北へ。~Diamond Dust~
【きたへ。だいやもんどだすと】
ジャンル
|
恋愛ADV(トラベルコミュニケーション)
|

|

|
対応機種
|
プレイステーション2
|
発売元
|
ハドソン
|
開発元
|
ハドソン レッド・エンタテインメント
|
発売日
|
2003年10月30日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
レーティング
|
CERO:12歳以上対象
|
廉価版
|
ハドソン ザ・ベスト:2004年10月28日/3,990円(税別)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
いくらかは進化したシステム 『風雨来記』と比べてはイケマセン ギャルゲー史上例のない属性のヒロインが一名
|
レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー
|
概要
北の大地を舞台に、NOCCHI(現、大槍葦人)氏の描く可憐な少女達との交流で好評を博した『北へ。~White Illumination~』の続編。
プラットホームをPS2に移しての販売となった。
東京に住んでいる大学生が、北海道内の大学に進学した5人の親友の内、いずれかの家に滞在し、そこで出会った女の子たちと恋をする内容になっている。
発売元のハドソンが地場企業であることから、友人達の通っている大学やヒロインがバイトをしている会社が実名で登場するなど、
地元から多大な協力を受けた宣伝素材っぷりも前作同様、健在である。
システム
-
夏編と冬編で構成されており、夏編は「父親の愛車を借りてフェリーで北海道へ行き、道内を周遊する」という設定が追加された為、大幅に変わっている。
-
お金と時間の概念があり、移動距離に比例して消費量が増える仕様となっている。予算は10万円。
移動モード
-
目的地を指定すると地図の上をポイントが進んでいき、到着すると観光ポイントに入場するオーソドックスな物。便利は便利だが、臨場感がまるでない。
-
一応、特定の地点で△ボタンを押すと寄り道ができるなど、入れようとした努力は窺える。
観光ポイント
-
ポイントには開場時間の概念があり、開場前・閉場後に到着すると何も起きずにそのままメニュー画面へ移項してしまう。
-
入れたとしても、場所の写真が数枚スライド表示されて主人公が適当な感想を述べるだけなので、いずれにせよ微妙だが。
-
入れる場所は観光ポイント、飲食店、道の駅の三種類。1度のゲームで道の駅を全部回りきると道の駅エンドにいける。
-
場所によってはムービーが入ることも。ムービー自体は綺麗で見事があるのだが……力の入れ場所を間違えているような気がする。
-
「美少女恋愛ゲームのふりをした北海道観光促進ムービーソフト」(はてなキーワードより)
休憩
-
簡単に言えば時間を進めるコマンド。一定時間になると「就寝」が加わる。
占いサイト
-
主人公の携帯に登録されている占いサイト。
-
占いの形を借りたヒロインとの遭遇予測ツールであり、これを駆使しないことにはヒロインの攻略はおろか遭遇すらおぼつかない。
-
隠喩で書かれているので、その位置にたどり着くためには若干の読解力が必要となる。
評価点
システム
-
C.B.S(コミュニケーション・ブレイク・システム)の改善。
-
前作で「どのタイミングで話に割り込めば選択肢が出るか分かり難い」という問題があったため、今作ではメッセージウインドウに選択肢が発生するタイミングが表示されるようになった。
-
話の流れが大抵ヒロインの発言に対して返答するか否かというタイミングで表示されるので、テキスト自体も前作より分かりやすくなった感もある。
-
そのタイミングで返事をしなければ、主人公は相手に無関心だったり、観光地に対して無感動のどこかにいそうなヌボ~っとした人間になる……
観光範囲
-
一応は北海道全土を回れる。
-
画像解像度が前作より上がったので、普通に撮影した写真・映像取り込み。
-
基本的に夏編はヒロイン待ち伏せ状態だからか、冬編はヒロインがガイドをする積極的なイチャイチャ観光となる。
-
美味しんぼ状態の食べ物の感想は写真と合わせてレベルアップ。選んだ返答次第では恥ずかしいほどのベタ褒め。まあ、観光地紹介ゲームなのでそうせざるを得ないでしょう。
-
聖地巡礼の際に当時の店舗がそのままなら是非食べてください!
ヒロイン
-
兎にも角にも、NOCCHI氏の描くヒロインは可愛い。ただし若干ながらムラは存在し、人を選ぶ絵という面もある。
-
最初は、比較的安定している明理・スオミ辺りから始めると良いだろうか。前者は帯広、後者は旭川にいる。
-
隠しキャラである催馬楽笙子は28歳というヒロインとしてはかなり高い年齢設定。
-
キャラクターも立っており、ヒロインのシナリオ自体はそつなく楽しめる。ツッコミどころはあるが……
-
前作同様、声優の人選が凄い。デビュー間もない頃の能登麻美子氏や渡辺明乃氏、皆川純子氏と後の人気声優となる人が多数。
-
また、アニメ版のDVD特典では顔出しまでしている。
道の駅めぐり
-
スタンプを集めるのが結構楽しい。
-
これに関しては時間と距離の概念が上手く働いていて、効率のいいルートを組まないとコンプリートできないのでやりごたえがある。
-
でも、現実でやろうとしたら……寂しいかもしれない。
賛否両論点
+
|
まふゆシナリオの重大なネタバレ有
|
-
実は、主人公の高校時代からの親友「森永冬真」その人である。つまり男性。
-
彼は幼い頃から性同一性障害を抱えており、女装してススキノでホステスとして働いていた。
-
友人連中で一人だけNOCCHI氏のデザイン・声優が女性である事からプレイヤーは最初からなにかあると疑うだろう……
-
ちなみにREDは「みつめてナイト」でも隠し要素でやらかしたことがあるので、毒が仕込まれていることを予期するプレイヤーもいたはずである。
プレイヤーに喧嘩を売るような内容になっていないだけマシだろう。
-
最終的には主人公に受け入れられ「まふゆ」として生きていくことを決意するが、当時からこのシナリオは物議を醸した。
「性同一性障害」や「オネエ系」、「男の娘」等の概念がこの時代にはまだ浸透していなかったからかもしれないが、大胆な話である。
-
そんな時代に彼と"彼女"を受け入れられる主人公も主人公だが……
-
他のヒロインの出自も、旧家の血を引く魚屋の跡継ぎで若女将兼看板娘・借金を抱えた両親を亡くした貧乏高校生・日本人とフィンランド人のハーフで将来を嘱望されているフィギュアスケーター・親友の妹で中学生・映画監督志望で長期留学を希望している女子大生・8歳年上でローカルレベルだが超有名なラジオパーソナリティーと、親に話したら親族会議を開かれそうな相手と結ばれるために大して誰も気に止めないのだろうが。
-
そういう事情も有ってか、"彼女"だけはトゥルーエンドを見れば全てのCGが回収出来る。
-
キャッチコピー「男は女をみつける。青春の光と影。」「そして、冬――物語は純化する。」が、ここに来て全く違った意味を持つ辺りが憎い。
-
そうして考えると冬真も「もう一人の主人公」なのかもしれないが……
|
問題点
ヒロインと親友
-
遊びに行く友達を決めた時点で、攻略目標が決まってしまう。場所とヒロインの両立ができないのは悲しい。
-
ヒロイン同士の接点がないため、従って掛け合いが見られないというのもわびしい(一箇所だけ例外はあるが)。
-
難易度は高い方。占いサイトを活用しなければ攻略が不可能に近い上、罠が仕掛けられているケースもある。
-
いっその事、初めから攻略サイトに頼った方が良いかも知れない。
-
親友たち5人全員がなんらかの理由を持って東京の高校から北海道の大学に進学したという無茶な設定。
-
しかも、親友といいながら基本は滞在期間中の寝床として利用するだけ。
-
ヒロインとの関係が深まれば相談役として重要なのだが、序盤とヒロイン攻略しなければ空気状態。自宅をタダで間借りしているのに相手は「おー帰ってたのか。俺は明日早いから寝るわ」と淡泊。
+
|
茜木温子シナリオへのツッコミ・ネタバレ注意
|
-
主人公の友人は、シナリオに全然絡まないので印象が薄い。バッドエンドでは活躍するのだが。
-
あまり役立ちすぎるのもアレではあるが、他に匙加減の取れているシナリオがあるので言い訳出来ない。
-
親戚の神宮司と結婚させられそうな展開になっているのだが、その神宮司が主人公の友人よりも目立っているにもかかわらずグラフィックが汎用キャラの使い回し。
同じ外見で赤の他人が出てくる為、何かのギャグかと思わされる。
|
+
|
原田明理シナリオへのツッコミ・ネタバレ注意
|
-
彼女の父親は、シナリオが進むと''くも膜下出血で急逝してしまう。
-
それだけならともかく、インターミッションではしっかり年賀状が送られてくる。良いのかそれで。
-
公式も「しくじった」と思ったのか、後述のサービスでは他のヒロインが年賀状を送る中、1人だけ喪中葉書を送ってくる。
|
観光
-
主人公はただの観光客なので、観光できたとしても蘊蓄を傾けてはくれない。全体的にテキストの量も薄い。
-
お金の概念があるので、予算が尽きる恐怖からエリア外への観光もしづらい。
-
以上のことから、観光しているという感覚がなく、作業させられているという実感の方が強い。
このゲームで観光しようとするのならいくらかの脳内補完が要る。とにかく、ヒロインが絡まないと退屈である。
-
この辺りは「既存のゲームジャンル+ギャルゲー要素」の宿命と言えるかも知れない。
+αである筈の女の子がメインになってしまい、本来のメインがそこに行くまでの"障害"とみなされてしまうのだ。
-
不幸な事に、同じく北海道旅行をテーマとした風雨来記がリリースされていて、こちらは旅とヒロインが高い次元でバランスが取れているので、比較されると非常に痛い。
-
目が覚めたら占いサイトをチェックして、反応があったら予測される場所まで行ってヒロインを待ち伏せ。無かったら、友人宅で休憩……
というダラダラした生活。ストーキング的に見るとリアルと言えばリアルだが。
-
ヒロイン攻略に失敗しても、一人で回って面白いという訳ではないのでやり直した方が早い。
システム
-
2003年発売にもかかわらず、既読スキップ・バックログが無い(ショートスキップはある)。再プレイしてCGを回収するのは面倒。
-
帯広編の夏のクライマックスのように、自動で流れるためスキップ不可能なシーンもあるので尚の事かったるい。
-
CGを全部回収すると、おまけモードでそのヒロインの独白を聞けるのだが、システムデータがクリア時にしかセーブされない。
-
つまり、背景の差分があったらその回数分クリアしなければならない。何とかならなかったのか。
-
そこまでして出現させた所で、特典は背景の一枚絵にヒロインが文章を読むだけ。やりこんだプレイヤーなら満足出来るかも知れないが。
総評
破綻はしておらず良さもあるが、かといって良作とも言えない作品。
同じく北海道の観光要素とギャルゲー要素を合わせ持つ『風雨来記』と比較すると、旅をしているという実感の無さと作業感、テキストの薄さが目についてしまう。
キャラは生き生きしているので、じっくり付き合ってみるのも一興だろう。
最後までやり込む根気があるなら、まふゆ編のラストは感動出来る。
余談
-
本作を公式ショップで購入したプレイヤーには、指定したヒロインから「特別な日」に手紙が届くというサービスがあった。
「バレンタイン・クリスマス・年賀状の3回」「自分が送った葉書に書いた内容で、文章が変わる」など、中々手が込んでいた様である。
-
2004年にはテレビアニメ化もされている。
-
作中で登場する函館と旭川の駅舎は建て替えられていて現存しない。
-
倒産した東日本フェリーの船舶・グリュック王国がムービーで登場しているので、資料として貴重である。
-
そのうちの一隻が風雨来記3にも登場。まさかの偶然である。
-
後に不祥事を起こして声優を引退させられた、石原絵理子氏が出演していた数少ない作品でもある。
-
下記の『北へ。~Diamond Dust + Kiss is Beginning~』と同時にBest版が発売されたが、不祥事発覚後だったためそちらの温子は代役が当てられた。
-
また、評価点の項でも述べたが今は人気声優となった能登麻美子氏が無名時代に出演していた作品という点も貴重ではある。
-
能登氏は今でこそ大人しい・おしとやかキャラ役が主流とされているため、本作のようなツンツンしたキャラは尚更貴重と言える。
-
移植等がないため、下記の『北へ。~Diamond Dust + Kiss is Beginning~』も含めてプレミア化しており、やや入手困難となっている。
北へ。~Diamond Dust + Kiss is Beginning~
【きたへ。だいやもんどだすとぷらすきすいずびぎにんぐ】
ジャンル
|
恋愛ADV(トラベルコミュニケーション)
|
高解像度で見る 裏を見る
|
対応機種
|
プレイステーション2
|
発売元
|
ハドソン
|
開発元
|
ハドソン レッド・エンタテインメント
|
発売日
|
2004年10月28日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
レーティング
|
CERO:12歳以上対象
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
やっぱりファンディスク エンディングが使い回し
|
概要(KB)
『北へ。』シリーズ(現時点での)最終作品。『北へ。~Diamond Dust~』のファンディスク。
前作のファンディスク『北へ。~Photo Memories~』とは異なり「エンディングからエピローグの間の物語」となっている。
そのせいか、選択を間違えると破局してしまう事もある。中々にシビア。
評価点(KB)
-
原作を持っていなくても、条件を満たすとCGがアンロックされていく。条件も「そのヒロインとエピローグを迎える」と易しめ。
-
エピローグまでの話が追加された事で、キャラクターに深みが増した。
+
|
ネタバレ注意
|
-
就職活動を通じて茜木鮮魚店を継ぐこと、ひいては温子との交際に疑問を持ち始める主人公。仕事のチャンスとリスク、年齢を気にする催馬楽笙子。主人公の後押しで友人にカミングアウトをしに行くまふゆなど。
-
笙子ストーリーでは、「主人公と付き合える催馬楽笙子が羨ましい」と本音を漏らし"まふゆ"姿で誘惑する冬真、逆にまふゆストーリーでは笙子が鳩に弁当を取られる場面を見て「デジャブじゃなく前作で見た」と語る禁断の掛け合いをする。
|
問題点(KB)
-
ファンディスクとしての問題点
-
そもそも「選択肢次第では破局する」という仕様からして、ファンディスクにあるまじき仕様。
-
ギャラリーコンプリートの為にはバッドエンディングも見る必要がある。
-
前述通り「エンディングからエピローグの間の物語」なので、結局はクリアしても使い回しのエピローグを見る事になる。
-
エピローグを変えても問題だが、これなら素直に前作同様にエピローグ後の後日談でよかったのではないだろうか。
-
ボリューム。
-
キャラクターによって差はあるが4~7日間しか滞在期間が無い。長くても1人1時間半もあれば終わる。短いと45分。
-
オープニングテーマはアニメ版の使いまわし、さらに映像は風景のスライドショー。
総評(KB)
ファンディスク故にファンから納得されればOKな訳であり、実際概ね好評だった様だが、それでも微妙さは拭えない。
6,800円の価値があるか……というと、ハッキリ言って微妙な所であろう。
余談(KB)
-
原作同様、公式サイトで購入すると「ひみつの手紙」が届いた。
最終更新:2022年10月09日 01:35