SILENT HILL: HOMECOMING
【さいれんとひる ほーむかみんぐ】
| ジャンル | ホラーアドベンチャー |  
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| 対応機種 | プレイステーション3 Xbox 360
 Windows
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| 発売元 | コナミデジタルエンタテインメント | 
| 開発元 | Double Helix Games | 
| 発売日 | 2008年9月30日 | 
| レーティング | ESRB:M(17歳以上対象) | 
| 備考 | 日本未発売 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 洋ゲーらしい高難易度と残虐表現 大量にして深刻なバグ
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| SILENT HILLシリーズ | 
 
EVIL WELCOMES YOU BACK HOME
 
概要
世界中で高い評価を得ているホラーアドベンチャー『SILENT HILL』シリーズの続編。
元々は日本で開発されていたシリーズだが、本作は完全に海外のデベロッパにより製作されている。
開発は後に『Front Mission Evolved』やリメイク版『ストライダー飛竜』などを手掛けたアメリカのDouble Helix Games。
当初は「SILENT HILL 5」の仮称で発表されており、最終的にナンバリングこそ無くなったものの実質的な「5」にあたる。
北米・欧州で先行発売され発祥の地である日本でも発売が予定されていたが、なんと中止となってしまった。
そのため現在本作をプレイするには輸入版を手に入れるしかない。言語はもちろん英語で日本語字幕は存在しない。
なお、Win版であれば非公式だが日本語パッチをあてることで日本語化が可能。
ストーリー
アレックス・シェパードは軍の任務で負傷し病院に入院していたが、弟のジョシュアが失踪したことを知り、故郷シェパードグレンに帰郷する。
しかし数年振りに訪れた故郷は人影がなく、道路が所々崩れているなど異様な雰囲気に包まれていた。
アレックスは母親や幼馴染と再会しジョシュアの行方を探す内に、異形のクリーチャーや地獄のような世界に遭遇する。
やがてシェパードグレンとサイレントヒル、そして自身に関わる因縁に巻き込まれていくことになる…。
特徴
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本作では、シリーズでお馴染みの霧に包まれた街「サイレントヒル」だけでなくその隣町「シェパードグレン」も物語の舞台となっている。
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システムの変更
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従来の旧『バイオハザード』に倣ったようなカメラワークが必要に応じて動く方式から、常に主人公の背後を追尾するTPSのような方式に。
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銃撃も従来シリーズでは銃を構えると自動でエイムしてくれていたが、本作では手動でエイミングする必要がある。ヘッドショットでダメージ増加など、よりTPSの要素が強い。
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『4』でもかなりのモデルチェンジを果たしたが、本作ではよりTPS寄りに変化したことになる。奇しくもまた『バイオハザード』と似た道を歩むことに。
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ただ、ゲーム画面や打撃攻撃の面で言えば、本シリーズと生みの親を同じとする『SIREN』に近い。
 
 
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海外制作であるためか、戦闘の難易度は非常に高い。
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本作では弱攻撃と強攻撃が存在し、組み合わせによってコンボが発生する。クリーチャーごとに有効なコンボを見つけ出さないと雑魚相手でも苦戦は必至。
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銃撃は上述の通り勝手にエイムしてくれないので命中はもちろん、効果的な部位に当てるためにも自分で狙いを定めなければならない。
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またドッジ(回避)というアクションがあり、これを上手く利用して敵の攻撃をかわし隙を突いてコンボを叩きこむ必要がある。
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従来のようにダウンした敵を踏みつけてとどめを刺すことはできない。その代わり、スタン状態になった敵に近づいて強攻撃を使えば、武器に応じた専用の演出が発生してとどめを刺すことができる。
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それに反して謎解きの難易度は非常に低い。義務教育レベルの英語力があれば問題なく解ける。
 
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シリーズ恒例のマルチエンディングを採用
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これまでのシリーズと同様にマルチエンディングを採用している。分岐は単純で、数回ある2択の選択肢をどう選んだかによって5通りのエンディングを迎えることになる。
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これまた恒例のギャグEDであるUFO EDも存在。
 
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『2』に登場した人気クリーチャー「三角頭」こと“レッドピラミッドシング”の再登場。
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本作の発売に先立って公開された、映画版『サイレントヒル』の要素が逆輸入されている。
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雪ではなく灰が降っている、地面からマグマが覗いている等、街の雰囲気が坑道火災によりゴーストタウンになった映画版のものになっている。
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裏世界へ変貌する際、本作では床や壁が剥がれて空中に舞い上がっていく映画版の演出が採用されている。
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ブギーマンが映画と版同様に大量の蟲を引き連れている。
 
評価点
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グラフィック
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PS3/360のゲームとしてはそれほど美麗なグラフィックというわけではないが、裏世界や精神病院などのおぞましい雰囲気は非常によく感じられる。
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クリーチャーの外見も見ているだけで不安になる秀逸なデザイン。ただし種類は少ない。
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海外制作だが、『SILENT HILL』らしい不気味なクリーチャーのデザインは好評を得ている。
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ちなみに、シリーズおなじみの敵であるナースは、映画版のものに酷似した非常にセクシーなデザインになっている。この異様に妖艶なデザインに関しては、一応それらしき理由がある。
 
 
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音楽
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これまでのシリーズ同様、山岡晃氏が担当しており、相変わらず雰囲気にあったサウンドで評価は高い。
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あるボス戦では、戦闘中とは思えないほど美しく悲しい曲が流れるが、ボスの背景などを考えると実にマッチしている。
 
 
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シナリオ
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基本的なプロットは主人公アレックスが失踪した弟ジョシュアを探すというものだが、中盤辺りからサイレントヒルと教団が深く関わってきてシリーズファンにはニヤリとする場面も。
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本編ではあまり饒舌にストーリーが語られず、大量に用意されているメモを読んでいくことで背景が見えてくる作りになっている。
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ストーリーに関する伏線が序盤から複数張られており、周回する際に改めて気づくことになる描写も多い。そういった発見をしながら周回プレイをするのも楽しい。
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EDについてやブギーマンについての考察等、良く言えばプレイヤーに想像の余地を残している。悪く言えば投げっぱなし。
 
賛否両論点
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戦闘の難易度の高さ
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概要で説明したように、海外制作であるためか戦闘の難易度がこれまでのシリーズと比べて非常に高い。
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特にニードラー、サイアムといったクリーチャーは回避を駆使して戦う必要があり、アクションの苦手なプレイヤーには厳しい。後半になるとこいつらが複数匹同時に出てくる場面も。
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『4』のように無敵時間が発生するタメ攻撃も存在しない。
 
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これまでのシリーズのように銃弾を無限に持つことができない。
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本作では銃に装填できる弾数の2倍までしか銃弾を所持することができないため、銃弾の総数がわからない初回プレイではついつい銃弾をケチってしまい、結果的に難易度が上がってしまう。
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『4』でも持ち物制限のために銃弾を持てる数は少なかったが、ここまで少なくはなかったこととアイテムボックスが利用できることそして役立たずの銃より打撃武器の方が遥かに優秀なことからゲームクリアの面ではあまり困らなかった。
 
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本作の敵はドッジを使用することを前提とした素早い連続攻撃を仕掛けてくることが多く、操作になれない内は為す術なくやられてしまうことも少なくない。
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また、銃を装備しているとガードができず、敵に近づかれたらすぐに武器を切り替えないとハメ殺されることが多い。その分、遠距離から戦う分にはヘッドショットを狙って楽に倒すことができるが。
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敵が強い分、敵と遭遇する恐怖は過去作以上ではある。
 
 
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映画『ジェイコブスラダー』に酷似したシーンがある。
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冒頭アレックスがストレッチャに固定されて精神病院を移動するシーンは『ジェイコブスラダー』の1シーンそのもの。
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元々『SILENT HILL』シリーズ自体『ジェイコブスラダー』の影響を受けていることは想像に難くないが、本作はあまりにもそのまま。
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とはいえ、海外製作のゲームにはこのような映画やドラマのオマージュと思われる描写は良くあることなので、受け取り方次第ではある。
 
 
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過激な暴力シーン
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海外製作ということもあり一部過激な暴力シーンが存在する。
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最初のステージである病院からして、裏世界には(グラフィックはそこまでリアルでないとはいえ)縦に真っ二つにされた死体があったりする。
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全体を通して、本作は従来よりは直接的な残虐表現が多めである。
 
 
問題点
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大量のバグ
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大小あわせて様々なバグが存在する。
余談で後述する通り、日本版発売中止の要因となったほどである。以下に代表的なものを列挙する。
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なにか調べるときに表示される「Examine」表示が消えずに残り続ける。
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画面に表示されるボタン表示と実際に押すボタンが一致しない。
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ムービーから切り替わる時に暗転したまま表示が戻らない。
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ボタン連打でフリーズ。
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ラスボス戦でなぜかラスボスが消えてしまいクリア不可に。
 
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特に有名なのがPS3北米版におけるボタンバグ。100%再現するのでちょっとテストプレイすれば気付きそうなものなのだが…。
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初期設定で×ボタンに2つのアクションが振られている等、ボタン配置がおかしくなっている。
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キーコンフィグで「Restore Default」を実行すれば正常な配置になるが、ゲーム再開時やムービー後などにまた初期のおかしい配置に戻ってしまう。その度にキーコンフィグを実行する必要があり非常に煩わしい。
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一応、手動でキーコンフィグすればクリアまで再発することはない。
 
 
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全体的に動作がもっさりしている
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ドアを開けるときに少しでもずれているとドアを開けてくれないなど、操作性はあまりよくない。
 
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三角頭の扱い
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シリーズの人気キャラの三角頭だが、本作ではイベントシーンでちょっと登場するのみで戦闘は発生しない。
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日本版のパッケージでは三角頭が単独で描かれているものになる予定だったようだが…これではパッケージ詐欺である。
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ただ、アレックスを襲ってこない理由は本作のストーリー的には適切であり考察の余地もあるため、全く意味のない出演ということはない。
 
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なお、本作の実質的な次回作『SILENT HILL: DOWNPOUR』では開発者はこの件について「本作の犯した過ちのひとつ」とし、『DOWNPOUR』に三角頭を登場させないことになったという。
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『DOWNPOUR』にもブギーマンは登場するが、三角頭とは全くの別物となっている。『Book of Memories』でもこの2体は区別されていた。
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しかし、同作のギャグエンドには本来の三角頭がちゃっかり出演していたりする。
 
 
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UFOエンドについて
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従来ほどのはっちゃけは無くかなりあっさり。本編の流れからすると充分おかしい展開だが、今までのようなぶっ飛んだ内容を期待すると拍子抜けする。
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それだけならともかく、今回は「2周目以降に○○する」と言った特殊な条件ではなく他のエンディング同様に選択肢で分岐するため、1周目でいきなりこのエンディングを迎えてしまう可能性もある。
 
総評
海外制作となった本作。戦闘難易度などが洋ゲーに合わせ上がった部分もあるが、概ねこれまでのシリーズと似た雰囲気で安定してプレイできる。
ただ進行に支障をきたす多数のバグと過激なグロシーンが存在するので、プレイの際は細心の注意をしよう。
余談
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タイトルの「HOMECOMING」とは「帰郷」の意味で、主人公アレックスの帰郷から始まる物語である事を示している。
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しかし、本作自体はシリーズ発祥の地である日本において発売中止となり、タイトルの「帰郷」が果たされなかったという皮肉な結果に。
 
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日本版の発売が中止となった理由については公式曰く「日本の市場に合った製品にならなかった」ということらしいが、特にその大きな一因は「残酷過ぎる描写」にあると思われる。日本生まれのシリーズなのに「日本市場に合わない」のは本末転倒な気もするが…。
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映画版『サイレントヒル:リベレーション3D』のパンフレットでは、「元々日本で受け入れられるかどうか危ぶまれていた上に、ローカライズ中に重大かつ致命的なバグが発覚したため、バグ修正の労力が期待される売上と釣り合わないと判断され発売が見送られた」という旨のコメントが記載されている。
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Win版については現在SteamでDL版が配信されているが、日本からは「おま国」のため購入不可。しかし、海外の一部販売サイトでは日本からのSteamキー購入並びに認証自体は可能と言う報告も上がっている。また、前述の日本語化MODも適用可能。あらかたのバグを修正するパッチも熱心なユーザーによって制作された。
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ちなみに、オーストラリア版などは一部の残酷描写に規制が入っている。死体が消滅したり画面が突然暗転したりといった、かなり強引な修正ではあるが。
 
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直近の『ZERO』よりシリーズは海外製作の体制が採られるようになり、以降は『Book of Memories』までAC版を除いて一貫されていた。
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しかし海外への外注になったことでどの作品も大なり小なり作風が従来から変化しており、難易度の急激な上昇や旧作との乖離から日本製の初期シリーズほどの評価は得られず、『Book of Memories』を最後にシリーズは長期休止へと入る結果となった。今となっては本作の作風や日本発売を巡るごたごたはシリーズの怪しい雲行きを暗示していたと言えるかもしれない。
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本作が出た2000年代後半から2010年代初期はゲーム業界全体に海外を意識し過ぎる風潮があった時期であり、海外向け調整が裏目に出たり、別物に変貌させて評価を落としたシリーズもいくつかあったほどである。本シリーズもその流れに乗ってしまったのだろう。
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2020年代に入ってシリーズが再始動するが、こちらの作品群では海外企業と共にコナミ自身や旧作のスタッフも再び開発に携わるようになっている。
 
最終更新:2025年01月19日 13:01