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TIME TRAVELERS - (2013/11/20 (水) 12:03:45) の編集履歴(バックアップ)


TIME TRAVELERS

【たいむとらべらーず】

ジャンル タイムトラベルアドベンチャー
プレイングシネマ



対応機種 ニンテンドー3DS
プレイステーション・ヴィータ
プレイステーション・ポータブル
発売・開発元 レベルファイブ
発売日 【3DS/PSV】2012年7月12日
【PSP】2012年7月19日
定価 5,980円
レーティング CERO:C(15才以上対象)


概要

金八先生』や『428』を手掛けたクリエイター、イシイジロウ氏がレベルファイブ移籍後に製作したアドベンチャーゲーム。
『428』にて脚本を担当した北島行徳氏が脚本を、音楽を担当した坂本英城がコンポーザーを担当するなど、『428』のメインスタッフが再集結している。
それ以外にも、「5人の主人公のザッピング」「TIPS*1をつかった用語説明」といったシステム面でも『428』や『街』*2を意識した部分が多く、ストーリーチャートのデザインも『428』のものを踏襲している。
また、作品中で取り上げられることはほとんどないものの、本作は『428』と世界観を共有しており*3、ファンサービスとして『428』に登場した「タマ」の着ぐるみが登場したり、一部のTIPSに『428』のキャラクターの名前が登場している。


特徴

  • プレイングシネマ
    • ゲームは基本的にテキストを読み、要所要所で出てくる選択肢を選んでいくというサウンドノベルに近い形式だが、今作はキャラクターのセリフがフルボイスになっている他に背景やキャラクター全てがCGで表現されており、シーンごとにキャラが動くという映画やドラマのような演出がなされている。本作ではこれを「プレイングシネマ」と名付けている。
  • プレイングシネマイベント(PCE)
    • いわゆるQTE。ムービー中に指定されたボタンを押すことでイベントが進む。
  • TTフォン(タイムトラベラーズフォン)
    • 本編シナリオをクリアするとプレイできるようになるおまけモード。
    • プレイヤーは「ある日、偶然から過去に繋がる(?)携帯電話を手に入れた男子高校生」となり、「2002年にいる『みこと』という少女」とテレビ通話でコミュニケーションを取っていく。
      • 雰囲気的には『ラブプラス』の簡易版、と言えば分りやすいだろうか。「TTフォン」の時間はゲーム機本体の時間と連動しており、その他に「SKIP(みことの時間を最大48時間まで4時間刻みで進める)」「WAIT(みことの時間を進めた場合、主人公の時間が追い付くまでみことの時間を止める)」という操作を活用してみこととの親交を深めていく。

評価点

  • タイムトラベル物の小ネタの数々
    • タイトルの通り、本作はタイムトラベルを題材にしたゲーム。そのためか要所要所に有名なタイムトラベル物のSF小説や映画の小ネタが散りばめられており、知っているほどニヤリとできる。
    • 各キャラにはテーマソングがあり、曲の題名が「The Door Into Summer*4」だったり、歌詞がタイムトラベルを皮肉ったものだったりと多彩である。
    • 中にはあからさまな『ドラ○もん』ネタが仕込まれていたりもする。
  • シナリオ面
    • 物語の設定自体に破綻した部分はなく、しっかりまとまっている。
    • キャラクターも5人しっかり個性付けされており、見せ場もあるので印象に残る。
    • 『街』や『428』と同じく、おバカ全開なネタ選択肢や一部バットエンディングのぶっ飛びぶりなども魅力の1つとなっている。「ピンクのラベル」「粋なジョーク」辺りは初プレイで思わず選んでしまい吹いたプレイヤーも多いだろう。
      • ネタ選択肢の数々はボイス付きになったことで更に強烈になっている。声優が真面目にネタ選択肢を演じる様子は『街』や『428』というより別のなにか?に近付いたような気もするが。
  • 音楽
    • タイムトラベラーズのテーマ曲、各キャラクターのテーマソング(ボーカル付き)は非常に評価が高い。演出効果も優れておりひとつの曲としての完成度も高い。
  • 映像の作り込み
    • 1シーン1シーンフルCGでキャラがしっかり動く演出などは、『428』や『街』での実写の静止画とはまた違った魅力がある。
    • モーションキャプチャーを使用したリアルな動作の他に、一部のアクションシーンではアニメの演出家に絵コンテを依頼しており、迫力あるアクションが描かれている。
  • TIPSリストが追加
    • 一度見たTIPSがリストに登録され、いつでもメニュー画面で見ることができる。
    • 『街』と『428』では面白いTIPSを読み返すというのが面倒であったが、このおかげで何時でも読み直せるようになったことは好意的に受け止められている。
    • また、VITA版はトロフィー取得にも関わっているので、1つのやりこみ要素になっている。

問題点

  • 難易度が非常に低い
    • 出てくる選択肢のほとんどが「真面目な選択肢」「明らかに間違った選択肢」「完全にネタに走った選択肢」の3通りに区分できるほど分かりやすく、一発で正解が分かってしまう。このためどの選択肢が適切かと迷うことがほとんどない。
      • 『街』や『428』では「一見どれを選んでも正解に見えるが、実は他のキャラクターの物語に大きな影響を与える」という選択肢もあったのだが、本作ではそういったケースはほとんどない。
    • また、ザッピングも後半以外はほとんど行われず、各キャラクターの物語間での関連性が薄い。
      • 更に序盤から中盤までは勝手にキャラクターが切り替わってしまい、『街』や『428』と違いZAPS(JAMP)*5のシステムがないので、「試行錯誤して物語を動かす」という感覚も薄い。
  • 本編のボリューム不足
    • 本編は10時間程度でエンディングを迎えられるほどボリュームが薄く、上記の選択肢の分かりやすさも相まって余計に早く終わったような感覚を受ける。
    • 後述のように後半の展開には駆け足の部分もあるので、全編通してフルCGのキャラクターが動くという特徴上、モーションキャプチャーなどの手間が膨大であまりシナリオを伸ばせなかったのかもしれない。
  • 煩雑なPCE
    • 入力時間はとても余裕があるため、わざと失敗しようと思わない限り間違えることはない。
    • むしろこれを失敗しないと見られないTIPSやバッドエンディングがあるので逆に面倒な要素になってしまっている。
      • 一応、2回目以降はスタートボタンでボタン入力をスキップできたり一部は選択肢次第で回避できたりと周回プレイに対する配慮はあるのだが、演出の関係上PCE中の会話はスキップ不可な上、PCEが関係するバッドエンディングの中には数個とはいえ「タイミングよく6回ボタン入力しなければいけない場面で6回全てミスする」「1回正解のボタンを押せばいい場面で3回連続でミスする」「途中で長めの会話が入るPCEを失敗」といった面倒な条件のものがある。
  • シナリオ面
    • タイムトラベル感が薄い。
      • 詳細は後述するが、『タイムトラベラーズ』という題名ではあるもののプレイしているとタイムトラベルしているという感覚はあまり感じられない。
        + ネタバレを含むので注意
      • 5人の主人公たちは作中で「タイムトラベラー」と呼ばれるのだが、その能力は「命の危機に陥ったり取り返しのつかない失敗を犯してしまった際、無意識に時間を巻き戻す」というものであり、彼らには時間を遡っているという自覚は全くないため「タイムトラベルしている」とは言い難い。
      • 本作の登場人物で厳密な意味でのタイムトラベルを行ったのは2名のみであり、更にその様子が描写されるのは終盤に入ってからである。
    • 後半からとにかく駆け足。
      • 中盤までは濃密に進んでいくのだが、突然急速に伏線が回収されあっという間に終わってしまう。
  • TTフォンの仕様
    • おまけモードの「TTフォン」だが、VITA版ではこれをプレイしなければ獲得できないトロフィーが全トロフィーの3分の1以上を占めている。
    • 更に、TTフォンのプレイで獲得できるトロフィーの中には「決まった日時に発生するイベントを見る」というものが4つあり、本体の時計をいじるなどの工夫をしなければ全てを回収するまでには最低半年かかるという代物である。
      • TTフォン自体は決まった日にしか聞けないメッセージを多数収録していたり、シナリオも最後に意外な展開が待っていたりと力は入っているのだが、あくまで「おまけ」の域を出る出来ではなく*6、更に(設定上仕方ないのかもしれないが)電話中の会話がスキップできなかったりと周回プレイがキツい仕様のため、「このトロフィーの数はどうなのか」という声も出た。

総評

シナリオのボリューム不足や難易度の低さなど、『428』のような作品を期待したプレイヤーからはガッカリする部分が非常に多い作品ではあった。
ただし、CGを使ったプレイングシネマという試み自体は新しく、独自の魅力もあるので決して出来が悪いわけではない。
惜しむらくは、「フルCGのキャラクターを映画やドラマの如く動かす」という演出のために必要な手間の多さが、結果的にシナリオ面に制約を与えてしまっていると思しき点だろう*7
いずれこの点を克服し、プレイングシネマの魅力と大ボリュームを兼ね備えた次世代の作品が生み出されることを期待したいところである。