SIMPLE2000シリーズ Vol.92 THE 呪いのゲーム

【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむきゅうじゅうに ざ のろいのげーむ】

ジャンル サウンドノベル
対応機種 プレイステーション2
発売元 D3パブリッシャー
開発元 ヒューネックス
発売日 2005年12月8日
定価 2,000円(税抜)
レーティング CERO:12歳以上対象
判定 なし
ポイント 発売は『四八(仮)』より先
SIMPLE2000シリーズ



さおりは呪われました



概要

D3パブリッシャーによる廉価版ゲームシリーズ「SIMPLEシリーズ」のPS2版、「SIMPLE2000シリーズ」の1作。
実写サウンドノベルで、主演は多数のホラー作品に出演している女優・三輪ひとみ氏。
また、声優の後藤邑子氏*1有島もゆ氏(現:有島モユ)・井上富美子氏の3名が顔出しで友情出演している。

特徴

  • 実写画像を使用したホラーサウンドノベル作品。
    • 人物も実写であり、主人公を含めて顔が映る第三者視点の画像で物語が進む。
    • かまいたちの夜』などと同様、ゲームテキスト欄と画像欄が分離しておらず、画面全体にシナリオが表示される形式。
  • OLである主人公の元に、本作と同タイトルのゲームソフトが送られてきた。それを起動したところ悪霊に取り憑かれてしまったので除霊を目指すというストーリーである。
    • A~Cの三択の選択肢がしばしば挿入され、展開に影響を与える。
    • エンディングは複数存在するが、数自体は少ない。また、1つ以外はバッドエンド。
    • シナリオも1種類のみで、トゥルーエンドルートかバッドエンドルートかの違いがあるという程度。サイドストーリーなどは無い。
  • 唯一存在するグッドエンドを見ると、特典として1時間に及ぶ実写ムービーを見られる。
    • 同ムービーの一部は、ゲーム本編にもデモとして流用されている。
    • ただし、ゲーム本編に登場する重要キャラが出てこないなど、一部設定に相違点がある。

評価点

  • 実写画像や演出については及第点の出来であり、低価格のノベルゲームとしては充分。
    • 使われている画像枚数は比較的多く、同じ場所の場面でも展開に合わせてしっかりと切り替わりがある。2~3分に1枚ぐらいの頻度で切り替わるイメージ。
  • 比較的ノベル分野の経験が豊富なヒューネックスが製作していることもあり、スキップ機能など当時として標準的な一通りの機能は揃っている。
    • 目新しいシステムはないもののストレス要素はほぼ無く、低価格帯のゲームとしては充分だろう。
    • 後述の通り分岐要素がやや面倒なので、スキップ機能はそれなりに助かる。
  • 特典ムービーの出来は本職の映画監督が担当しており、「2,000円のゲームのおまけ」としては充分な出来である。というより「チケット代が2000円の映画の前座として本編のストーリーをなぞったノベルゲームを遊ばせられる」が実態としては近い。
    • ちなみに、監督はピンク映画の賞イベントであるピンク大賞の第15回大会で1位となった「美女濡れ酒場」などで知られる樫原辰郎氏。監督、脚本、プロデューサー、キャスティングなど諸々の仕事を全て1人でこなしていたらしい…。

賛否両論点

  • エンディングが複数あるだけで、選択肢によって物語が大きく分岐することはない。
    • 価格帯もあり気になるかどうかはまちまちかと思われるが、プレイ時間4~5時間程度と長くはない上、そこまで中心となる展開に特化したタイプの作品でもないため、もう少し枝葉を広げる余地があるのは確かではある。
  • 怨霊に襲われるだけでなく撃退も行うタイプの展開であり、タイトルから想像するものとは少々異なるかもしれない。
    • また、どこに行っても悪霊に追いかけられるというストーリーなので、読んでいてやや忙しない。

問題点

  • 前述の通り画像自体は比較的よく切り替わるものの、別な場面で同じ画像が流用されることも多い。
    • 場面に全く合わない画像が出るということもなく、低価格作品ということで全く妥協できなくはないが、それなりの頻度はあるため気になる部分なのは確か。
  • エンディングの分岐条件が分かりづらい。
    • まず選択肢の数自体が非常に多い。グッドエンドまでは70個以上の選択肢を選ぶことになる。
    • 加えて選択肢の内容とバッドエンドの展開がリンクしていないことがしばしばある上、複合的な条件を満たさないとルートに入れなかったり、特に展開に影響を与えない選択肢もあったりする。
    • このような傾向から、どの選択肢がきっかけでルート分岐してしまったのかが分かりづらく、他のエンディングを探すのがやや面倒。
  • 実写ムービーは、前述の通りグッドエンドを見ないと観賞できないのだが、その内容は一番見やすいバッドエンドへのルートをなぞったものなので、「またこれかよ!」とゲンナリする人もいるだろう。

総評

実写画像とお決まりを捉えたシナリオ、及第点のUIと、2000円のノベルゲームとしては決して悪くはない。
加えてゲームをなぞった実写ムービーが付いているというのも試みとしては面白く、こちらも下手なB級ホラー映画より出来自体は造り込まれている。

とは言え、シナリオもムービーも内容自体はもう一押しが欲しい感も否めず、良くも悪くもそこそこ程度のホラーである。
映画館で適当なホラー映画を見るのと同じような感覚で遊ぶ、ということになるだろう。
シナリオとムービーの2本立てという構造も、ゲーム部分のシナリオがムービーとほぼ同じ内容なのでわざわざ先にサウンドノベルとして遊ばせる意味が薄いという問題を抱えている。


余談

  • 冒頭に1人のOLが登場する。彼女はそのシーンで「静香」という名前で呼ばれているのだが、それ以外の全て(再登場シーン・エンディングのキャスト名・説明書)では、なぜか「OL」とだけ呼ばれている。
    • ちなみに、そのOLを演じた女優は本作発売前に急死してしまったので、本作が遺作となっている。
  • 「呪われたゲームが送られてくる」という内容から、2年後の『四八(仮)』が話題になった際には本作を引き合いに出しているレビューがいくつかあった。
最終更新:2024年06月07日 15:00

*1 後藤氏は同社ゲームの定番キャラ「双葉理保」を演じているので、恐らくその関係であろう。