットの軍備を補充したり、城から城へと物資を輸送したりと使用用途は様々。 「軍勢ユニット」に攻撃されると「移動ユニット」に解体されてしまうので護衛は必須。
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開墾
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兵糧収入を上げる施設「水田」「畑」をつくり、河川に対して「治水」を行うことも出来る。
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商業
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金収入をあげる施設の「町」と「関所」を作れる。「関所」は他国の「間者」や「使者」を捕らえることがある。
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建設
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城の「改修」や兵士の増加量を上げる「村落」を作れる他、施設の廃止を行う
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使者
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外交の使者、他国の城に隣接する事で「外交」コマンドを行う事が出来る。 コマンドの失敗で捕らえられたり、解体されることもある
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間者
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謀略用ユニット、「忍者」の特性をもつ武将なら移動力が高い「忍者ユニット」になる。 他国の城に隣接して様々な謀略コマンドを行う事が出来る。コマンドの失敗で捕らえられたり、解体されることもある
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移動
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特別な効果は持たないが移動力がとても高い。武将を城から城へ移動させたい時に結成する他 他のユニットが解体されるとこれになる
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「商業値」「開墾値」といった内政パラメーターもなくなり、城の「収入範囲」に存在する「町」や「畑」といった施設から定期的に収入が得られるようになっている。
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施設を開発するには開発を命じてから数ターンが必要(武将の内政値によって期間は変動)。1ターンは1ヶ月で表現され、12ターンで1年が経過する。
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「町」と「水田」は開発を重ねることで最大3レベルまで上昇し、収入を増加できる。ただし、「水田」は近くに「治水」された河川が必要となる。
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河川が近くにない地域の場合はレベルアップの出来ない「畑」に限定される為、兵糧の収入が上げにくくなるといった特徴がある。
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「徴兵」コマンドもなくなり、「村落」を増やす事でターン毎に「兵士」が増えていく。
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これまでのシリーズと同様に「兵士」が増えると俸禄として支出が増えるので闇雲に「村落」を設置しても「兵士」を賄えなくなってしまう。状況に応じて「村落」を潰して「畑」にするといった臨機応変の対応が必要となる。
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「城」を「改修」して「防御度」を上げると「城規模」が上がって「収入範囲」が拡大していく。「収入範囲」が他家の「城」と重なる場合は早い者勝ちになる。
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「城規模」の増加にともなって城に雇える兵士の最大数も増加する。
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他家への侵略は「軍勢ユニット」で行う。「軍勢ユニット」同士が攻撃すると「野戦」となり、「城」に対して攻撃をかけると「攻城戦」となる。
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「野戦」は互いのユニット同士の部隊(最大5)が隣接して直接攻撃しあう形になっている。1ユニットにつき、最大9マスの中に部隊が配置され、攻撃時の方向などが反映される。
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その為、攻撃した(された)方向によっては総大将である「第1部隊」が前線にむき出しになる危険性もあるので、結成時の配置は重要。裏を返せば寡兵でも敵将の「第1部隊」を積極的に叩けば逆転も可能。
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また、背面や側面から攻撃をかけることで奇襲攻撃となり、1ターンの間、敵部隊の行動を無効化出来る(通常攻撃でも反撃を受けない)他、大きく防御力が落ちた状態で戦える為、非常に優位に立てる。
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「攻城戦」には最大4ユニット(最大20部隊)が参加できる。また、「城」を完全にとり囲んで待機を続けることで収入を絶ち、兵糧攻めを行うことも出来る。
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城内に点在する「城門」をこじ開け、「本丸」の防御度を0にすると勝利。しかし城内の「城門」の前にある「防御ポイント」に部隊がいれば、全滅させなければ「城門」を攻撃することは出来ない。
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「軍勢ユニット」は毎ターン手持ちの「兵糧」を消費するので「輸送ユニット」を背後につけておく等して「補充」をする事も大事。それまでのシリーズ以上に兵站の概念が重要視されている。
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武将の「移動」や「外交」もユニットを使って直接移動する形になった為、離れた城へ行く際にはそれなりに時間が掛かるようになった。
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「朝廷」は京の「京都御所」に行かなければ行えないので、九州や東北等の勢力が官位を得るのは非常に大変。
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「ユニット」が任務に失敗すると「移動ユニット」に解体され、自身の居城へと移動する。それまでは「移動」以外のコマンドをその武将に与える事が出来ないので、遠くの城から出陣させる際等は帰還する時間や場所を考える必要がある。
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歴史イベントの一部は実写によるムービーで表現される。「三矢の教え」等が該当。
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「山崎の戦い」の場合、敗れた明智光秀が落ち延びるパターンと、討ち死にするパターンで2つのムービーが用意されている。
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発売当時は「明智光秀 = 南光坊天海説」が巷で語られる事が多く、それに則ったものと思われる。
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パワーアップキット(以下、PK)を導入すると信長の日常エピソード(「信長の味付けの好み」やら「信長と無辺」)といった他のシリーズでは見られない風変わりな歴史イベントも発生する。
評価点
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直感的な箱庭内政システム
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それまでの数値との睨みあいから脱却し、領土の発展具合が視覚的にわかるようになった。プレイヤーによって十人十色な城下が作れる。
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施設同士の相性といった面倒な要素もほとんどなく(河川と水田ぐらい)自由な町並みを作れる。
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単純に町を置いたら「金収入」が増える、「畑」を置いたら「兵糧収入」が増えるといった至極わかりやすく、UIもシンプルなため、SLG初心者に好まれた。天下統一をそっちのけで町づくりに励むユーザーも続出。
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同時にそれまでのシリーズでは軽視されていた兵站の概念や、兵糧攻めを行えるようになったという点も見逃せない。
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土地と土地の距離も重要となり、特に東北地方は「城」と「城」との距離が長い上に移動力を大きく落とされる山岳地帯が多く、冬になると豪雪によって行軍しづらくなるといった点も再現されている。
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山下康介氏による重厚な音楽
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菅野氏とはまた違った作風で戦国の雰囲気を十二分に醸しだした重厚なBGMでゲームを盛り上げてくれる。
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内政時のBGMは次作『烈風伝』と同様に大名が現在いる居城の地方によって変化するが、本作の場合は気に入ったBGMに固定する事が出来る。
問題点
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戦闘システムが粗い
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「野戦」は攻撃側が有利すぎて「先に殴ったもの勝ち」になりやすい。優秀な武将であっても側面や背面から襲われるとあっという間に兵が減る。
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それまでのシリーズの「野戦」と違い、初手からほぼすべての部隊を攻撃できる上に、攻撃側の全ての部隊が行動を終えてから守備側のターンへと移るという仕様のため、攻撃側が圧倒的に有利になっている。
加えて、奇襲攻撃を行った場合、守備側は向きを持ち直すのに全ての部隊の行動が消費される為、じつに守備側は攻撃側が最大10回行動するまでの間、何も出来ずに殴られっぱなしになる。
その為、奇襲をかけて守備側の「第1部隊」をひたすら射撃すれば凡将でもノーダメージで敵大名の撃破が容易という大味なバランスになっている。
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例外的に「武田信玄」と「真田幸村」のみ、「第1部隊」を壊滅させても影武者という事で別の部隊が「第1部隊」として復帰する為、非常に手強い。
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「攻城戦」は逆に守備側が非常に有利。というのも攻撃側が「城門」にはりつけるのはせいぜい2部隊であり、残りの部隊は後方で控える事しか出来ず、「改修」で「防御度」が上がっていれば、なかなか門を突破することは難しい、
その上で防御側の迎撃が強すぎるのも問題。特に「曲輪」「本丸」に武将の部隊が配置されると、武将の足軽(鉄砲)適性に応じて攻撃回数が増える(そこそこの適性である「C」でも3回、「S」ならば6回も1ターンに攻撃出来る)為、
1ターンの内に門を開けて「曲輪」にいる武将の部隊を全滅させなければ、防御側のターンで「本丸」と「曲輪」からすさまじい回数の矢弾が撃ち込まれ、門にはりついた部隊は綺麗に溶けてしまう。
その為、戦闘力や適性が高い猛将に城を守られると絶望的で、さらに複数の武将が配備された城となると十倍以上の軍勢だろうが容易に返り討ちにされる。
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「開門」や「混乱」で部隊や城門の無力化を試みることもできるが、失敗すれば次のターンで確実に溶かされるわけで……。
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コンシューマー機の無印版では「攻城戦」がカットされるという異例の事態になった。
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「兵糧攻め」は包囲した所で兵糧の消費量が少なく、普通に行えば兵糧が尽きるまでに年単位の時間がかかるので行いづらい。
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箱庭システムの不満点
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ユニットが1武将で結成される都合上、完成までに時間がかかってしまう。さらには任務が完了した際に報告が無い等、若干不親切な点も。
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河川を治水したい場合、「ここからここまでを治水する」といったことは出来ず、1マスずつ移動させて「治水」を行わなければならないため面倒。
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次作では予め、開発計画を立て、複数の武将でユニットを組める為、これらの不満点が改善された。
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武将数と城数が激減
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前作無印に比べると登場武将は1000人(史実姫16人含)から700人にまで減ってしまった。『覇王伝』無印の818人よりも少ない。
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城の数も214から64と3分の1以下になったが、それでも移動の手間や攻城戦の難易度からゲームのテンポはむしろ悪化している。
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前作までで武将数が増えていったのは、開発機種が8ビット機から16ビット機へと移行していた時期でデータ量を多く扱えるようになったことや、それに伴うシナリオ本数の増加で年代の幅が広がったためであり、本作では武将・城の数ともにゲームシステムにバランスを合わせたために減少させたとしている。
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前作まででプレイヤーとして選択出来ていた一部の小大名などは選択出来ず、支城の上に「軍勢ユニット」として存在するだけの独立勢力として扱われており、マイナー大名プレイを好むプレイヤーは涙を飲んだ。
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シナリオの数も減少している。前作にあった「信長の誕生」と「関ヶ原前夜(PC版PK限定)」シナリオがなくなったため、扱われる年代も「信長の家督相続」から「本能寺の変」(PKを含んでも豊臣家の「天下統一前夜」まで)までと狭くなった。
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また、武将の顔グラフィックも「本作の新規描き下ろし」「前作の流用」に加え、何故か「『覇王伝』に先祖返り」した武将が多数いる。
特に『覇王伝』に先祖返りした武将の顔グラフィックはハードによる色使いや、タッチの差から違和感がある。
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軍団システムの消滅
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前作では多数の城を「軍団長」に任せてまとめて委任することが可能だったが、本作ではその概念が廃止され『覇王伝』以前の城の一つ一つを委任する形に戻ってしまった。
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快適であり、史実の再現の面から見ても好評なシステムだったため、廃止が惜しまれた。
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移動が面倒くさい
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自国の城から城へ移動するにも「移動ユニット」で行わなければならない。移動力こそ高いものの、場所によっては数ヶ月かかることもザラなので殊更面倒。
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特に「越後」や「東北地方」を攻める場合は、マップの広さと山岳地帯の多さで移動が非常に面倒。さらに冬になると豪雪で移動力が落ちてしまい、数年単位の時間が平気で掛かる。
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軍勢ユニットの移動が面倒なのは次作でも言われているが、本作の場合はいとも簡単に戦闘に負けてユニットが解体されやすいため、僻地を攻める難易度は相当なもの。
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PK要素が微妙
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本作のPKは標準的なPKの内容の他は、「年表」と盗賊イベント(最大勢力から物資を盗む)、早刈りコマンド(「軍勢」が「畑」から兵糧を得る)の追加にとどまっており、わざわざ導入する価値があるかと考えると微妙な所。
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オリジナルの新武将を作る事ができない。PKが発売された『覇王伝』以降の作品で新武将を作れないのは本作のみとなっている。
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また、PKで追加された武将もいない。PKが発売された『覇王伝』以降の作品でPK追加武将がいないのは本作のみである。
総評
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箱庭システムは以後のシリーズにも大きな影響を与えるほどの名システムだったが、
出来の悪い戦闘システムや、武将数と城数の激減、ゲームテンポの悪化など目を瞑れない問題が多く、
前作の売上累計22万本から大きく数を落とし、16万7千本に留まった。シリーズ中でも本作は『覇王伝』『嵐世記』と並んで不人気とされる事が多く、微妙な立ち位置にいるシリーズである。
とはいえ、箱庭システムの持つポテンシャルはたしかなものであり、本作の欠点を踏まえて改良を加えた次作はシリーズの中でも人気が高く、良作として評価されることになった。
余談
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本作でも「前田慶次」が武将として登場する。本作発売時期には慶次が主役の漫画作品『花の慶次』の連載はすでに終了して久しかったが、その間に知名度はかなり上がったと見え、シリーズ最新作まで連続出場を果たしている。
「松風」を所持して突撃をした時に専用のセリフが用意されている他、戦闘能力も「上杉謙信」についで最強クラスと優遇されており、漫画さながらに無双することが可能。
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Win版はMeまでの対応となっており、近年のPCでプレイするには相性が悪く、PKを含めたバージョンで遊ぶのは至難の業となっていた。
その為、一応XP上でも動作していた前後作に比べるとプレイするハードルが高かった。
また、信長の野望30周年記念の『信長の野望』歴代タイトル全集にはWindows XP以降のOSで動作する「WithPK」が収録されたが、初期バージョンではBGMのトラックが滅茶苦茶になるというぞんざいな扱いを受けた(後にアップデートで修正)。
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後にSteamで配信されるようになり、Windows 8.1以降のPCでもプレイが可能となったため、上記の問題点は解決された。
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実は(オンライン作品を除く)『信長の野望』シリーズの中で唯一のレーティングがCERO:B(12歳以上対象)の作品である(2022年現在)。PSP版発売に伴い、設定された。
最終更新:2023年10月08日 06:36