祝福のカンパネラ Portable
【しゅくふくのかんぱねら ぽーたぶる】
ジャンル
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祝福の鐘鳴り響くAVG
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※DXパック
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※通常版
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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メディア
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UMD 1枚
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発売元
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角川書店
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開発元
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レジスタ
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発売日
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2010年9月30日
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定価
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DXパック:8,000円 通常版:5,800円 ※全て税別
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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750KB以上の空きが必要 ※システムデータ1つ+通常セーブスロット30個+クイックセーブスロット30個までセーブ可能
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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コンテンツアイコン
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恋愛、セクシャル
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判定
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なし
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ポイント
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バトルパートのシステム変更→移植元作品とは別の意味で作業に サブストーリー、新規CGを追加 ディスク読み込みの影響で演出面が色々台無し&テンポの大幅な悪化
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ういんどみる作品リンク
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概要
WindowsPC向けに発売されたアダルトゲーム、『祝福のカンパネラ』(ういんどみるOasis)のPSPへの移植作品。本項では以降、移植元を「PC版」と表記する。
PSPへの移植に伴い、18禁要素の削除と一部の性的なネタが差し替えられている。
この手の移植にありがちな追加キャラクターなどは無いが、サブキャラクター3人それぞれに1本ずつとOasis全体に1本、合計で4本のサブストーリーが追加されている。
また、PC版で不評だったバトルパートをアクティブタイムバトルに変更し、ゲーム性を持たせた。
登場するキャラクターはゲームではボイスが用意されていない主人公のレスターを除いて、本作発売前に放映されていたテレビアニメ『祝福のカンパネラ』(以下「アニメ」)で各キャラクターを演じた声優陣がそのまま担当している。
なお、本項ではストーリーやキャラクター、用語などの紹介は挟まずにPSP版の追加要素などの内容紹介にとどめる。
また、評価点や問題点もあくまでPSP版特有のものにのみ絞るため、PC版からの内容は省略する。
そのため、『祝福のカンパネラ』という作品全体で見た場合の評価点や問題点、キャラクターや関連用語などの情報はPC版のページを参照頂きたい。
移植における変更点
CGやサブストーリーの追加
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サブストーリーを追加されたキャラクターはミリアム・ガーネット・シェリーの3名、そしてOasis全体としてのものがひとつの合計4本。
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本編中で一定条件を満たすことでタイトル画面のエクストラモードから楽しむことが出来るようになっている。
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PC版の段階でサブストーリーとして用意されていたニナとトルティア姉妹のシナリオもPC版と同じ条件を満たすことで見ることが出来る。
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追加サブストーリーには勿論、本編内に於いて新たに用意されたCGもある。
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追加CGは既存のCGとのギャップもほとんど無いので、違和感も無く純粋に楽しめるものとなっている。
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なお、18禁シーン関連CGは勿論削除され、18禁シーン以外でも肌の露出が激しいものや下着が思いっきり見えているようなCGが修正されている。
バトルパートのシステム変更
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PC版では選択肢を選んでテキストを読み進めていく形で、演出のひとつとしての側面が強いものではあったが、ゲーム性は皆無だった。
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PSPへの移植に合わせてバトルパートにゲーム性を持たせる変更を加えた。詳細は下記「バトルシステム」の項目で説明する。
収集要素の追加
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PC版ではCG・音楽・シーン回想(18禁シーンとエピローグ)の収集の要素があったが、本作では場面・クエストごとにシーンタイトルが付けられ、これに関しての収集要素も追加された。
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これによってPC版では全てを読み進めなくても収集要素をコンプリートすることが出来たが、本作では一部の選択肢による差分を除いて一通りを読み進めないと収集要素をコンプリート出来なくなった。
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シーンタイトルに関して補足をすると、PC版の頃からそうであったが、本作は序章・第一章・第二章・終章の構成となっており、第一章で受けたクエストおよびそこでの選択肢によって、第二章に入る段階で4人いるヒロインの内の2人にルートが絞られ、第二章の序盤で受けるクエストでの選択肢でルートが確定する仕組みを取っている。
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つまり、第一章でルートを絞る段階でも受けることの出来るクエストは変わってくる上、第二章の最初に受けられる宝探しのクエストやルートを確定させるクエストも第一章終了時に絞られた2名の組み合わせによって異なるため、それらを全て読み進めないとシーンタイトルを全回収出来ないということである。
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PC版から存在していた収集要素はある程度のルートに絞れば一通り回収出来るものであった。
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なお、後述するが、ショートカットでエピローグから読み始められるようになり、18禁要素が削除されたことでシーン回想モードとその収集要素は削除された。
バトルシステム
+
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長いのでクリックで展開
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PSP版の主な変更点としてはこのバトルパートのシステム変更が挙げられる。
PC版のバトルパートは物語中の演出といった側面が強く、ゲーム性が皆無で状況に応じて選択肢を選んでいくだけというもので、それも正解のパターンを選ばないと結局先に進めないため、ただの作業と化してしまっていた。
今作ではアクティブタイムバトルを導入したことで、バトルパートがPC版とは大きく様変わりした。
ここではその点に関して説明を入れていく。
バトルパートの流れ
ストーリー上の一部に用意されている一騎討ちを除いた、基本的な形である「Oasisのメンバーが協力して敵と戦う戦闘」(以降は「パーティ戦」と表記する)の流れを説明する。
戦闘に参加する全キャラクターには「ウェイトゲージ」がある。
Oasisのメンバーのゲージは画面中央付近のそれぞれのキャラクターの近くに表示される。
このウェイトゲージが溜まった際にそれぞれ対応したボタンのアイコンが表示され、そのボタンを押すことで画面左端の「アクションレーン」にキャラクターのフェイスアイコンが表示され、攻撃準備状態となる。
勿論敵もウェイトゲージが溜まればフェイスアイコンがアクションレーン上に表示されて攻撃準備状態となる。
なお、敵が複数いる戦闘の場合は攻撃準備状態に移行する際に十字キーの左右でターゲットを指定した上でボタンを押すことで攻撃する対象を任意で選ぶことが出来る。
アクションレーン上のアイコンは時間と共に画面上部に上昇、「ACTION!」と書かれたシンボルまでアイコンが到達することで敵に攻撃をすることが出来るようになっている。
ただし、攻撃準備中に攻撃を受けてしまうと、受けたダメージに応じて「ノックバック」が発生して「ACTION!」から遠ざかってしまう。
なお、ウェイトゲージが溜まってもボタンを押さなければ攻撃準備に移行しないでゲージを溜まったままにしておけるので、状況によっては敢えて攻撃準備に移行しないで動向を窺う必要もある。
チェイン攻撃
敵に連続して攻撃を当てると画面右側の「インフォメーションレーン」に表示されている「AT CHAIN」の値が1増加する。
これはどれだけ敵に割り込まれずに連続で攻撃を当てたかを示すもので、これが増えれば増えるほど敵に与えるダメージにボーナスが付与される。
当然ながら、敵から攻撃をされた時点で「AT CHAIN」の値は0にリセットされる。
コンボ攻撃
インフォメーションレーン上部に3つあるコンボスロットは敵に攻撃をしたキャラクターのアイコンがスロット1からセットされる。
レスターにスロット2かスロット3に来るように攻撃させるとコンボが発動し、レスターの攻撃に合わせ、そこまでのスロット上のキャラクターに応じたボーナス効果を得ることが出来る。
キャラクター
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ボーナス
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効果
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レスター
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Critical
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その回のレスターが攻撃力2倍で攻撃出来る。 「Critical」を複数組み合わせた場合は更に効果がアップする。
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カリーナ
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Recovery
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味方全体のHPを最大値の25%回復させる。 「Recovery」を2つ組み合わせた場合は回復量が50%になる。
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チェルシー
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Stun
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攻撃した敵の動きを一定時間止める。 更にその敵が攻撃準備状態だった場合は強制的に解除(=アクションレーンからアイコンを排除)させる。
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アニエス
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Speed UP
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一定時間、味方全体のウェイトゲージの増加速度がアップする。
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ニック
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Critical
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その回のレスターが攻撃力2倍で攻撃出来る。 「Critical」を複数組み合わせた場合は更に効果がアップする。
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つまり、カリーナ・チェルシー・レスターの順番でコンボを成立させた場合は攻撃力が2倍でレスターが攻撃出来、更にその際に攻撃を当てた敵の攻撃準備状態を強制的に解除させた上で一定時間行動を出来なくし、おまけに味方全員のHPを最大値の25%回復するという効果を得られるということである。
また、「Critical」の効果そのものはレスターもニックも同じで、細かい差違があったりはしない。
ただし、コンボを発動させる事が出来るのはレスターだけであり、スロット3までにレスターが来なければコンボは成立せず、再度スロット1からやり直しとなる。
また、スロット1にレスターが来た場合もコンボは成立しないので、他のキャラクター1名を挟むか、そのまま立て続けでレスターに攻撃をさせないとコンボは発動しない。
コンボを発動させると、例えそのコンボがスロット2で発動させたものでも次の攻撃からは再度スロット1からとなる。
コンボを組む上で気をつけないといけないのは攻撃準備中のノックバックであり、ノックバックによって攻撃順がずれてコンボが失敗してしまうことがある。
また、「AT CHAIN」と異なり、途中で敵の攻撃が挟まれてもコンボスロットがリセットされることがない。
例えばスロットが空の状態から始めたとして、ニックが攻撃した(この時点でスロット1にニックがセットされる)後で敵に攻撃を受け、その後でアニエスに攻撃させるとスロット1のニックはそのままにスロット2にアニエスがセットされるので、次の攻撃をレスターにさせないとコンボが成立しなくなってしまうということ。
一騎討ちの場合
基本的な流れと取ることの出来る行動
基本的なルール・流れはパーティ戦と変わらないが、一騎討ちの場合はウェイトゲージが溜まった時に取る行動を選択することが出来る。
ボタン
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行動
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詳細
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△
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ATTACK
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相手に攻撃をすることが出来る。
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□
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DEFENCE
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直後の相手の攻撃1回のダメージを半減させる。 「DEFENCE」で相手の攻撃のダメージを軽減した場合は「AT CHAIN」の値がリセットされない。
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○
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CHARGE
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次回攻撃時の攻撃力が2倍になる。
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「DEFENCE」と「CHARGE」を選んだ場合は攻撃準備に移行せず、すぐさまウェイトゲージが再び溜まり始める。
「DEFENCE」と「CHARGE」の効果は重ね掛けおよび併用が出来ないので、「DEFENCE」を2回選んだからといって直後の敵の攻撃によるダメージを1/4に出来ないし、「CHARGE」を2回選んでも次回の攻撃力が4倍になることもなく、両方を選んだからといって相手の攻撃のダメージを軽減しつつ次回攻撃力を2倍にすることも出来ない。
「DEFENCE」は選択後にウェイトゲージが再度溜まっても再度行動を選択しないでいれば相手の攻撃を1回受けるまで防御態勢を維持出来る。
「CHARGE」は選択後、その次で「ATTACK」を選んで攻撃するか「DEFENCE」で防御態勢に移行するまでは攻撃力2倍効果を維持出来、攻撃をする前に敵に攻撃を受けたとしても効果が打ち消されることはない。
一騎討ちの独自要素(レスターの場合)
コンボスロットの扱いが特殊となり、コンボスロット2までレスターがセットされるとコンボが発動される。
この際得られるボーナスは「
Item
」というものとなり、発動後にパーティ戦でのコンボボーナス(「Stun」や「Speed UP」など)が書かれたアイコンがアクションレーンに出現し、「ACTION!」に到達するとコンボスロットにセットされる。
コンボボーナスアイコンがひとつ以上セットされた状態でレスターのアイコンが「ACTION!」に到達すると、コンボボーナスアイコンとのコンボが発動する。
その際もコンボボーナスが発動するが、こちらはコンボボーナスアイコンの内容とレスター本来のコンボボーナスが得られる。
つまり、コンボスロットは大まかに「Item」を発動させた後、コンボボーナスアイコンとコンボを発動させるという流れの繰り返しになる。
なお、レスターがスロット2か3に来た場合は勿論、コンボボーナスアイコンがスロット3に来た場合もコンボが成立するが、この場合は相手に攻撃をする訳ではないので、攻撃の際に効果を発揮する「Critical」は無効となってしまうが、それ以外のコンボボーナスは得られる。
一騎討ちの独自要素(チェルシーの場合)
基本的にコンボはレスター以外が発動出来ないが、ストーリー上の一部にあるチェルシーの一騎討ちに限り、チェルシーもコンボを発動させる事が出来る。
レスターはスロット2で「Item」が発動、出現したコンボボーナスアイコンとコンボを組む形であったが、チェルシーの場合はスロット3で「Stun」が発動する。
特別な効果は無く、通常のコンボボーナスで付与される「Stun」と同じ効果となっている。
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問題点
ローディングによる様々な弊害
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PC版のページにあるが、『祝福のカンパネラ』という作品は作中で頻繁にキャラクターの立ち絵が動きを見せる。
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話している最中に様々なエフェクト(クエスチョンマークなど)が出てきたり、立ち絵そのものも通常の頭身からSDになったり、レスターに近付いてきたことを表現するための立ち絵の拡大(およびその逆)などといったものがあるが、そういった動きが起こる度にディスクアクセスを行うため、その度に若干ながら止まったりする。
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エフェクトや一部の演出は効果音とグラフィックの変化のタイミングの同期が取れてこそネタになるものも少なくないにもかかわらず、それらのことごとくが先に音だけ鳴ってしまってグラフィックの変化が後から付いてくる形になってしまい、演出面で見ても台無しになってしまっている。
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元々冗長なテキストを指摘されがちな作品だが、それに加えてグラフィックなどの変化が起こる度に進行が長時間ではないとはいえ止まってしまうため、プレイ時間がいたずらに引き延ばされてしまう。
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そのため、「快適なプレイをするためにはエフェクトとボイスをカットすると良い」という本末転倒甚だしいことになってしまっている。
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加えて、メディアインストールも非対応であり、プレイヤーが選べるプレイスタイルは最低限のストーリーを知る事が出来れば良いと妥協してエフェクトなどを切るか、忍耐強く切らずにプレイするかのあんまりな二択となってしまっている。
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スキップモードでも読み込みで頻繁に止まるので、周回プレイで既読部分をスキップして未読個所まで送るのに結構な時間を要することも少なくない。
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PC版ではスキップも十分早く、それに加えて既読であれば「次の選択肢にジャンプする」ということが出来たのだが、やはりこれも未実装。
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上では演出やグラフィック周りにばかり触れたが、台詞が続く場面以外では台詞の再生ごとにも僅かながら読み込みが入るため、程度の差はあるがかなり頻繁にPSPのディスクアクセス音を聞かされることになる。
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フォローにも何にもならないが、ローディング(起動時など)そのものはメディアインストールがなくても気にならないレベルではある。
不便なシステム周り
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キャラクター毎のボイス再生設定が何故か一度本編中で再生されないと変更すら出来ず、ヒロイン勢とサブストーリーがあるキャラクター以外は一緒くたで「その他」扱いされていたり、一度にまとめて変更することが出来なかったりと上のような惨状なのにもかかわらず、融通が利かない。
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ちなみに、PC版ではボイスを再生させるかを全キャラクター一括で変更することは勿論、流石にモブキャラクターは一緒くたにされてはいるが、主立ったキャラクターごとに細かく設定が出来、本編で再生されなくても試聴も設定も可能となっている上、男性キャラクター・女性キャラクターという括りでボイス再生させるかを一括変更出来る。
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テキストログに関してもゲームを起動してからのテキストをただ記録していくだけになったため、データロード後にその前のテキストを読み返そうとしても読み返せなくなった。
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途中で全く別の場面のデータをロードすると、ログ上にはロードしたということが表示されるので見分けが付かなくなることはないが、そのままズラズラとテキストが続く形になってしまう。
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あくまで(起動してから)流れたテキストの履歴を保存するからこその「テキストログ」なのだろうが…。
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台詞の場合は同じキャラクターの台詞が続いても表示ごとに区切られるのだが、状況説明などの台詞以外のテキストは場面の切替えを伴うものでも区切られずに一度に繋げて表示されてしまうので読みにくい。
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それでなくても、PC版ページにあるように状況や背景などの説明、主人公の独白が冗長なこの作品にあって、このログの仕様はもう少し考えて欲しいと言えるものである。
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テキストログに記録されるのは一つ前までのテキストであり、誤操作などで現在の台詞の再生を飛ばしてしまったりすると、一旦テキストを送ってテキストログに送らないとボイスを聞き直すことも出来ない。
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しかしながら、PC版では読み返すことが出来なかったバトルパート中のテキストもログとして記録されるようになったのは改良点であると言える。
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通常・クイック共にセーブスロット数が30となっているが、物語の規模から考えるとクイックはともかく、通常セーブのスロットは明らかに数が足りず、お気に入りのシーンの前後でセーブという使い方をするとすぐにスロットが埋め尽くされてしまいかねない。
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クリア後に各ヒロインのルートの章頭からプレイが出来るショートカットが利用出来るようになるが、フォローとなっているかと言われると些か疑問符を付けざるを得ない。
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前述したようにシーンタイトル収集の要素があるが、別にこれは集めてどうこうする訳でもなく、あくまでそのシーンを読破したというに過ぎず、前述したローディングや選択肢ジャンプ未実装などといった点を踏まえると、いっそのこと、収集したシーンタイトルの頭から読めるようにでもしてくれればという考えはどうしても浮くところである。
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戦闘周りではバトルパートでオートモードにすることが出来ない。
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システムの兼ね合いで勝手に進めてしまうと、いつの間にか戦闘が始まってしまってプレイヤーが困惑しかねないという配慮もあるのかも知れないが、少なくともオートモードは強制ではなく、プレイヤーが任意でするものであることを考えれば、不親切であるとも言える。
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加えて、オートモードにしてバトルパートに突入していたとしても、バトルパートがオートモードに出来ない仕様のせいか、その煽りでバトルパート終了後のシナリオパートでもオートモードが解除されてしまう。
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更に、本編のストーリーとリンクしていて深く関わってくる訳でもない戦闘ですら、一度クリアしたものをスキップ出来ないというおまけ付き。
戦闘システム
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PC版からの変更で売りにしていたシステムだが、パーティ戦の場合は大体がアニエスとチェルシーに攻撃をさせた後でレスターでコンボ、の繰り返しで敵の動きをほとんど封じることが出来る。
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チェルシーのボーナスによって敵の行動を封じてアクションレーンから追いやり、アニエスのボーナスによって敵のウェイトゲージが再び溜め始められる前にこちらの3人が先に行動出来、それによってまた敵は行動を封じられ…のループになるのだ。
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勿論、戦闘の状況によってはそうは行かないこともあるし、一騎討ちではまた勝手が違うのだが、メインとなる戦闘形式が前述のパーティ戦であるが故に結局上に書いたパターンでほぼ安定するため、PC版と別ベクトルで作業と化してしまっている。
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難易度が一部の変則的な戦いを除いて、パターンを構築出来なくても然程問題ないレベルで難易度が低めに落ち着いている上、仮に負けたとしてもその戦いの最初からすぐにリトライ出来るようになっていることも、この場合は逆に全体的な作業感を強めるのを助けてしまっているとも言える。
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一応書いておくが、リトライが出来ること自体はなんら問題ではなく、あくまでそれ以外の要素によって、この機能も作業感を強める一助になってしまっているというものなので勘違いをしないようにお願いしたい。
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前述したがPC版ではバトルパートに物語の演出といった側面もあったことで、様々な演出を盛り込むことが出来たが、そうは行かなくなった本作でも無理矢理PC版での演出を突っ込んでいるため、ちぐはぐになっている。
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例えば、敵の強力な攻撃の予兆に対して「防御を固めましょう!」・「防ぎきれないから回避しよう!」などと言われても、こちらは防御や回避という行動を選べないし、アクションレーンで「ACTION!」に到達したキャラクターと違うキャラクターがストーリーの都合で勝手にしゃしゃり出て攻撃を行ったりと人によっては萎えることもあり得るだろう。
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PC版では戦況に応じて選択肢を選ぶという形であったため、上の例の前者であれば「確実に防ぐ」・「回避に専念する」などのような内容の選択肢を選んでテキストを読み進めていく形であったし、後者のような状況でも選択肢で本来の流れを問題なく落とし込めていた訳である。
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ストーリー上の演出の絡みで一部の戦闘はバトルパートとシナリオパートを頻繁に行き来するが、中には戦闘に関する操作をするでもないのにバトルパートに移行して手動でテキスト送りをさせられ、シナリオパートに戻ればオートモードが解除されて…とPC版よりも酷い事になっているものもある。
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ちなみにこれでもなお収録し切れていない掛け合いなども多い上、その内容も割合重要であったり笑えるようなものも多く、元の内容を考えるとこの戦闘システムの変更自体が明らかに無理があったと言える。
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元々批判意見が多かったのは事実だが、一部の戦闘は「このシステムだからこそ出来たストーリー展開だ」と評価する声もあったのだが、そちらには耳を傾けなかったようだ。
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その結果、上記のような無理矢理なパート移動をしたりと本末転倒なことになっているのだから笑えない。
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ゲーム的な要素を加えたことで、逆に物語全般において能力が固定となっていて、成長要素が無いことに対する不満意見も出てきている。
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クエストの達成や戦闘の結果などでキャラクターが成長することによって戦闘を一層優位に進められたりといった要素があれば、ゲーム序盤のクエスト群にもキャラクターの強化という意味を持たせることが出来ただろうし、キャラクター達がクエストを経て物語的な意味で成長していくというのを追体験出来るのではないかという意見もあったりする。
メインストーリーの量が実質減少
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PC版で18禁シーンであった場所は当然差し替えになるのだが、本作の場合は差し替えと言うよりも該当シーンを削除したという表現の方が近い処理をされている。
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その場面自体の繋ぎは一部を除いて不自然さこそ無いものの、その後のテキストに18禁シーンを踏まえていないと噛み合わなかったり、違和感を覚えうるものがあったりで、修正が中途半端と言わざるを得ないものも見られる。
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PC版では各ヒロインのルートをクリアした後でそのヒロインのアフターストーリーが追加されたが、本作では削除されてしまっている。
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アフターストーリーと言っても18禁シーンが低く見積もっても8割方強占めるものではあるのだが、そこもイベントの差替えをせずに削除してしまっているため、ゲーム全体で見ればサブストーリーが追加されてはいるものの、その分アフターを含めたメインストーリーの量が減少してしまっている。
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ストーリーに関連して、PC版のあるサブストーリーでは18禁シーンを絡めた前後の流れがそのルートのストーリーに深く絡んでくるものがあり、そこも改変してしまっている。
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そのため、PC版で既にそのルートもプレイしていた場合、プレイヤーによっては違和感を覚えてしまうかも知れない。
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とは言え、PSPにそのままのストーリーを落とし込むわけにはいかず、さりとてストーリーに深く絡んでいる以上、他のストーリー上の18禁シーンのようにばっさり切り捨てる事も出来なければ、差し替えをする訳にも行かない事を考えると、違和感は否定出来ないが落とし所としては仕方ないと言うべきかもしれない。
評価点
追加サブストーリー
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若干世界観的にどうかと言わざるを得ないネタや本編に対してキャラクター描写の違和感も見られるが、その辺を気にしなければストーリー自体はバラエティ豊かとなっている。
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サブキャラクター視点の本編のあるルート後の後日談や、本編の補完、本編では見せなかった意外な一面が見られ、Oasisストーリーに至ってはストーリー中の選択によってはレスターがぶっ壊れるギャグストーリーとなっている。
PC版のBGMの使用
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PC版で評価の高かったBGMがそのまま使用されていることは大きい。
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以前PS2向けに発売された『はぴねす!でらっくす』(マーベラスインタラクティブ(現:マーベラス))では何故かBGMが総取っ替えとなり、PC版『はぴねす!』をプレイしていたプレイヤーからの評価は微妙と言わざるを得ないものであったことから、本作に対してもBGMの差し替えを危惧する声が見られた。
PC版から改良された点
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PC版では回想モードでエピローグと18禁シーンは任意で見ることが出来たが、それ以外の本編の場面はその前後でセーブしておかなければ見ることは出来なかったが、本作では一度誰かのルートをクリアした後なら共通である第一章と一度クリアしたヒロインルートの第二章、終章、エピローグそれぞれの頭から読み始めることが出来るようになった。
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前述の通り、セーブスロットが明らかに少なく、読み込みも頻繁なので、各ヒロインのルートの山場を見たいともなると終章頭からスキップしても相当時間を食ってしまうが、幾分かはその負担を軽減出来るのはせめてもの救いであると言えよう。
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ミュージックモードではPC版では曲の詳細情報が表示されなかったが、作曲者などの情報の他にヴォーカル曲であれば歌詞が曲と並行して表示されるようになった。
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テキストログに関して、ログに残っていればそのテキストの場面からプレイヤーが自由にストーリーを見られるようになったことで、誤って送ってしまった部分やもう一度同じ場面を見たいという時に限ってはPC版よりも融通が利くようになった。
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また、前述のバトルパート部分のテキストログも記録されるようになったことで文章が飛び飛びになってしまうことが無くなった事も評価出来る。
総評
携帯機で『祝福のカンパネラ』が楽しめるのは良いのだが、同時に読み込みやそれに伴う演出面などの問題点は作品の魅力をスポイルしかねない勿体ない要素と言わざるを得ない。
売りにしていた戦闘システムもPC版とは別ベクトルでの作業になってしまい、むしろ演出として用いていたPC版とは異なり、それさえもちぐはぐになってしまったことでかえって裏目に出ている。
PC版に比べるのは酷であるにしても何かと不親切で不便なシステム周りも地味ながらストレスに昇華される要因となっている。
だが、ここまで何だかんだと書いて来たが、作品そのものの世界観やキャラクターといった要素も含めてトータルで見ればPC版同様に決してクソゲーと断じるほどに酷い出来になっているゲームと言う訳でもない。
しかし、戦闘システム周りに関してはフォローのしようもなく、異常に多い読み込みなどの問題に関しても、せめてメディアインストールに対応していればこの辺の問題の解消とは行かなくとも軽減は図れたであろう事を考えると、手を抜いたと見られても仕方ないと言える。
とは言え、この手のゲームを一分一秒を争うような時にプレイすることはまず無いであろう事を考えれば、時間がある時にじっくりとプレイする分にはプレイし始めの頃はともかく、慣れてくれば存外気にならなくなってくると言う意見も少なくない。
作業感が強い戦闘システムも難易度は先述したように一部を除いて低く、他のゲームで時折見られる「作業感が強い上にやたら難易度が高い」ということはない。
そのため、アニメから入った方やPC版からのファンは勿論、それ以外で単純に何らかのきっかけで『祝福のカンパネラ』に興味を持ったと言う方でも時間に余裕があってなおかつ根気があると自負出来るならば手に取ってみるのも悪くはないだろう。
なお、自分の部屋などの周りをあまり気にする必要が無い空間でプレイするとしてもディスクアクセス音をしょっちゅう聞かされることになり、それのせいで物語への感情移入を阻害されてしまうということにもなりかねない。
物語をより楽しみたいのであればヘッドホンかイヤホンを付けてプレイした方が余計な読み込み音などを聞かされにくくなるので良いだろう。
余談
キャラクターソングについて
本作の各ヒロインルートのエンディング(スタッフロール)でかかる曲は後述のアニメのキャラクターソング(以下「キャラソン」)ではなく、PC版のキャラソンが流用されている。
各ルートの山場でPC版のキャラソンのアレンジBGMが使われていること、そして、大元のストーリーが変わっている訳ではない以上、そもそもPC版キャラソンが「各ヒロインルートのストーリーを踏まえて作られた曲」であることも理由だと思われる。
なお、エンディングでは曲名も歌い手の情報も表示されず、音楽鑑賞モードでは曲名は表示されるものの、やはり歌い手の情報は表示されない。
先に少し触れたが、本作発売前に放送されていたアニメではPC版とは違うキャラソンが用意されており、アニメキャラソン集「
coccarda
」も発売されている。
なお、このCDには各ヒロインのキャラソンの他にそれぞれのキャラクターのモノローグが収録され、CDではモノローグの後でキャラソンに繋げる形を取っている。
各キャラソンは基本的には各ヒロインメインの回の挿入歌という使われ方だが、トルティア姉妹のキャラソンのみ、第8話の特別仕様のオープニングで使われている。
なお、アニメキャラソンにはPC版のキャラソンの作曲を担当した「
Elements Garden
」は関わっていない。
参考までにアニメのキャラソンとゲーム(PC版)のキャラソンをまとめた。
キャラクター
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アニメキャラソン
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ゲームキャラソン
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ミネット
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みらくるみらい
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*twinkle*twinkle*
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カリーナ
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魔法それとも愛の魔法?
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White Crystal
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チェルシー
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清らかな誓い
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銀月 ~La lune de l'argent~
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アニエス
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夢よ、ひらけ!
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A ray of sunshine!!
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サルサ リトス ゴーレム |
夢のpreparation
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ふたりDEトルティア ~しあわせでいきましょう~ |
また、キャラソンとは離れるが、本作のDXパックに同梱されているグッズの中に「祝福のボーカルCD」が含まれている。
そちらにはElements Gardenが新たに曲を描き下ろしたデュエット曲「LOVEandPEACE」のカリーナとチェルシーが歌う「Cool Version」とミネットとアニエスの歌う「Cute Version」の2つが収録されている。
最終更新:2018年06月03日 16:30