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*絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌- 【ぜったいぜつめいとしすりー こわれゆくまちとかのじょのうた】 |ジャンル|サバイバル・アクションアドベンチャー|&amazon(B001H9NV5O,image=https://www.suruga-ya.jp/pics_light/boxart_m/177000970m.jpg)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |メディア|UMD 1枚/ダウンロードソフト|~| |開発元|アイレムソフトウェアエンジニアリング&br;パオン|~| |発売元|アイレムソフトウェアエンジニアリング&br;グランゼーラ(配信再開後)|~| |発売日|UMD:2009年4月23日/DL:2010年5月13日/&br;DL(再開):2015年7月29日|~| |定価|UMD:5,040円/DL:2,800円/&br;DL(再開):1,000円(いずれも税込)|~| |プレイ人数|1~4人|~| |レーティング|CERO:B(12才以上対象)|~| |判定|なし|~| |ポイント|ストレスと戦いながら生き延びる&br;防災マニュアル搭載&br;何故か百合っぽさ満載&br;グラフィックの質はやや下降気味&br;旧作よりアニメチックな作風に|~| |>|>|CENTER:''絶体絶命都市シリーズ'' : [[1>絶体絶命都市]] - [[2>絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-]] - ''3'' - [[4Plus>絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 災害に襲われた都市からの脱出を目指す『絶体絶命都市』シリーズの第3作。~ 今回は携帯ゲーム機での発売であり、前々作同様に大地震に見舞われた人工島からの脱出を目指す。~ 前々作『[[絶体絶命都市]]』と前作『[[絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-]]』のキャラクターも登場する。~ だが、シリーズ作品未プレイでも特に問題はないようになっている。 ---- **あらすじ 海に浮かぶ大都市、セントラルアイランド。~ 富坂水害から3ヶ月後の2011年3月某日((現実でも同じ2011年3月11日に東日本大震災が発生した。本作はそれ以前に発売されたゲームなのでもちろんこれは偶然の一致なのだが、恐ろしい。))、主人公はこの年の春から、セントラルアイランド内の大学に通うために高速バスに乗っていた。~ 新生活に期待を膨らませていた矢先、海底トンネル内を走行していたバスを突如巨大な地震が襲う。~ 主人公が目を覚ますと、そこには変わり果てたバスと乗客達の姿があった。~ 主人公はなんとかバスを脱出し、トンネル内で出会った女性「本条 咲」とともに地震によって崩壊が始まったセントラルアイランドからの脱出を試みる。 ---- **特徴 -今作は前々作『絶体絶命都市』と同じく、大地震で崩壊する島からの避難を目的とする。 -主人公は男主人公の「''香坂 直希''」と、女主人公の「''牧村 里奈''」の2人から選択できる。両者はストレスの感じ方や体力などで差があるが、シナリオはほぼ同じ。 -今作では、体力の他に「ストレス」という概念が存在する。体力とゲージを共有しており、強いストレスを感じるとそれに伴って体力ゲージの最大値も減少するという仕様である。 --ストレスは、セーブポイントを兼ねる「ベンチ」で全回復できる他、救急セットなどのアイテムを使ったり、ヒロインの歌を聴くことでも回復できる。 --ただし、ストレスのみを回復した場合、体力ゲージの最大値減少の際に削られてしまった体力は回復しない。ベンチでは体力とストレスの双方を回復できるが、咲の歌で回復するのはストレスのみである。 -今作もマルチエンディング方式。ヒロインの好感度や選択肢などが分岐に影響する。 --好感度が高いと、ベンチで座った時近くに寄ってきてくれたり、主人公を名前で呼んでくれるなど、主人公に対する態度に変化が生まれる。 -ゲーム中での行動と選択肢によって、主人公の「性格」が3つのうちのどれかに変化するようになっている。それぞれストレスの受けやすさと回復の度合いが違う。 --「情熱型」は感情をむき出しにした選択肢を選ぶ。ストレスの受けやすさは標準的で、回復アイテムよりも咲の歌による回復効果の方が高い。 --「冷静型」は物事を冷静に見た判断をする。ストレスを受けにくいが、回復アイテムや咲の歌による回復効果も低い。 --「臆病型」は多くの事態を想定し慎重に行動する。ストレスを受けやすく、咲の歌よりも回復アイテムによる回復効果の方が高い。 -基本操作は前作とほぼ変わらないが、ボタンを連打して体当たり、オブジェクトを押す、と言った新しいアクションも駆使する場面もある。 -シリーズ初のマルチプレイモードが搭載されており、最大4人まで同時プレイが可能。 -防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実が監修した「災害マニュアル」が存在する。 --マニュアルは、作中で自動的に手に入る他、アイテムとしても落ちている。 --内容は、地震によって発生しうる二次災害や、避難方法・防災グッズの利用法など多岐にわたる。 -誰もが知る栄養補助食品「カロリーメイト」とコラボしており、ゲーム中の所々にカロリーメイトが登場する。但し、キーアイテム扱いなので[[自分で使用する>メタルギアソリッド3 スネークイーター]]ことはできない。 ---- **評価点 -相変わらず豊富な収集要素。 --これまでと比べ数は減ったものの、コンパスは豊富に取り揃えられている。 --コスチュームも真面目な物からネタ装備まで幅広く存在しており、着せ替える楽しみは健在。 ---前作と違ってアンダーとトップスを個別に着替える事は不可能だが、種類は前作を大きく上回っている。 ---前作のような同行者の着替えも不可能になったが、男主人公で手に入れた男物の服をヒロインに着せる訳にもいかないだろうから、これに関しては仕方ない話である((後に同開発陣が手掛けた『巨影都市』では男主人公の場合でも、手に入れたコスチュームの女性版を着せるという形でヒロインの着せ替えを可能としていた。))。 ---一部のコスチュームは、装備してヒロインに話しかけると特殊な反応をされることもある。 -自由度の高い選択肢。 --今作にもいわゆる「ネタ選択肢」が豊富に存在する。声優もキッチリ演じるため、シリアス展開がぶち壊しになる事うけあい。 ---年齢を聞かれて「''ぼく、5ちゃい!''」と答える、脚立を見つけた際に「''ちょっと踊ってみようかな''」と脚立の上で踊り出す、鼻歌を歌うヒロインを「''耳障りだ!''」と罵る、銃弾を''マトリックスのように避ける''など、その自由ぶりは正にアイレムクオリティである。~ ちなみに、脚立の上で踊る選択肢を選ぶと''踊ってスッキリしたからとストレス値が若干下がる。'' ---「情熱型」「冷静型」「臆病型」の各性格を声優がきっちり演じ分けている分、「情熱型」の性格の時に「冷静型」に傾く選択肢を選択するといきなり声のトーンが別人のようになったりとシュールになる場面も。 -実用的な災害マニュアル。 --専門家である渡辺氏が監修しただけあって災害マニュアルの内容はかなりためになり、実際に被災した場合にも役立つ知識が得られる。 ---しかし、マニュアルのデータは本作が発売された2009年当時のデータに基づいているため、現在からみれば古くなった情報も存在する((例を挙げると、マニュアルでは全国の病院の耐震化率は半分ほど、災害拠点病院でも6割程度と説明されているが、2015年時のデータでは病院全体の耐震化率は約7割、災害拠点病院では8割以上が耐震化されている。))。 ---更新ができないPSPゲームと言う媒体の都合上やむを得ないことではあるが、古いデータに基づいた情報が含まれることにも注意する必要がある。 --それでも被災時に身を護るために役立つ情報は多数収録されているので、今から読んでも参考になる。 -良質な楽曲。 --アーティストは『[[パチパラ13 ~スーパー海とパチプロ風雲録~]]』『[[戦国絵札遊戯 不如帰-HOTOTOGISU-乱]]』などのアイレム作品に主題歌を提供しているシンガーソングライターの飯田舞。主題歌の「キミの隣で…」は名曲との呼び声高く、挿入歌の「忘れない」も陰に隠れがちながら良曲。 ---飯田氏はアイレムのゲーム部門スタッフが「グランゼーラ」として独立した後も同社の音楽レーベル「Granzella Music」に所属し、グランゼーラ製ゲームの主題歌・挿入歌、果ては企業CMやエイプリルフールの歌まで、ほとんど担当している((2018年にしの*たえこ氏が参加するまで同レーベル唯一のシンガーであった。))。 --日本語版のみならず英語版も収録されている。英語版の歌手は同社の『[[ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット]]』の曲を歌っていたナディア・ギフォード。 -死亡時は死因に応じて専用の演出が入る。 --他の作品ではその場に倒れたり、悲鳴と共にホワイトアウトする死亡演出が多いが、本作では焼死、溺死などその死因専用の死亡画面に切り替わる。単にゲームオーバーになるだけではなく緊迫感を高めている。 ---- **賛否両論点 -狙いすぎな選択肢とコスチューム。 --女性主人公の選択肢の中に、明らかに「''百合''」を思わせる物が存在する。しかも本作は主人公から見て年上、年下と2人のヒロインが居るため、両方のシチェエーションが用意されている徹底ぶり。人を選ぶジャンルなので、好きな人はたまらないだろうが、そうではない人は鼻について仕方ない。 ---本作はメインヒロインとの交流が軸になっていたり、サブヒロインがストーリーの根幹に関わっていたりと、ヒロインの存在がクローズアップされたボーイ・ミーツ・ガール((物語の類型の一種で、「少年、少女に出逢う」の意味の通り、少年が少女と出会い恋に落ちる話のこと。))的な作風となっている。過去作のような男性同行者もいなくなり、関わり合う登場人物自体減っていることから、ストーリーの大半をヒロイン達のみと過ごすことになる。~ そのため、男性主人公なら想定されているであろう通りの流れで進むのだが、女性主人公だと''ガール・ミーツ・ガール''になってしまい、ストーリーも男性主人公とほぼ変わらないので何かとその方面に傾いてしまうのである。 ---男性主人公だとヒロインと恋愛チックな雰囲気になれるのだから、女性主人公でも相応に親密になれるようにするのは分かるとしても、だからと言ってメインヒロインに恋愛感情を抱いたり、サブヒロインに''「お姉様」と呼ばせる''ような選択肢を入れるのは悪ノリが過ぎると言うものだろう。 ---この百合百合した選択肢は後のグランゼーラの『[[巨影都市]]』『[[絶体絶命都市4Plus>絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]』で減るどころか''激増''することになる。どの作品もストーリー上の「ヒロイン」が存在する男性主人公前提シナリオ((『4』はヒロインとずっと一緒に行動する訳ではなく、選択次第では終盤からヒロイン自体が登場しなくなるが、やはり百合系選択肢は満載。))((また、『4』はパッケージに女性主人公が描かれていたり、体験版やPVの作りなどから女性主人公視点が基準のようではあるが、実際はいつも通りである。))で、女性主人公は「ヒロイン」とは捉えられていないためである。 ---『[[パチプロ風雲録>パチパラシリーズ]]』の一部タイトルも主人公の性別に関わらずヒロインが存在するという点では同じだが、あちらには男性恋愛対象キャラが存在しており、女主人公に百合しか恋愛の選択肢が無いなどという事は無かった。 --コスチュームもメイド服やキャビンアテンダントの制服、同社開発の別ゲームのキャラのコスプレなど、明らかに雰囲気にそぐわないもの、なぜそんな所に置いてあるのかがわからないものが多数存在する。こう言ったものが隠し要素としてではなく、普通に道端に落ちているのである。 ---場所によっては、1つのマップにいくつものコスチュームがバラ撒かれていることすらある。この街は一体…。 ---着せ替えの楽しみは確かだが、災害ゲームと考えると違和感しか無く、リアリティが薄い。さすがにやり過ぎと判断されたのか、『巨影都市』や『絶体絶命都市4Plus』では配置場所もある程度考慮されるようになった。 --これらはシリーズ伝統のお遊び要素であるとはいえ、今作は露骨すぎるという声もある。 -ボイスやキャラクターデザインにアニメ的な要素が目立つ。 --過去作のリアルよりなキャラクターデザインに比べて、本作はどちらかと言えばアニメ寄りなデザインになっている。 ---過去作では説明書の登場人物紹介で、過酷な災害に晒されているイメージの原画が紹介されていたが、今回はアニメチックにモデリングされたCGのみなのもその印象を強める結果に。 --今回は鳥海浩輔氏・広橋涼氏・生天目仁美氏・成田剣氏など、従来よりも有名声優を多く起用している。 ---演技力や声のクオリティは上がったのだが、1作目の主人公が外にいる時にこもった叫び声になったりと迫真の演技を見せていた事などと比較すると、逆に声優という肩書きが強いことでアニメチックな雰囲気も際立ったと言える。 --今作は前述したようなボーイ・ミーツ・ガール的シナリオなので、その点と合わさって余計にアニメや漫画っぽさに拍車がかかり、リアリティの面でも旧作より大きく低下している。 ---旧作も現実離れした表現や展開はあったものの、本作の度合いはシリーズ全体で見ても異質。災害作品としての現実味か、娯楽作品としてのエンターテインメント性か、プレイヤーが絶体絶命都市に何を求めるかで賛否が分かれる仕上がりとなっている。 -『1』以外のシリーズ全体に言えることだが、ネタ選択肢の数々も評価点であると同時に雰囲気を壊す要因でもあるため、賛否両論な部分もある。 --シリーズやアイレムゲーのファンからすれば分かり切った事だが、シリアスな震災ゲーだと思って手に取った初見の人は面食らうだろう。もちろん、そこからネタプレイに目覚める事もあるだろうが。 --『バンピートロット』以降アイレムはこれをお約束として、『パチプロ風雲録』シリーズ、『[[R-TYPE TACTICS II -Operation BITTER CHOCOLATE->R-TYPE TACTICS#2]]』『なりそこない英雄譚~太陽と月の物語~』など、ほとんどの作品でネタに塗れた大量の選択肢を導入していた。 --それに伴ってネタそのものもどんどん暴走しており、そんな時期に出た本作も、前作よりもネタに走った選択肢が増加している訳である。 --結果、真面目なものや王道的な選択肢の方が限られてしまい、ネタプレイに走りがちな作風へと転向している。ゲームとしては楽しみの幅が増えるのは良いことだが、災害という重いテーマの中でそれをやるので、人によっては茶化されているようにも思えてしまうだろう。 ---- **問題点 -シナリオがボリューム不足。 --携帯機にハードを移した事情もあるのか、前作、前々作に比べシナリオはかなり短く、ボリュームに欠ける。 --かと言って内容はほぼ一本道であり、選択肢によるエンディング分岐も終盤にしか存在しないので、短い話なのに周回プレイ時にダレやすい。 ---前々作では2人のヒロインどちらを選ぶかで進行ルートや終盤以降の同行者に変化が生じていたのだが、今回はヒロイン2人がメインとサブでそれぞれ立ち位置がはっきり分けられているため、大きな分岐が存在しない。 ---前作のような本筋から離れたサブイベントや、プレイヤーの行動で後の展開が変化すると言うような要素も無く、周回の楽しみが薄い。 ---主人公も2人いるとは言え、前述した通りどちらを選んでもシナリオ展開そのものに変化は無い。手に入る装備と、選択肢内容やヒロインの反応が一部変わるだけである。 --エンディングは全9種と、数字だけ見れば多めだが、実際はラストが微妙に違う4種類のエンディングを男女2人分加算しただけ。 --どちらの主人公でも内容は大差無いのでリストの水増し感が否めない。しかもそれらに当てはまらない9種類目のエンディングは達成度に影響しない(後述)。 --ヒロイン2人には好感度が設定されており、高ければエピローグで主人公にメールや手紙を送ってくるのだが、それは''2周目以降限定。''エピローグ回収の面で言えば1周目は無駄であり、こちらも周回数とプレイ時間の水増しを感じさせる。 -カメラワークが悪く、視点が見づらい場所が所々に存在する。 --前作にもあったが、カメラ操作ができないシーンがいくつもあり、視点の悪さを助長している。そういう所に限って落下死ポイントが仕掛けられていたりする。 -稚拙なグラフィック。 --メインキャラのグラフィックはPSPとはしてそれなりだが、そうでないモブキャラはなんとなく顔の違いが見て取れる程度のレベル。しかもモブは話しかけると顔がズームアップされるので嫌でも目に付く。 ---最終局面において大勢のモブキャラが集まるシーンがあるが、なんとその場面においてモブはハリボテである。さらに道を塞ぐためのモブは書き割りであり、厚みが無いため''真横から見ると見えなくなる。'' --被災地のグラフィックも、過去作に比べ劣化している。PSPのゲームとして見ても、グラフィックはそれほど上質ではない。 ---物理演算も雑な所が多く、特に一部の落下物の描写はかなり適当。落ちてきた車が地面に吸い付いたり((それも地面に激突する演出は、接地した際にガラスが割れるエフェクトを被せるだけで誤魔化している。))、小さな瓦礫が接地した途端に消えたり、など。 --一方、オープニング、ヒロインが歌うシーン、エンディングでは『1』のOP以来のプリレンダリングムービーが流れるが、こちらはなかなか綺麗。 -アイテムコンプリートのためには、マルチプレイのクリアが必須というぼっち涙目の仕様。 --マルチプレイの報酬でしか入手不可能なコンパスやコスチュームがあり、環境が無い人はコンプリートが出来ないのである。 --現在はアドホック・パーティなどの登場である程度マシになったとはいえ、コンプリートのためにオンライン環境を整える必要があるというのも…。 -不具合が多く、中にはゲームが進行不可能となる致命的なバグも存在する。 --特に「スーパーマゴヤバグ」は有名。エリアの1つである「スーパーマゴヤ」の2Fから1Fに降りようとすると、''突然PSPの電源が落ちる''という物であり、これに関しては事前に対処法を調べておく他に方法がない。 --エンディングのうちの1つ(途中で主人公だけヘリで脱出するもの)はエンディングリストにカウントされない。つまりエンディングのコンプリートは不可能なのである。 --他にも「ホテル ハイアーバンバグ」「グロリア稲荷バグ」のような''発生すると進行不能になり、知らずにセーブすると詰む''という凶悪なバグも。 -災害マニュアルを入手するたびにゲームが一旦止まり、内容を確認するか聞かれる。最初のうちは気にならないが、その調子がゲームを通してずっと続くので、そのうちテンポの悪さが気になりだす。 --しかも、入手後にセーブしないままミスした場合、マニュアルはまた入手し直しとなる。 --中には一場面で複数のマニュアルを入手する場合もあり、いちいちキャンセルするのすら億劫になることも。 --一度入手したマニュアルはもう出現しないので、流石に二周目以降は問題にならない。 -ゲームバランスがあまり良くない。 --ベンチに座るとストレスも体力も全快するので、せっかくのヒロインの歌の使い道がイマイチ。回復アイテムも使いどころが少なく、重要度はかなり低め。 --ベンチに座った際の回復効果は性格が関係ないため、性格システムもあまり存在感がない。ある意味、性格によって一部シーンの会話が変化するという点が一番の影響点かもしれない。 ---一日の始まりにはそれまでの選択肢に応じて性格に変化が生じるようになっているが、個々の選択肢の影響が小さいため、変化させたい性格の選択肢を集中的に選ばないとなかなか変わってくれない。また、二日目は選択肢が少なめなので、そこから急に変えようとしてもほぼ間に合わない((三日目には選択肢は相応にあるが、最終日なので性格に影響は無い。))。 --前作のようにアイテムを組み合わせて新たなアイテムを作る事ができるが、せっかく作ったアイテムに使い道が無い事が多い。 ---懐中電灯を作っても、暗がりを進むシーンは中盤に少しある程度。ガスマスクを作っても、煙の中を進むシーンは序盤を過ぎるともう皆無と、アイテムに見合った展開が用意されていない。 -従来よりツッコミ所やシュールな展開が多い。 --現実味が薄れ、アニメチックになったのは前述した通りだが、それを別としても今回のシナリオはツッコミ所が多い。 --避難所で、ストレスが爆発した避難民の男たちが主人公たちを襲う場面があるが、いきなりヒロインが歌を歌いだし、それを聞いたら彼らの気持ちが落ち着き、冷静になるというあんまりな展開がある((一応、理由としては「人質を放して欲しければ何か芸をして楽しませろ」と脅されているためとは語られているが。しかしそれでも男たちの急な落ち着きぶりは違和感が激しい。))。ファンタジー作品ならまだしも…。 ---サブタイトルにある通りヒロインの歌は本作のキーであり、避難所で被災者を癒したり、崩壊した街をバックに歌うシーンなどは効果的に演出できているのだが、このような深刻なシーンでも万能ツールのように乱用するのは如何なものか。しかもクライマックスでも''人質を取った殺人犯を鎮めるために、急に周囲の人々と一緒に歌いだす''という無理のある使い方をされている。ファンタジー作(ry --地面に置いたカロリーメイトに''4人の男(上記の男達)が群がって食い漁るシーンがある。''しかもその後の第一声が「美味かった…」である。宣伝…なのだろうか? --手持ちの食糧を全部手放す展開が二度もある。二度目は人質を取られて脅迫されたためなので仕方ないが、一度目は純粋に善意で渡すと言うもの。心掛けはともかく、あっさり全部渡すのは被災地を甘く見ているのではないか((ちなみに、食糧アイテムを一つも持っていないとこれらの展開はカットされる。))。 --他にも、災害マニュアルの内容を活かすシチュエーションを念頭にシナリオを作ったためか、ゲームの流れ的に強引な所や無理矢理な展開も一部に見られる。 -終盤は災害がほぼ関係ないシナリオとなってしまう。 --終盤では暴徒化した民衆から逃げつつ、震災の裏で渦巻く陰謀を解明する展開になるため、災害が関係なくなってしまう。 --震災そのものも、中盤までは水害や火災など様々な災害が発生していたが、終盤に入るとピタリと止み、時々思い出したように余震が発生するだけとなる。 --この傾向は前作までもあったものの、少なくとも最後まで災害は主人公達を襲い続けた。しかし本作においては本当に災害そっちのけで進行し、そのまま完結してしまう。 --前2作のラストシーンではいずれも被災地が海に没する場面が描かれ、主人公はギリギリで救助されることで最後まで災害の恐ろしさを描写していたのだが、今回はそんなことなどどこ吹く風のラストである。 ---最終的には本作の被災地も沈むのだが、それも「エンディングのムービーで急に水没している」というもの。その直前まで災害とはまるで関係ない話を展開するので印象が極めて薄い。 ---最終面となる羽月建設ビルに入る直前ではまだ無事な陸地が一部見えているため、「ビルに入る前は残っていた陸地が、ビルの内部を動いている間にいつの間にか水没していた」という形になってしまっており、被災地の水没という衝撃的な展開の割には地味な印象を受ける。 --陰謀自体に関しても災害は微塵も関係ないものであり、しかもその実態はある一族の内輪揉めのようなもので、非常にスケールが小さい。前作までは陰謀が災害そのものに密接に関係していたり、大勢の人間を死に追いやるような巨大な陰謀が渦巻いていたのだが。 -そしてその陰謀の真相も、事件の結末も腑に落ちないものとなっている。 #region(首謀者に関して(ネタバレ)) -首謀者とその協力者は間接的とは言え殺人教唆と言う紛れもない罪を犯し、しかも逆恨みに近い理由で1人の罪の無い人間を死に追いやっているにもかかわらず作中では咎めを受けず、罪を償う様子も見られない。 -母親の人生を狂わせた悪党達に復讐しようとした…まではまだ良いとしても、その方法がえげつない。 --自ら手を下すのではなく、自身と親交のある男性を利用して悪党達を殺害させようとした。何故その人物を殺人鬼に仕立てようとしたのかと言うと、その人物の妻が衰弱していた母に怨嗟の声をぶつけ、死の遠因を作ったため。男性自身には何の責任も無く、寧ろ妻を止めようとしていた。 --最終的に彼は娘を悪党達に殺された復讐のために凶行に及ぶのだが、そもそも娘が死んだのは首謀者達がそう仕向けたためである。 ---娘が殺された理由は、悪党達の悪事を暴こうとして失敗したためだが、そう仕向けたのは彼女の婚約者であり、首謀者の協力者である。つまり殺されて父親を凶行に走らせるために利用された訳である。 ---男性は悪党に復讐するために、悪党の縁者である首謀者((男性はこの時点で娘の死の首謀者とは知らず、単に身内を殺される苦しみを悪党にも味わわせることが目的。))に刃を向けるが、刃を向けられた首謀者は「''こんなことをしたら娘が悲しむ''」と言う。%%お前が言うな。%% --結果として、首謀者は母の人生を狂わせた悪党を死に追いやり、母の死の遠因となった人物…''の夫と娘''を破滅させた。最後はその利用した男性に命を狙われるが、主人公とヒロインに救われる。 --そして大勢の前で自身の罪を暴露したにもかかわらず、あるエピローグによると''罪に問われること無くどこかの食堂で働き始めた''とのこと。この結末をすんなり受け入れるのはなかなか難しいだろう。また、首謀者の協力者も罪に問われなかった様子。 ---罪悪感はあったのか、エンディングでは男性を庇ってビルから転落する(主人公に助けられる)。また、一応は自分の罪と向き合う意思は見せるが、犯した罪に応じた罰を受けた訳ではない事に変わりは無い。 ---ビルから転落した際に助けなかった場合は死亡するが、その場合はバッドエンドのようなムービーが流れて終わるだけで、エピローグのヒロインからのメールも暗いものになるため、結局スッキリしない((或いは主人公も一緒に死亡するエンディングもある。結局バッドエンドだが。))。 --男性の方は描写は無いものの、殺人を犯した以上は逮捕された事は想像に難くない。殺人に手を染めたとは言え、彼は首謀者の策謀に利用された被害者である。何より一番の被害者は利用されて殺された娘である。 --首謀者は悪党の血縁者であり、母のために父達への復讐を目論んでいたという構図なのだが、この流れを見れば''悪逆さに関してはしっかり遺伝している''ことが分かる。 ---男性もその娘も、首謀者に対して家族のように懇意にしていた人物である。それを平然と殺人に利用するなど、まともな精神の持ち主とはとても思えない。にも拘らず、主人公もヒロインも一切指摘することはないままストーリーが終わってしまう。 ---もっとも、男性の方も悪党に復讐する事を目的として罪のない(と男性自身は思っていた)首謀者に刃を向けてしまっているので首謀者と同じ事をやろうとしてしまっている。実際には刃を向けた相手は''娘を死に追いやった張本人だった''わけだが。 #endregion ---- **総評 携帯機にホームを移した本作は、単なるアクションゲームにとどまらない実用性も持っており、プレイするだけで災害への対処法などが身に付くようになっている。~ 反面、クオリティやボリュームは据置機で出た過去作に劣っており、アクションゲームとしても荒削りな面が見受けられる。~ またシナリオや設定、演出の面でもどこか現実離れした部分やツッコミ所が目立ち、シリーズファンにとっては賛否の分かれやすいものとなってしまった。~ 「ストレス」の概念を取り入れるなど着眼点は良いものの、総合的に見れば良くも悪くも凡ゲーといったところだろう。 ---- **余談 -本作発売の数ヶ月後に放送されたアニメ『東京マグニチュード8.0』とコラボしており、同作の応援としてバナーや[[キービジュアル>https://dengekionline.com/elem/000/000/175/175286/img.html]]が公開されていた。%%どう見てもコラ画像なのはご愛嬌。%% --こちらも震災をテーマとしているが、本シリーズのようなアクロバティックなアクションやサバイバル展開はほぼ皆無で、災害における帰宅困難者に焦点を当て、被災地の人間模様を中心に主人公の成長を描いた作品である。 ---また、同作主人公役の声優が役作りの参考として本作をプレイしており、その感想が公式ブログで公開されていた。 -前作の富坂市公式サイトのように、当時の公式サイトには、ヒロインの咲が書いたという設定のブログが公開されていた([[アーカイブ>https://web.archive.org/web/20090221083920/http://blog-saki.zettai-zetsumei.com/]])。 --本作の宣伝などのネタを挟みつつ、本当に若い女性が書いたような文体になっており、コメント欄まで本物っぽく作る凝りようである。 --そして最後はセントラルアイランドを出るという記事で終わっており、その後、災害に巻き込まれた…という流れを想定した演出となっていた。最後の記事のコメント欄には地震発生について触れたものがあり、咲の安否を気遣っていたりとこれまたリアルな作りだった。 --しかし、本作の時代設定は2011年3月。対してこのブログは2009年のリアルタイム設定で書かれており、本作の発売日である4月23日に終わる形になっているため、ゲーム本編の時間とは見事に食い違っている。 -当初は『1』の主人公である須藤と、旧作でお馴染みの宝石女・竹辺が登場する予定だったらしいが、やり過ぎ感があったからと見送られている。 --本編では過去作キャラは『2』に登場した本多と、毎度被災する『1』のサブヒロイン・比嘉がチョイ役として出るのみになっている。しかも比嘉は本作では主人公の選択次第で死亡してしまう。 ---比嘉は『4』でもやはり被災するため、生存するルートが正史である。しかし今度は…。 --また、本編には登場しないが、マルチプレイのあるステージに登場するタクシー運転手は前作主人公の1人・柘植である。 --竹辺は後に『4』で(もちろん宝石泥棒として)再登場している。須藤もおまけの後日談シナリオに登場した。 --入手可能な読み物のひとつに「J」のイニシャルを持つジャーナリストが書いた、羽月企業の秘書の自殺とその周辺を調査するという内容のものがあった。 --『1』の陣内が死んだと明確に確認されていないことを考えると、問題のジャーナリストが陣内である可能性はある。ちなみに、この作品で入手可能なコンパスのひとつに「陣内コンパス」がある。 -2011年には、シリーズ最新作となる『''絶体絶命都市4 -Summer Memories-''』がPS3で発売される予定だったが、発売中止となり、本作を含むシリーズ全作品が販売終了・廃盤へと追い込まれた。 --同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の自粛と言われていたが、プロデューサーの九条一馬は「震災の所為ではなく目標の日までに完成させられなかったため」と言った旨を語っており、CEROと揉めたことやスケジュール管理が原因だとしている([[参照>http://togetter.com/li/193497]])。別のインタビューでも「開発中止告知の文には震災が原因とは書いていない(意訳)」と答えたこともある。 --一方、当時の朝日新聞のアイレム本社への取材では「開発の遅れ」と「被災者への配慮」とされていた。実際、震災前まで普通に公開されていた『4』公式サイトは震災発生後すぐに非常に簡素なものになり、それから殆ど日を置かずに開発中止・シリーズ廃盤が告知されている。 ---しかし、上記の通り九条氏は一貫して震災との関連を否定している。どれが本当の理由だったのか今となっては確かめようが無いが、もし仮に震災に原因があったとしても、そうだと言って震災の所為にする訳にはいかないのだろう。 --最終的にどれを信じるかは各自判断されたし。 -同時に本作のダウンロード販売も終了したため、しばらくはこのゲームをプレイしたいのならばパッケージ版を購入する必要があった。 --後にアイレムのゲーム開発スタッフが独立し、設立した「グランゼーラ」が本シリーズの版権を獲得。シリーズ復活に向けての動きが始まり、その一環として『1』『2』のゲームアーカイブス配信が開始。2015年7月29日からは本作のDL販売も再開され、『4』もPS4用ソフトとしてリメイクされることが発表された。 --本作DL版の値段は1,000円と、再開前よりもかなりリーズナブルなので、本シリーズに興味のある方は押さえておいても良いだろう。 --また、スーパーマゴヤバグを始めとする進行不能になるバグは修正されているとのことである。 -本編作品とは別に、絶体絶命都市シリーズの流れを汲んだ派生作品として『[[巨影都市]]』がPS4用ソフトとして2017年10月19日に発売された。 --こちらはバンダイナムコとグランゼーラの共同開発作品であり、円谷プロダクション作品や『[[新世紀エヴァンゲリオン>新世紀エヴァンゲリオンシリーズ]]』『機動警察バトレイバー』とタイアップされている。 --その関係で、主人公たちの前に立ちはだかるのは震災や水害などではなく、ウルトラマンやゴジラなどの「巨影」達である。 -シリーズでも他作品との繋がりが特に薄く、本作関連のネタが取り上げられることはほとんど無い。 --しかし本作の顔役である本条咲だけは、後の作品にもミュージシャンとして客演している。%%主人公含む他のキャラはやはり印象が薄いのか。%% ---前述の『巨影都市』には絶体絶命都市シリーズのキャラが多数ゲスト出演しており、本作からただ1人出演を果たした。 ---後述の『4』にも後日談に登場。台詞は無いが、本作の主題歌を歌っている。 --『巨影都市』の早期予約特典には『1』『2』の主人公とヒロインの衣装が収録されていたが、本作の衣装は無かった。 --『マンガ・カ・ケール』のDLCとして本シリーズ関連の素材が配信されているが、本作からは''タイトルロゴ''しか収録されていない。%%やはり印象g(ry%% -2018年11月22日、遂にシリーズ新作となる『[[絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]』がPS4で発売された。 --PS3で発売予定だった『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』をベースに震災などの表現を大幅に強化した為Plusの名前が付いた。 --しかしその内容は問題だらけで待っていたファンを大きく失望させてしまった。詳細は当該記事を参照されたし。
*絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌- 【ぜったいぜつめいとしすりー こわれゆくまちとかのじょのうた】 |ジャンル|サバイバル・アクションアドベンチャー|&amazon(B001H9NV5O,image=https://www.suruga-ya.jp/pics_light/boxart_m/177000970m.jpg,width=90,height=160)| |対応機種|プレイステーション・ポータブル|~| |メディア|UMD 1枚/ダウンロードソフト|~| |開発元|アイレムソフトウェアエンジニアリング&br;パオン|~| |発売元|アイレムソフトウェアエンジニアリング&br;グランゼーラ(配信再開後)|~| |発売日|UMD:2009年4月23日/DL:2010年5月13日/&br;DL(再開):2015年7月29日|~| |定価|UMD:5,040円/DL:2,800円/&br;DL(再開):1,000円(いずれも税込)|~| |プレイ人数|1~4人|~| |レーティング|CERO:B(12才以上対象)|~| |判定|なし|~| |ポイント|ストレスと戦いながら生き延びる&br;防災マニュアル搭載&br;何故か百合っぽさ満載&br;グラフィックの質はやや下降気味&br;旧作よりアニメチックな作風に|~| |>|>|CENTER:''絶体絶命都市シリーズ'' : [[1>絶体絶命都市]] - [[2>絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-]] - ''3'' - [[4Plus>絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 災害に襲われた都市からの脱出を目指す『絶体絶命都市』シリーズの第3作。~ 今回は携帯ゲーム機での発売であり、前々作同様に大地震に見舞われた人工島からの脱出を目指す。~ 前々作『[[絶体絶命都市]]』と前作『[[絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-]]』のキャラクターも登場する。~ だが、シリーズ作品未プレイでも特に問題はないようになっている。 ---- **あらすじ 海に浮かぶ大都市、セントラルアイランド。~ 富坂水害から3ヶ月後の2011年3月某日((現実でも同じ2011年3月11日に東日本大震災が発生した。本作はそれ以前に発売されたゲームなのでもちろんこれは偶然の一致なのだが、恐ろしい。))、主人公はこの年の春から、セントラルアイランド内の大学に通うために高速バスに乗っていた。~ 新生活に期待を膨らませていた矢先、海底トンネル内を走行していたバスを突如巨大な地震が襲う。~ 主人公が目を覚ますと、そこには変わり果てたバスと乗客達の姿があった。~ 主人公はなんとかバスを脱出し、トンネル内で出会った女性「本条 咲」とともに地震によって崩壊が始まったセントラルアイランドからの脱出を試みる。 ---- **特徴 -今作は前々作『絶体絶命都市』と同じく、大地震で崩壊する島からの避難を目的とする。 -主人公は男主人公の「''香坂 直希''」と、女主人公の「''牧村 里奈''」の2人から選択できる。両者はストレスの感じ方や体力などで差があるが、シナリオはほぼ同じ。 -今作では、体力の他に「ストレス」という概念が存在する。体力とゲージを共有しており、強いストレスを感じるとそれに伴って体力ゲージの最大値も減少するという仕様である。 --ストレスは、セーブポイントを兼ねる「ベンチ」で全回復できる他、救急セットなどのアイテムを使ったり、ヒロインの歌を聴くことでも回復できる。 --ただし、ストレスのみを回復した場合、体力ゲージの最大値減少の際に削られてしまった体力は回復しない。ベンチでは体力とストレスの双方を回復できるが、咲の歌で回復するのはストレスのみである。 -今作もマルチエンディング方式。ヒロインの好感度や選択肢などが分岐に影響する。 --好感度が高いと、ベンチで座った時近くに寄ってきてくれたり、主人公を名前で呼んでくれるなど、主人公に対する態度に変化が生まれる。 -ゲーム中での行動と選択肢によって、主人公の「性格」が3つのうちのどれかに変化するようになっている。それぞれストレスの受けやすさと回復の度合いが違う。 --「情熱型」は感情をむき出しにした選択肢を選ぶ。ストレスの受けやすさは標準的で、回復アイテムよりも咲の歌による回復効果の方が高い。 --「冷静型」は物事を冷静に見た判断をする。ストレスを受けにくいが、回復アイテムや咲の歌による回復効果も低い。 --「臆病型」は多くの事態を想定し慎重に行動する。ストレスを受けやすく、咲の歌よりも回復アイテムによる回復効果の方が高い。 -基本操作は前作とほぼ変わらないが、ボタンを連打して体当たり、オブジェクトを押す、と言った新しいアクションも駆使する場面もある。 -シリーズ初のマルチプレイモードが搭載されており、最大4人まで同時プレイが可能。 -防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実が監修した「災害マニュアル」が存在する。 --マニュアルは、作中で自動的に手に入る他、アイテムとしても落ちている。 --内容は、地震によって発生しうる二次災害や、避難方法・防災グッズの利用法など多岐にわたる。 -誰もが知る栄養補助食品「カロリーメイト」とコラボしており、ゲーム中の所々にカロリーメイトが登場する。但し、キーアイテム扱いなので[[自分で使用する>メタルギアソリッド3 スネークイーター]]ことはできない。 ---- **評価点 -相変わらず豊富な収集要素。 --これまでと比べ数は減ったものの、コンパスは豊富に取り揃えられている。 --コスチュームも真面目な物からネタ装備まで幅広く存在しており、着せ替える楽しみは健在。 ---前作と違ってアンダーとトップスを個別に着替える事は不可能だが、種類は前作を大きく上回っている。 ---前作のような同行者の着替えも不可能になったが、男主人公で手に入れた男物の服をヒロインに着せる訳にもいかないだろうから、これに関しては仕方ない話である((後に同開発陣が手掛けた『巨影都市』では男主人公の場合でも、手に入れたコスチュームの女性版を着せるという形でヒロインの着せ替えを可能としていた。))。 ---一部のコスチュームは、装備してヒロインに話しかけると特殊な反応をされることもある。 -自由度の高い選択肢。 --今作にもいわゆる「ネタ選択肢」が豊富に存在する。声優もキッチリ演じるため、シリアス展開がぶち壊しになる事うけあい。 ---年齢を聞かれて「''ぼく、5ちゃい!''」と答える、脚立を見つけた際に「''ちょっと踊ってみようかな''」と脚立の上で踊り出す、鼻歌を歌うヒロインを「''耳障りだ!''」と罵る、銃弾を''マトリックスのように避ける''など、その自由ぶりは正にアイレムクオリティである。~ ちなみに、脚立の上で踊る選択肢を選ぶと''踊ってスッキリしたからとストレス値が若干下がる。'' ---「情熱型」「冷静型」「臆病型」の各性格を声優がきっちり演じ分けている分、「情熱型」の性格の時に「冷静型」に傾く選択肢を選択するといきなり声のトーンが別人のようになったりとシュールになる場面も。 -実用的な災害マニュアル。 --専門家である渡辺氏が監修しただけあって災害マニュアルの内容はかなりためになり、実際に被災した場合にも役立つ知識が得られる。 ---しかし、マニュアルのデータは本作が発売された2009年当時のデータに基づいているため、現在からみれば古くなった情報も存在する((例を挙げると、マニュアルでは全国の病院の耐震化率は半分ほど、災害拠点病院でも6割程度と説明されているが、2015年時のデータでは病院全体の耐震化率は約7割、災害拠点病院では8割以上が耐震化されている。))。 ---更新ができないPSPゲームと言う媒体の都合上やむを得ないことではあるが、古いデータに基づいた情報が含まれることにも注意する必要がある。 --それでも被災時に身を護るために役立つ情報は多数収録されているので、今から読んでも参考になる。 -良質な楽曲。 --アーティストは『[[パチパラ13 ~スーパー海とパチプロ風雲録~]]』『[[戦国絵札遊戯 不如帰-HOTOTOGISU-乱]]』などのアイレム作品に主題歌を提供しているシンガーソングライターの飯田舞。主題歌の「キミの隣で…」は名曲との呼び声高く、挿入歌の「忘れない」も陰に隠れがちながら良曲。 ---飯田氏はアイレムのゲーム部門スタッフが「グランゼーラ」として独立した後も同社の音楽レーベル「Granzella Music」に所属し、グランゼーラ製ゲームの主題歌・挿入歌、果ては企業CMやエイプリルフールの歌まで、ほとんど担当している((2018年にしの*たえこ氏が参加するまで同レーベル唯一のシンガーであった。))。 --日本語版のみならず英語版も収録されている。英語版の歌手は同社の『[[ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット]]』の曲を歌っていたナディア・ギフォード。 -死亡時は死因に応じて専用の演出が入る。 --他の作品ではその場に倒れたり、悲鳴と共にホワイトアウトする死亡演出が多いが、本作では焼死、溺死などその死因専用の死亡画面に切り替わる。単にゲームオーバーになるだけではなく緊迫感を高めている。 ---- **賛否両論点 -狙いすぎな選択肢とコスチューム。 --女性主人公の選択肢の中に、明らかに「''百合''」を思わせる物が存在する。しかも本作は主人公から見て年上、年下と2人のヒロインが居るため、両方のシチェエーションが用意されている徹底ぶり。人を選ぶジャンルなので、好きな人はたまらないだろうが、そうではない人は鼻について仕方ない。 ---本作はメインヒロインとの交流が軸になっていたり、サブヒロインがストーリーの根幹に関わっていたりと、ヒロインの存在がクローズアップされたボーイ・ミーツ・ガール((物語の類型の一種で、「少年、少女に出逢う」の意味の通り、少年が少女と出会い恋に落ちる話のこと。))的な作風となっている。過去作のような男性同行者もいなくなり、関わり合う登場人物自体減っていることから、ストーリーの大半をヒロイン達のみと過ごすことになる。~ そのため、男性主人公なら想定されているであろう通りの流れで進むのだが、女性主人公だと''ガール・ミーツ・ガール''になってしまい、ストーリーも男性主人公とほぼ変わらないので何かとその方面に傾いてしまうのである。 ---男性主人公だとヒロインと恋愛チックな雰囲気になれるのだから、女性主人公でも相応に親密になれるようにするのは分かるとしても、だからと言ってメインヒロインに恋愛感情を抱いたり、サブヒロインに''「お姉様」と呼ばせる''ような選択肢を入れるのは悪ノリが過ぎると言うものだろう。 ---この百合百合した選択肢は後のグランゼーラの『[[巨影都市]]』『[[絶体絶命都市4Plus>絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]』で減るどころか''激増''することになる。どの作品もストーリー上の「ヒロイン」が存在する男性主人公前提シナリオ((『4』はヒロインとずっと一緒に行動する訳ではなく、選択次第では終盤からヒロイン自体が登場しなくなるが、やはり百合系選択肢は満載。))((また、『4』はパッケージに女性主人公が描かれていたり、体験版やPVの作りなどから女性主人公視点が基準のようではあるが、実際はいつも通りである。))で、女性主人公は「ヒロイン」とは捉えられていないためである。 ---『[[パチプロ風雲録>パチパラシリーズ]]』の一部タイトルも主人公の性別に関わらずヒロインが存在するという点では同じだが、あちらには男性恋愛対象キャラが存在しており、女主人公に百合しか恋愛の選択肢が無いなどという事は無かった。 --コスチュームもメイド服やキャビンアテンダントの制服、同社開発の別ゲームのキャラのコスプレなど、明らかに雰囲気にそぐわないもの、なぜそんな所に置いてあるのかがわからないものが多数存在する。こう言ったものが隠し要素としてではなく、普通に道端に落ちているのである。 ---場所によっては、1つのマップにいくつものコスチュームがバラ撒かれていることすらある。この街は一体…。 ---着せ替えの楽しみは確かだが、災害ゲームと考えると違和感しか無く、リアリティが薄い。さすがにやり過ぎと判断されたのか、『巨影都市』や『絶体絶命都市4Plus』では配置場所もある程度考慮されるようになった。 --これらはシリーズ伝統のお遊び要素であるとはいえ、今作は露骨すぎるという声もある。 -ボイスやキャラクターデザインにアニメ的な要素が目立つ。 --過去作のリアルよりなキャラクターデザインに比べて、本作はどちらかと言えばアニメ寄りなデザインになっている。 ---過去作では説明書の登場人物紹介で、過酷な災害に晒されているイメージの原画が紹介されていたが、今回はアニメチックにモデリングされたCGのみなのもその印象を強める結果に。 --今回は鳥海浩輔氏・広橋涼氏・生天目仁美氏・成田剣氏など、従来よりも有名声優を多く起用している。 ---演技力や声のクオリティは上がったのだが、1作目の主人公が外にいる時にこもった叫び声になったりと迫真の演技を見せていた事などと比較すると、逆に声優という肩書きが強いことでアニメチックな雰囲気も際立ったと言える。 --今作は前述したようなボーイ・ミーツ・ガール的シナリオなので、その点と合わさって余計にアニメや漫画っぽさに拍車がかかり、リアリティの面でも旧作より大きく低下している。 ---旧作も現実離れした表現や展開はあったものの、本作の度合いはシリーズ全体で見ても異質。災害作品としての現実味か、娯楽作品としてのエンターテインメント性か、プレイヤーが絶体絶命都市に何を求めるかで賛否が分かれる仕上がりとなっている。 -『1』以外のシリーズ全体に言えることだが、ネタ選択肢の数々も評価点であると同時に雰囲気を壊す要因でもあるため、賛否両論な部分もある。 --シリーズやアイレムゲーのファンからすれば分かり切った事だが、シリアスな震災ゲーだと思って手に取った初見の人は面食らうだろう。もちろん、そこからネタプレイに目覚める事もあるだろうが。 --『バンピートロット』以降アイレムはこれをお約束として、『パチプロ風雲録』シリーズ、『[[R-TYPE TACTICS II -Operation BITTER CHOCOLATE->R-TYPE TACTICS#2]]』『なりそこない英雄譚~太陽と月の物語~』など、ほとんどの作品でネタに塗れた大量の選択肢を導入していた。 --それに伴ってネタそのものもどんどん暴走しており、そんな時期に出た本作も、前作よりもネタに走った選択肢が増加している訳である。 --結果、真面目なものや王道的な選択肢の方が限られてしまい、ネタプレイに走りがちな作風へと転向している。ゲームとしては楽しみの幅が増えるのは良いことだが、災害という重いテーマの中でそれをやるので、人によっては茶化されているようにも思えてしまうだろう。 ---- **問題点 -シナリオがボリューム不足。 --携帯機にハードを移した事情もあるのか、前作、前々作に比べシナリオはかなり短く、ボリュームに欠ける。 --かと言って内容はほぼ一本道であり、選択肢によるエンディング分岐も終盤にしか存在しないので、短い話なのに周回プレイ時にダレやすい。 ---前々作では2人のヒロインどちらを選ぶかで進行ルートや終盤以降の同行者に変化が生じていたのだが、今回はヒロイン2人がメインとサブでそれぞれ立ち位置がはっきり分けられているため、大きな分岐が存在しない。 ---前作のような本筋から離れたサブイベントや、プレイヤーの行動で後の展開が変化すると言うような要素も無く、周回の楽しみが薄い。 ---主人公も2人いるとは言え、前述した通りどちらを選んでもシナリオ展開そのものに変化は無い。手に入る装備と、選択肢内容やヒロインの反応が一部変わるだけである。 --エンディングは全9種と、数字だけ見れば多めだが、実際はラストが微妙に違う4種類のエンディングを男女2人分加算しただけ。 --どちらの主人公でも内容は大差無いのでリストの水増し感が否めない。しかもそれらに当てはまらない9種類目のエンディングは達成度に影響しない(後述)。 --ヒロイン2人には好感度が設定されており、高ければエピローグで主人公にメールや手紙を送ってくるのだが、それは''2周目以降限定。''エピローグ回収の面で言えば1周目は無駄であり、こちらも周回数とプレイ時間の水増しを感じさせる。 -カメラワークが悪く、視点が見づらい場所が所々に存在する。 --前作にもあったが、カメラ操作ができないシーンがいくつもあり、視点の悪さを助長している。そういう所に限って落下死ポイントが仕掛けられていたりする。 -稚拙なグラフィック。 --メインキャラのグラフィックはPSPとはしてそれなりだが、そうでないモブキャラはなんとなく顔の違いが見て取れる程度のレベル。しかもモブは話しかけると顔がズームアップされるので嫌でも目に付く。 ---最終局面において大勢のモブキャラが集まるシーンがあるが、なんとその場面においてモブはハリボテである。さらに道を塞ぐためのモブは書き割りであり、厚みが無いため''真横から見ると見えなくなる。'' --被災地のグラフィックも、過去作に比べ劣化している。PSPのゲームとして見ても、グラフィックはそれほど上質ではない。 ---物理演算も雑な所が多く、特に一部の落下物の描写はかなり適当。落ちてきた車が地面に吸い付いたり((それも地面に激突する演出は、接地した際にガラスが割れるエフェクトを被せるだけで誤魔化している。))、小さな瓦礫が接地した途端に消えたり、など。 --一方、オープニング、ヒロインが歌うシーン、エンディングでは『1』のOP以来のプリレンダリングムービーが流れるが、こちらはなかなか綺麗。 -アイテムコンプリートのためには、マルチプレイのクリアが必須というぼっち涙目の仕様。 --マルチプレイの報酬でしか入手不可能なコンパスやコスチュームがあり、環境が無い人はコンプリートが出来ないのである。 --現在はアドホック・パーティなどの登場である程度マシになったとはいえ、コンプリートのためにオンライン環境を整える必要があるというのも…。 -不具合が多く、中にはゲームが進行不可能となる致命的なバグも存在する。 --特に「スーパーマゴヤバグ」は有名。エリアの1つである「スーパーマゴヤ」の2Fから1Fに降りようとすると、''突然PSPの電源が落ちる''という物であり、これに関しては事前に対処法を調べておく他に方法がない。 --エンディングのうちの1つ(途中で主人公だけヘリで脱出するもの)はエンディングリストにカウントされない。つまりエンディングのコンプリートは不可能なのである。 --他にも「ホテル ハイアーバンバグ」「グロリア稲荷バグ」のような''発生すると進行不能になり、知らずにセーブすると詰む''という凶悪なバグも。 -災害マニュアルを入手するたびにゲームが一旦止まり、内容を確認するか聞かれる。最初のうちは気にならないが、その調子がゲームを通してずっと続くので、そのうちテンポの悪さが気になりだす。 --しかも、入手後にセーブしないままミスした場合、マニュアルはまた入手し直しとなる。 --中には一場面で複数のマニュアルを入手する場合もあり、いちいちキャンセルするのすら億劫になることも。 --一度入手したマニュアルはもう出現しないので、流石に二周目以降は問題にならない。 -ゲームバランスがあまり良くない。 --ベンチに座るとストレスも体力も全快するので、せっかくのヒロインの歌の使い道がイマイチ。回復アイテムも使いどころが少なく、重要度はかなり低め。 --ベンチに座った際の回復効果は性格が関係ないため、性格システムもあまり存在感がない。ある意味、性格によって一部シーンの会話が変化するという点が一番の影響点かもしれない。 ---一日の始まりにはそれまでの選択肢に応じて性格に変化が生じるようになっているが、個々の選択肢の影響が小さいため、変化させたい性格の選択肢を集中的に選ばないとなかなか変わってくれない。また、二日目は選択肢が少なめなので、そこから急に変えようとしてもほぼ間に合わない((三日目には選択肢は相応にあるが、最終日なので性格に影響は無い。))。 --前作のようにアイテムを組み合わせて新たなアイテムを作る事ができるが、せっかく作ったアイテムに使い道が無い事が多い。 ---懐中電灯を作っても、暗がりを進むシーンは中盤に少しある程度。ガスマスクを作っても、煙の中を進むシーンは序盤を過ぎるともう皆無と、アイテムに見合った展開が用意されていない。 -従来よりツッコミ所やシュールな展開が多い。 --現実味が薄れ、アニメチックになったのは前述した通りだが、それを別としても今回のシナリオはツッコミ所が多い。 --避難所で、ストレスが爆発した避難民の男たちが主人公たちを襲う場面があるが、いきなりヒロインが歌を歌いだし、それを聞いたら彼らの気持ちが落ち着き、冷静になるというあんまりな展開がある((一応、理由としては「人質を放して欲しければ何か芸をして楽しませろ」と脅されているためとは語られているが。しかしそれでも男たちの急な落ち着きぶりは違和感が激しい。))。ファンタジー作品ならまだしも…。 ---サブタイトルにある通りヒロインの歌は本作のキーであり、避難所で被災者を癒したり、崩壊した街をバックに歌うシーンなどは効果的に演出できているのだが、このような深刻なシーンでも万能ツールのように乱用するのは如何なものか。しかもクライマックスでも''人質を取った殺人犯を鎮めるために、急に周囲の人々と一緒に歌いだす''という無理のある使い方をされている。ファンタジー作(ry --地面に置いたカロリーメイトに''4人の男(上記の男達)が群がって食い漁るシーンがある。''しかもその後の第一声が「美味かった…」である。宣伝…なのだろうか? --手持ちの食糧を全部手放す展開が二度もある。二度目は人質を取られて脅迫されたためなので仕方ないが、一度目は純粋に善意で渡すと言うもの。心掛けはともかく、あっさり全部渡すのは被災地を甘く見ているのではないか((ちなみに、食糧アイテムを一つも持っていないとこれらの展開はカットされる。))。 --他にも、災害マニュアルの内容を活かすシチュエーションを念頭にシナリオを作ったためか、ゲームの流れ的に強引な所や無理矢理な展開も一部に見られる。 -終盤は災害がほぼ関係ないシナリオとなってしまう。 --終盤では暴徒化した民衆から逃げつつ、震災の裏で渦巻く陰謀を解明する展開になるため、災害が関係なくなってしまう。 --震災そのものも、中盤までは水害や火災など様々な災害が発生していたが、終盤に入るとピタリと止み、時々思い出したように余震が発生するだけとなる。 --この傾向は前作までもあったものの、少なくとも最後まで災害は主人公達を襲い続けた。しかし本作においては本当に災害そっちのけで進行し、そのまま完結してしまう。 --前2作のラストシーンではいずれも被災地が海に没する場面が描かれ、主人公はギリギリで救助されることで最後まで災害の恐ろしさを描写していたのだが、今回はそんなことなどどこ吹く風のラストである。 ---最終的には本作の被災地も沈むのだが、それも「エンディングのムービーで急に水没している」というもの。その直前まで災害とはまるで関係ない話を展開するので印象が極めて薄い。 ---最終面となる羽月建設ビルに入る直前ではまだ無事な陸地が一部見えているため、「ビルに入る前は残っていた陸地が、ビルの内部を動いている間にいつの間にか水没していた」という形になってしまっており、被災地の水没という衝撃的な展開の割には地味な印象を受ける。 --陰謀自体に関しても災害は微塵も関係ないものであり、しかもその実態はある一族の内輪揉めのようなもので、非常にスケールが小さい。前作までは陰謀が災害そのものに密接に関係していたり、大勢の人間を死に追いやるような巨大な陰謀が渦巻いていたのだが。 -そしてその陰謀の真相も、事件の結末も腑に落ちないものとなっている。 #region(首謀者に関して(ネタバレ)) -首謀者とその協力者は間接的とは言え殺人教唆と言う紛れもない罪を犯し、しかも逆恨みに近い理由で1人の罪の無い人間を死に追いやっているにもかかわらず作中では咎めを受けず、罪を償う様子も見られない。 -母親の人生を狂わせた悪党達に復讐しようとした…まではまだ良いとしても、その方法がえげつない。 --自ら手を下すのではなく、自身と親交のある男性を利用して悪党達を殺害させようとした。何故その人物を殺人鬼に仕立てようとしたのかと言うと、その人物の妻が衰弱していた母に怨嗟の声をぶつけ、死の遠因を作ったため。男性自身には何の責任も無く、寧ろ妻を止めようとしていた。 --最終的に彼は娘を悪党達に殺された復讐のために凶行に及ぶのだが、そもそも娘が死んだのは首謀者達がそう仕向けたためである。 ---娘が殺された理由は、悪党達の悪事を暴こうとして失敗したためだが、そう仕向けたのは彼女の婚約者であり、首謀者の協力者である。つまり殺されて父親を凶行に走らせるために利用された訳である。 ---男性は悪党に復讐するために、悪党の縁者である首謀者((男性はこの時点で娘の死の首謀者とは知らず、単に身内を殺される苦しみを悪党にも味わわせることが目的。))に刃を向けるが、刃を向けられた首謀者は「''こんなことをしたら娘が悲しむ''」と言う。%%お前が言うな。%% --結果として、首謀者は母の人生を狂わせた悪党を死に追いやり、母の死の遠因となった人物…''の夫と娘''を破滅させた。最後はその利用した男性に命を狙われるが、主人公とヒロインに救われる。 --そして大勢の前で自身の罪を暴露したにもかかわらず、あるエピローグによると''罪に問われること無くどこかの食堂で働き始めた''とのこと。この結末をすんなり受け入れるのはなかなか難しいだろう。また、首謀者の協力者も罪に問われなかった様子。 ---罪悪感はあったのか、エンディングでは男性を庇ってビルから転落する(主人公に助けられる)。また、一応は自分の罪と向き合う意思は見せるが、犯した罪に応じた罰を受けた訳ではない事に変わりは無い。 ---ビルから転落した際に助けなかった場合は死亡するが、その場合はバッドエンドのようなムービーが流れて終わるだけで、エピローグのヒロインからのメールも暗いものになるため、結局スッキリしない((或いは主人公も一緒に死亡するエンディングもある。結局バッドエンドだが。))。 --男性の方は描写は無いものの、殺人を犯した以上は逮捕された事は想像に難くない。殺人に手を染めたとは言え、彼は首謀者の策謀に利用された被害者である。何より一番の被害者は利用されて殺された娘である。 --首謀者は悪党の血縁者であり、母のために父達への復讐を目論んでいたという構図なのだが、この流れを見れば''悪逆さに関してはしっかり遺伝している''ことが分かる。 ---男性もその娘も、首謀者に対して家族のように懇意にしていた人物である。それを平然と殺人に利用するなど、まともな精神の持ち主とはとても思えない。にも拘らず、主人公もヒロインも一切指摘することはないままストーリーが終わってしまう。 ---もっとも、男性の方も悪党に復讐する事を目的として罪のない(と男性自身は思っていた)首謀者に刃を向けてしまっているので首謀者と同じ事をやろうとしてしまっている。実際には刃を向けた相手は''娘を死に追いやった張本人だった''わけだが。 #endregion ---- **総評 携帯機にホームを移した本作は、単なるアクションゲームにとどまらない実用性も持っており、プレイするだけで災害への対処法などが身に付くようになっている。~ 反面、クオリティやボリュームは据置機で出た過去作に劣っており、アクションゲームとしても荒削りな面が見受けられる。~ またシナリオや設定、演出の面でもどこか現実離れした部分やツッコミ所が目立ち、シリーズファンにとっては賛否の分かれやすいものとなってしまった。~ 「ストレス」の概念を取り入れるなど着眼点は良いものの、総合的に見れば良くも悪くも凡ゲーといったところだろう。 ---- **余談 -本作発売の数ヶ月後に放送されたアニメ『東京マグニチュード8.0』とコラボしており、同作の応援としてバナーや[[キービジュアル>https://dengekionline.com/elem/000/000/175/175286/img.html]]が公開されていた。%%どう見てもコラ画像なのはご愛嬌。%% --こちらも震災をテーマとしているが、本シリーズのようなアクロバティックなアクションやサバイバル展開はほぼ皆無で、災害における帰宅困難者に焦点を当て、被災地の人間模様を中心に主人公の成長を描いた作品である。 ---また、同作主人公役の声優が役作りの参考として本作をプレイしており、その感想が公式ブログで公開されていた。 -前作の富坂市公式サイトのように、当時の公式サイトには、ヒロインの咲が書いたという設定のブログが公開されていた([[アーカイブ>https://web.archive.org/web/20090221083920/http://blog-saki.zettai-zetsumei.com/]])。 --本作の宣伝などのネタを挟みつつ、本当に若い女性が書いたような文体になっており、コメント欄まで本物っぽく作る凝りようである。 --そして最後はセントラルアイランドを出るという記事で終わっており、その後、災害に巻き込まれた…という流れを想定した演出となっていた。最後の記事のコメント欄には地震発生について触れたものがあり、咲の安否を気遣っていたりとこれまたリアルな作りだった。 --しかし、本作の時代設定は2011年3月。対してこのブログは2009年のリアルタイム設定で書かれており、本作の発売日である4月23日に終わる形になっているため、ゲーム本編の時間とは見事に食い違っている。 -当初は『1』の主人公である須藤と、旧作でお馴染みの宝石女・竹辺が登場する予定だったらしいが、やり過ぎ感があったからと見送られている。 --本編では過去作キャラは『2』に登場した本多と、毎度被災する『1』のサブヒロイン・比嘉がチョイ役として出るのみになっている。しかも比嘉は本作では主人公の選択次第で死亡してしまう。 ---比嘉は『4』でもやはり被災するため、生存するルートが正史である。しかし今度は…。 --また、本編には登場しないが、マルチプレイのあるステージに登場するタクシー運転手は前作主人公の1人・柘植である。 --竹辺は後に『4』で(もちろん宝石泥棒として)再登場している。須藤もおまけの後日談シナリオに登場した。 --入手可能な読み物のひとつに「J」のイニシャルを持つジャーナリストが書いた、羽月企業の秘書の自殺とその周辺を調査するという内容のものがあった。 --『1』の陣内が死んだと明確に確認されていないことを考えると、問題のジャーナリストが陣内である可能性はある。ちなみに、この作品で入手可能なコンパスのひとつに「陣内コンパス」がある。 -2011年には、シリーズ最新作となる『''絶体絶命都市4 -Summer Memories-''』がPS3で発売される予定だったが、発売中止となり、本作を含むシリーズ全作品が販売終了・廃盤へと追い込まれた。 --同年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の自粛と言われていたが、プロデューサーの九条一馬は「震災の所為ではなく目標の日までに完成させられなかったため」と言った旨を語っており、CEROと揉めたことやスケジュール管理が原因だとしている([[参照>http://togetter.com/li/193497]])。別のインタビューでも「開発中止告知の文には震災が原因とは書いていない(意訳)」と答えたこともある。 --一方、当時の朝日新聞のアイレム本社への取材では「開発の遅れ」と「被災者への配慮」とされていた。実際、震災前まで普通に公開されていた『4』公式サイトは震災発生後すぐに非常に簡素なものになり、それから殆ど日を置かずに開発中止・シリーズ廃盤が告知されている。 ---しかし、上記の通り九条氏は一貫して震災との関連を否定している。どれが本当の理由だったのか今となっては確かめようが無いが、もし仮に震災に原因があったとしても、そうだと言って震災の所為にする訳にはいかないのだろう。 --最終的にどれを信じるかは各自判断されたし。 -同時に本作のダウンロード販売も終了したため、しばらくはこのゲームをプレイしたいのならばパッケージ版を購入する必要があった。 --後にアイレムのゲーム開発スタッフが独立し、設立した「グランゼーラ」が本シリーズの版権を獲得。シリーズ復活に向けての動きが始まり、その一環として『1』『2』のゲームアーカイブス配信が開始。2015年7月29日からは本作のDL販売も再開され、『4』もPS4用ソフトとしてリメイクされることが発表された。 --本作DL版の値段は1,000円と、再開前よりもかなりリーズナブルなので、本シリーズに興味のある方は押さえておいても良いだろう。 --また、スーパーマゴヤバグを始めとする進行不能になるバグは修正されているとのことである。 -本編作品とは別に、絶体絶命都市シリーズの流れを汲んだ派生作品として『[[巨影都市]]』がPS4用ソフトとして2017年10月19日に発売された。 --こちらはバンダイナムコとグランゼーラの共同開発作品であり、円谷プロダクション作品や『[[新世紀エヴァンゲリオン>新世紀エヴァンゲリオンシリーズ]]』『機動警察バトレイバー』とタイアップされている。 --その関係で、主人公たちの前に立ちはだかるのは震災や水害などではなく、ウルトラマンやゴジラなどの「巨影」達である。 -シリーズでも他作品との繋がりが特に薄く、本作関連のネタが取り上げられることはほとんど無い。 --しかし本作の顔役である本条咲だけは、後の作品にもミュージシャンとして客演している。%%主人公含む他のキャラはやはり印象が薄いのか。%% ---前述の『巨影都市』には絶体絶命都市シリーズのキャラが多数ゲスト出演しており、本作からただ1人出演を果たした。 ---後述の『4』にも後日談に登場。台詞は無いが、本作の主題歌を歌っている。 --『巨影都市』の早期予約特典には『1』『2』の主人公とヒロインの衣装が収録されていたが、本作の衣装は無かった。 --『マンガ・カ・ケール』のDLCとして本シリーズ関連の素材が配信されているが、本作からは''タイトルロゴ''しか収録されていない。%%やはり印象g(ry%% -2018年11月22日、遂にシリーズ新作となる『[[絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-]]』がPS4で発売された。 --PS3で発売予定だった『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』をベースに震災などの表現を大幅に強化した為Plusの名前が付いた。 --しかしその内容は問題だらけで待っていたファンを大きく失望させてしまった。詳細は当該記事を参照されたし。

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