モノポリー ~めざせっ!!大富豪人生!!~
【ものぽりー めざせっ!!だいふごうじんせい!!】
ジャンル
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ボードゲーム
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対応機種
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プレイステーション2 ニンテンドーゲームキューブ
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発売元
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トミー
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開発元
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翔泳社
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発売日
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2003年7月31日
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定価
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7,140円(税込)
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プレイ人数
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1~4人
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判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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モノポリーファンからは不評 無個性化したCPUプレイヤー 面倒すぎる交渉 「トミーアレンジモノポリー」に力入れすぎ
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モノポリーシリーズ
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概要
世界的人気を誇るボードゲーム、モノポリーのPS2&GC版。
かつて名作誉れ高い『ザ・モノポリーゲーム2』を発売したトミーが、果たして(当時の)最新ゲーム機でどれだけパワーアップしているかをファンは楽しみにしていた。
その一方で、糸井重里氏、百田郁夫氏など、「モノポリー愛を持っている者」が本作の開発・監修にはノータッチで、そのせいで駄作化していないかと不安視する者もいた。
収録ボード
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「モノポリー」:従来から親しまれている、正方形の盤面周辺の40マスをぐるぐる回るボード。他プレイヤーとの交渉が勝負の決め手。
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「モノポリージャパン」:「モノポリー」の盤面上の物件が日本の地名に変更されたもの。このボードは市販されている「モノポリージャパン(2004年版)」と同じものを使用している。
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「モノポリージュニア」:モノポリーの初心者向け簡易版。モノポリーの特徴である「他プレイヤーとの交渉」はなく、イベントカードで物件が手に入ることもある。
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「トミーアレンジモノポリー」:「モノポリージュニア」をベースに、マップなどにバラエティ性を付加したボード。ファンからの批判の矢面に立たされることになる(後述)。
問題点
結論を言ってしまうと、ファンの一抹の不安はずばり的中してしまう。
以下、問題点を述べる。
CPUプレイヤーの馬鹿さ&無個性化
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本作も様々な個性を持ったCPUプレイヤーが登場するが、それは外見のみであり、思考ルーチンの部分での個性は無きに等しく、はっきり言って馬鹿である。
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例えば、ボード上の権利書が売り切れ、交渉も進んであちこちでレンタル料が高騰化している状況で、刑務所に移動させられても、CPUはがっかりし、次のターンで出所する。
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ちなみに『ザ・モノポリーゲーム2』では、ほっと一息つく表情を見せ、最大3ターンとどまる選択をする。この間は移動しないため、レンタル料を振り込む心配がないからだ。
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また、「好きなカラーグループ」など、モノポリーのCPUの思考ルーチンの肝となる部分も、ほとんど違いはない。説明書では「各CPUには作戦面などで違いがあります」と明記されているのだが…
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交渉をする際、CPUが飲めない交渉内容だと、対抗条件を示すことなく「その条件は受け入れられない」と断る。条件調整にいちいち手間がかかる。
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たとえば「ある権利書を500ドルで譲ってほしい」と提示した場合、「いや、私としては600ドルはほしい」と返してくるような反応が、本作にはない。
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CPUは交渉においてモノポリー(同じ色の地所を独占)の完成に関わる権利書を高く評価するのだが、これを利用するとCPUと交渉してモノポリーが可能になる権利書を所持金を軽く上回るボッタクリ価格で買い取らせることも可能。その後CPUは代金を支払うために権利書を抵当に入れていく(ついさっき買い取った権利書も含めて)。さすがにアホの子と言わざるを得ない。
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またAIに留まらず、最初から選択可能なCPU9人のうち6人は男女でそれぞれ台詞が全く同じ。さらに外見やアクションもプレイヤー用のキャラメイク機能の完全な使い回し。
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自分以外の参加者3人が全く同じ言動とアクションをするという事態も起こり得るし、起こせる。というより一人用モードを遊んだ際に当たり前のようにダブりが起きる始末。
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一応、初期選択可能な残りの3人および隠しCPU達は外見・動作・台詞の個性があって良いのだが、それが当たり前である。
「トミーアレンジモノポリー」について
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「盤面をぐるぐる回る」という点ではモノポリーやモノポリージュニアと同じだが、以下の追加要素がある。
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「鉄道会社」をモデルとした乗り物マスでは、該当マスに乗り物が止まっていると、乗り物に乗って別の乗り物マスに移動する。序盤に乗れれば一気に二つの乗り物マスを取得できるが、すでに移動元、移動先とも他プレイヤーに占められている場合はレンタル料を二重に取られることになる。
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GO(スタート地点。通過すると周回ボーナスとして資金が貰える)に丁度止まると通常の倍額を貰える「ジャストGO」システム。
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今までにプレイヤー達がチャンスカードで失った金額を回収出来る「ジャックポット」のマス。
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チャンスカードのマスに止まると、時折「ミニゲームカード」が手に入ることがある。これは「権利書の強奪」や、「多額のレンタル料を支払う羽目になった際に他プレイヤーに支払いを押し付ける」ために用いられる。
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代わりに交渉は無い。「ミニゲームカード」を得るかモノポリーして土地に家を建てるまでは、プレイヤーにできるのはただサイコロを振ることだけである。もちろん、そういったチャンスが来る前になすすべもなく破産することも多々ある。
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収録ミニゲームは5種類。しかし、ミニゲームとして破綻した箇所も見うけられるという惨状である。
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収録ミニゲーム
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「権利書の強奪」の場合は盗る側と盗られる側の一騎打ち、「レンタル料の押し付け」の場合はプレイヤー全員参加。
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「神経衰弱」:モノポリーの通貨をモチーフにした絵柄をあわせる。絵柄が揃う度に一部のカードの位置が変わる(ただし目視で追える)。少額ながら揃えた通貨に応じた現金も得られる。
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隠し絵柄が設定されており、「権利書の強奪」は該当絵柄を引き当てた者の勝ち、「レンタル料の押し付け」では引き当ててしまった者がレンタル料を支払う。
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当然ながら「レンタル料の押しつけ」の際は絵柄を合わせなければ確実に支払いを回避出来るし、それをCPUが行ったらゲームが進行しないのでCPUは普通に揃えてくる。茶番。
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「黒ひげ危機一発」:トミーの玩具出身でパーティゲームの定番。黒ひげ人形を飛び出させてしまった者が負け。完全な運ゲー。
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「マイクロペット」:当時トミーが発売していた犬や猫風のロボットを、「ゴー(真っすぐ進ませる)」「グールグル(右か左に旋回させる)」の指示を利用して目的地に誘導させる。
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障害物は一切無いものの、ロボットの動きにムラがある上にゴールの判定が非常にシビアであり、「ゴー」と言い続けるだけでクリア出来ることもあれば、「ゴー」と言い続けたのに進路を外れたり、そこで「グールグル」を支持したらゴールの真横を通過したりする。理不尽。
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更にプレイヤーの状況によりプレイ順は決まっており、指示した回数を考慮せず先にクリアすれば勝ち(=プレイ順が早い方が大幅有利)。理不尽。
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「ウォーターゲーム」:ボタンを押してオブジェを浮かし、1点、3点、10点のポイント枠にうまく入れて稼いだ点数を競う。
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ポイント枠は下からも通過出来る上に3点の枠が押し出し地点に近いため、3点の枠の中でオブジェを上下(=何回も落とす)させて大量得点を狙うのが一番効率が良い。10点の枠は飾り。こんなゲームだっけ?
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ちなみにCPUは合計で10点取ればいい方。楽勝。
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「拳闘士」:こちらもトミーの玩具出身。ひたすらボタンを連打して相手をKOさせる一対一のゲーム。
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CPUの連打力も低いので、普通に連打していればまず勝てる。楽勝。
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はっきり言ってしまえば、「これのどこがモノポリーなの?」と首を傾げたくなる内容になってしまっている。モノポリー本来の魅力である「深い駆け引きと戦略性」は皆無、運とミニゲームの腕が物を言う別物である。
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しかもこの「トミーアレンジモノポリー」、収録マップ数がやたらに多い。
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収録マップ
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日本列島マップ
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時代劇マップ
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海外マップ
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全世界
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「日本全国」と「東海道五十三次」は通常のモノポリーのような周回型マップではなく、一直線のマス目を往復する形になっている。他のボードも変形マップとなっている。
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「全世界」は「日本列島マップ」「時代劇マップ」「海外マップ」を一人用モードで全制覇することでアンロック。
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また、CPUプレイヤーの顔ぶれもこれらをクリアしないと増えない。
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つまり本作は、通常のモノポリーがたったの2ボード、それ以外は「トミーアレンジモノポリー」およびその元ネタである「モノポリージュニア」で占められている。
当然、『ザ・モノポリーゲーム2』のような正統派のモノポリーを期待していたファンからは不評を買ってしまった。
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こんなところに力を入れるならCPUプレイヤーや通常のモノポリーのボードを充実させるべきだっただろう。
その他の問題点
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プレイ人数は最大4人のため、公式ルールである5人プレイに対応していない。
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基本的な情報である「誰がどの権利書を持っているか」という情報がボードに表示されない。
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自分の番の時に「情報表示」を選択することで確認することは可能。
評価点
ファンから大ブーイングを受けた本作も、一応評価できる点がある。
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モノポリー風パーティーゲームだと割り切ればそこそこ楽しめる。
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ほとんどが「トミーアレンジモノポリー」用のボードとはいえ合計13種類のボードが楽しめるため飽きにくい。
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モノポリーのルールは再現されているため、これからモノポリーを始める人には役に立つかもしれない。
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駒の移動は一度ボタンを押すと、超高速で移動してくれる。これは素直に評価すべき点であろう。
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また、ゲームスピードも過去のシリーズに比べて速い。
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現在の所持金とは別に、「現金化できる資産」も所持金の下部に同時表示されている。特に、「モノポリー」「モノポリージャパン」でプレイする際、高額レンタル料のマスに止まってしまった場合、支払額が所持金下部の数字を上回っていれば「仮破産」となり、「破産」コマンドがアクティブ表示される。「仮破産」の概念がわかりやすくなっているといえる。
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一人用モードで優勝を続けていると(ボードは問わない)、モノポリーの世界各地限定版の駒などを「マイ駒」として使用することができ、コレクション魂をくすぐられる。
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かつて存在していた公式サイトによると40種類以上の駒が収録されている。
総評
モノポリーが本来持っている知的ゲームとしての奥深さを大幅にスポイルして運まかせの要素を強化した「トミーアレンジモノポリー」に力を入れたことによりモノポリーファンから大きな不評を買ってしまった。
何と言っても「トミーアレンジモノポリー」におけるミニゲームで権利書を奪い合うという方式は膠着状態を招きやすく、ゲームの長時間化や場にあふれた現金により決着がつけられない事態にまで陥ってしまうこともある。
通常のモノポリーであれば交渉で事態を打開することも不可能ではないが、このルールでは攻守においてミニゲームで勝ち続けなければならず、ミニゲームが苦手な人は勝つことが困難である。
交渉が苦手でも勝てるように導入されたと思われるこのルールだが、ゲームの自由度を狭めてしまう結果となった。
とはいえモノポリー初心者や『桃太郎電鉄』『マリオパーティ』などのノリでボードゲームソフトを楽しみたい人であれば、それなりに遊べるかもしれない出来ではある。
シリーズ作品としての評価はともかく、単体では十分ボードゲームとして成り立っていると言える。
その後の展開
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本作発売当時の2003年ごろから、トミーはモノポリーのボード販売を輸入玩具販売子会社「トミーダイレクト」に譲っている。
同時に、モノポリーのボードから「TOMY」のロゴも消えている(タカラトミー合併後は再びロゴが載るようになった)。
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モノポリーのゲームソフトもまた、製造・販売権がエレクトロニック・アーツ社(EA)に移った。
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しかし、EAがWiiでリリースした『MONOPOLY』は本作をさらに下回るクオリティとなってしまった。
最終更新:2022年05月11日 19:15