SILENT HILL ZERO
【さいれんとひる ぜろ】
ジャンル
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ホラーアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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発売元
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コナミデジタルエンタテインメント
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開発元
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Climax Studios
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発売日
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2007年12月6日
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価格
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5,229円(税込)
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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廉価版
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コナミ ザ・ベスト 2010年1月28日/2,800円
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配信
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2010年1月28日/2,410円
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判定
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なし
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SILENT HILLシリーズ
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概要
『サイレントヒル』シリーズの5作目。
ただし、開発はコナミではなくイギリスのClimax Studiosが担当している。
時系列的には「ZERO」の名の通り『1』の事件より前で、『1』の前日談となっている。
海外版のタイトルは『SILENT HILL: ORIGINS』であり、「ZERO」のナンバリングは付かない。
海外ではPS2版も発売されており、キャラクターのモデリングが若干変更されている。
ストーリー
トラック運転手のトラヴィス・グレイディがサイレントヒルへ向かっている途中、不意に何者かが視界を横切る。トラックを止めるとそこには1人の少女が立っていた。
無言で立ち去った少女を不審に思ったトラヴィスはその後を追う。町外れまでたどり着き、燃えさかる一軒家と辺りを窺う不審な女性に気づいた直後、少女の叫び声が響く。
意を決したトラヴィスは炎の中に飛び込み、全身に火傷を負った少女を助けるが、そこで意識を失う。トラヴィスが意識を取り戻したとき、彼はサイレントヒルにいた…。
新システム
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今作では近距離武器にも使用回数に制限があり、何度も使い続けていると壊れて使えなくなってしまう。
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その分多く武器を入手することができ、さらに素手でも戦うことはできるので、武器が尽きて手詰まりになることはない。
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余談だが、本作主人公のトラヴィスは「素手で戦える」「無数の武器を携行できる」「(武器が弱いのではなく)武器を破壊してしまうほど力が強い」などという点から、ある意味では『サイレントヒル』シリーズ最強の主人公ではないかと噂されている。ただ、後述のような理由からシリーズ最弱ではないかというプレイヤーもいる。
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「素手攻撃ができる」「武器が耐久性」という点は後の『DOWNPOUR』『Book of Memories』でも採用された。
評価点
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入手できる武器が豊富。テレビなどの意外な物もある。
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ただし、何故か伝統の鉄パイプはない。
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一部の武器はトラヴィスの主観的な意見も見られたりして面白い。
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グラフィックはPSPの作品のなかでもきれいな部類。ムービーもとても美麗。クリーチャーにも気合いが入っている。
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シリーズの特徴である哀しきシナリオは健在。本作の主人公のトラヴィスのあるトラウマは過去作に劣らない怖さと不気味さを味わわせてくれるだろう。
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また、『1』の登場人物も残念ながら出番は少ないものの、知っているとニヤリとさせてくれる話をしたりメモを残すことも。
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良質なホラー演出
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上記の通り、過去作と違い海外制作となっている本作だが、『SILENT HILL』らしいおぞましい雰囲気と「静」の恐怖は健在である。
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暗闇の中足音だけを鳴らして徘徊する影の敵や、一瞬だけ姿を見せて画面奥に消えていく敵など、不安を煽る恐怖演出が非常に上手い。ジャンプスケアもほとんど使われていない。
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ゲーム中盤で訪れる劇場のある仕掛けは、独自の設定を活用した斬新な演出として評価が高い。
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システム面
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従来のメニュー画面でのアイテム使用方式だが、武器に関しては『4』のように十字キーで即座に切り替えられるようになっている。
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『4』で採用されたゲーム中でのHPゲージの表示は無くなり、従来通りメニュー画面で確認する形式に戻ったが、ピンチになるとトラヴィスの心音が鳴る演出により、回復の目安がわかりやすくなった。
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敵や落ちているアイテムだけでなく、開けることが可能なドアに対しても主人公が反応するようになった。
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やり込み要素の追加
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条件を満たすと手に入るコスチューム、メモ、称号を収集するやり込み要素があるので、周回プレイへの配慮もなされている。
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ユニフォームもある。着ていると様々な恩恵が得られるものもあり、外見も様々に変化する。
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エンディングは過去作同様にマルチエンディング。エンディングに応じて特典武器が貰えるというご褒美も。
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今回は1周目や通常プレイではトゥルーエンド。2周目以降に条件を満たすとバッドエンドかUFOエンドという『3』と同じ形式を取る。
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バッドエンドもただの後味の悪い結末ではなく、あるクリーチャーの正体を示唆する意味深な内容になっている。
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そして、3種類のエンディング全てでエンディング主題歌が違うというシリーズ初の豪華な試みが為されている。
UFOエンディングは「サイレントヒルのうた」ではないので期待しないように。
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上記で触れたが『4』で廃止されたUFOエンドも復活。以降の作品でもギャグエンドは例外なく収録されるようになった。
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流石に『3』ほどのインパクトは無いものの、何時に無い和やかな内容で従来とはまた違った雰囲気を醸し出している。
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また、『2』の「いぬエンド」に出てきた”あれ”がまさかの再登場。以降の作品のギャグエンドにもしばしば登場し、宇宙人と並ぶ本作の裏の顔役となる。
問題点
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メインとなる街が従来に比べて狭い。
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過去作では霧に包まれた街を探索することが醍醐味の1つでもあったが、本作では『1』よりも狭く感じる上に1つのエリアしか存在しないため、『1』『2』をやった人にとっては違和感がある。
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本作は街を最終的に1周するゲーム構成であるため、どうしても狭く感じる。
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その代わり建物内はこれまでよりも広く、ボリューム面では決して過去作には劣らない。
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PSPのスペックの問題なのか、たまに処理落ちが発生して動きが鈍くなる。
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他のシリーズ作品とは違い、難易度変更機能がない。
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本作はやや大味なバランスであり、『2』と比べても最終盤はこちらの方が低めに見えてしまう。
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本シリーズの大事な要素の1つである「裏世界」の扱い。
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今作の裏世界は、鏡を使って行き来が可能で、現実世界ではいけない場所へ行くための通り道として登場し、フィールド探索と謎解きの一部に組み込まれている。
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「鏡の向こう側に恐ろしい別世界がある」というのはホラーでは割とポピュラーな設定ではあるが、従来作における裏世界はどちらかというと否応なしに引きずり込まれるというやや理不尽な側面があり、その側面がシリーズの世界観の一員を担っていた。
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そのため、ともすれば利便性すら感じる本作の裏世界の扱いに対する違和感の声も存在する。
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表世界で取った行動が裏世界に反映されるといった演出は面白く、別世界を行き来して攻略する点を評価する声もある。これに関しては賛否両論と言ったところ。
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一部極端なゲームバランス。
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序盤は回復アイテムが少ないが、後半からはかなり多くの回復アイテムが拾えるようになってしまう。『4』のような特別な理由も無い。
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ナースなど素手ではめ殺せる敵もいれば、トラビスのモーションよりも素早く攻撃できる敵にはこちらがはめ殺される事もあったりする。
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ボスのほとんどが近距離での攻撃手段しか持っておらず、遠距離からの射撃で簡単に倒せてしまう。
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『2』のボスも大抵が近距離攻撃しか行わなかったが、戦闘場所が狭いこともあってそれでも脅威だった。本作は敵に接近されても逃げる余裕があるので、あえて近距離戦を挑まなければまず苦戦しない。
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ただし、ゲーム後半のあるボスは、遠近ともに強力な攻撃を持ち戦闘場所も狭いという屈指の強敵となっている。ラスボスより強いという声も。
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近距離武器が有限という初の試みでバランス調整が難しかったのか、普通に進めていれば武器が滅茶苦茶余る。屋外の無数のモンスター相手にでも使用しなければ使い切ることはまずない。
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武器が増えすぎると咄嗟の武器切り替えが不便になる。メニュー画面から武器を選択すれば解決する問題ではあるが面倒なことに変わりはない。
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一部進行不可能になるバグがいくつか存在している。普通に進めていれば遭遇しにくいのが救いか。
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シナリオ面
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主人公のトラヴィスはあるトラウマを抱えており、サイレントヒルを進むうちにそのトラウマを思い出していくという『2』を意識した物語進行となっている。
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ただ、このトラウマ自体ストーリーとはあまり関係がなく、感情移入の材料としては乏しい。
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トラウマを克服したかのような描写も特に無くラスボスを倒してあっさりエンディングで立ち直るため、ここはもっと丁寧に作って欲しい所だった。
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そもそも『2』は主人公のトラウマ自体が主軸となっていたが、本作はあくまで敵である教団の陰謀やアレッサが自身の分身を生み出すまでの経緯、すなわちどのような形で『1』の物語が始まったのかを描くことに主軸が置かれており、主人公は『1』における事件とは全く関わりのない第三者的立場に置かれている。
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これまでの主人公は皆、サイレントヒルそのもの・もしくはストーリーの主軸に何かしら大きく関わりがあったのだが、トラヴィスにはそう言ったものはほとんど無い。たまたま通り掛かった際に偶然事件に巻き込まれ、そこでサイレントヒルのトラウマを思い出しただけである。
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Amazonのあるレビューでは「まったく無関係のオッサンがただのお節介で突き進むお話」と称されているが、言い得て妙である。
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『1』に関する話は終盤でしかされない上『1』を知らないとよく分かりにくい描写になっているため、先に『1』をやった方が分かりやすい。
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言い換えると『1』のネタバレがあまりされないということであり、未経験者でも中盤まではトラヴィスのトラウマを主軸としたストーリーであるため、知らなくても問題無く手を出せるということでもある。
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「日本刀」が再び武器として登場しているが、アメリカの街中のあちこちに落ちているというのは違和感が強すぎる。
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性行為を示唆させる描写が存在する。
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これまでのシリーズで露骨に出てくるどころかそういった描写すらもほとんど無かったため、本作の中でも一番違和感が強い。ちなみに本編中で必ず見ることになる。
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ここの描写は本編に全く関わらないため、はっきりいって全く必要ない。
総評
制作陣が変更されたためか、一部システムにも難や違和感があり、それ故にシリーズ他作品をプレイ済みのプレイヤーの多くが違和感を感じる出来となってしまっている。
ただし、初めて本シリーズをプレイする分には問題ある出来ではなく、佳作といったところか。もう少し作り込まれていれば評価はもっと上がっていただろう。
余談
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本作の主人公であるトラヴィスは後に『HOMECOMING』にも登場している。過去作の主人公本人が直接登場するのは本シリーズでは珍しいケースである。
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また、映画版『サイレントヒル:リベレーション3D』でも物語のラストに登場する。
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本作以降のシリーズ作品は海外企業への外注となり、携帯アプリ版やAC版を除いてコナミが開発を行うことはなくなったため、本作を境に作風が洋ゲー寄りに変化している。
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本作のデベロッパーであるClimax Studiosは、その後も2010年に発売された『1』のリ・イマジネーション作品である『SILENT HILL: Shattered Memories』の開発を担当している。
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一方、PS4で発売が予定されていた『Silent Hills』は『メタルギア』シリーズで有名な小島プロダクションが開発を行うということで久々の国産サイレントヒルとなるはずだったが、開発中止になってしまった。
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『1』では儚げな雰囲気だったアレッサやかなりの美女だったリサが、本作ではかなり癖の強い顔付きになっていたり、ここら辺はいかにも海外製といったところである。
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2020年10月に本作及び『Shattered Memories』を手掛けたゲームライター兼ゲームデザイナーのサム・バーロウ氏が、『Shattered Memories』の精神的後継作品を企画中であるとメディアに明かした。
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バーロウ氏はこの精神的後継作品について「コナミに向けたものではなく、なおかつ『SILENT HILL』シリーズのIPも一切使用しない」としている。
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なお、バーロウ氏は現在2022年発売予定のアドベンチャーゲーム『Immortality』の制作に取り組んでおり、この精神的後継作品は「次の次の作品」になるとのこと。
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ゲーム序盤に、人体模型に正しい順番で臓器をはめ込む謎解きがあるのだが、そのヒントのメモが日本語版ではあまり役に立っていない。
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「Inside=Intestine(腸)」「Stevie=Stomach(胃)」というように、メモに書かれた英単語に合う名称の臓器を順番に配置すれば攻略できるのだが、ゲーム中のアイテムは全て日本語表記のためメモの英単語に対応できていない。勘や総当たりでも攻略できる難易度なのが救い。
最終更新:2024年05月14日 10:00