エルミナージュIII ~暗黒の使徒と太陽の宮殿~
【えるみなーじゅ すりー あんこくのしととたいようのきゅうでん】
ジャンル
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ロールプレイングゲーム
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル
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メディア
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UMD
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発売元
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スターフィッシュ・エスディ
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開発元
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スターフィッシュ・エスディ オペラハウス
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発売日
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2011年8月4日
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価格
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6,090円(税込)
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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自由度の高さは健在 アイテム集めや図鑑埋めの楽しさも健在 新要素も導入 ゲームバランスにやや難有
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エルミナージュシリーズリンク
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概要
「スターフィッシュの奇跡」と呼ばれたダンジョンRPG『エルミナージュ』シリーズの3作目。
これまでのシステムを継承しながら、スタイルロード、時間と天候、EXスキルなどの新要素が導入されている。
発売前
エルミ3の情報が公開されるにつれ、当然ながらファンからのエルミ3への期待は高まっていった。
特にプリセット(最初から用意されている)キャラクターに対してのキャラ画像を募集し、受賞者の画像をゲーム内で採用する企画は過去作ファンには嬉しい限りであろう。
しかし、2011年初頭にファンの間に耳を疑う情報が流れる。
なんと、エルミの生みの親、育ての親とも言うべき開発者である小宮山大介氏がスターフィッシュ・エスディをクビになったというのだ。
ツイッター上の氏の発言からその経緯をまとめると、「開発が難航していたため会社に発売延期と業務改善嘆願を出したが、それが受け入れられずに解雇されてしまった」ものと思われる。
小宮山氏はディレクター・シナリオ・敵キャラデザイン原案などをほとんど一人で担ってきており、「そんな功労者をクビにするとはどんな判断だ!」「エルミ3の出来は大丈夫なのか?」とファンの間には不安とスターフィッシュへの憤りがつのっていた。
過去作との変更点
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「スタイルロード」「サウンドロード」の導入
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画像を取り込んでマイキャラの画像として表示させる「フェイスロード」の機能に、さらに大きい画像を表示させる「スタイルロード」も導入された。
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プリセットキャラにも固有のキャラ画像が用意されることになった。特定のイベントをクリアすればどのキャラでも使用可能になる。(3DS版ではプリセットキャラの画像は削除
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加えて、二つ名・性格コメントも記入できるようになり、自キャラクターへの感情移入がさらにしやすくなった。二つ名や性格コメントは面倒くさければ省略できるのも地味にありがたい。
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好きなBGMを利用できる「サウンドロード」も導入されている。
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時間制限のあるダンジョンを除いたBGMを全て変更可能に。
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3DS版ではこの機能はついていない。
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「エクストラスキル」の導入
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「エクストラスキル」とは、1人のキャラに1つだけつけられる特別なスキル。キャラメイクの時に決定できるが、後から変更することも可能。これにより、キャラメイクの幅が広がるとともに、戦闘バランスも変化した。
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例えば魔術師の場合、「精霊契約」で属性魔法の威力を大幅に上げるか、「魔術の真髄」で敵の抵抗力を無視して安定したダメージを与えるか、といった選択を任意で行えるようになった。
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契約したモンスターをそのまま冒険者として登録することが出来る「魂の盟約」も重要なスキルの一つであろう。苦戦したモンスターがほぼそのまま仲間として加えられたり、今まで出来なかった盗賊以外で敵装備品を入手出来るようになったりと新たな楽しみ方が生まれている。
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敵の中にもエクストラスキルを使ってくる者も存在するので、こちらのキャラが高レベルになっても一方的な虐殺にはならず、熾烈な戦いになることが多い。
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モンスターのグラフィックの一部が新たに書き下ろされた。これまで敵グラフィックの多くが『ウィザードリィ エンパイア』シリーズからの流用だったが、今回はかなり変更されている。
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「フロアマスター」の追加
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ほとんどのダンジョンには「フロアマスター」という敵がうろついている。初めて入ったダンジョンなら桁違いの強敵であることも多い。その上、プレイヤーを発見すると追跡してくるフロアマスターもいる。そのため、レベル2桁(エンディングを見られるレベル)程度では、探索の際フロアマスターの動向にも気をつける必要がある。
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また、一部ダンジョンのフロアマスターには後述の「大魔公」の一人のメノリストや、物語の真相に関する情報が図鑑で見れる「ライブラリアン」の一人がうろついてたりする。前者は選択肢で戦闘の回避が可能だが後者はぶつかったらおしまいである。
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「天候」と「時間」の概念の導入。これらは単なるお飾りではなく、ちゃんとギミックとして機能している。
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天候は魔法の威力を左右する。また、ある天候のときには水没するダンジョンや、最初の一回はある天候でないと行けないダンジョンも存在する。
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ダンジョンも昼と夜では地形が変わるところがある。また、モンスターの出現傾向も変化するので、昼だとたいした敵がいない場所が夜になると一変危険度が増す、ということもある。
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プレイヤーやモンスターの性別に「?」が追加。これにより、「男の娘」「漢女」でさえも作れるようになった。
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オリジナルダンジョンを作成出来る「ダンジョンロード」が追加。
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必要なイベントをクリアすれば好きなときに1マップ分のダンジョンを作成することが出来るようになる。このダンジョンのみ出現するモンスターやアイテムも存在する。
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育て上げたパーティをボスとして配置できる。ある程度行動を指定出来るためストーリー以上の敵として用意するのも可能に。
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作成したダンジョンをデータにして他プレイヤーに渡すことが出来る。擬似的にプレイヤーパーティ同士の対戦も楽しめるため、事実上のエンドコンテンツとも言える。
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3DS版ではダンジョンロードが削除されており、ランダム生成ダンジョンが一つだけ設置可能と事実上格下げ。プレイヤー同士の対戦も不可能。
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新アイテムの追加、旧アイテムの削除によるバランス調整
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新アイテムが多数追加された一方で、これまでの作品に出たあまりにもお手軽かつ強力すぎるいくつかのアイテムは削除ないし仕様変更。これにより、それまで日の目を見なかったアイテムも注目されるようになった。
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また、PSP版2で残念な点といわれた敵専用アイテムのイラストがなかった点も解消され、全てのアイテムにイラストがつけられた。
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周回要素の強化
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エルミナージュシリーズでは周回要素が存在しており、周回を重ねるごとにプレイヤーに有利な特典が付く。
中でも本作は従来作にも増して周回特典が強力なのだが、すぐに周回を重ねられるよう改善されている。
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エルミ1・2では「拠点の王の御触れに従ってクリアアイテムを集める」というものだったが、今回は4つのルートがあり、それぞれの方法で目的を果たすことになる。その内の一つはフェイムを必要とせず、あるアイテムさえあれば開始から1時間もかからないうちに最終目的のダンジョンに到達できる。
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そう言うと非常に簡単そうだが、1周目ではかなり手に入りにくいアイテムである。また、あまり早く最終目的のダンジョンに向かうと他のルートのイベントがこなせなくなり、その周では戦えない敵も出てくる。
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周回すると、レアアイテム出現確率が上昇する代わりに一旦最終目的のダンジョンやクリア後のダンジョンに入れなくなるため、イベントはそっちのけでレアアイテムを集めたいという人に特に好評であった。
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また、フェイムを消費することで強化される武器もあるため、フェイムを消費しないこのルートはその点でも重宝されている。
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特に今回は周回するごとに神々の加護を得られるアイテムを獲得できるように変更されたため、周回が従来にもまして重要な意味を持つようになった。
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システム面の改善
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プレイ時の読み込みの速さは相変わらずだが、ゲーム起動時の読み込みも速くなっている。
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敵の先制攻撃を受けてもコマンドリピート機能がリセットされなくなった。
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セーブデータも3つまで保存できるようになった。
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DS版2で導入された行動順指定が導入された。
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フリーズバグはほとんど解消された。バグそのものは残っているが、不快なものは少なく、有用なものが多い。とはいえ、後述するような問題が生じているのだが。
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後にDL版や3DS版(こちらもダウンロード限定)が配信された。
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それぞれバグ修正やエクストラスキルの調整、スキル習得が出来るイベント追加など大きな変更点があり。
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UMD版含めた3種類共に仕様が大きく異なる場合があるので購入の際は要注意。
評価点
新要素
これまでの自由度の高さ、よく考えられた背景設定、豊富なやりこみ要素、職業バランスのよさは相変わらず。
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もともと完成度の高いゲームシステムとはいえ、この「相変わらず」というのが難しいところである。3作目(リメイク・移植を含むと6作目)ともなると「相変わらず」だとマンネリになりがち。かといって変に手を加えるとおかしな方向に行くことも多いのだが、「相変わらず」と新要素を上手く融合させている。
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ストーリー的にも廃地(後述)が舞台であることやキーパーソンであるヒズベルトの変化などといった新たな展開だけでなく、特に1とのつながりを連想させるイベントも見られる。
難易度
エルミ1・2と比べると難易度は高め。しかし理不尽ではない。
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盗賊の罠解除率は以前の作品に比べてやや低下。その上、ほとんどのダンジョンに石のマスがあるため、Wiz伝統の「テレポーター発動→石の中ロスト」の危険性も上昇。
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時間制限マップや転移魔法禁止マップもいくつかある。これらのマップではセーブできない。
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エクストラスキルの追加によって、味方は強化にプレイヤーの好みを反映させやすく、一方敵も強くなって高レベルになってもヌルゲーにはならないよう配慮されている。エキストラスキルは敵専用の強力なものもあるため、数値以上に手強い敵も多い。
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クリア後の追加ダンジョンのボスである「大魔公」は、従来作ではこちらのレベルが200ぐらいになる(少しやりこめば簡単に達成できるレベル)と完全に名前負けする程度の強さだったが、専用EXスキルや純粋な強化もあり、その名にふさわしい強敵となっている。中でも4人の大魔公は従来作はもちろん、本作のそれと比しても桁違いの強さを誇り、平均レベル数百であっても油断すると全滅させられる。
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なお、周回には大魔公を撃破することが条件となっているが、前述の4人は対象外。そのため、周回して力を蓄えるも挑戦してみるのもよしである。
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難易度が上がったとはいえ、ほとんどの場所でセーブ可能なことや救済策の多さから、Wiz系の中では易しめな方である。
賛否両論点
バランス調整
バランス調整が良い面に働いた所もあるが、一方で雑な点も散見される。
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その最たるものがアイテム「悪魔の貯金箱」。今作のゲームバランスを物語る一品である。後述の通り修正されたため、意図した調整では無いのだろうが、それを差し引いても強烈な存在である。
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これは「使用者のレベルを1にする代わりに、そのキャラの全ての経験値と等しい値を所持金に加算する(経験値そのものは据え置き)」というもの。エルミナージュシリーズでは所持金を経験値に等価交換できるシステムがあるため、貯金箱の使用→全額寄付→貯金箱の使用→……を繰り返すだけで、所持金が2倍、4倍、8倍……になり、それを経験値に変換してレベルアップ、一度もダンジョンに入っていないのにレベルMAX(最大レベルは万単位、経験値数十億)というキャラの出来上がり。新規作成キャラ(レベル1、所持金200)でも「全額寄付→貯金箱の使用」を25回繰り返すだけで経験値がカンストする、と言えばその無茶苦茶ぶりがわかるだろう。
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当然、このアイテムの扱いをめぐってプレイヤー間で激しく賛否をめぐる議論が交わされた。「ゲームの寿命を縮める」「邪道だ」という意見もある一方で、「サブパーティの強化に便利」「錬金術師を生かしやすい」などの意見もあり、完全に賛否が割れた。
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DL版では「経験値を0にして所持金に変換する」ように修正されたため、想定外・不具合だった模様。
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それなら「悪魔の貯金箱」さえあればプレイヤー無双状態かというとそうでもない。
周回すると「不思議な栞」がはさまれ、敵のレベルやHPが2倍になる。もちろん、周回するごとにさらに2倍されるため、敵のレベルやHPも最大8倍まで強化される(ただし、簡単に解除できる)。そうなると異様なまでに手強いモンスターが出てくる。
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また、レベルの上昇により一部の敵が持っているカウンタースキル「つばめ返し」の発動確率も尋常ではなくなり、こちらの前衛は後衛を守る盾代わりにしかならないことも。それに加えて敵専用スキル「つばめ殺し」との併用によって侍すらあっさりと突破される。
もっとも、全ての敵が「つばめ返し」を持っているわけではないので戦士など前衛系職業が完全に空気になったわけではなく、「つばめ殺し」も通常攻撃したときのみ効果が発動するため対処法は存在する。
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特定条件で敵のアイテムを無限に盗めるというバグもあるのだが、「悪魔の貯金箱」があまりに強烈過ぎるため、こちらはあまり議論になっていない。
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とは言え高額なアイテムを持ったモンスターで荒稼ぎできたり、錬金素材の錬度が高くなるまで変更することが可能とこちらも大概だったりする。
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こちらもDL版では修正。
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最もPSPDL版もパッチ前は一部のアイテムが入手出来ないなど、今作はゲームの楽しさを奪ってしまうようなバグが多くなってしまったのは否めない。
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前述の神々の加護を得るアイテムを取るにはある場所に行くまでの間「不思議な栞」を一枚ははさんでおく(=敵のレベル、HPが2倍になる)必要がある。2のときからそうだったのだが、敵のレベルが強化されるからといって得られる経験値やお金も増えるわけではなく、その点を不満に思う人も少なくない。今作はHPも倍になるためブレス攻撃の威力がより強烈に。
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とはいえ、神々の加護は非常に強力な能力であると同時に加護を得るアイテム自体が優秀な装備品でもあるため、このアイテム自体が「栞を挟んだプレイによる報酬」と考えることもできる。
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実際、神々の加護を得ることを考えるレベルに育ったパーティ・装備などの資産があれば、2倍の状態でも詰むほどには苦戦はしないはず。
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フロアマスターは序・中盤はかなりの強敵なのだが、倒したボーナスのようなものがあるわけでもないことに不満をおぼえる人も。ただ、フロアマスターの多くは固定されているので、こちらのレベルが上がれば狙った敵の召喚契約や盗みに便利という見方もある。
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DL版限定ではあるがスキル習得できるイベント追加により一部の職が割りを食う形になっている。
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司教、遊楽者、巫、忍者は元々のスキル量の多さから習得出来ない。
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その中でも「結界」「警戒」がオンリーワンでなくなった巫、忍者が悲しいことになっている。
シナリオ面
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2でも賛否が割れたのだが、話の真面目な時とギャグな時の落差は健在。特にパーティメンバーとなる2人のキャラをめぐるイベントは強烈の一言に尽きる。
一人は「三年殺し」、もう一人は「ブルーレイン」がカギである。
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「三年殺し」
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もう何も言わずに下の動画を見てほしい。
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「ブルーレイン」
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アイテム図鑑を見ればわかるのだが、青縞模様の女性用下着、いわゆる「縞パン」である。
縞パンにそんな名称を付けるだけでもアレなのだが、それに輪をかけておかしいのがその説明文。
君のお願い断れないから 今日で3日目ブルーレイン
クンクンしないで 被っちゃダメダメ
お口を開けて何するのぉ!?
君はホントに頭がおかしい こんなに可愛い私がいるのに夢中になるのはいつもソレ!
ブルーレイン 青の縞々 いつになったら交わるのかな
ブルーレイン 無邪気な笑顔 返すときは口移しだよ?
…かける言葉が見つからない。
イベント面でも、女装趣味の少年から持ってきてほしいと頼まれたり、怪盗紳士風の敵が何故か所持していたり、真ラスボスの従者が頭に装備していたりと妙にネタが豊富である。
ちなみに、この「ブルーレイン事件」の首謀者は恐らく小宮山氏であろうと思われる。
チームラとの対談時に小宮山氏は「こういうお遊びがあってもいいよね?という感じで、性能的にも必須にはしていない」と言い訳して語っている。
もっとも、「解雇時のゴタゴタで直す余裕などなかった」「変態紳士の小宮山氏なら仕方ない」「真面目な時は本当に真面目な文を書くから、多少はね?」と氏を擁護する声の方が多いが。
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問題点
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デタラメすぎる行動順・異常なほど高い奇襲率
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一応敏捷値が影響するようだが、敏捷値差5、レベル差100倍以上ある相手にも平気で先手がとられる。味方の行動順は指定できるが当然敵が割り込んでくるため「厄介な敵を先手を取って倒すための素早いキャラ」という他のRPGならごく普通に存在するキャラが存在しえない。
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それだけならまだ擁護のしようもあるが、レベルも敏捷値も大幅に下の魔法使い3体全てに先手を取られ最強魔法を連発され全滅ということもザラにある。本当にテストプレイしたのだろうか?
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また奇襲率も異常に高く、大体2割の確率で奇襲される。
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奇襲回避能力を持つ忍者や召喚モンスターを入れれば確率は下がるが絶対ではない。この2点に限らず、本作のバランス調整は全体的にかなり雑である。
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一部の敵との召喚契約がかなりきつくなった。
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というのも、今回、召喚契約に必須である闘士の「連撃」の仕様が変更されたため。
これまでは1度でも「連撃」が出れば、次のキャラの攻撃まで相手は全ての耐性を失う&召喚契約の抵抗が20%減少したのだが、今作では「クリーンヒット」が発生しないと耐性低下効果を得られなくなった。そのため契約成功の成功率が大幅低下。
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もっとも、「連撃」は首切りや麻痺といった強烈な効果への耐性をも0にできたため、高レベル闘士がいれば「つばめ返し」持ちのボス以外は簡単に撃破できるという指摘もあった。それゆえ、「連撃」の弱体そのものへの批判はあまり聞かれない。ただ、召喚契約の耐性ダウンだけはこれまで通りにして欲しかった、という声は少なくない。
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さらに、以前は闘士を利用し敵を「麻痺」「石化」にすることで一切の行動を許さず延々と契約を粘れたが、今作ではターン終了後に一部の状態異常を回復するスキル「再生」を持つ敵が多く、「お邪魔タックル」で妨害したり、解除されたターンにパーティを壊滅させられないよう注意が必要となった。
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とはいえ、上記の通り闘士による状態異常の付与はバランスブレイカーと言っても過言でない要素であったため、やむを得ない面もある。
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召喚モンスターとの結婚システムが相対的に価値低下。
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2(PSP版)から導入され、『エルミナージュ オリジナル』(1のPSP版)とDS版2でも実装されていた召喚モンスターとの結婚システムが今作でも導入されている。
これは冒険者と召喚モンスターが結婚することで両者の能力を一部引き継ぐ子どもが生まれるというもの。運にもよるが、上手くいけばモンスターの高い能力や「武器破壊」などのモンスター専用の能力を併せ持つ冒険者を登録できる。ただし、生まれた子どもはイノセントではない、転職すると能力が種族固定値に戻される、神の加護を受けられないというデメリットもあり、準備やいろいろな吟味に頭を悩ませたものだが……。
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しかし、今作では召喚師のエクストラスキル「魂の盟約」で召喚モンスターをそのまま冒険者にできる。そのため、ランダム要素に左右されがちな結婚システムよりも確実に強力なモンスターをプレイヤーキャラにできる(デメリットもモンスターとの子どもと同じ)。そのせいで、召喚モンスターとの結婚はあまり有効ではなくなった。
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結婚システムを「単なる妄想補完」と割り切ればあまり問題ではない。
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一方で、今作では冒険者同士の結婚もできる。こちらは能力の補正はないものの、全種類の魔法を習得したイノセントキャラを手軽に作れるため、こちらはなかなか有効だったりする。
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余談だが、今作の結婚はあるアイテムをもって2人きりで宿屋のロイヤルスイートorダンジョンでテントに泊まると成立。良い意味で突っ込みどころ満載だった従来のものと比して妙に生々しい。
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性別「?」が優遇気味。性別「?」は「?」専用アイテムはもちろん、従来の男性or女性専用アイテムも装備できるため、装備面で有利。デメリットもない。
ストーリー面
クエストの物語は「続きそうで続かない」という展開が多く、シリーズ全体を通しての物語も「キーパーソンであるヒズベルトの更迭」で終わっており、すっきりしない終わり方になっている。
しかし、小宮山氏が会社を離れ、続編の『エルミナージュゴシック』がこれまでのナンバリング作を無視するような設定になっていることから、それらの設定を生かした続編の登場はほぼ絶望的と思われる。
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シリーズ全体のネタバレ。
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このシリーズの世界では、神々は「エルド」と呼ばれるものを探している。
それが何かは明確にされていないのだが、時間神の持つ時計が一定の時を指すまでにエルドを見つけられなければ、神々の世界である「神域」を含めた全ての世界が崩壊してしまうのだという。
そのため、神々の中でもとくに重要な役割を担う「創世六神(創命・変幻・暗滅・空間・時間・存在を司る神々)」は、エルドを創り出すために人間やエルフたちが生きる場所である大地を創造し、管理してきた。しかし、エルド創出の見込みがないなどの理由で神域の管轄からはずされる「廃地」に指定される大地もある。廃地になると大魔公などに目をつけられやすくなり、また自然環境も悪化するため、やがてその大地は滅びる。今作の舞台である「ライナル・マノザ」は、実は廃地なのだが、ある妖精や魔術師らの力で滅びを免れ、一見すると他の大地と違いがないようである。
そして、タイトルにも冠されている「エルミナージュ」とは、エルドに関する情報を収集するため、大地で起こった全ての事象を記録する「神々の書庫」と称される機構である。ゆえに、エルミナージュ機構は大地や神域での出来事に対して中立の立場を取らなければならず、所属する司書や一般職員(ライブラリアン)は大地や神域に関与することが許されていない。
しかし、司書のヒズベルトは訪れた冒険者たちに情報の一部を教えたり、アイテムを渡したり、果ては神々の権力争いのせいで居場所を失ったゼフカカ(地母神のようなもの)に新たな場所を提供するなどして可能な限り大地の民のために便宜を計らってきた。これが越権行為であるとして、3度にわたって不信任案を提出されている。これまでは何とか乗り切ってきたのだが、今作の最後でついに更迭されてしまった。
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2のライバルパーティは「会話が長すぎる」「世界観にそぐわない」などの批判も多かったが、今作のライバルパーティは存在感が薄く、その点が批判されやすい。加えて、戦闘回避が容易・ロクなアイテムを所持していないという点がさらに存在感を失わせている。
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大魔公の中には存在自体がもはやギャグのような連中もいる。
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その最たるものが【デルトイの居間】であろうか。まさかの部屋である。攻撃方法もドアの開け閉めだったりする。
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ただし、設定自体は割りときちんとしており、敵としても魔法反射や首切り攻撃を持ってたりするので大魔公としてはかなり強い。戦う理由があるのかといわれたら謎だが。
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ネタのような大魔公もいるが、今回は今までのとは違い若干気持ち悪い形状をしていたり存在自体下ネタのような奴も存在している。苦手な人はとことん苦手だと思われる。
システム面
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新要素「ダンジョンロード」が微妙な出来。
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「新たなダンジョンに無限に挑戦できる」というふれこみだった。しかし、実際にはダンジョン名等とダンジョンボスだけしか決められず、それ以外は完全ランダムで自動生成されるだけ、というお粗末なもの。
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一度作ったダンジョンは何も変更出来ないため、利用価値のないダンジョンは消すことしかできない。ダンジョンに関する追記も出来ないため別のダンジョンを作ったり消したりを繰り返してどれがどれだか分からなくなる破目に陥ることも珍しくはない。
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雑魚モンスターを倒しても得られるアイテムは最序盤のダンジョンで取得できるようなものばかり。はっきり言ってゴミ溜めである。一応、新ダンジョン作成キャラのレベル100単位で質は向上するようだが逆に上げすぎると今度は異様なまでに雑魚モンスターが高レベルとなり、敵グループを全滅させるだけでも一苦労となる。
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特に問題にあげられるのが「ミフネ」という雑魚モンスターである。この侍の見た目をしているモンスターは
後列にいる場合100%の確率で自爆
を行う。それが高レベルの場合、10000以上のダメージをパーティ全体に叩きこむ。こちらのHPは9999でカンストするため自爆すれば全滅は必至。侍なので当然ながらツバメ返しも完備。
ミフネ自体はクリア後のダンジョンにも出現するのだがそこでは登場が後列でも前衛系の敵は自動的に前衛に出てくるようになっているため問題はない。
だがダンジョンロードでは登場時の後列のまま戦闘に入るため「ミフネ」の脅威を増大させる一因になっている。
それほど高レベルの敵に挑むパーティであれば「空間の加護」や忍者や錬金呪文「ブラッフィ」で隠れるなど、ミフネより先に行動したり、自爆の回避が可能な手段を用意することは難しくない。最悪味方を守って盾にして逃げる手段もあるため、たとえ倒せなくても全滅は免れることが可能だろう。
しかしダンジョンロードはフロアマスターや登録したプレイヤーと戦うことを目的として潜っているときが多く、強い割りに倒す旨みの薄い雑魚敵は極力避けるほうが無難である。が、そういうときに限って奇襲されて全滅するのが一番の問題であって……。マップは入りなおすたびに未踏破状態になる仕様も辛いところ。
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完全なダンジョン作成は携帯機の性能から考えて無理があると思うが、せめてギミックぐらいはプレイヤーの手を入れられたならばまた評価は違っただろう。アイテムの質に関しても、ここのアイテムの質を向上させすぎると今度は普通のダンジョンが空気化するので、そのバランスを保つのが難しいのも事実なのだが。
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ちなみに悪魔の貯金箱を入手するためにはこちらを活用しなければならない。ストーリーを楽しむだけならこのアイテムを気にせずにすむのは不幸中の幸いだろうか?
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登録可能キャラは108人に増加したが、フェイスロード・スタイルロードの登録はこれまでと同じ54人分。つまり、全キャラにフェイスロード・スタイルロードを適用することができない。
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デフォルトのグラフィックも少ない。種族ごとのグラフィックは男女1種類のみであり、他は基本の色違い。あとは職業ごとのものと初期登録キャラのものだけである。
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エクストラスキル「魂の盟約」で冒険者になったモンスターのデフォ画像は
スタイルロードのみ冒険者になった時に使用されるが、スタイル・フェイスどちらかの画像を変更した場合使えなくなってしまう。フェイスロードは職業アイコンが初期なので変えたければスタイルロードも用意しなければならない。
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スタイルロードのせいで、戦闘時にほんのわずかだが読み込みが発生することがある。
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2やDS版1・2ではプレイ中の読み込みがほとんどないため、ほんのわずかとはいえそれが気になる人もいる。
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なお、スタイルロードはオフにできるため、そうすれば問題は起こらない。
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図鑑が埋まらない。「次代の書」で獲得できるアイテムを装備すると、未発見のアイテムや倒していない敵の欄は「?」で記される。それで確認すると、どうしても埋まらない項目が残っていることがわかる。これが仕様だったのかバグなのかは不明。
総評
小宮山氏の途中退社に代表される開発終盤のゴタゴタが尾を引いているせいか、「スターフィッシュの奇跡」として高い評価を得た1(DS REMIX)・2に比べると作り込みの甘い点が目立つ。
しかし、EXスキルに代表されるようにこれまでのシステムを生かしつつ、新たな要素を加えようとした点は評価できる。しっかりとバランス調整がなされていれば、文句なしの名作となれたに違いない、惜しい作品である。
最終更新:2023年10月08日 03:49