ミネルバトンサーガ ラゴンの復活

【みねるばとんさーが らごんのふっかつ】

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2MbitROM+64kRAMカセット
発売元 タイトー
開発元 アーテック
ランダムハウス
発売日 1987年10月23日
定価 5,500円(税抜)
判定 良作
ミネルバトン・サーガ シリーズリンク

プロローグ

それははるかな昔、ビッグバンが起こるよりも前の時代。時間と空間の谷間にミネルバトンという世界があった。
そこは神々の世界であり、現在に残るあらゆる神話の源であるという。
ミネルバトンを制したものはビッグバン後の世界の支配者となれるという法則があり、神々は光と闇に分かれ、ミネルバトンに覇を唱えるべく争っていた。

そのミネルバトンの一地方、南オフェーリアで物語は始まる。

主人公の故郷、パルメキア王国を突如魔物の一群が襲う。
暗黒神ゾーン*1の王子・ラゴン*2率いる軍勢である。
パルメキアは抵抗もむなしく蹂躙され、まだ幼い主人公は国王に仕える神官につれられ落ち延びることになる。

それから幾年月。
父代わりだった神官が死ぬ間際に語った言葉によって、自分の生い立ちを知った主人公。
主人公は世界を救い、パルメキアを復興させるため、ラゴンを倒す旅に出ることを決意する。


概要

『自航惑星ガデュリン』で有名な羅門祐人氏が手がけたファンタジーRPG。
同年発売された数々の名作の影に隠れてしまったが、完成度は高い。


特徴

  • 魔物と戦いながら主人公たちを成長させ、ストーリーを進めていくオーソドックスなRPG。
    • ストーリーは王道を押さえながら世界観を巧みに練りこんである。派手さはないものの、ラストへ向けてしっかりと盛り上げていく流れはプレイヤーを飽きさせない。

世界観

  • 神々の世界「ミネルバトン」の一地方、南オフェーリアが舞台となる。
  • 世界観の構築は非常に素晴らしい。光の神々と闇の神々が相争う神話の時代という王道ファンタジー世界が見事に描かれている。
  • 吟遊詩人の詩、町人や旅人の噂話、各地の石碑や言い伝えの書に記された伝承など、世界観に深みを持たせる要素は豊富。
  • 町の住人の台詞内容はストーリー進行に合わせて変化していく。主人公たちの活躍や時間の経過が反映され、ゲームへの感情移入を高める一助となるだろう。
    • 近年のRPG(日本ファルコムの軌跡シリーズなど)でもよく使われる手法である。

パーティー

  • 魔法タイプと射手タイプの2種の仲間が加わる。
    • 新しい仲間を見つけた場合は、同じタイプの仲間はパーティを抜け、新しい仲間に更新される。
  • 仲間に関してもそれぞれのストーリーがあり、その目的のために主人公のパーティーに同行する。
    • 故郷を救うためという正統派な者もいれば、暇つぶしのために同行する者も。
  • 仲間のキャラクターには経験値の概念はなく成長は一切しないが、装備に関しては継続されるので仲間交代時の装備変更の手間がないのも特徴。

アイテム

  • フィールド・ダンジョンで使用する「道具」、戦闘で使用する飛び道具の「弾」、戦闘中・戦闘外で使用できる回復アイテム「薬」、イベントアイテムの「宝」が存在する。
    • 道具は全三種、弾は全四種、薬は全三種とシンプルだが、すべて99個までスタックできる。
    • ダンジョン脱出アイテム「祈りの輪」と最後にセーブした町に戻る「風の笛」が便利。最低1個ずつ買っておけばダンジョンで薬が尽きた際にも安心。

戦闘形式

  • ランダムエンカウントを基本に、固定敵やボスはシンボルエンカウントと、二種のエンカウント方式が組み合わされている。
    • なお、フィールド上の街道ではランダムエンカウントは発生しない。
  • 戦闘画面は、体当たりと魔法・飛び道具でダメージを与えていくという2DアクションRPG系。
  • シンプルではあるが、多少のアクション性がありレベルが低くてもプレイヤーの技量である程度カバーが可能。
    • 飛び道具をうまく使えば格上の相手にも被害を抑えて勝つことができる。
  • コマンドウィンドウ
    • 「にげる」を選べばボスであろうが100%逃亡可能。これは現在でも珍しいシステム。
    • 「はなす」を選ぶと敵の台詞を聞くことができる。大半は物音や鳴き声なので実用性はない。ある意味バカゲー要素。
      • 意味のある台詞をしゃべるのはボスくらいだが、それらは戦闘開始時に自動的に台詞が表示されるので、「はなす」を選ばずとも見逃すことはない。

傭兵システム

  • 戦闘中に最大3人まで呼び寄せて主人公パーティーの代わりに自動で戦闘を行わせる。
    • イベントで1人加入するほか、ある町の傭兵斡旋所で最大5人まで雇うことができる。
  • 傭兵も敵を倒していくことで成長していくため、傭兵の育成に熱を上げるプレイヤーも多かった。
    • 傭兵は自分で操作ができないうえに死亡した場合は生き返らせることができないため、傭兵のレベルを最高ランクまで上げるのはなかなかに難しい。
  • 戦闘が終わると(死ななければ)HPと状態異常が全回復しているため、使い勝手はなかなかよい。
    • また、傭兵を呼び寄せる・退却させると敵の配置も初期配置に戻るので、これを利用して戦闘を楽に行うことも可能。

町の施設

  • 「宿屋」「武器屋」「道具屋」「マジックギルド」「占い所」「酒場」と一通りの機能が揃っている。
    • 宿屋:泊まるとHPとMPが全快する。宿賃は全ての街で一律。
    • 武器屋:武器・防具の売り買いが出来る。
    • 道具屋:道具や薬、弾を売っている。店によってはまとめ買いができるのが便利。
    • マジックギルド:死んだ仲間の復活(傭兵は不可)と魂の保管(セーブ)が出来る。
      • セーブはバッテリーバックアップ*3対応。当時としてはまだ珍しかった。
    • 占い所:お金を払うとヒントを教えてもらえる。
    • 酒場:フレーバー要素。客が集まっているので情報収集の場に。

BGM

  • プログレッシブ・ロックユニットASTURIASのリーダー、大山曜が手がけている。ゲームの雰囲気を引き立てる良曲揃いである。
    • 各地の吟遊詩人に話しかけると専用BGMが流れる。そこで語られるさまざまな詩とあいまって、神秘的な雰囲気を感じられる。
    • 数々の困難を乗り越えてたどりつくラストダンジョンの曲は、その壮大さと盛り上がりでプレイヤーのテンションを一気に上げてくれる。まさに最終決戦である。

賛否両論点

エンカウント率が高め

  • 後半のダンジョンで特に高い印象がある。進行のテンポを削ぐという面も、逆に攻略の歯ごたえが生まれるという面もあるので、一長一短ではある。
    • 前述の通り100%逃げられるので、ダンジョンを進むほど消耗し、リソースが尽きて町に戻る際に落ち武者狩りにあって全滅、ということはない。

終盤のダンジョンの難易度が高い

  • 終盤のダンジョンは複雑なマップと強い敵により、なかなかの高難易度を誇る。心折る障壁と捉えるか、乗り越えるべき壁と捉えるか、人によって評価は分かれよう。
+ ネタバレ
  • そこまで順調に来たプレイヤーにとってひとつの壁となったのがグルー神殿→ラバン城→ゴルゴンの迷宮の三連ダンジョンである。
    • グルー神殿は何度か町と往復して攻略する必要がある。マップはそれほど複雑ではなく、まだ小手調べのレベル。
    • ラバン城はこれまでにない複雑さと地上地下2層構造により、当時のプレイヤーたちを大いに道に迷わせた。
      • マッピングをきちんとしていないと次へ進む道を見つけ出すことは困難である。2層構造と多数の階段により、マッピングの難易度は高めではあるが。
      • 次のダンジョンへ進む道とは別のルートに、イベントアイテムも隠されている。こちらを探すのも一苦労である。
      • 余談であるが、筆者はこのイベントアイテムを見つけた際に「このダンジョンは攻略済み」と思い込み、探索を打ち切った。そのためにその後数年間先に進む道を発見できなかった。思い込みとは恐ろしいものである。
    • ゴルゴンの迷宮は1層構造だがとにかく広い。落とし穴や永久ループなどの罠などはないが、その広さゆえに同じところを迷い続けることはある。ここでもマッピングが推奨される。
      • このダンジョンの存在についてはほとんどヒントがない。ここで手に入るイベントアイテムについて記された言い伝えの書で、存在が示唆されるのみである。
  • 難所ぞろいではあるが、粘り強く挑戦していけば必ず突破できるさじ加減ではある。

序盤に稼ぎポイントが存在する

  • 先述の通り、飛び道具をうまく使うことによって格上の敵にも勝利することが可能である。それを利用し、序盤にいけるダンジョンにいる「シープヘッド」(本来は終盤に差し掛かったあたりに倒すレベルの固定敵)を狩ることによって大量の経験値とお金を得ることができる。
  • この「シープヘッド道場」に通いつめることによって序~中盤が一気にぬるくなる。普通に楽しむならば自主的に封印することをお勧めする。
  • 序盤での過剰な稼ぎが出来てしまうことによるバランス崩壊を懸念する意見もある。幸い、通常のプレイをしていれば無縁の技である。わざわざ裏技的な道場に通って強化するか、普通に戦闘をこなしてゲームを進めるか、自分のプレイスタイルと相談しよう。

序盤に行くことが可能なダンジョンで強力なボスが登場する

  • 序盤で訪れる町の近くにあるダンジョンに強力なボス「イド」がいる。本来は仲間や入手アイテムの関係上終盤にならないと絶対に勝てない相手ではあるのだが、序盤に挑んで返り討ちにあったプレイヤーも数多い。

問題点

数は少ないがバグが存在する

仲間離脱バグ

  • 仲間二人は主人公の左後ろと右後ろに配置され、三角形の陣を組んで歩く。仲間が障害物に接触するとよけて歩くのだが、まれに引っかかってそのまま陣から離れていくことがある。町にある1マスの通路などでなりやすい。
    • 画面外に出てしまうとそのまま消えてしまい、その仲間とは別れた扱いになってしまう。仲間が元いた場所に行けば再度仲間にすることは可能。
    • 画面外に出る前に追いつけば、仲間は主人公の後ろの定位置に戻る。
    • 仲間が画面外に消えたあと、元いた場所に行っても戻っていなかったという報告もある。仲間があらぬ方向に進んで行ったらすぐに後を追うのがいいだろう。

総評

よく練られた世界観、王道を押さえたストーリー、美麗なグラフィック、意欲的ながらしっかりとまとまったシステム、ゲームを彩る名BGMなど、総合的に高い完成度を持つ良作である。
ただ知名度はあまり高いとは言えず、「知る人ぞ知る」というレベルである。本作が発売された1987年は『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』を皮切りに、『女神転生』『覇邪の封印』『桃太郎伝説』『ファイナルファンタジー』『ウィザードリィ』といった名作RPGが輩出された豊作の年であり、その中に埋没してしまった感は否めない。タイトーが出したバッテリーバックアップRPGという共通点を持つクソゲー『未来神話ジャーヴァス』が数ヶ月前に出た影響もあろう。現在では開発元のアーテックは解散、発売元のタイトーはスクウェア・エニックスの傘下に収まるなど、バーチャルコンソールでの復刻がなされるかも不透明である。
とはいえ幻想的なファンタジーRPGを愛する人になら、間違いなくお勧めできる一作である。


余談

  • 本作の関連作がいくつかリリースされている。本作の後の時代の南北オフェーリアを描いた続編『シルヴァ・サーガ』『シルヴァ・サーガ2』、作中でミネルバトンとの関連が示唆される『リグラス ~魂の回帰~』、ミネルバトンの終焉と新たな世界の始まりを描くシリーズ序章であり最終章でもある『暗黒城』、ミネルバトンの終焉の遥か未来、惑星「ガデュリン」が舞台の『ディガンの魔石』『ガデュリン』である。
    • 大空の神ラムルーンや暗黒の使徒グルーなど、シリーズ作をやってれば聞き覚えのある単語がちらほら。
  • 続編『シルヴァ・サーガ』において、デフォ名のない本作主人公の名前はレオン王子だったことになっている。
    • これは本作の世界において「レオンのサーガ」として広く知られている伝説の勇者(『リグラス』の主人公のED後)の名前にちなんで名付けられた形になっている。
  • 『シルヴァ・サーガ Episode I 光戦士レオン』という本作の漫画がある。作画は義仲翔子。『ゲームコミックコレクション2』に収録されている。
  • ソフトに南オフェーリアの世界地図が付録していた。『覇邪の封印』のように地図とフィギュアを付録とした例はあったが少数で、当時のファミコンソフトとしては珍しい特典である。
  • 説明書にはストーリーや操作法のほかモンスターの一部の解説やアイテム・魔法に関する設定が載せられていた。今で言う設定資料集に載せられているような裏設定に近いもの。全編に美麗な挿絵も掲載されており、読み物としても十分楽しめる。中古品を探すなら説明書と前述の地図の両方がついたものをお勧めしたい。
  • 本作の世界である南オーフェリアは神々の戦いの地となっているため他の地に影響を及ぼさないよう結界が張られているという設定。そのため海上には霧の海という海域があり、そこに入ると前に移動している状態ではあるものの実際に動いてはいない状態になりこれ以上進めないという状況になる。この仕組みは理解し難く、何か謎があるのではないかと思うプレーヤーも多かった。この結界の外の世界は続編にて登場する。
  • 移動速度が倍速となり、ランダムエンカウントがなくなる(シンボルエンカウントのほうはなくならない)裏技が存在する。コマンドが少々複雑なのと、プレイ中にON/OFFできることから、バグではなく意図的な裏技(orデバッグ機能の除去漏れ)と思われる。やり方はgoogle検索をすればすぐに見つかるだろう。
  • 本作ラスボス「ラゴン」は、シルヴァサーガの説明書では「暗黒神ズールを父とする3人兄弟の二番目の息子」だが、シルヴァサーガ2だと「一番下の弟」、そして原作者解説だと兄弟が2人多い「五王子」になっている。
  • 山口祐平(羅門祐人)氏はアーテック解散後フリーランスとなり、現在も活動中である。最近は架空戦記を主に執筆している模様。
    • 架空戦記物のなかにもガデュリン後の展開に繋がるミネルバトンの世界観の作品がある*4
  • 大山曜氏もASTURIASとして積極的な音楽活動を行っている。美しく幻想的な音楽は健在である。