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風のクロノア door to phantomile - (2014/03/18 (火) 04:57:11) の編集履歴(バックアップ)


風のクロノア door to phantomile

【かぜのくろのあ どあ とぅ ふぁんとまいる】

ジャンル アクションゲーム

対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ナムコ
発売日 1997年12月11日
定価 6,090円
廉価版 PlayStation the Best for Family
1999年11月18日/2,800円
配信 ゲームアーカイブス
2011年7月6日/600円
分類 良作
風のクロノアシリーズリンク

概要

1997年にナムコから発売された作品。
発売当時はあまり注目されなかったがその内容は評価され、続編が出るたびに着実にファンの数を増やしていった。
現在ではシリーズ化されてナムコの看板作品の一つになっている。

本作のディレクター・吉沢秀雄氏によると、開発当時「ゲームのストーリーは雰囲気作りのためのおまけ」という風潮が業界にはあり、それに対する疑問から「ゲームでしか描けないストーリーを作りたい」と考え、本作のオープニングとエンディングを思い付いたという。

あらすじ

  • 夢の世界ファントマイルを舞台に、主人公クロノアが相棒であるリングの精ヒューポーとともに、歌姫レフィスをさらい全ての夢を悪夢に変えようと企む魔王ガディウスの野望を止めるというお話。

特徴

  • グラフィックはポリゴンだが3D化全盛のこの時代としては珍しい横スクロールアクションゲーム。
  • ヒューポーのリングの力で敵を膨らませ、捕まえて投げるというのが基本アクション。方向キー以外のボタンはジャンプとリング操作の二つしか使わない*1
  • 方向キーの上下は奥や手前を向くのに使う。奥を向いて敵を投げるなどすることでステージ奥にあるスイッチを動かすなど、横スクロールでありながら立体的な表現も使っている。

評価点

雰囲気を大事にするゲーム

  • このゲームで何より重視すべきは世界観とシナリオである。本作に多くのファンを作り、名作とした要因がここにある。
  • 世界観を大事にしている姿勢が伺え、全体的にとても丁寧なつくりの演出面。
    • 例えば、登場人物の話す言葉は「るぷるどぅ」「わふぅ」などといったこの世界独自の言葉(ファントマイル語)が終始使われている(プレイヤーは字幕で意味を確認して理解する)ためキャラの掛け合いに現実臭さを感じることはない。
      • ではキャラの発する言葉に役割はないかというとそうではなく、意味をあえてわからないようにすることで悲しみや怒りが普通の日本語よりも顕著に表現され、声優の演技力の高さも相まって場面場面のキャラクターの感情が切に通じてくる。
      • 一概に評価点とは言えないが、現実感を排する為に声優のクレジットまで敢えて載せないほど徹底されている。
    • グラフィックもカラフルながら優しいタッチで描かれており、喋る動物風のキャラクターたちや、幻想的な月の国、滝や湖面の美しい水の国といったファンタジーもの定番のステージとあいまってまるで童話の世界を冒険しているかのような臨場感を得られる。
      • 主人公クロノアはもちろん、雑魚敵ですら可愛くデザインされている。
      • ただ、終盤になると不気味・グロテスクな雑魚敵も多くなっていく。特に最終ボスは非常に醜悪な容貌である。
    • 音楽も幻想的な色合いと、民族調の旋律が混じったようなオリジナリティ溢れる風味で世界観によく溶け込んでいる。単体の曲としても名曲が多く、4番目のボス戦のテーマ『baladium's drive』は屈指の人気を誇る。(Wiiのリメイク版のCMでも流れたほど)
      • 同じBGMでも建物の中と外では主旋律の音量が違ったり、ステージのギミックの変化に合わせて違う曲に切り替えたり…と、音楽を用いた演出も目立たないながら秀逸。
      • ちなみに、クリア後にサウンドモードが現れる。

シナリオの評価(ネタバレ注意)

  • 中盤までの展開はオーソドックスで易しめなものだが、中盤以降は登場人物が殺されてしまったり、ヒューポーの正体が明かされたりと重い内容や意外性のある展開も入ってきて、単なる王道と思わせないテイストになっていく。
  • そして、何よりファンの間で語り草にされているのが、その衝撃的なエンディングである。
    + ネタバレ注意
  • ガディウスを倒し、クロノアたちによって歌姫レフィスはガディウスによって荒れた世界を再生させる歌を歌いだす。しかし、クロノアはその時ヒューポーから事の真相を聞かされる。
    • クロノアの正体は、崩れた夢のバランスを救うため、ヒューポーによりこの世界に呼び出され、ニセの記憶を植えつけられた「この世ならざる夢」であると。
    • そのため、世界が再生の歌によって本来の姿を取り戻すと、この世ならざる場所から来たクロノアはこの世界から去らなければならない。
    • 元々が偽りの記憶であったとしても、いまやクロノアとヒューポーには強い絆によって結ばれていた。再生の力に逆らおうとする二人だが、クロノアは吹き飛ばされて世界から追われてしまう。
  • …という切ないラストだが、「この世ならざる夢」とはつまりプレイヤーの夢である。最初からずっと細かい部分までファントマイルらしさ、現実要素の排除を徹底していただけに最後の最後でメタ視点を大きく出したことは多くのプレイヤーを驚かせた。最初に行うプレイヤーの名前の登録は、ここまで全く意味がなかったが、ここで初めて意味を成すことになり、プレイヤーはその意味を知る。まさにディレクターが語った通りの「ゲームならではのストーリー」である。

    • ちなみに、『風のクロノア2』(ストーリーや世界観的なつながりは全くない)のオープニングはおそらくこのシーンの後から始まると見られている。

非常にシンプルな操作

  • 『星のカービィ』(敵を吸い込んで吐き出す)や『ヨッシーアイランド』(敵を飲み込んで卵にして投げる)を髣髴とさせるようなわかりやすい操作で、誰にでもできる。
    • 複雑な操作は全くないが、それでも十分と感じられるように丁寧に作りこまれており、バグも少なく、ストレスを感じることなくプレイできる。
    • ゲームシステム面での主張があまり強くないのも、世界観の印象を強く残すのに一役買っているだろう。
  • ステージの難易度も低くアクションに手馴れた人には物足りないかもしれないが、オーソドックスで人を選ばないお手軽なもの。ライトユーザーでもとっつきやすい内容である。

問題点

  • ボリュームが少ない。慣れてしまえば5、6時間程度でクリアできる。
    • クリア後の隠しステージも一つしかなく、即死トラップは多いが難易度が高いとは言えない。
    • 総じて難易度は低めの設定だが、スイッチの起動などには多少頭を使わないとなかなか起動できずタイミングもややシビア。
      • 序盤から終盤にかけて徐々に難しくなり応用が必要になってくるので、難易度のバランス自体は非常にいい。

総評

ハードなゲーマーにはボリューム不足が感じられるが、単純な操作と易しめの難易度により幅広い層を取り込めた作品。
さらに緻密に練られた世界観とストーリー、そしてそれらをしっかり踏まえた演出は多くのプレイヤーを虜にした。

近年ではハード性能の向上などもあって映画的な演出や世界観・ストーリーも重視するゲームが増えてきたが、初代PSという(現在と比較すれば)限られた性能のハードでゲームならではのストーリーと演出を打ち出した本作は、いわゆる「雰囲気ゲー」の金字塔と言っても過言ではないだろう。

その後

  • PS2で『風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~』が発売され、以後はさまざまなハードで続編が出ているが、本作とストーリーの繋がりがない続編。
    • クロノアのデザイン自体が変更されたこと、一作目の世界観・ストーリー(続編が作りようがない話だし、もしこの続きがあったらそれこそぶち壊し)に感動した層が多いことから、続編は認めないというファンも多い。
    • ただし2単体でいえば該当項目にある通り非常に丁寧に作られた名作であり、続編以降のファンも少なくない。
  • PS2で発売された『ナムコレクション』に、5作品の1つとして収録されている。
    • 他のタイトル同様に内容はPS版のほぼベタ移植で、ごく一部のバグが修正されている。
    • ゲーム開始時にタイトル選択が必要なため起動にやや手間が掛かるが、ゲーム開始後はPS2のためロード時間は短く快適。
    • オマケとしてイラストや設定資料が閲覧できるギャラリーが収録されている(収録枚数はあまり多くない)。
    • RIDGE RACER?』『エースコンバット2』『鉄拳』『ミスタードリラー』も同時収録されているためお得感はある。
  • Wiiにてリメイクされた。
    • ただし、キャラデザインの改悪、ムービーの削除(全てリアルタイム演出に変更)、ステージ演出の劣化などからPS版をやったことがあるプレイヤーからは評判はよくない。
    • とはいえゲーム自体は問題なく普通に遊べる上に追加要素もあるので、やや期待はずれなガッカリリメイクといったところ。