*エナジー 【えなじー】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B0000ZPUSM)| |対応機種|PCエンジン|~| |対応機種|Huカード|~| |発売元|メサイヤ|~| |発売日|1989年4月19日|~| |定価|5,200円|~| |プレイ人数|1人|~| |配信|プロジェクトEGG:2015年12月15日|~| |判定|BGCOLOR(lightsalmon):''クソゲー''|~| |ポイント|粗悪な操作性&br;粗悪な謎解き要素&br; ''キケンがいっぱい! '' の看板に偽りなし|~| 記事作成者は、オリジナル作である『アッシュ』(PC-8801)は未プレイです。あくまでPCエンジン版『エナジー』についての評価となります。 ---- #contents(fromhere) ---- **概要 1988年にPC-8801用に発売された、クエイザーソフト製作『アッシュ』の移植作。 超能力を使える主人公が、大地震により壊滅した近未来の東京を舞台に、怪物たちと戦うアクションアドベンチャー。 **ゲーム内容 -大地震により壊滅状態となった東京。その地下から突如現れた謎の怪物に対し、超能力を操る集団・討魔隊の主人公が、先に向かった最強メンバーの「こういち」「メガネ」「モモコ」の3人の行方を追いながら、戦いを繰り広げる。 -1画面固定タイプのサイドビュー型アクションゲーム。フィールドはいくつかのエリアに分かれており、エリア内は上下左右の通路を通ることで画面がスクロールし、先へ進めるようになっている。 -フィールドには様々な障害やギミックが用意されており、入手したアイテムの使用や中ボスの撃破などにより、先のエリアへと進むことができる。 -主人公は超能力によるショットで敵を攻撃する。途中の宝箱や仲間などから入手できるパワーアップアイテムにより、威力や連射速度を高めたり、弾道の向きを変えたりすることができる。 -主人公には体力ゲージとESPゲージがあり、体力ゲージが底を尽きるとゲームオーバーに、ESPゲージが底を尽きると、しばらくの間攻撃ができなくなる。 --各ゲージは途中で手に入る薬やイベントによって回復が可能である。またESPゲージは主人公が動かずにその場で待機することで徐々に自然回復する。 ---よってESPの回復薬はほぼほぼ不要であるが、薬の出現場所は一定のポイントで固定されており、体力・ESPどちらの薬が出てくるかは運次第のため、なかなか体力回復ができないまま力尽きることもある。 -途中で入手するイベントアイテムやパワーアップアイテムは、メニュー画面で選択することにより使用することができる。 -ゲームオーバーによるコンティニューやパスワードといった復帰要素はなく、即タイトル画面へと戻され、一からやり直しとなる。 **問題点 -問題だらけの操作性 --オープニングデモ後に主人公のネームエントリーができるのだが、まずここのキーレスポンスや操作性が非常に悪く、''思うように文字を打つことができない''。ゲーム開始前からいきなり躓くという、先行き不安なスタートである(名前を付けることによるゲーム内容の変化はない)。 --ジャンプ時には空中で十字キーの操作が出来るのだが、ここでのキーレスポンスも非常に悪く、独特の慣性が働くために、思うように主人公を操ることができない。先述のネームエントリーと併せて、''コントローラーが故障したのかと不安になる''ほどの粗悪さである。 --ショットは射程距離はそれなりにあるのだが、敵キャラへの命中判定が一切表示されないほか、ショットを連射していると、たまに弾道が敵キャラを通過することがあるため、ショットがちゃんと命中しているのかが分かりにくく、ストレスの要因になる。 --敵キャラや攻撃に接触すると、一定のダメージを受け一時的に硬直状態となる。硬直状態の間は無敵なのだが、敵キャラに囲まれてしまった状態だと、硬直明けにさらに攻撃を受けることになってしまうのも難点。 --ゲーム序盤から蔦や柱を渡る操作が要求されるが、画面表示と蔦や柱の座標が微妙に狂っており、ジャンプの操作性の悪さと併せて、慣れるまではかなり苦労させられる。 --メニュー画面でのアイテム選択も、キーレスポンスが非常に悪いため、不快感をさらに増すことになる始末である。 -粗雑なグラフィック --崩壊した都市や洞窟などの描写が、PCエンジンとは思えないほど雑である。 --キャラのグラフィックも難ありで、主人公をはじめ人物の見た目はおよそプロの作ったものとは思えないほど下手。同時期に『[[シュビビンマン>改造町人シュビビンマン]]』を発売していたメサイヤ製とは考え難い出来栄えである。 --敵のデザインもイマイチなだけでなく、片手で数えるほどのパターンしかないのも厳しい。 -ストレスの溜まるシステム --エリア内の移動は、1画面ごとにスクロールするのだが、この''スクロール速度が非常にゆっくり''で、ゲームのテンポを阻害している。ゲームの構成上同じルートを何度か往復する事があるため、尚更ストレスを溜める仕様となっている。 --画面内の敵をすべて倒さなければ先に進めない場所が多いが、敵を全滅させても数秒間は先に進む通路の障害物が消えないため、さらにゲームのテンポを悪くしている。 --前述の通り、ゲームの構成上同じ場所を何度か往復する中で、同じ特殊イベントが繰り返されてしまう。その都度、''初対面かのように同じセリフを何度も聞かされる''ため、ゲームを進めていく上で邪魔なことこの上ない。 --前述した蔦や柱などの座標が曖昧な点や、ダメージを受ける箇所が分かりづらい地底湖や溶岩地帯、途中で出現する謎のジャンプ台(?)やワープゾーンが判別し辛い上にほぼノーヒントであるなど、ギミック面においても難点が多く、問題だらけの操作性と相まって、''アクションゲームとして破綻に近い状態''といえる。 --コンティニューやパスワードといった復帰要素はなく、ゲームオーバーになったら''強制的にタイトル画面へ戻り、一からやり直し''になるのもキツい。また、オープニングデモは飛ばす事はできるが、中途半端な場面までしかショートカットできないという始末の悪さで、難儀なネームエントリーからやり直さなくてはならないなど、再プレイする意欲が削がれる要因となってしまっている。 --とはいえスムーズに行けば1時間ほどでクリアー出来てしまうほど、ゲームのボリュームとしては少ない。 -不条理な謎解き・演出 --アドベンチャー要素として登場するいくつかの謎解き要素が、どれも中途半端なほか、演出面にも難があるため、ゲームのつまらなさをさらに増幅させている。 #region(以下、ネタバレ•長文注意) -ゲーム前半に登場する地底湖のような場所は、飛び込んだだけで即ゲームオーバーとなるのだが、ノーヒントのため罠に陥りやすい。&br; ひとまず別ルートを通ると、善良なモンスターからアイテムを貰い、地底湖まで戻って使用する事でモンスターの母親が現れて、向こう岸へ運んでくれるのだが…。 --攻略上、このルートは最低でも2回、多くて3回は通る必要があるのだが、同じセリフを繰り返し聞いた上に、遅いスクロールの画面を数回移動しなくてはならないため、ゲームのテンポが尋常ではなく削がれてしまう。 --そもそも善良なモンスターがいるという設定自体が、やや強引といえるようにも思うが…。 -地底湖を渡りきると、モンスターの母親から別れ際に「この下にあなたの仲間がいる」と言われる。この先のエリアを下った場所にいるのかと思いきや、本来飛び込むと即死するはずの地底湖が、なぜか左端の箇所だけは飛び込むことができ、''文字通りすぐ下に''、仲間の一人である「こういち」がいる。 --よく見ると、地底湖の左端に渦を巻いているグラフィックがあるのだが、これを「飛び込んでも大丈夫」とするサインにしては少々強引であり、さらにモンスターの母親のヒントがやや微妙なため、見落としてしまいがちである。 -さらに先へ進むと、3体の謎の物体が上下動するエリアがある。何をすればいいのか分からず、とりあえず辺りをウロウロしていると、''突然主人公がとんでもない跳躍を見せ''、上空へと上昇していく。 --どうやら謎の物体に向かってタイミングよくジャンプする事で、上空へと上昇するギミックのようだが、ほぼノーヒントかつ上記のシステム面の問題から発動条件が分かりにくく、さらに上昇中に障害物にぶつかると降下を余儀なくされるなど、ここでも操作性やシステムの問題に直面する。 --障害物をかわして頂上までたどり着き、その場にいる人たちに繰り返し話しかけると、なぜか''その辺で拾った「アンモニア水」''を渡される。アイテムを頂上への画面の途中にいる見張りらしきモンスターの前で使うと、先に進めるようになる。当然、これらもノーヒントである。 --また、同じく頂上へ向かう途中には「オギノメユキコ」なるアイドル歌手がおり、話しかけるとその場で歌と踊りを披露され、BGMの変化と同時に''体力が全回復するという超展開が発生する。''この時点での体力回復はありがたいが、回復の際はゲージが一旦ゼロに戻り、徐々に回復していくという謎のシステムで、ここでもテンポの悪さを露呈してしまっている。 --一旦BGMが変わると、そのエリアにいる間は全く緊張感のないファニーなBGMがそのまま続くという、何なんともシュールな状況が発生する。 --そもそも、いち人気アイドルのパフォーマンスで体力が全回復するという設定がぶっ飛んでいる。超能力者なのだろうか? -さらに先へ進むと、仙人と名乗る老人から「モモコにメガネを貸した」「この先の敵がなんとかのもとというアイテムを持っている」というヒントを得られるが、この先の溶岩地帯の最深部まで行っても、ここまでノーヒントの「あくのペンダント」を入手するだけである。 --ちなみに溶岩地帯は時間経過で体力値を消耗するため、突入してすぐに手に入る「エジソンバンド」を装着しないと、あっという間にゲームオーバーになる。 -さらに仙人のいる画面の手前では、原因不明のダメージを受けてしまう箇所が存在する。持っているアイテムも役に立たず、大概はこの辺りで行き詰まってゲームオーバーになってしまうのだが…。 --実はここから''一旦スタート地点まで戻り、そこからさらに逆方向へと画面を進める''ことで、先に進めるようになっている。&br;当然ノーヒントなのでなかなか気づきにくいのだが、そもそもスタート時の主人公の向きが右方向というだけで、逆方向へ進めないとは言及されていない。&br;だが、仙人のヒントを聞く限りでは、仙人のいる先のエリアにモモコがいて、謎解きのアイテムを貰えるものだとミスリードしがちであり、ここで行き詰まるプレイヤーが多発するのも致し方ないと思われる。&br;また、これまで通ってきたルートを戻るというのもかったるく、遅いスクロールやなかなか消えない障害物にうんざりしつつ、あまりに意表を突いた謎解き要素のため、先に進めた時のモヤモヤ感も拭えない。 --スタート地点へ戻り逆方向に進むと、先ほどのジャンプ台のような得体の知れない物体がある。これに触れると、''なぜか異世界へと飛ばされる''超展開が発生する。その先の中ボスを倒すと、モモコが現れ仙人のメガネを渡される。 --ここからまた仙人のいる手前の地点まで移動しなくてはならない。これまで通ってきたルートを(略)さらにはモンスターの母親による初対面のような変わらないセリフが、プレイヤーのやる気をどんどん削いでいく。 -ようやく仙人のいる場所まで戻り、先ほど原因不明のダメージを受けていた場所でメガネを使用すると、それまで見えなかった敵が出現。倒すと先へ進むことができ、またも謎の物体により異世界へ飛ばされ、中ボスを倒す。 -ここから更にスタート地点の逆方向へと戻り(!)、先へと進むとようやくラスボスとの対決となる。&br; ここでようやくオープニングで手渡された秘密兵器が役に立ち、仲間の力も借りてラスボスを撃破するのだが…。 -エンディングは主人公、こういち、モモコの一枚絵が現れるのみで、''スタッフロールも出ないまま、呆気なく終わる。''&br; ここまでのゲーム内容から薄々察しはついていたが、あまりの演出のショボさに、これまでの苦痛やモヤモヤは解消される事なく、ただ徒労感と時間の無駄だけが残される結果となる。 -なお、ここまでに数体の中ボスとの戦闘や、ラスボスとの戦闘が起きるのだが、大抵は安全地帯からESPを切らさないようにショットを連打するだけで、いとも容易く倒すことが可能であるため、エンディングの達成感はさらに削がれる結果となる。 #endregion **評価点 -これだけ酷い出来の作品だけに、なかなか見出すのは難しいが、強いて言うならパッケージデザインが割とよく仕上がっている点。 --揃いの戦闘服を身につけて、男女4人組が今まさに冒険に出ようとする気概に満ちたグラフィックだが、ゲーム内容との落差が非常に激しいため、いわゆる「ジャケ買い」により地獄を見る羽目になってしまいかねない。 --ジャケットに記載された''「キケンがいっぱい! ESPアドベンチャーゲーム」''のコピーは、ある意味で''このゲームそのものが危険な存在である''事を暗喩しているのかもしれない。 **総評 -劣悪な操作性と、いまいちスッキリしない謎解き要素、そこにグラフィックやシステム面、さらには演出面の粗悪さが混ぜ合わさり、およそゲームと呼ぶには難のある、''まさにクソゲーと呼ぶにふさわしいソフト''である。 -そもそも正義の味方の最強メンバーが「こういち」「メガネ」「モモコ」というのもやや幼稚であり、途中に登場するモンスターも自ら「かいじゅうくん」と名乗ったり、全体的なセリフの言い回しなども含めて小学生を対象にした構成のように見受けられる。 --それにしては、劣悪な操作性と、ノーヒントかつ解いてもモヤモヤ感の残る謎解きなど、小学生に解かせるにはハードルが高すぎるのではないだろうか。 -もし今後見かける事があっても、ジャケットに釣られてプレイする事のないように警告しておく。時間を無駄に過ごしたいという、奇特な悪食ゲーマーのみプレイすることをお勧めする。