ガデュリン

【がでゅりん】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 スーパーファミコン
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 セタ
開発元 ジョルダン
発売日 1991年5月28日
定価 8,800円(税別)
セーブデータ 3個(バッテリーバックアップ)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント SFC初の国産RPG
強烈過ぎる「なみだのいちげき」
ミネルバトンサーガシリーズ


概要

小説『自航惑星ガデュリン』シリーズの世界観を下敷きにしたRPG。
なお、この作品は羅門祐人氏の作品であり、PCゲーム『ディガンの魔石』と舞台を共有している。
さらに『ミネルバトン・サーガ』など氏の描くゲームや小説とも世界観を同一にしている。

特徴(システム等)

  • 移動方式はSFCのRPGによく見られるフィールド見下ろし型2DRPG、戦闘時正対コマンド入力式のゲームである。
  • 特徴的な点として戦闘システムが挙げられる。
    • 戦術の幅を広げる様々なコマンドがある。
      + コマンド例
    • 攻撃してきた敵に備えて反撃を試みる「ゆうげき」
    • モンスターと交渉し、仲間につけたり様々な効果を起こしたりする「そうだん」
      • 「ねがえり」「ゆうわく」を使って仲間にした敵はその場で戦ってくれるほか、その後もアイテムを使って戦闘中に呼び出すことが出来る。「とりひき」では金品をわたして見逃してもらうよう試みることができる。
    • 逃走コマンドが3種類あり、それぞれ成功率にかかわるステータスが異なる。
      • 素早さ依存の「そっこう」
      • 運依存の「くらます」
      • 金や特定のアイテムをばらまいて逃げる「ばらまき」(金品の価値がわかる相手ほど効果的。素早さと運も半々で影響)
    • また、「ぼうぎょ」は味方を選択することでそのキャラをかばう「えんご」となるなど、一般的なRPGとは少々異なる使い方をすることが可能なコマンドもある。
    • 最初に入力したコマンドとは別に、攻撃を受けた際に自動で防御しようとしたり、敵に攻撃したが相打ちになったりするという要素もある。
    • 戦闘の状況を表すものとして「おせおせムード」「やばいぜムード」が存在し、いずれも「そうだん」の成功率に影響する。
    • 敵を倒した時点で経験値が入る。このため戦闘中でもレベルアップしステータス画面が表示される。
      • 魔法はレベルアップの時点で習得するため、覚えた直後の魔法が危機を救ってくれたり、なんてことも起こり得る。
  • アイテムは種別に分けて管理される。それぞれに所持数制限がついている上、分類のうち「こどうぐ」には攻略に必須なアイテムも格納されるので、所持数にも気を使う必要がある。
  • 重要なアイテムを除き、データを読み直すと宝箱の中身が復活している。ほとんど消耗品ではあるが。
  • フィールドやダンジョンのみならず、街中にまで敵が現れたりもする。ほとんどが「ならずもの」なので、基本的には演出用だと思われる。

評価点

  • SFC初期のゲームとしてはグラフィックのクオリティが高い。特に敵キャラグラフィックの大きさと書き込みのレベルは高い。
    • ヒロイン・ファナとの出会いは水浴びをしてる所を覗くというものだが、そのシーンは一枚絵含めて彼女の人気を高めた。
      • なおゲーム中に表示されるビジュアルシーンはOP/EDを除くとこの一場面のみとなっている。
  • シナリオはそれなりに良い。
    • 当時としては珍しいSFチックな世界観を全面に出しており、中二心をくすぐる話になっている。
    • 今作はPC88で発売された『ディガンの魔石』の実質的続編であり、かつ小説版の『自航惑星ガデュリン』の1エピソードである。そのためこれらの作品を知っている人にとっては壮大なSF物語として高く評価されている。
  • OPは『ディガンの魔石』のテーマ曲のアレンジであり、このゲームを知っている人は感動ものである。
    • そのほかのBGMも『ディガンの魔石』のアレンジが多く占めており、全体的に高く評価されている。
      • ラスボスのBGMは8フレーズの短いループながら中毒性が高く、ラスボスと併せて一部で人気が高い。
  • 登場するモブキャラ全てに名前が付けられている。

問題点

  • 戦闘面の問題。
    • 稀に出る12倍撃クリティカルヒット「きわめのいちげき」(味方)・「なみだのいちげき」(敵)が強すぎてバランスがおかしなことになっている。
      • ほぼ全ての敵が低確率で即死攻撃を放つ、とでも言った方がよさそうなほどで、ヘタな洋ゲーよりシビア。
        ラスボスもこれが出てあっさり倒れてしまい、あっけにとられた人もいるのではないか。
      • 後述する高エンカウントに加え、定期的に発生する「なみだのいちげき」により戦闘不能になることが多く、このせいでクリアを諦めたというプレイヤーは数多く存在する。
      • 上記の2種が印象に残るせいで影は薄いが、もう1つ存在する「げきれつヒット」(味方)・「つうれつヒット」(敵)もそれなりの頻度で発生するため、戦闘は大味になりがち。こちらは通常攻撃が4連続になるというもので、敵の場合はボス格でもない限り大損害を受けることはまずないのが救い。
    • 敵に「ゆうげき」「ぼうぎょ」持ちがいると、たとえ格下が相手でも戦闘に大幅に時間がかかったりこちらが一方的にダメージを受ける事も珍しくなくストレスが溜まりがち。
      • 魔法を使えばほぼ無傷で倒せるが格下の雑魚相手にMPを使うのは勿体無いと思う人もいるだろう。
    • 敵の出現パターンに一部理不尽なものが存在する。
      • ガヴァナー神殿の「まっさつへい4体+ねむりひめ+かげつかい」「ランバック2体+シャカル」やエウレス~ヨーレ周辺の「サーキレック3体」等。いずれもパーティメンバーが離脱して戦力ダウンしている時に遭遇する可能性がある。
  • ほとんど意味のないステータスである「スタミナ」や、攻撃してきた敵に反撃する「ゆうげき」と敵を味方につけようとする「そうだん」など意味の薄いコマンドもあり*1、バランス以外の点も粗が目立つ。
    • 「ゆうげき」はこちらの数が少なく敵の数が多いときには有効かもしれないが、攻撃を受けるということは上記のクリティカルを食らう可能性が高まる。
  • 戦闘シーンがファミコンレベル
    • SFC初の国産RPGなので仕方ない部分もあるが「背景なしの真っ暗」「アニメーションしない」等ファミコンのRPGと大差ない。
      • 次回作の『シルヴァ・サーガ』は一転、SFC最高の戦闘突入演出とも言われるほどダイナミックになり、演出やエフェクトも改善している。
  • 「こがたな」「えぐりてぶくろ」を2つ買って交互に装備し続けると攻撃力が、「かわのたて」2個の同手順で防御力が上がり続けるというバランスを崩壊させるバグがある。
    • やらなければクリアできないバランスでも無いし、嫌ならば使わなければよいという程度であるが。
  • エンカウント率が非常に高い。
    • 序盤はなみだのいちげきによる一撃死もあり、かつ戦闘不能を復活させる方法が衛生兵という回復所頼りになるため、中々進められずレベル上げにいそしむことになる。

総評

このゲームはいわゆる「ハード最初期のゲーム」であり、操作性やゲームバランス等色々至らない点も多数ある。特に戦闘のランダムに起こるクリティカルなどが挙げられる。
しかし、ストーリーには特に破綻は見られず、特に一部グラフィックは初期であるにもかかわらず中後期のゲームにも劣らないものがある。そのため、「クソゲー」とひとくくりにしてプレイしないのはもったいない。

  • あまりにも理不尽ななみだのいちげきと高いエンカウントのせいでクソゲー扱いされてしまうことがあるのは残念なことである。

余談

  • 本作は概要で述べた通り羅門祐人氏の作品であり、同氏によるPCゲーム『暗黒城』『リグラス』やFCゲーム『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』『シルヴァ・サーガ』、SFCゲーム『シルヴァ・サーガ2』などとも世界を共有している。
    ただし、これらはSFではなく普通にファンタジーな世界観であるミネルバトン世界を舞台している。
    意志を持つ2つの宇宙法則あるいは運命である光明神ハーンと暗黒神ズールが戦いを繰り広げ、現実世界が滅亡してミネルバトン世界に新生し、ミネルバトン世界が滅亡すれば再び現実世界が生まれるという世界観で、ミネルバトン世界での勝者が新しい宇宙の支配権を握れる。
    これらの1作目である『暗黒城』は、ミネルバトンの滅亡と光側の手によるこの宇宙の誕生を描くストーリーであり、ガデュリンは現実宇宙の未来の話となっている。
    (ちなみに『暗黒城』の主人公も、過去のミネルバトンへと召喚された地球人リュウ。)
    なお、鬼、妖怪、悪魔、などとしてこの宇宙で神話・伝承に名を残す存在は皆、ミネルバトンの滅亡を生き延びた闇の軍勢であり、ガデュリンでズールの名を騙る魔物(ガデュリンのラスボス)*2もまたその一人という事が『シルヴァ・サーガ』の説明書に書かれている。
    • 小説ではガデュリンシリーズ以外に、架空戦記物である平成愚連艦隊なども同一世界観になっている。
  • 本作はガデュリンシリーズにおいては小説の2巻と3巻の間にあたる。PC88で発売された『ディガンの魔石』も同じ時系列の話である。
    • ちなみに本作は発売された時期から正史と思われがちだが、シナリオ的に大きな矛盾があり、実際にはパラレルワールドではないか?と言われている。
  • このゲームが発売される1年前にOVAが出ている。ただし、こちらにはシリーズでおなじみのタオ・ホーが登場していない、ドランが敵として登場するなど、設定は異なっている。
    • 2006年、本ゲームと直接的な関係がある小説『ガデュリン望郷編』が電子書籍で出版された。時代設定は西暦2448年となっている。本来はOVAのために執筆した原稿200枚程のストーリー「望郷編」があり、そのままOVA化するという企画だったのが、葦プロの独断で半分程改変されてしまったのがOVA版だったとのこと。その本来のストーリーを改稿したのが電子書籍版の望郷編である。
    • 残念ながら『ガデュリン望郷編』は唯一閲覧が可能だった電子書籍パピレスが閉鎖され、現在では入手不可である。この作品は他の電子書店でも一切発売されていないため、幻の作品としてファンから復刻を望まれている。
  • ゲーム『ガデュリン2』が2回企画されどちらも開発中止になっている。
    • 1つは本作の直接的な続編『ガデュリン2 ファナの大冒険』。SFC用CD-ROM機器向けに開発された。開発は順調に進みアニメシーンなども完成していたがSFC用CD-ROM機器が発売中止になったためお蔵入り。
    • もう1つは小説刊行が予告されていた『ガデュリン地球編』の構想のゲーム化『ガデュリン2 FINAL PROJECT』。
  • 『燃える!お兄さん』の原作漫画にて主人公のケンイチが弟と本ゲームをプレイしているシーンが描かれている。
  • セタが会社清算となったためか、プロジェクトEGGをはじめとしたアーカイブサービスでの配信は2023年時点ではこれまでされていない。
  • サウンドトラックもゲーム発売の四ヵ月後にリリースされているのだが、マイナーゲームサントラの例に漏れず入手困難と化している。また「ALL SOUNDS OF ガデュリン」というサントラ名でありながら残念ながら収録漏れの曲もある。
    • しかし2020年8月26日にP-VINEレーベルより「ガデュリン全曲集」が発表された。2020年11月4日発売。
  • 本作の魔法に「かさいりゅう」があるが、本作発売日の約1週間後に、多数の犠牲者を出した大火砕流が雲仙普賢岳で発生した。それまであまりなじみがなかったと思われる「かさいりゅう」という言葉を実際のニュースで聞いて驚いたプレイヤーもいたことだろう(当時活発な噴火活動をしていた雲仙普賢岳に着想を得て実装したのかもしれない)。
最終更新:2024年07月11日 20:53

*1 「サーキレック」や「タイレック」など、味方につけるとラスボス戦でも有効な特殊攻撃を持つ者もいるため、全く役に立たないわけではない。

*2 神の中の神である暗黒神ズールを僭称してはいるが、ズールと名乗ること自体はガヴァナーが精神寄生能力を持つ闇の勢力の魔物たちを精神寄生体ズールと呼んでいたという経緯がある。