北へ。~White Illumination~
【きたへ。ほわいといるみねーしょん】
ジャンル
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トラベルコミュニケーション
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対応機種
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ドリームキャスト
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発売元
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ハドソン
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開発元
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ハドソン レッド・エンタテインメント
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発売日
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1999年3月18日
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定価
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5,800円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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当時としては斬新なコンセプト 豪華声優陣
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レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー
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概要
北の大地を舞台に、NOCCHI(現、大槍葦人)氏の描く可憐な少女達との交流で好評を博した『北へ。』シリーズの第1作。
夏休みに東京に住んでいる高校生が、北海道で暮らしている従姉妹の家に滞在し、旅先で出会った女の子たちと恋をする内容になっている。
北海道に行く理由は「学校関係で悩みを抱えて落ち込んでいるから、北海道に行って気分を変えてみたらどうか」と母から提案されたから。
Wikipediaいわく「同時期に行われていた『MOVE ON北海道=北からの声かけ運動』に協賛しており、各機関からの協力を得ているのが特徴である」との事。
そのため、実在する店舗やレストランなどが実名で登場する。本作を遊ぶ時、当時を懐かしむ人もいる様である。
C.B.S.(コミュニケーション・ブレイク・システム)
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本作の特徴の1つ。ヒロインと会話中、特定のタイミングでボタンを押す事で、話に割り込む(=ブレイク)事が出来る。
……と言えば斬新に聞こえるかも知れないが、要は自分で選択肢を掘り出す形式になっただけの事である。
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しかも完全ノーヒントで制限時間まで存在するため、難易度が高い。システムが快適なら良いのだが……(後述)。
メインキャラクター
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春野琴梨(はるのことり)(CV:千葉紗子)
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メインヒロインで、主人公の母方の従姉妹。昔の癖から「お兄ちゃん」と呼んでくれる。
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家事全般が得意で、優しく、気配りが出来て……と、文句の付け所が無い。
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ターニャ・リピンスキー(CV:坂本真綾)
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小樽のガラス工房に勤める、16歳のロシア人。肌が白く、まるで人形の様な印象を与える。
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本来の名字は「リピンスカヤ」なのだが、亡き父が生きていた証を残したいという理由でこう名乗っている。
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実は心臓に病を抱えており、劇中でもそれ絡みのイベントがある。
なのに熱風吹き荒れる中で仕事をする激務のガラス職人は無理しすぎ
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椎名薫(しいなかおる)(CV:榊原良子)
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札幌市内にある北海大学の付属病院に勤務している研修医。物静かな、大人の女性。
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近寄りがたい印象を与えてしまうが、実際にはごく普通に良い人。ミステリー小説を読むのが趣味。
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中の人が正にハマリ役。主人公を手玉に取る様なセリフも相まって、ノックアウトされた人は少なくないだろう。
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桜町由子(さくらまちゆうこ)(CV:南央美)
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千歳にある航空自衛隊に勤務する、20歳の女性(でも制服は陸上自衛隊の物だったりする)。この時点で、結構な変わり種。
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その本人はと言うと、中々にフリーダムな性格でサービス精神旺盛。
でもプールで『犬神家の一族』はどうかと思います。
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豪快で楽しい人。バイクとカメラが趣味という事もあって、本作の「トラベルコミュニケーション」に上手く合致している。
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愛田めぐみ(あいだ-)(CV:大谷育江)
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美瑛に住む中学3年生。琴梨の父方の従妹(よって主人公と親戚関係にない)。両親と共に、美瑛の牧場に住んでいる。
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とにかく小さい。中学3年生なのに145cm。後に「Littlewitch」を立ち上げた大槍氏の、趣味の片鱗が窺える。
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川原鮎(かわはらあゆ)(CV:広橋佳以)
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琴梨の親友。「明朗快活」という言葉がピッタリな女の子。エンディングによっては、夢だった歌手として成功する。
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実は、かつて体型が原因でイジメられていたという過去を持つ。頑張って痩せた今からは想像も付かないが。
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続編でも、歌手としてその名が上がる。公式では、鮎ルートが正史扱いなのだろうか。
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左京葉野香(さきょうはやか)(CV:川澄綾子)
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札幌市内にある猪狩高校の2年生。兄は、ススキノでラーメン屋を営んでいる。眼帯をしているが、目が悪いという訳では無い。
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一言で言うと高2病。とにかくニヒリストで、出会いは「ゲーセンで遊んでいた主人公達に突っ掛かってくる」という最悪な物。
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しかし、彼女の抱えている問題を解決していくと……?
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里中梢(さとなかこずえ)(CV:豊口めぐみ)
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琴梨と鮎の先輩(なのだが、シナリオ上では一切絡まない)。この時期のゲームには珍しく、同人誌やコスプレと言ったネタを押し出している。
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我が儘な上、ひっぱたくと無言電話を掛けてきたりと、中々に厄介なお相手。そのため、キャラの中でもあまり人気が無い。
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しかし、後にiモードで配信された「メールドラマ版」では別人の様にしっかりした性格になった。テコ入れが図られたのだろうか。
評価点
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キャラクター面
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いわゆるギャルゲーとしてのシナリオは無難な出来で、各キャラの魅力を上手く出せている。
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榊原良子氏のギャルゲーへの出演。
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榊原氏は『機動戦士Ζガンダム』のハマーン・カーンを演じているなど本作発売時点で十分すぎる程のベテランなのだが、意外にもギャルゲーで攻略対象キャラを演じたのはこれだけである。その結果凄まじいハマり具合を披露されたのは上記の通り。
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ちなみに氏はキャスティングについて思うところがあったのか、「私がヒロイン役をやっていいのか」という趣旨の発言を残している。
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グラフィック
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NOCCHI氏の絵は美しく、キャラクター自体も個性豊か。
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豪華声優陣。
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「キャラクター」の欄で挙げた他にも、佐久間レイ氏、土井美加氏、立木文彦氏、千葉繁氏などの一流どころが名を連ねており、物語を一層盛り上げてくれる。
賛否両論点
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ギャルゲーとして、そして観光促進ツールとしての板ばさみ
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概要の項で述べた通り、このゲームは北海道観光促進グッズとしての一面も持っている。そのために普通のギャルゲーらしからぬ部分もちらほらとある。
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例えばOPムービーで流れる「カニがいっぱいホタテいっぱい」といったぶっ飛んだ歌詞の歌
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他にも観光スポットや地域食材の紹介が妙に説明臭いことも多かった。
そのため、ヒロイン=観光ガイドのお姉ちゃん、主人公=何か食べる時だけ美味しんぼ、という揶揄も少なからずあった。それを受けてか、続編ではOPの歌詞に『恋のグルメ旅行』というフレーズが入る。
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ただし、それが逆に『北へ。』という作品に他のギャルゲーでは持ち得ない独特の個性を与えたという恩恵もあるので、一概に問題視されているわけではないことは重ねて申し上げておきたい。
問題点
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システムが粗い。
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時期を考えれば仕方ないかも知れないが、既読スキップ・バックログが無い。
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スキップ機能はあるが、一度読んだ文章の「音声しか」飛ばせない。
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しかも、この設定をオンにすると自動進行がオフになる。オンにしない方が早い、なんて事もザラ。
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どういう訳か、CGモードが存在しない。「ギャルゲーではない」という意思表示なのかも知れないが、不便な事に変わりは無い。
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セーブ・ロードが基本的に主人公の部屋でしかできない。そのため、うっかりC.B.S.を発生させ損ねた場合、ソフトリセット→ロードでやり直し。
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前述の様にC.B.S.絡みは基本ノーヒントなため、攻略本・サイト無しだと挫折したくなるほど辛い。
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グラフィックの未成熟
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NOCCHI氏の繊細なイラストを再現できたか……と言われると、微妙な所である。
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細い線で描くNOCCHI氏の原画に対してゲーム内の描線は濃くて太いため、イラストとゲーム中の差異が目立ってしまっている。元の魅力を引き出せたとはお世辞にも言い難い。
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尚、スタッフロールを見ると、原画担当だけで19人もいる。ばらつきが生じた原因は、この辺りだろうか。
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続編の『北へ。~Diamond Dust~』ではこの点は大幅に改善された……が、それでもムラがある辺り、そもそもこういった塗りに向いていない絵なのかもしれない。
総評
システム的には褒められた物でない作品だが、キャラクターの魅力・現実とタイアップというユニークなコンセプトは評価できる。
NOCCHI氏のセンスあるイラストも相まって、ファンディスクや続編が作られる程度にはファン生まれた作品である。
その後の展開
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半年後という早い段階で、ファンディスクである『北へ。~Photo Memories~』が発売された。
余談
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本作のサブタイトル「ホワイト・イルミネーション」は実在のスポットだが、「全国有数の破局スポットとしてその名を知られており、発表当時地元では相当に物議を醸した。」
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このゲームの舞台を見るために札幌へ、今で言う「聖地巡礼」をしに行った人が出た。
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それにより、北海道への観光客を増やすという目的も達成されたはずである。
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今となっては現実と異なる部分も多い。
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このゲームが発売されてからかなりの時間が経過したため、ゲーム中で見られる背景画像と実態はかなり異なっている。特に札幌駅は改装前の旧駅舎であり、当時を知る人には思い出深い。
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ヒロインの1人であるターニャに縁故のあった運河工藝館は閉店(新千歳空港ターミナルビルにて新店舗を営業中)、喫茶エンゼルは移転して建物も既に無い。時間の流れを感じさせる。
北へ。~Photo Memories~
【きたへ。ふぉとめもりーず】
ジャンル
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トラベルコミュニケーション
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対応機種
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ドリームキャスト
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発売元
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ハドソン
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開発元
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ハドソン、レッド・エンタテインメント
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発売日
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1999年8月5日
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定価
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3,800円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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良くも悪くもファンディスク
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概要(PM)
北の大地を舞台に、NOCCHI(現、大槍葦人)氏の描く可憐な少女達との交流で好評を博した『北へ。~White Illumination~』のファンディスク。
前作の後日談に当たり、夏に再び北海道へ赴く話となっている。友人に借りたデジカメで写真を撮る事も出来るが……(後述)。
評価点(PM)
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後日談のシナリオ
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後述の通り短いが、原作のED後のシナリオとして、キャラの魅力は描けている。好きなキャラがいるのならぜひ続きを見てみよう。
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資料的価値。
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ゲーム内にギャラリーが設けてあり、NOCCHI氏の絵を堪能出来る。また、サウンドテストでBGM・SEも再生可能。
問題点(PM)
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相変わらず、システムが粗い。
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余程不評だったのか、最大の特徴であった筈のC.B.S.が廃止された。やりやすくなったのは良いが、独自性が薄れる結果に。
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グラフィック。
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これ自体は全作の使い回しなので、問題点も同一というだけ(精々目と口が固定になった位)だが……。
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まさかのVGA(高画質)非対応。
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本作は風景・キャラクターありき……即ち、他のジャンルにも増してグラフィック命の筈である。何を思ってこんな仕様にしたのか。
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前作も公式には非対応だったが、DCのロゴが出た後接続すれば普通にプレイ出来た。遙かに綺麗な画面で楽しめるのだから、標準搭載すべきだろうに。
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選択肢を一度間違えると撮影不可。
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それだけならあまり問題でも無いが、同時にグッドエンドも不可になるのは厳しすぎる。
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しかも撮影の仕様自体も酷い。最大5枚までなのだが、シャッターチャンスがキャラによって6回だったり4回だったりする。
当然、6回撮れる訳では無いので、グッドエンドを狙うなら1回はスルーしてヒロインに怒られなければならない。理不尽。
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ボリューム。
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「ミニアドベンチャー」はホントに「ミニ」で、1人1時間掛からない。幾ら4日間とは言え……。
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その他の要素もあまりめぼしい物は無い。設定資料にしても、見易い・高画質とはお世辞にも言い難い(VGA非対応な製で尚更)。
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現在では「Art Works」が出ているため、なお影が薄くなっている。
総評(PM)
後日談や資料要素など、とにもかくにもファンディスクらしいファンディスクと言える。
とはいえ、軽く楽しめるのは良いのだが、相変わらずシステムに難を抱えている。
そして、折角の高画質機能を捨てるのは(ギャルゲーとしても観光ゲーとしても)如何な物か。
余談(PM)
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初回限定版にはトレーディングカードが付属していた。用途はコレクション以外無かった様だが。
最終更新:2024年12月17日 08:17