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ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 (3DS) - (2020/05/06 (水) 10:13:53) の編集履歴(バックアップ)


ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君

【どらごんくえすとえいと そらとうみとだいちとのろわれしひめぎみ】

ジャンル RPG
対応機種 ニンテンドー3DS
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 トーセ
発売日 2015年8月27日
定価 5,980円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ数 2個+中断
判定 良作
ポイント PS2版から様々な追加要素
ドラゴンクエストシリーズリンク


概要

2004年にPS2で発売された『VIII』を11年ぶりにリメイクした作品。
スマホ版や北米版をベースに様々な追加要素がある。

PS2版からの追加要素

  • 新たな仲間の追加
    • ヤンガスと旧知の仲である「ゲルダ」とモンスターバトルロードのオーナー「モリー」が加わる。
      • ゲルダはストーリー中で、モリーはバトルロードでSランクをクリアすると仲間になる。
    • 各々、従来の4人には無い個性的なスキルや特技を覚えるので戦略の幅が広がった。
      • 特にモリーが自分や仲間のテンションを上げる特技を覚える事により、本作のテンションシステムの使い勝手がオリジナル版から大きく変わっている。従来での『盗賊』のように戦闘終了後一定確率でモンスターからアイテムを盗むゲルダも今迄のメンバーには無い特徴である。
      • 武器スキルもゲルダは扇スキル、モリーは爪スキルが使用可能。その武器2種も本作に登場することとなった。
    • 戦闘は4人で残りの2人は馬車で待機となり、それに伴いメンバーそのものの「いれかえ」コマンドが採用されている。ただし主人公は戦闘メンバーから外すことは出来ず、メンバーも4人で固定。
  • イベントは全てフルボイスに対応。
    • ヤンガスとゼシカは『ドラゴンクエストヒーローズ』の立木文彦氏と竹達彩奈氏が、モリーは『バトルロード』の中田譲治氏が引き続き担当している。
      • ストーリーの主要人物以外にモブキャラにも声が付き、本編のみならず戦闘中の一部行動や特技にもボイスが付いている。主人公のみ声はなし。
    • 主人公に対しては、メッセージでは名前が表示されるが、音声では「あなた」などと呼ばれる。
    • これらはオプションでOFFにする事も出来る。
  • 追加シナリオ
    • オリジナル版で明かされる事の無かったドルマゲスの過去(マスター・ライラスの死の真相)、主人公とミーティアの出会い、マルチェロのアフターストーリーや新たなエンディングが追加。
    • これにより、作中では名前でしか出なかった賢者の末裔「マスター・ライラス」の容姿や大まかな人物像が描かれるようになった。
    • PS2版ではある町人からしか聞けなかったトロデーンとサザンビーク間のしきたりについて、隠しED内でクラビウス王からも聞けるようになった。
      • エンディングの根幹となる重要な設定であるにもかかわらず、聞き逃しも充分ありうる形でしか確認出来なかったのが些か問題だった為、妥当な処置である。
    • ラスボス直前のオーブ探しの最中専用の「なかま」コマンドでの会話が追加された。
  • 新ダンジョン「奈落の祭壇」と「追憶の回廊」が追加。
    • 「奈落の祭壇」は終盤の追加イベントを見ると現れるダンジョン。新ボスとしてラプソーンの部下的な立ち位置であるジャハガロスが待ち受け、このダンジョン専用の新規モンスターも作られている。
    • 「追憶の回廊」は大幅に強化されたボスを順番に倒していくやり込み型のダンジョン。
      • ボスの強さは半端なものではなく、終盤のボスになると全員LV99であっても戦略や運が悪ければ普通に全滅しかねない。装備の耐性を吟味することは勿論のこと、道具やスキル等メンバー全員の戦力をフル活用する事が求められる。
      • ヤンガスの打撃スキルで習得できるデビルクラッシュや格闘スキルの大防御、回避率上昇といった本編ではあまり活用されないスキルが非常に重要となる為、死に技や不遇スキル救済の場にもなっている。
      • そしてその最奥部で待ち受けるボスは、ファンサービス要素も相まってシリーズファンを驚かせた。
      • ボスとは何度でも再戦可能で、対応した木の実や種を必ずドロップする為、後述の宝箱も合わさって大幅なドーピングがしやすくなっている。
  • 撮影機能
    • その場の風景をスクリーンショットのように撮影し、保存できるようになった。写真はSDに保存され、本作中では100枚分まで取り扱える。101枚目以降もSDカード内に保存されている。
    • これを利用した「写真クエスト」も導入されている。新キャラクターの「フォート」からクエストを受け、モンスターや町の風景等の様々な写真を取って来る事で報酬が貰える。
    • 撮影した写真をスタンプやフレーム等で加工してすれちがい通信で皆に見て貰う事も可能。
    • クエスト用の新規モンスターも登場。(スライムプディングやモリーサタン等)
      • 撮影対象として、『IX』からサンディも登場。
  • モンスターバトルロード
    • 新たにランクSSが追加。
      • 一方で、モリーが仲間になる関係で、ゼシカがパーティに復帰するまでSランクに挑戦できなくなっている。
    • 仲間に出来るモンスターの数が増え、新しく仲間に出来るようになったモンスターや、それらのモンスターによる必殺技も追加。
  • カジノのビンゴに「色ビンゴ」が追加された。
    • 各マスに色が付けられており、同じ色が全て開くと成立してコインがもらえる。ちなみに倍率は10倍で固定されている。
    • 色は全部で5色あり、基本は5マスが同じ色だが、センターフリーは除くので1つだけ4マスしかない色がある。
      • ただ、この1つだけ4マスしかない色の設定がおかしいのか、「5マスある色が残り2マスあるのに、リーチになって1マス残っているのにビンゴ成立」「4マスしかない色が全て開いたのにビンゴが成立しなかったりする」などの不具合を引き起こしている。
  • 戦闘関連
    • モーション全般を高速化する高速モードが追加され、オリジナル版での戦闘テンポの悪さがある程度解消されている。
  • その他
    • パッケージデザインはDS/3DSリメイクでは初めて専用のイラストが描かれた。
      • なお、何故かPS2版同様ククールの姿はない。
    • 時間経過で中身が復活する青宝箱と紫宝箱の追加。
      • リアルタイムで1日ごと。前者はフィールドのあちこちにあり、中身がランダムで変わる。後者は追憶の回廊に置いてあり、ランダムで木の実や種が手に入る。
      • 一部貴重な錬金用アイテムもそれに含まれており、レシピの問題がある程度緩和された。
    • 錬金レシピ、道具、武器等の追加。
    • 小さなメダルの報酬の追加。
    • 装備によって見た目が変わるコスチュームの追加。PS2版ではなかったヤンガス、ククールにもいくつか追加されている。
    • インターネット通信によるアイテムの配信。

PS2版からの変更点

  • 前作『VII』と同じく、シンボルエンカウントに変更。
    • これにより、エンカウント率を操作する特技の効果が変更されている。ただし海上はランダムエンカウントのまま。
  • BGMは北米版と同じく東京都交響楽団によるオーケストラ音源となっている。
  • モンスターから手に入る経験値とゴールドが1.5倍に増加。
    • ただし経験値が高めになったのは序盤の敵だけ。
    • 特にPS2版の「おどる宝石」は外見の割には得られるゴールドが少なかった(その時期の敵の中では高い方だが)が大幅に引き上げられ、出現率・出現数の多さ・比較的弱いという都合のよさから序盤の金策として乱獲されるようになった。
  • ボスの強化、特にゲルダ加入以降のボスは攻撃力などのパラメータが上方修正される等全般的に強化されている。
    • ドルマゲスからハッキリと強化が見られる。このボスは元々中盤の山場とも言える強敵であったが、行動が完全ランダムになって更に難易度が上がっている。
    • 顕著な強化が見られるのはレティスとマルチェロ。
      • レティスはメダパニーマを使うようになって低めだったHPも上昇、元々本編の壁となる難関ボスであったのがますます難関になったと言える。
      • マルチェロはザラキを新たに使ってくる様になった他、HPや攻撃力も大幅に上昇し難易度が上がった。物語の重要人物だったが弱いボスだったので、この大幅強化は妥当。
      • また、どちらもベホイミを使わないようになり、攻撃の隙が少なくなっている。
  • 中でも、一時とはいえ「シリーズ史上最弱」とまで言われたラスボスについては別格な強化を受けている。
    • ステータスのみならず特技の威力増加、行動パターンの抜本的な変化、無駄行動をしなくなった、時折行動パターンを無視してくる等、あらゆる面でかなり強化されている。目に見えて攻撃的かつ読み辛い行動を連発してくる為、オリジナル版の感覚で挑むと全滅しかねない。この戦闘では馬車によるメンバーの入れ替えも出来ないのも難易度上昇を後押ししている。
  • 錬金釜の強化。
    • スマホ版と同様、材料を投入後すぐに完成するようになった。
      • これにより竜神王の褒美から「錬金釜の強化」がなくなり、「もっとすごい修業場(追憶の回廊)を出してもらう」に変更されている。
    • レシピが分からなくても材料を入れるとどれを入れれば良いかが分かるようになったので、予想してあれこれ入れて試す必要が無くなった。
    • さらに、99個まで一気に作る事が可能。
    • 行く先々で手に入れる錬金レシピ本の内容が若干変化。
      • PS2版では必要なアイテムが抽象的にぼかされていたが、具体的なアイテム名が出るようになった。
  • 戦闘面に関する調整
    • 「ぼうぎょ」や「一閃突き」「まじん斬り」(進化後も含む)などでテンションが消費されないようになった。
    • イオナズンやバギクロス、ギガデインなどの最上位の攻撃呪文は元々のダメージと賢さによる威力上昇の上限の両方が高く調整された。
    • 特技に関する調整点
      • 驚異的な性能だった「双竜打ち」を始め強すぎた技が弱体化。「オノむそう」「なぎ払い」のようにMPを消費するようになったものもある。逆に「ライトニングデス」等上方修正がかかったものも。
      • 性能に変更はないが、宗教的事情に配慮したのかククールの「グランドクロス」が北米版での名称・モーション変更に合わせ「天国への階段」に変更されている。が、マルチェロの使うグランドクロスは変更なし*1
      • 北米版で主人公に追加された特技「ドラゴンソウル」も追加。習得レベルが北米版がレベル65だったのに対しレベル70と遅くなっている他、ダメージも若干低下している。
    • 特技のダメージ限界値が9999から12800に上昇した。
    • スキルに関する点
      • 主人公とククールは序盤で貰えるスキルポイントが増えた。
      • 後のシリーズと同様にスキルポイントを振らずに貯めておく事もできるようになった。
    • レベルアップするとHP・MPが全回復するようになった。
    • 主人公にも作戦を指示して操作をAIに任せる事が出来るようになった。
    • 「けんじゃの石」の回復量が60前後と半減しており、使い勝手が悪くなった。
    • ヤンガスのちからの成長率が上がり、レベル99になっても主人公に抜かれなくなった。
      • 補足しておくと、PS2版ではヤンガスは最もレベルアップが早いので能力値が抑えめになっており、普通にプレイしている限りは他のキャラと比べて遜色ない。よってヤンガスのレベルが99になった時は主人公よりも高いが、成長が止まるので主人公もレベル99まで育てた場合ちからが抜かれてしまうのである。
  • アイテムに関する調整点
    • 一部の落ちているアイテムの変更。
      • ダンジョンの地図は最初から持っているようになり、オリジナル版で地図の入っていた宝箱はゴールドに変更。
    • 殆どのアイテムや武具の売価が変化した。
      • PS2版では「上やくそう」を筆頭に錬金で作成することで売値が原価を上回り、いくらでも金稼ぎが出来るアイテムが多く存在していたが、3DS版では売却を続けることでそれらの売値が赤字、もしくは原価と比べてプラスマイナスゼロになるよう調整され、殆どのアイテムで恒久的な金稼ぎが出来なくなった。はずだったのだが……(後述)
    • リブルアーチのヒミツの店で、スキルのたねが継続して購入出来るようになった。
      • ただし現実時間で1日に一度のみ、2度目以降は値段がどんどん跳ね上がり、最終的には10万ゴールドという凄まじい値段になる。それに伴い、購入するごとに店主の服装が豪華になってゆく。
      • 10万ゴールドで購入した後、店主は写真クエストの対象にもなる。
    • 神秘の樹の下に落ちているせかいじゅの葉が容易に入手出来るようになった。
      • PS2版では目の前で戦闘になったり画面を切り替える等すると消えてしまっていたが、消えなくなった。これによりせかいじゅの葉を用いた錬金が楽に。
  • その他
    • 容量の削減の為か、茂みや木等一部のオブジェクトが削除。町の中などで流れる環境音もなくなった。
    • レーティング対策としてかモブキャラも含め肌の露出が減った。露骨過ぎたゼシカの胸揺れも抑えられている。
    • モンスターバトルロードで全滅しても、こちらの全滅回数にカウントされなくなった。

評価点

  • 様々な追加点によるボリュームアップ。
    • ボスの強化やクリア後の追加要素により、オリジナル版をプレイした人も楽しめる。
    • クリア後も追憶の回廊によって、大量追加された最強のボスたちと戦えるようになり、ドーピングのしやすさで限界まで鍛えることが可能になったなど長くやりこめる。
  • 中断システムの改良
    • 今迄の携帯機作品よりも中断できる場所が格段に増え、気軽にプレイを中断できるようになった。中断データはロードしても消えない為、吟味やボス戦の再戦にも効果を発揮する。
  • 序~中盤の資金不足がある程度改善された。
    • 上記の青宝箱から一定数のゴールドが得られるようになった他、モンスターの所持金が上がる、錬金釜の改善で一時的とはいえ金稼ぎもスピーディに行えるようになった等ゴールドを得る機会が多くなり、PS2版ほど資金不足に悩まされることは少なくなった。
  • 従来のシンボルエンカウントに調整が入り、あまりストレスを感じない仕様になった。
    • 敵シンボルの追尾の速度や追尾精度が程よく低下し気づかれても逃げ切りやすくなった他、此方から逃げるシンボルでも視野の外にならない限り消滅しなくなったので、メタル系スライム等と戦闘しやすくなった。敵シンボルの出現場所なども見直されている。
    • モンスターから少し離れて画面外になると消え、別のシンボルが現れるようになった。「せんれき」画面を開くことでも同様。
      • この仕様を利用して戦いたい敵を吟味する事も可能に。特にメタル系スライムを意図的に選別出来るようになったのは大きい。
    • アイテムに魔物を観察したりする為の「魔物の香水」が追加。これを使うと魔物に気付かれなくなり、触れても戦闘に入らないので快適に進める。低レベル攻略のお供としても有用。
      • 魔物の香水は青宝箱から高確率で入手出来る。
    • 同じシンボルエンカウント方式の3DS版『VII』で削除された「しのびあし(本作では「しのびばしり」)」は、魔物に気付かれる距離を短くするという効果に変更された。
    • モリーの特技「モリーもりもり」を使うと、メタル系含む全てのシンボルがこちらに向かってくるようになる。メタル狩りの際には非常に有効。
    • 撮影機能の使用中は、敵シンボルが完全に動かなくなりながらカメラアングルを自由に動かせる。これを利用すれば、しのびばしりやモリーもりもりを使わずとも簡単に敵の厳選・戦闘・逃走ができる。
  • PS2版で多くの指摘がされていた、戦闘時のテンポの悪さが大きく改善されている。
    • 高速モードが追加されたことに加え、呪文や特技のモーションが高速化・簡略化され、演出にかかる時間が短くなっている。それでいながら派手さもあまり損なわれていない。
      • 特に、イオナズンの演出はかなり短くなっている。強力な全体攻撃呪文であり使う頻度も多めなのでありがたい。
  • 錬金レシピの改善。
    • 貴重なアイテムが手に入り易くなっていたり、手に入る数が増えているのでレシピのコンプリートもしやすくなった。
      • 特に問題になっていた「こおりのやいば」は確実に2つ手に入る様になっている他、モンスターのドロップアイテムとしても手に入るようになっている。
    • これにより各カテゴリの最強装備が両立しやすくなっている。スルーされがちだったブーメランとハンマーは、錬金素材となる別カテゴリの武器が2つ入手出来るようになった為価値が向上した。
    • 一部の錬金レシピが簡略化されている。
  • 写真撮影機能はアイテム報酬によるゲーム的なメリットだけではなく、加工などの自由度がとても高くて純粋に面白いと評判である。
  • ゲルダとモリーの追加
    • 惜しい点はあるが、現在でも賛否の分かれる『IV』のピサロや発売前から波紋を呼んだ『V』のデボラと比べるとこの2人の追加に関しては発売前から好評だった。
    • ピサロのようにストーリー的な違和感を持ったまま仲間になる訳でも、デボラのように設定・性格共にトゲが強い訳でもない。本作の場合両者とも自然な流れで仲間になる上、性格も個性的ではあっても余計な粗やトゲは殆ど無く仲間会話などを彩ってくれる。
  • これまでのDS・3DSリメイクのパッケージは、各キャラの一枚絵を並べただけだったが、今回はパッケージ専用のイラストが描き下ろされた。
    なお、完全な新規イラストであるにもかかわらず、何故かPS2版同様ククールの姿がない。

賛否両論点

  • ドルマゲスの過去について
    + ネタバレ注意
    • サブイベントという形で見ることができる。
      • マスター・ライラス(以下ライラス)に従事していたドルマゲスは数年間雑用ばかりさせられて、一度も魔法を教えられなかったどころか、文献を見ることすら禁じられていた。そうして苦悩する中で神鳥の杖のありかを書物で見つけるが、それをライラスに見つかり、侮辱的な暴言と共に叱責されたことをきっかけに彼の元から飛び出し、トロデーン城に入り込んで神鳥の杖を奪いラプソーンに操られる。そしてその足でライラスを杖で刺し殺し、彼の家を燃やしてしまった。
      • PS2版の時点で彼の性格について「偏屈な性格だった」と語られてはいたものの、ドルマゲスに対する度を越した横暴な振る舞いが全ての災いの元凶となってしまったとも言えるだけに、なんともやりきれない話である。
        • 一方で、ライラスはその数年の間、魔法の才能がないドルマゲスを開花させる薬を作る事に没頭しており、薬が完成した際に上記の暴言も謝罪するなど決して薄情な人物ではなかったが、それを表明した頃にはドルマゲスはラプソーンに操られてしまい、その言葉は届くことはなかった。
          もう少しでも早く真意を上手く弟子に伝えられば悲劇を防げたかもしれない。トロデ王曰く『悲しいすれ違い』であった。
  • 追加エンディングについて
    + ネタバレ注意
  • ゼシカとの追加イベントをこなしているとエンディング時に選択肢が現れ、選択に応じてゼシカと2人旅に出るエンド、真エンディング時はゼシカと結婚するエンドがある。
    • ここでゼシカと結婚するためには、ミーティアとチャゴス王子の結婚を止めさせる際にクラビウス王(チャゴスの父)と話をするが、そこでアルゴンリングを見せた上で他に好きな人がいると言う非常に無礼な選択をしなければならない。
      • クラビウス王は激怒の末「自分がやっている事の愚かさが分かっているのか?」「顔も見たくない」と主人公を激しく弾劾、トロデ王も「余計な事を言いおって」と強く咎める。しかし、翌朝結婚式場に乗り込むと、両王の対談によってミーティアとチャゴス王子の婚約は破談になったとクラビウス王が発表。その後ミーティアが現われ主人公にアルゴンリングを返す。そして花嫁姿のゼシカが登場という流れ。
      • ゼシカの花嫁姿や、冒険の中で少しだけ見せていた主人公への好意をこれでもかと露にする台詞は多くのゼシカファンを歓喜させた。彼女の母親であるアローザやポルク&マルクとのやりとり、スタッフロール後の1シーンもミーティアを選んだときよりもボリューミーに展開される。
    • この一連のイベントはミーティア姫よりもゼシカの人気が高く、同人界隈において主人公とのカップリングを推す傾向が強いことを踏まえた上でのファンサービスと思われる。
      • ただしエンディングに至るまでの流れがやや強引であり、ゼシカに濃い内容のイベントが追加されている一方、ミーティア姫は幼少時における主人公との出会いのシーンが追加されている一方でエンディング周りのイベントに関しては一切追加されていない。
        このため、本来のヒロインを差し置いて優遇されている点に関して賛否両論の声もあるが、肯定的な扱いとして好意的に受け止める向きもある。
        • 具体的に書くと、ミーティアは自分が着るはずだったウェディングドレスをゼシカに貸し出し、主人公とゼシカの結婚式のためにゼシカを式場まで連れ出すということまでやってのけるのだ。
          オリジナル版の時点でミーティアは献身的な優しさや器の大きさを十分なほどに持ち合わせていたが、ここにきて見せられた更なる度量の広さと寛容さに感銘を受けたプレイヤーも多数。
          結果的にはこの追加エンドにより、キャラのお株が間接的に高まったとも言える。
  • スキルとその習得特技の強さに関する点は賛否両論といったところ。キャラ性能にも大きな格差があり、キャラバランスの調整が不十分である。
  • 1つ目はゲルダの強さ。
    • ゲルダの短剣スキルを最大まで上げたときに覚える「キラージャグリング」が壊れ性能。
      • 敵全体にランダムで0.4倍の攻撃を6~8回行うもの。敵1体だと最高3.2倍、最低でも2.4倍のダメージを与えられる。はぐれメタルの剣を装備すればメタル系に2×6~8の大ダメージを与えられ、メタル狩りまで出来る。この特技と同じく武器効果や耐性に影響されず、この特技を上回る倍率を持つのは、バイキルト状態のゼシカのライトニングデスとモリーのデュアルカッターしかない。修正前の双竜打ちに匹敵する性能を持つ。複数回数攻撃をする特技な為ダメージ限界値にも引っかからず最大で20000以上という、シリーズでは常軌を逸した量のダメージを与えられる。
      • 仕様の関係上バイキルトの恩恵が少なかったり、攻撃が分散するので大勢で出てきやすいメタル系には魔神斬りや隼の剣メタル斬りに劣る場合があったり、全体攻撃なら他のスキルの特技の方が強力だったりと、一見欠点にも思える部分もあるが、これらの要素は別に弱点というほどでもなく、単に使い所の問題である。敵の数が3~4体以下の時に絞って使えば良いだけの話である。
      • 仲間加入のレベル33の時点で100ポイント以上貯まっていて、あとレベルを5上げれば習得できてしまう。ただし、短剣スキルで習得できる特技はこれ以外は微妙なため、いきなり短剣スキルを極めると他スキルの育成の余地が無くなり、逆に使いにくくなってしまう。他のスキルにも有用性はあるが、揃えるにしても育成に時間がかかるため、ゲルダが真価を発揮するのは終盤~クリア後となる。
    • 加えてベホマの呪文やザオリク相当の特技、ピオリムや追憶の回廊の最終ボスに有効なラリホーの呪文…と、終盤以降に欲しい呪文や特技をピンポイントで習得するのもあって、性能は他のキャラに大きく勝る*2。今作では裏ダンジョン攻略に、最大レベル近くまで鍛えてから挑む場合もあるため、鍛えれば鍛えるほどゲルダの強さが際立つことに。
    • キャラ自体の性能も全キャラトップクラスのすばやさを持ち、隠しボス達相手でも安定して先制攻撃が可能で、最速でも追憶の回廊攻略中での入手になるが彼女専用装備の1つが装備中にHP+100、すばやさ+200という尋常でない補正がかかるのもあって、クリア後はほぼ必然的にスタメン候補となりうる。
      • 発売直前のスタッフインタビューでは、ゲルダとモリーは加入が遅い分強くしたと語っている。そのモリーは特技の「モリーエール」で仲間のテンションを1~2段階上げられるので、アタッカーのサポート役として使われることが多いようだ。
  • 2つ目はゼシカの強さ。PS2版の時点でかなりのぶっ壊れキャラだったゼシカはリメイクで弱体化されるかと思いきや別のところが強化されたため、結局のところ男性陣を差し置いて強い。
    • ゼシカのムチスキルは双竜打ちの弱体化により中盤まではあまり有効ではなくなった。グリンガムのムチを入手以降は強い威力を発揮できる。
      • 弱体化後も相変わらず、少なくとも他の男キャラの特技よりは遥かに優秀な性能であり、力のパラメータの低さを差し引いても、主人公の五月雨突きに匹敵するダメージを叩き出せる。(主人公、ゼシカ共にバイキルト状態で比べた場合)
    • 短剣は「ライトニングデス」の威力が通常攻撃の1.3倍から1.8倍に引き上げられた。単発技なのでバイキルトの効果を余すことなく発揮し倍率は3.6倍にもなり、バイキルト状態の双竜打ちを遥かに超え、バイキルト状態のキラージャグリングと同等になる。こちらは一撃ダメージ限界値に引っかかるが、ダメージ限界値でも倒せないのは追憶の回廊の最終ボスのみ。吹雪の剣を装備させれば、追加効果でさらに引き離す。
      • ゲルダと同様、最初から短剣スキルを極めると他スキルの育成の余地が無くなってしまうが、それを差し引いてもぶっ壊れた威力であり、もちろん男性陣の物理攻撃よりも遥かに高い威力を出せる。
  • 3つ目はヤンガスの弱さ。PS2版のときから「ヤンガスは序盤でしかパッとしない」と言われてしまっていたが、本作では「パーティキャラ6人中ヤンガスだけが弱い」とよく言われるようになってしまい、立場の改善ができていないどころか、格差がさらに広がってしまっている。
    • 一応移植にあたって彼専用の強力な盾やコスチュームが追加される、ちからの成長率が上がった…など方々でテコ入れはされているのだが、ベホマズンによる回復力に加え専用装備や特技による高い耐性&火力を誇る主人公、低くないHP・大防御・優れた各種装備・格闘スキルの身かわし率上昇によってメンバー中実質最も打たれ強くて回復と補助のスペシャリストのククール、高倍率特技と完全蘇生に加えて優秀な補助呪文やマダンテを使えるゼシカ、高倍率の特技+完全回復と蘇生が可能なゲルダ、高倍率特技+完全蘇生+自分含むメンバーのテンション1~2段階上昇ができるモリーと、得意分野が非常に優秀な他の面子に比べると攻撃・回復・補助のどれをとってもパっとしない。
    • 打撃スキルの最終特技デビルクラッシュは、悪魔系へのダメージは2倍のままだが物質系に1.75倍のダメージを与えられるよう強化され、追憶の回廊で実質的に最強と言われるボスに対しても強力な攻撃手段となったのだが、彼の素早さが低い為ほぼ後攻になってしまう事、補助や回復の手段に非常に乏しい事から、それらも兼ねたゼシカやゲルダを押し退けてでも起用する程かと言えば疑問符が付く。
      • それでも本作以前ならパーティーメンバーが4人固定だったので必然的に活躍の余地があったのだが、本作になって「戦闘メンバーから外す」という選択肢が生まれてしまった事で、「ゲルダかモリーが仲間になったら馬車送り」、追憶の回廊に至っては「出来て精々メガザル係が関の山」と酷評されている。
  • これらのキャラ性能格差により、女性キャラ2人が怒涛の攻撃を繰り出す合間に、主人公とククールが甲斐甲斐しく回復呪文でフォローする…という戦闘展開になりやすく、男性にとっては情けないというか、尻に敷かれたようなパーティになってしまう。
    裏ボスや追憶の回廊では男性陣のフォロー無しでは瞬く間に全滅しかねない為、貢献度そのものは大きいのだが。また終盤のボスの痛恨の一撃のダメージは女性キャラではまず即死してしまう為、それらに耐えうるポテンシャルを持った男性キャラがダメージソースとなりうる場面も多い。
  • 上記にもあるが、序盤の経験値上昇やレベルアップするとHP・MPが全回復するようになった事。
    • これにより「ヌルゲーと化した」という声もあるが、ボスはしっかり強化されているので判断はプレイヤーにゆだねられる。
  • BGMの音質
    • 前述の通り、BGMは交響組曲版による演奏音源の流用となっているが、録音の質が悪い(最も多い指摘が「残響が強すぎる」という点)という指摘も多い盤であったため、ゲーム音源として流用されたことへの不満の声も少なからず聞かれている。

問題点

  • ロード時間
    • フェードアウトしてから戦闘に入り、操作可能になるまで約5秒掛かる。町の出入りにも数秒のロードが起こるようになってしまった。
    • New3DSでは短くなっており、快適に遊ぶならこちらを推奨。
    • 高速モードなら1.5倍のスピードで戦闘できる。本当に一瞬で決着する戦闘でなければ、圧倒的に本作の方が早い。
  • 実質上立体視に非対応
    • 公式サイト等に「一部対応」とは書かれているが、実際に対応しているのは装備画面と戦歴画面のみ。処理の都合上仕方ないかもしれないが、3Dで描かれたフィールドを立体視で楽しむ事ができないのは残念な点である。
  • 新たな仲間のゲルダとモリーは加入するのが後半。追加枠なのもあってストーリーとの絡みがあまりなくて寂しい。
    • 本編でのイベントを経て必ず仲間になるゲルダはまだしも、モリーとのやりとりはほぼ完全にサブイベントの範疇で、仲間にしなくてもストーリー進行できるため、本編のイベントでは殆ど絡まない。加入条件である「バトルロードランクS突破」もハードルが高い。
    • 更にモリーは『少年ヤンガス』で培ったヤンガスとゲルダとの既知設定が殆ど活かされていない。唯一それらしき部分は「なかま」コマンドで「ミスター(ヤンガス)やマドモアゼル(ゲルダ)も…やめておこう」という台詞があるのみ。あくまで外伝作だからだろうが、DS版『VI』ではテリーに『テリーのワンダーランド』を彷彿とさせるセリフが用意されている。
  • 一部キャラクターの設定や描写が改変されている。
    • マルチェロの生い立ちやチェルスがハワードに虐げられている場面など。(倫理的問題からレーティング対策によるものと思われる)
    • PS2版では中性的な外見で性別が明かされなかったイシュマウリに新たにボイスが設定された。声優は杉田智和氏で明らかに男性の声で演じている為、彼の性別も男性と確定した……と思いきやククールが「アイツは男なのか女なのか訊くの忘れたな」とPS2版と同様にコメントするなど微妙に齟齬が発生している。
      • 追加ストーリーが多い中、彼についての追加エピソードは無し。CV発表では終盤まで登場するマルチェロとチャゴスと共に発表された為、PS2版プレイヤーの多くからは、元々彼が説明不足の塊だったこともあって他のキャラと同様何らかの追加エピソードを期待されていたのだが、結局説明されることはなかった。
  • モンスター・バトルロードのランクSSが運ゲー。
    • 1戦目からSランク以上のステータスと痛恨の一撃を放つチームが立ちはだかり、ヘタなチームではジリ貧でやられてしまう。2戦目に至っては2体もの痛恨の一撃持ちにラリホーマでの絶妙なサポートが脅威。この時点で痛恨の一撃や補助呪文を喰らわない事を祈る運ゲーなのだが…
    • 3戦目のチームは1体は痛恨の一撃、もう1体は強烈な攻撃呪文やザラキでこちらを苦しめ、最後のウドラーがせかいじゅの葉で倒したモンスターを蘇生させてしまう。しかもこちらのAIの仕様を突いたのか、最初のうちはこちらのモンスターがウドラーにあまり攻撃してくれず、他のモンスターを倒した傍から復活させられるという状況に。チーム名の「そんなの絶対ムリーズ」の名に相応しい鬼畜ぶりである。
    • 全体攻撃でまとめて倒そうとしてもAI行動な上、味方モンスターの使える全体攻撃では火力が低すぎるため倒す前にこちらがやられてしまう。そもそも全体攻撃主体では3戦目に辿り着くことすら難しい。
    • 様々な新スカウトモンスターが追加されたものの、結局最強クラスのモンスターはPS2版と大差無い為、味方サイドの戦力はさほど変わらない。にもかかわらずPS2版以上の難易度のランクを設け、痛恨や補助呪文といった実力ではどうしようもない要素に頼った難易度設定にしてしまっているのが、運ゲー化の要因だろう。
  • 一概に問題点とは言いにくいが、錬金を利用して金を無限に稼げるテクニックの存在。
    • 具体的には、激辛チーズを錬金して売ると素材料が130Gに対し600Gで売れる。一度に99個錬金すれば46530Gの儲け。15分もあれば999個錬金して40万ゴールド儲ける事もできるシリーズでも最高の金策に。
    • いくら売っても売値が下がる事はないため、乱用するとヌルゲーまっしぐら。ご利用は計画的に。
      • 前述のように他の錬金で利益の出たアイテムは全て修正されているのに、これだけは残っているのは単なる見落としか、それとも意図的に残したのかは不明である。
    • PS2版でも錬金による金稼ぎは可能だったが、錬金待ち時間がある上に一度に1個しか錬金できなかったのでさほど問題にはならなかった。
  • 操作性に関しての問題。
    • オリジナル同様にカーソル記憶できない。
    • 飛行の操作性はまったく改善されていない。
      • マップも下画面に表示されるが、マップの表示と飛行中の座標がかなり異なり、表示どおりに着地しても思ったとおりの場所に着地できない為、見づらい上画面で着地点を定める必要がある。
    • カーソルの操作は十字キーにしか対応していない。
    • 複数開いたメニュー画面の一斉閉じが出来なくなった。
  • 細かな演出の削除
    • PS2版では一部のボス敵に「大ダメージを与えると大きくのけ反るモーションを取る」という細かな演出があったのだが移植版では実装されていない。
  • 各種バグ・不具合に対する修正などが現在に至るまでされていない。
    • 身の守りが999になったキャラに賢さの種が使用できない。ボスがモンスター図鑑に載らなくてゴスペルリングの入手が不可能になる。ルーラをするとゲームが強制終了した。仲間会話をしたら強制終了した、といったバグ・不具合が報告されている。

総評

ハードのスペック差故に、グラフィックや演出等PS2版から劣化した点がいくつかあり、「世界を味わう」という点においてはオリジナル版に一歩譲るのは否めない。

しかし、本作の魅力はそれを補って余りある、システム面をメインにした多数の追加要素や調整であろう。
仲間の追加による戦略の増加、追加イベントによるシナリオの補完、コアなゲーマーも唸らせる大量の追加ボス、調整不足気味だった様々なシステムの補完は間違いなくゲームとしての質を高め、本作を名実共に完全系にしたらしめたと言えよう。

一部の追加要素に賛否があったり、ゲームバランス面でいくつか問題が残っているのは非常に惜しいが、ボリューミーかつより緻密になったゲーム性は非常に高く、全体として見れば良質な移植作品である事は間違いないだろう。新規プレイヤーは勿論、PS2版を遊び尽くしたプレイヤーも再び手に取る価値は十二分にある。


余談

  • このVIIIの移植版が出た事により、ナンバリングタイトル全てが任天堂ハードに登場することとなった。