火竜娘 柳判官編/高悠環編

【かりゅうじょう/ふぉーねんにゃん】

ジャンル アドベンチャー*1
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 2枚組
発売元 ガスト
開発元 ガスト・ノウエア
発売日 1997年9月25日
価格 6,800円(税別)
判定 クソゲー
ポイント 非常に狭い視界
非常に速い町人
深刻な3D技術不足
シナリオは悪くない


概要

本作は同年5月に『マリーのアトリエ』を、1998年12月に『エリーのアトリエ』を輩出したガストによるアドベンチャーゲーム。
ガストが分社後にPSに参画するにあたって初期からタイトルを発表していたソフトでもある。

本編スタート前の性格診断、後述の単語解説システムなど、原典に配慮したシステムも備わっている。 同作は藤 水名子氏の小説「色判官絶句」を原作としており、そのため舞台も小説同様中国明朝末期(1620-1644年)を題材としている。
そのためか、作中にて台詞内の中国語系の単語を解説するシステムが搭載されている。


特徴

  • 本作は3Dポリゴンで表現された寧波(ニンポー)の街を探索することでストーリーが進むという形式を取るアドベンチャーである。
    「柳判官編」と「高悠環編」の2枚組となっており、それぞれ主人公が異なり別視点から見た物語が楽しめるようになっている。
    • 時間の概念があり、午前6時から次の日の午前3時までが自由に行動できる時間になっている。
      • 一日を終了させるのは午前0時以降に自室に戻って眠るか、あるいは午前3時を迎えて強制的に帰還するかのどちらか。
      • 特定の時間でなければ入ることができないエリアや、営業が行なわれていない店などもある。
      • なお、屋内では時間は進まない。
    • 基本的には、イベントをこなしたらそのイベント中に言われた場所へ向かい、そうしたらまたイベントが起こってストーリーが進み…を繰り返す形式を取っている。
      • 操作キャラクターの体力や所持金と言った要素は特に存在していない。
    • 舞台となる寧波の街はいくつかのエリアに分かれている。
      • 別エリアに向かう方法はエリアの境目に行く他、地図を呼び出して目的地へワープするという方法もある。
      • 上述したように時間限定のエリアの他、ストーリーが特定のタイミングでなければ行けない地域や、どちらかの主人公でないと行くことができない地域もある。
    • 所々で発生する、ストーリーとは無関係のサブイベントによって主人公の性格が刻一刻と変化していくというシステムを採用している。
    • ストーリー上重要な局面においては、キャラクターにボイスが付く。
  • 各編の主人公
    • 柳 禎之(りゅう ていし)
      • 一見優男風だが皇帝の命を受けて、寧波港で行なわれている不正取引を暴くべく派遣されてきた密直指。人呼んで「柳判官」
        29歳の既婚者だが好色家でもあり、美しい女性を見つけては口説かずにはいられない性格。しかしやる時はやる…だが、プレイ中の行動によっては性格が変わることも。
    • 高 悠環(こう ゆうかん)
      • 「火竜娘」の異名を持つ18歳の少女であり、剣の腕はなかなかのもの。権力者の娘であり、立派な屋敷で生活しているが、お嬢様とは程遠いじゃじゃ馬な性格。
        …だが、やっぱりこっちもプレイ中の行動によっては性格が変わることも。

問題点

  • 3Dマップにおける、単眼の水中眼鏡をかけているような狭い視点。
    • ポリゴンやテクスチャも結構粗いため、見ていて辛い。
      • 道中にいる犬や猫、牛や馬などにも話しかけることができるが、一見何の生き物なのか、と言うかどんな物体なのかすらよく分からない。話しかけてやっと何か分かった、ということもよくある。
  • 移動はバイオハザードなどと同じく上下キーで前後移動、左右キーで旋回という仕様。
    • 障害物の判定が見た目より大きく、歩いていてすぐに引っ掛かる。
    • さらに何かにぶつかると勝手に視点が変わるので混乱しやすい。
    • 自宅は大して広くないのだが、どこを見ても壁が同じ模様なのでどの部屋にいるのかまったくわからない。
    • セーブ可能な屋外に出るまでが一苦労で、数時間かけても屋外に出られず投げたという人もいる。
  • 非常に高速な通行人と、非常に低速かつ操作が困難な主人公。かつて発売された、同じ中国を舞台にしたゲームを思わせるような仕様。
    • 自分の足元から2メートルぐらいまでしか見えないのに、全速力で走っても追いつけない通行人から話を聞かないといけない。
      • ちなみに、「あんまり走らないでくれ」などと注意をしてくるNPCが何人かいる。だったらもうちょっと移動速度上げてくれと。
  • ボイスは棒読みが目立つ。また、ボイスが搭載されている箇所も少ない。だったら最初からボイス無しにすればいいのでは?
  • 柳判官編ではストーリー中盤でとある建物の中に閉じ込められるイベントが発生するのだが、そこから脱出するための手順が非常に分かりづらい。
    • もちろん、本作では上記の通りセーブは屋外でなくてはできないので、一旦電源を切って中断することもできない。
  • オマケとして相性占いが出来るのだが、結果がかなり適当。
    • 相性度が73から95%とか出る。あの…かなり差あるんですけど。
      • しかも「二人の相性はかなりいいわよ。早く言っちゃいなさいよ!多分上手くいくと思うけど、思い切って告白することをお勧めするわ!」とか「相手に誰かがこっちを向いてくれる可能性十分よ!遠くから見てないでもっと近づいて!」と、何故か命令形。…その結果を知るための相性度占いなんじゃ…
      • 説明書によると、「柳判官編と高悠環編でそれぞれ仲の良い男女でお互い遊んでもらい、エンディング後の診断結果を見せ合って楽しんでいただきたい」、ということだったようだが…「この診断が役に立った」と言う人は果たしてどの程度いるのだろうか?

評価点

  • シナリオの評判は悪くない。
    • 当時の中国の情勢が丁寧に描かれており、その中で繰り広げられる人間ドラマは読み物としてはなかなか面白い。
  • 自由度はそれなりに高い
    • ストーリーの関係上行くことができない場所もあるが、ほとんどの場所にはいつでも行くことができる。
      • 町人のセリフも状況に応じて変化していく。テキストの量自体はかなり膨大と言える。
    • サブイベントはとにかく豊富にあるため、回収していく楽しみもある。
      • ただし、条件が細かく設定されているため情報なしには見ることが難しいものが多い点は難点だが。
    • またサブイベントによって変化した性格により、エンディングが異なってくるという要素も。
  • 例によってBGMは良質。
    • 特に、プレイ中によく聴くことになるであろう大通りのBGMは中国風の曲をロックな感じにアレンジされたものになっており、普通にかっこいい。
  • この手のゲームにありがちなバージョン分け商法のようなものが行なわれておらず、ディスクを入れ替えるだけで2つの物語を両方楽しむことができる点は評価できる。

総評

端的に言ってしまえば、クソゲーである。
シナリオやサブイベントなど光る要素ももちろんあるのだが、視界の狭さをはじめとするUI周りがとにかく致命的なまでに酷すぎる。
おそらく、当時の3D化ブームに乗る形でこのような3Dマップ探索型のAVGとなったと思われるが、それを実現するにはあまりにも技術が追い付いていない感がひしひしと伝わる、残念な出来となってしまった。
下手に3Dに手を出さずに純粋なセリフ送りのAVGとして出していたらまた違った評価がされていたかもしれない。


余談

  • ガストは本作以前に『ファルカタ ~アストラン・パードマの紋章~』『メールプラーナ』などを発売しているが、こちらはいずれも無難~名作との評価が高い*2
  • かなり長い間、公式のガストショップで値下げ販売されていた。他のPSソフトはとっくに売り切れ表示だった。今はガストショップにPSソフトの項目はない。
  • どういう訳か本作のNPCは立ち止まっている時に、ミュージックプレイヤーで音楽を聴きながらリズムに乗っているかのように体を揺らしていたり、片手を腰にあてつつ片足をリズミカルに動かしたりと言った、特徴的な待機モーションをとっているため、本作プレイヤーの間ではネタにされることがある。

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1997年 PS ADV ガスト
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最終更新:2023年02月10日 16:00

*1 裏書き曰く、公式ジャンルは「ビジュアルノベル的メンタルアドベンチャーゲーム」であるとのこと。

*2 特に『ファルカタ』はPS参入ソフトの一作目でありながらPSアーカイブスで配信されるほどの知名度がある。