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DRIVING EMOTION TYPE-S - (2020/05/31 (日) 19:32:12) の編集履歴(バックアップ)


DRIVING EMOTION TYPE-S

【どらいびんぐえもーしょん たいぷえす】

ジャンル レース

対応機種 プレイステーション2
発売元 スクウェア
発売日 2000年3月30日
定価 6,800円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 極悪な操作性
実はバグだらけ、でも結構笑えるものが多い


概要

  • PS2が2000年3月4日に発売され、同時発売の『リッジレーサーV』はPS2のグラフィック性能を遺憾なく発揮していた。少し遅れて発売された本作は、PS2では初となる“実在する車によるドライブシミュレーター”として、数々の目玉要素を引っさげて登場した。
  • 通称として「ドラえもん(ドライビングエモーショ)」なるものが存在する。

カーマニア垂涎の要素

  • 国内6メーカー、海外5メーカーの車が実名で登場する。
    • 特にフェラーリ、ポルシェは後に出る『グランツーリスモ3 A-spec』(GT3)ですらファンに望まれながらライセンスを獲得できず、ポルシェのシャシーをベースにコンプリートカーを制作しているRUFの車を代わりに登場させていた*1
  • これまたGT3で望まれながら実現しなかった(登場は4から)要素の、鈴鹿サーキット(東コース・フルコース)・筑波サーキットの国内有名サーキットを収録。90年代のチューニングカーブーム時、チューナー達はこぞって筑波サーキットでのタイムを競い合っており、チューニング雑誌やビデオマガジンにも頻繁に登場するチューニングカーの聖地のような存在であった。
  • コックピット視点ではハンドル、メーター、ミラー等車の内装まで再現している。もちろん操作に合わせて手がハンドルを動かす。
  • 『グランツーリスモ』シリーズやXboxでの『Forza Motorsport』シリーズをはじめ、今でこそ車の内装まで描くのも一般的であるが、PS2時代はここまでこだわっているゲームは少なかった。*2

問題点

  • 操作性が悪い。これに尽きる。
    • タイヤの接地感は皆無で、少しステアリングを切るとタイヤが滑り出してしまい、立てなおそうと逆に切ると今度は逆に…と真っ直ぐ走ることすら難しい。FF車が自然にカウンターを当てながらコーナーをドリフトで曲がる*3姿は、自動車好きには笑いのポイントだろう。
    • ステアリング位置も「ボタンを離すと中立に戻る」一般的なシステムではなく、ステアリングコントローラーのフォースフィードバック機能を前提とした「自ら切った方向と逆へ操作する」タイプ*4を採用した。
      • これが曲者で、ハンコン対応でもない(当時PS2対応の製品は存在すらしていない*5)のにそんな高度な設定を加えたことで、更なる特異な挙動を生むこととなってしまった。
  • PS2では標準となったアナログ入力に対応したため、アクセル操作などは逆に入力がシビアになるといった弊害もある*6
    • 一方で、昨今のPS向けレースゲームにおいて当たり前になった「スティックでのステアリング・アクセル・ブレーキの操作」には非対応。こちらが可能であればまた評価は変わったのではないか。
  • 一方で地道に練習さえすればちゃんと車の制御は可能。一定のスリルを感じながらレースしたい、という人には美点であるともいえる。
    • また、このレースゲームのハンドリング操作のシビアさに慣れ親しんでしまうと、他のリアル系レースゲームの挙動が軒並みぬるく感じられてしまうという場合も。そういう意味では「極端にハードなレースゲーム」ではあるが操作のシビアさが万人における欠点とは言いがたい。
  • 登場する車種はカラーリングとホイールの変更やマシンセッティングが可能であるのみで、エンジン・シャシーなどへいわゆるチューニングは一切出来ない。
  • AIが若干馬鹿。特にライバルカー(自車含む)の動きに対する反応が希薄。レース開始時に盛大なクラッシュが起きる場合もある。
  • DVDを使用したゲームに比べるとボリューム不足な感じは否めない。
    • 各々の要素を全て合わせても内容はかなり薄い部類。ある意味やりこみ系ゲーム(挙動に慣れるという意味合いで)ではあるが…。

評価点

  • 視点だけでなく、エンジン音やメーターの動きまで、車載カメラのような雰囲気がよく出ている。
    • 背景の美しさは当時としては良好。『リッジレーサーV』と比較するとビビッドさに欠ける*7ため、目立ちはしないが。
  • クラッシュすると横転することも(横転したら強制的にポーズがかかり、やり直しさせられる)。
    • 横転した状態では当然操作はできないが、放置しておくと別の車が追突したはずみで起き上がり、再びレースに参加できるという冗談みたいなことが起きることも。さらにクラッシュして車が浮いた状態で別の車がぶつかってくると、なんとその車と合体してしまうことがある。2台の車が合体して走る姿はかなりシュールで、他のレースゲームではまず見られない貴重な光景(しかもリプレイの保存もできる)。
    • これらの怪奇現象を目当てにプレイしてみるのも面白い、かもしれない。……ただし、そこまでこのゲームの駄目っぷりに耐えられればの話だが。
  • BGMはかの細江慎治が担当しているので良曲揃い。

総評

魅力的な要素は多いが、全て宝の持ち腐れ。それを諦めたプレイヤーの精神的ダメージと怒りはより大きくなった。
PS2発売当初のゲームということもあって、とにかく納期に間に合わせただけという、お粗末な作りの作品の見本のように思える。

余談

  • アスキーがかつて運営していた自動車ニュースサイト「オートアスキー」上でも本作のレビューが行われており、やはり挙動は辛辣な評価が下された
  • 前述のメーカー、サーキットなどは『GT3』が実現できなかったのもあり、「本作にライセンスを横取りされた」と邪推するGTファンの声もあった。ちなみに、当時のスクウェアはフェラーリ・ポルシェのライセンスを独占していたエレクトロニック・アーツ(EA)と合弁しており、フェラーリ・ポルシェの収録もその縁で実現したのである*8
    • 後年EAは『Burnout』『Need for Speed』など良質なレースゲームを生み出したので、「開発もEAに任せればよかったのではないか?」とも思えるが、当時EAが発売していたコンシューマ群のレースゲームも大方大概の出来*9であり、どっちにしろ期待は出来なかっただろう。
    • 奇しくもその一方で、EAは本作と同じ年に「ポルシェ車オンリーのNFS」である、『Need For Speed:Porche Unleashed』(Win/PS)をリリースしている。しかも、 スピンオフどころか、れっきとした正規シリーズ作である。
    • なお、これに懲りたのかは不明ではあるが、スクウェア(・エニックス)は現在に至るまで純粋な「レースゲーム」には手を出していない*10(乗るのが車だけではない『チョコボレーシング』3DS版も開発中止)。少数ながら熱心だった『レーシングラグーン』ファンの続編への希望は勿論、子会社であるタイトー製のACレースゲームにして現在に至るまで家庭用移植が行われていない『バトルギア4』のスクエニ名義での家庭用移植への可能性も奪うことに*11
  • 現在の『グランツーリスモ』『Forza』などは本作が目指し、失敗したことを成功させつつある。本作はドライブシミュレーターの方向性を示した、早すぎた作品なのかもしれない。