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~アートカミオン~ 芸術伝

【あーとかみおん げいじゅつでん】

ジャンル レーシング
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 TYO
発売日 1999年12月16日
定価 5,800円(税抜)
廉価版 アルファ・ユニット発売
2002年12月12日/2980円(税別)
判定 なし
ポイント 「デコ伝」名義ではないが事実上の後継作
本家スタッフが手がけた正統進化と呼べる出来
その一方で従来の問題点も残る


概要

爆走デコトラ伝説 ~男一匹夢街道~』を開発したヒューマンの倒産後、タイトルの権利はスパイク(現・スパイク・チュンソフト)が継承した一方、開発スタッフの大半はTYO(ティー・ワイ・オー)へと移籍した*1

そのTYOから、初代作の開発スタッフが参加して制作・発売されたのが本作品である。『デコトラ伝説』名義ではなく、むしろ喧嘩を売るような「真デコレーショントラックシリーズ」としてリリースされたものの、事実上の後継作であるとみなされた。
「アートカミオン」とは、デコトラの別名である「アートトラック」の「トラック」の部分を、フランス語やイタリア語でトラックを意味する「カミオン」(Camion)へと置き換えた造語である。

なお、正式なタイトル継承作であるスパイクの『爆走デコトラ伝説2 男人生夢一路』と本作は同日発売であった。


システム

  • 基本的なシステムは『爆走デコトラ伝説 ~男一匹夢街道~』と同様。延々と直線が続く高速道路をアクセル全開で突っ走るのみという、極限まで簡略化された操作系も不変である。
  • 「日本一」が目標だった『男一匹夢街道』とは異なり、本作の目標はあくまでも「天下一」。これにあわせてゲームモード構成も見直され、「天下一勝負」と「最強最速戦」の2つのモードが軸となる。
    • 「天下一勝負」は本編とストーリーモード(外伝)から構成されるメインモードで、『男一匹夢街道』の「全国制覇」および「男の華道」にあたる。
      • 本作の本編は「貨物の伝票を選択して出発する」という独自の形式が採られている。伝票には路線名(走行するコース)・積荷・納期が記されており、伝票によって異なる対戦相手が与えられている。
      • 完走後、納品書にサインをしてもらうことでレースは終了となるが、サインを拒否してレースをやり直すことも可能。
      • 納期を過ぎた伝票は消滅し、そのライバルとは本編クリア前には対戦できない。伝票の発生・消滅サイクルの都合上、本編クリアまでに全ての伝票をこなすことは基本的に不可能*2だが、本編クリア後は一部を除いて全てのライバルと対戦可能になる。
      • 外伝は、プレイヤーである主人公の本編の前日譚となるストーリー、主人公のライバルを主役に据えたストーリー、そして天下一になった主人公の後日談である恋愛シナリオ風のストーリーの三本立て。
    • 「最強最速戦」は2P・ロジック対戦、タイムアタックから構成されるモード。『男一匹夢街道』の「頂上戦争」および「頭脳勝負」に加え、2プレイヤー対戦が追加された。
  • 本作では道央・東北・関越・北陸・東名・中央・名神・中国・山陽・九州の各高速道路を走行可能。北陸・山陽が新規追加となる。
    • 全コースで昼夜に対応し、時間変化も導入されている。具体的には昼にスタートして夕方にゴールしたり、夜にスタートして夜明けにゴールする、といった具合。
    • 『男一匹夢街道』から続投した路線も、一部レイアウトに調整が入っているものがある。具体例として、中国自動車道は直線主体だった『男一匹夢街道』から一転し、コーナーの連続する難コースへと変更されている。
  • ペイント監修には『男一匹夢街道』に引き続き、本職のデコトラ絵師である関口工芸を起用。高品質なアートは健在で、作品の世界観を支える柱となっている。
    • 今作のパッケージを飾るメイン車両は、日野・クルージングレンジャーがベースの『芸術丸III』。『男一匹夢街道』のOPに登場した『芸術丸II』の改装後の姿である。
  • 演歌の走行BGMも健在で、歌手には『男一匹夢街道』と同様、北岡ひろし・安藤ひろ子の2名を起用。このほか2P対戦専用の演歌ではないBGMも収録されている。
    • 一方、『男一匹夢街道』で作曲を担当していた志倉千代丸氏が「男人生夢一路」の制作側に回ったため、曲調は『男一匹夢街道』とはやや異なるものとなった。
    • 歌唱中は歌詞のテロップが画面下部に表示されるようになった。設定でオフにすることが可能。
    • 『男一匹夢街道』と同様、初期状態では各高速道路によって流れる曲は決まっているが、設定で男曲のみ・女曲のみ・完全ランダムに変更可能。ただし個別に設定することはできない。
  • エンディングは本作のイメージ車両「芸術丸III」の実写走行映像。CGムービーだった『男一匹夢街道』と比較すると大きな進歩と言えよう。

評価点

  • 初代作のスタッフが関わっているだけあり、ゲーム性は「正統進化」の一言に尽きる。
    • 車両の位置を表示するレーダーや荷物破損ゲージなど、走行画面のUIが見やすく整理され、レース中の状況把握が容易になった。
      • レーダーは車線ごとに明確に区分けされ、自車が現在どの車線を走行しているかを視覚的に確認できるようになった。また、カーブでレーダーそのものが変形する仕様だった『男一匹夢街道』とは異なり、本作ではレーダーの形状は変わることなく、カーブの方向を矢印で示す方式に変更された。
      • 荷物破損ゲージも『男一匹夢街道』は5段階の表示だったが、本作ではメーター式の表示に変更された。
    • 一般車に速度向上を促す「ホーン」や車線変更を促す「ボイス」の効力が大幅に向上。『男一匹夢街道』では反応の薄い一般車も多かったが、本作ではほぼ全ての一般車に効用するようになった。
      • ボイスは 左右任意の車線に誘導できる ようになり、それぞれで異なる音声を設定することも可能。特に3車線の中央において、左右どちらに移るか不明瞭だった『男一匹夢街道』の欠点が改善された。
    • リプレイや2P対戦といったレースゲームには欠かせない要素も追加された。
  • 大幅に拡張された車種のバリエーションとカスタマイズ要素。
    • 『男一匹夢街道』では中型の箱型トラックしか使用できなかったが、本作ではダンプ、平ボディー、大型トラックが追加。中型トラックについても旧式タイプが追加されたことで、レトロ系アートも違和感なく再現できるようになった。
    • カスタマイズ性も大きく進化し、パーツを自由に組み合わせたり、電飾の色や発光パターンを細かく設定できる「こだわり」機能を搭載。パーツの種類自体も増加し、より「自分だけの一台」を作りやすくなった。
      • 本作では内装のカスタムも導入され、シート柄の変更、装飾品などで自由にコーディネート可能。変更した内装は、レース中に見られる内装視点にも反映される。
      • プレイヤーが自由にペイントを描けるオリジナルペイント機能も強化され、車種のタイプ別に荷台の各面に分けて描画可能になった。
    • ライバルトラックの種類も増加。『男一匹夢街道』では実在のデコトラがモチーフであっても、あくまで架空車としての扱いに留まっていたものが大半だったが、本作では「綾太郎」や「竜神丸」など、名実ともに実在するデコトラが大幅に増加した。
      • 中には30tダンプという、現実では公道走行が不可能な代物まで登場する。
  • 全体的な難易度の調整。
    • 本作ではタイムアタックを除き、自車・敵車を問わず先行側はスピードダウン、後追い側はスピードアップという補正が働くようになった。これにより、性能差で勝負が成立しなかった『男一匹夢街道』のような理不尽さは薄れ、接戦に持ち込みやすくなった。もっとも、性能差が大きすぎる場合は補正も意味を成さないが…
    • 積荷が全体的に壊れにくく調整された。本作から登場したダンプと平ボディー車については積荷が一切壊れない仕様となっており、荷物破損による敗北を気にせずバトルに集中できる。
      • 積荷がランダムで指定されていた『男一匹夢街道』*3とは異なり、本作では伝票ごとに積荷が決められているため、壊れにくい積荷の伝票だけを選んでゲームを進めるといったことも容易になった。
    • 『男一匹夢街道』では特定条件を満たすことで発生していたパワーアップイベントが撤廃され、本作ではゲーム進行に合わせて自動でパワーアップされる仕様に変更された。
      • ゲーム上全くメリットがない低速重視タイプのトラックも依然として存在するが、『男一匹夢街道』のように「追いつくことすら不可能」という状況に陥るほど性能差は極端ではなくなった。本編開始時から所持しており、性能面で劣る旧式トラックでもクリアは可能であり、難易度としてはバランスが取れている。
    • 『男一匹夢街道』ではライバルに勝利しないと報酬を獲得できず、ゲームも進まない方式だったが、本作では勝てなくとも完走さえすれば納品書にサインをしてもらえるため、負けても報酬を獲得でき、ゲームを進めることが可能になった。
      • 本編序盤で負け続けていると、ライバルが弱い相手に置き換わる初心者救済システムも用意されている。ただし、このルートに進むと一部パーツの取得が不可能になる場合がある。
      • もっとも、敗北が一定数を超えていると章ボス戦後にその章の最初までゲーム進行が巻き戻されるため、負けっぱなしでゲームが進むようなヌルゲー仕様ではない。
  • よく練り込まれたストーリー。
    • 主人公はある運送会社に所属するトラッカーとなり、ライバルの運送会社との競争や、その後の和解を含む義理人情に満ちた物語が展開される。
      • 「本編」が物語の出発点ではなく、主人公の前日譚を描く「外伝」が先に存在し、主人公が天下一を目指すようになった経緯が語られるなど、『男一匹夢街道』にはなかった導入部分の強化がなされている。
    • 「本編」は全5章で構成されるストーリー形式であり、トラック勝負だけでなく、運送会社同士の競争、人間関係、葛藤などが物語の軸として描かれる。『男一匹夢街道』では一部モードにしか登場しなかった女性オペレーターも本作では本編に本格的に登場し、物語の進行役として役割が強化されている。
    • 『男一匹夢街道』の全国制覇における主人公は会話面では受動的だったが、本作では本編でも能動的に対話を行うキャラクターとして描かれる。各運送会社のトップ、主人公を慕う弟分、因縁深い悪友でもあるライバルといった人物たちが物語に深く関わり、世界観全体に厚みを与えている。

賛否両論点

  • 本作で追加された大型トラックだが、使用するにはゲーム内の教習所に通って実技試験(ミニゲーム)を受け、大型免許を取得しなければならない。試験の内容は交差点での右左折、車庫入れ・駐車、切り返し操作といった街中での運転を想定したもので、高速道路が舞台である本作のゲームプレイとは全く結びつかない。
    • それゆえこの大型免許システム自体が煩わしいという声は少なくないが、現実のトラック運転に必要なプロセスを取り入れることで、リアリティや没入感を高める要素となっているのもまた確かである。
    • ちなみに大型免許の取得は任意。大型トラックを所持していながら免許を所持していない場合、ガレージで乗り換えようとすると弾かれる仕様になっているが、本編の最終戦はどのタイプのトラックでも挑戦できるため、大型免許を取らずともゲームクリアは可能である。
      • 一方で大型トラックの購入は強制。大型トラックを購入せぬまま章ボス戦に勝利してしまうと巻き戻しが発生する。妙に不親切な仕様である。
  • トラックの走行挙動は、『男一匹夢街道』と比較して全体的に重い方向へと調整された。カーブや車線変更時の車体のロール(傾き)が大きくなり、タイヤのスキール音も鳴りやすくなった。
    • これによって重量表現が強調され、より「トラックを運転している感覚」が高まったとも言えるが、言い換えれば全般的に車体が振られやすい挙動でもあり、特に内装視点では視覚的な動きの大きさが目立つ。これがリアリティの向上として受け止められる一方、挙動が大げさで扱いにくいという声をも生むこととなった。
    • シンプル操作時、カーブに差し掛かるとある程度自動で減速していた『男一匹夢街道』とは異なり、本作ではそのような速度制御は行われなくなった。このためゲームが進んでレースの速度域が上がると、レーダーに濃い黄色で示される急カーブでは車体が勝手に外側の車線へ膨らんでいくという状況になりやすく、その意味では扱いやすいとは言えない部分もある。
      • 「男人生夢一路」にも同様の現象は見られるが、あちらのように勝手に車線変更してしまうことはなく、元の車線へ戻ろうとする。
  • 『男一匹夢街道』と比較してスリップストリームの効果が大幅に弱められ、後方から勢いをつけて一気に追い抜くという戦法は使えなくなった。逆に、敵車がスリップストリームを利用して猛スピードで突っ込んでくる事もなくなったため、こちらが理不尽な状況に陥る機会も減少したと言えるが…
    • ライバルの大半がブロックを仕掛けてくる事もあり、本作では一般車を利用した駆け引きがオーバーテイク(追い抜き)の重要な要素となる。しかし、コース上に出現する一般車の台数は『男一匹夢街道』よりも減少しており、運が悪いと中盤まで全く出現しないというケースも。このため、『男一匹夢街道』とは異なる理由でオーバーテイクの機会が得られないという問題を抱えることとなった。
      • もっとも、一般車に引っかかって減速を余儀なくされるような場面も同時に減少し、走りやすさそのものは全体として向上しているため、一概に短所とみなせるポイントではない。
  • 本作の登場人物はほぼ全員が『男一匹夢街道』から一新されている。そもそも別タイトルとして発売されているうえ、他の『男一匹夢街道』のライバルは大半が『男人生夢一路』に登場しているため、そちらとのバッティングを避ける意図があったものと思われる。その割に「真一(信一)」や「岩城(磐木)」など、モチーフとなった実在人物が被っているキャラクターは存在するが…
    • 一方、本作で新たに登場したライバル達は独自の方向性を持ち、既存キャラとはまた異なる魅力を持つ人物としてまとめられている。「雅俊」や「裕次郎」など、露骨に有名俳優をもじったキャラも多く、『男一匹夢街道』からのパロディ色は健在。
      • これらの新キャラの多くは、後の『真・爆走デコトラ伝説』にも再登場しており、「男一匹夢街道』に登場した既存キャラとの掛け合いも描かれている。
    • これに関連して、映画『トラック野郎』を想起させる演出は本作では大幅に控えられており、喧嘩シーンやパトカー軍団に追われるといった『男一匹夢街道』にあった描写も削られている。この辺りは、競合作の『男人生夢一路』が『トラック野郎』のパロディ要素を前面に押し出している点とは対照的と言える。
      • 物語上の最終目標について「日本一」ではなく、「天下一」という表現が一貫して用いられている*4のもポイント。この点からも『爆走デコトラ伝説』シリーズが持っていたイメージや作風からは距離を取り、独自の世界観の再定義や方向性の一新を意図していた可能性がうかがえる。
      • ただし、完全に『トラック野郎』の要素が排除されたわけではなく、外伝の最終戦で対峙することになる裏ボス的存在として、『トラック野郎』シリーズの主役車両である「一番星」を想起させるトラックが登場する。もっとも、車名は「謎のトラック」、ドライバーも「謎の男」とされており、外観以外に「一番星」との関連性を示唆する要素はないことから、設定上はあくまでもオリジナルキャラクターとして扱われているとみなすのが妥当だろう。

問題点

  • 『男一匹夢街道』のシステムをほぼそのまま引き継いだがゆえ、ゲーム的なやることの浅さというマンネリ感も同時に継承している。
    • 前述した通り、本作では一般車の出現台数が少なくなったこともあって、「一度先頭に立てば妨害がほぼ確実に成功する」という状況により拍車がかかっている。
  • 時代背景を考慮したとて全体的に古臭いキャラの絵柄も相変わらず。美女と評されるシナリオモードのヒロインでさえ、微妙なヒラメ顔でお世辞にも可愛いとは言い難い。
    • 関口親分は今作でも実写画像で登場するが、切り抜きすらされていない顔写真が使われていた『男一匹夢街道』とは異なり、本作では上半身を切り抜いた画像が使われているため、違和感はそれなりに軽減されている。
  • グラフィックやサウンド面は『男一匹夢街道』と比較しても劣化が見受けられる。
    • 全体的にテクスチャの粗さやジャギーが目立つほか、プレイヤートラックとライバルトラックのモデリングの質にも格差が見られる。
    • 『男一匹夢街道』から指摘されていた、本来は助手席側にしか存在しない安全窓が運転席側にも付いているという現実との相違点は、本作でも修正されていない。
      • これら2点は競合作『男人生夢一路』には見られないため、グラフィック面では一歩譲っている。
    • マフラーやホーンの音も、『男一匹夢街道』ほどの音圧や迫力は感じられない音源となってしまった。
    • 電飾やウインカーが正常に明滅しない不具合も散見される。ただし、本作は非常に複雑な発光パターンを採用している上に細かなカスタマイズも可能である事を考えると、ある程度やむを得ない側面もあるとみなす余地もあるが…
  • やや複雑化したシステム面。
    • メインメニューは「和」を意識した襖モチーフの画面構成だが、現在どの段階にいるか、どの項目を選択しているかが視覚的に把握しにくく、操作面でやや迷いやすい造りとなっている。
    • 『男一匹夢街道』では初期状態で全パーツ・ペイントが購入可能だったが、本作ではゲームを進めると徐々に購入可能な項目が増える仕様に変更された。
      • 関口工芸を訪れた際、関口親分が「新しいパーツが入荷した」と話す事があり、これが新規パーツ解放のアナウンスとなっている。パーツ解放の詳細な条件は不明だが、特定の伝票のクリアがトリガーになっている模様。
      • ただし前述した通り、本作は本編クリアまでに全ての伝票を消化することが基本的に不可能であるため、本編の途上で解放のトリガーとなる伝票を取り逃してしまった場合、当該パーツはそのプレイでは一切入荷されなくなってしまう。
      • ペイントについても同様で、関口工芸を訪れた際に親分との会話イベントが発生する事がある。そこで正しい選択肢を選ぶとスペシャルペイントが追加されるが、選択肢を間違えると追加されない。この点も、ゲット率100%を目指すプレイヤーにとってはちょっとした手間となるであろう。
      • この仕様にせよ前述の初心者救済システムにせよ、ゲーム中でヒントや警告がほとんど発されない点も不親切か。本作の問題点ではないが、攻略本やガイドブックの類が一切出版されていない点も分かりにくさに拍車をかけている。
  • 拡充の裏で削られた車種バリエーションもある。本作でプレイヤーが使用できるトラックのメーカーは、日野、いすゞ、三菱ふそう(をモデルとした架空メーカー)の3社のみで、『男一匹夢街道』に登場していた日産ディーゼルやマツダ相当の車両はほぼ登場しない*5
    • プレイヤーが所持できるトラックは各タイプごとに1台のみで、購入後の売却や別メーカーの車種を買い直すことは不可能。別メーカーのトラックを使いたい場合はゲームを最初からやり直すしかない。この点もトラックの売買が可能な「男人生夢一路」に劣っている。
    • 『男一匹夢街道』では特別な条件を満たすことでトラック以外の乗用車も使用できたが、本作ではそういった要素も存在しない。デコトラへの特化が明確になった一方で、ややバラエティに欠ける側面は否めない。
  • 現実の車両構造と整合しない表現が一部に見られる。
    • 問題となるのが「いつず大型」というトラック。初代いすゞ・ギガをモチーフとした車両であり、当時はまだ珍しかったバンパーライト*6タイプのトラックである。
      • ゲーム中でこの車種のフロントバンパーをカスタマイズすると、交換後のバンパーもヘッドライトが埋め込まれたタイプとなる。しかし、そのライトが不自然なまでに小型だったり配置がおかしかったりするなど、実車ベースのカスタムとしてはいささか現実味に欠けるデザインとなっている。
      • 一方でフロントウインカーについては、上部に配置されるという実車とは異なるアレンジが施されているため、フロントバンパーの交換によってウインカーが欠損するという問題は起こらない。
      • 『男人生夢一路』にも初代ギガをモチーフとしたトラックは登場するが、あちらはヘッドライト位置をずらしてバンパー交換時にライトが欠損しないよう配慮されている反面、フロントウインカーはバンパーを交換すると削除されてしまうので、その点では対照的と言える。
    • ちなみに現実世界でバンパーライトタイプのトラックをアートアップする場合、ダンプ等で用いられるキャブライト仕様のフロントマスクに換装して対処するか、そもそもフロントバンパー交換を伴うカスタムを行わないケースも多い。
      • その後、時代の流れと共にバンパーライトタイプが主流となっていったことを考えると、バンパーライト車をどのようにデコトラとして成立させるか、というテーマ自体が難題であることが分かる。この点は、本作のカスタムの問題点であると同時に、デコトラ文化の変遷を考える上での興味深いエピソードとも言える。

総評

『男一匹夢街道』の持ち味を継承しつつ、デコトラ文化をより深く掘り下げた正統進化型の作品といえる。実在デコトラの登場やカスタマイズ面の大幅強化など、文化面・演出面のこだわりは『男一匹夢街道』以上に濃くなっている。
一方で、グラフィックの粗さやシステムの煩雑さ、UIの見づらさなど、改善の余地があったと思われる部分も少なからず存在する。またゲーム性そのものは『男一匹夢街道』の枠組みに沿っているため、システム的な浅さという点でも課題が残る。
それでも、同日に発売された競合作「男人生夢一路」よりは『男一匹夢街道』を色濃く受け継いだゲームシステムであるため、純粋にデコトラ文化を重視した作品を求めるプレイヤーにとっては、こちらの方が「本物のデコトラゲーム」に近い体験が得られるだろう。


余談

  • 一部、競合作である『男人生夢一路』と掛け持ちしたキャストが存在する。
    • 本作で「蟹崎譲治」の声を演じた田中一成氏は、『男人生夢一路』にも「松肩」役として出演。
      また本作の「謎の男」を演じた岸野幸正氏は『男人生夢一路』にも「健さん」役として出演している。
  • 『アートカミオン』としては、本作のほか双六ゲームである『アートカミオン 双六伝』も発売されている。
  • 本作のサントラ「爆走音盤」は入手困難品として知られており、現在では10万円弱ないしそれ以上というかなりのプレミアが付いている。
最終更新:2026年02月10日 03:49

*1 TYOは主にテレビCMを手がけるコンテンツ制作会社として知られるが、当時はゲーム部門を自社内に有していた。なお廉価版はアルファ・ユニットが発売元となっている。

*2 後述するボス戦後の巻き戻しを利用して1周目で全伝票を拾うことも可能ではあるが、攻略上の実用性はない。

*3 変更する手段は一応存在したが。

*4 本編でも主人公がライバルから「日本一」と言われるものの、それを否定して「天下一」を強調するやり取りがある。

*5 敵車の一部に日産ディーゼル車をベースとしたものは存在する。

*6 フロントバンパー内にヘッドライトやウインカーが組み込まれた構造。