桃太郎電鉄
【ももたろうでんてつ】
ジャンル
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ボードゲーム
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売元・開発元
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ハドソン
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発売日
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1988年12月02日
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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桃太郎シリーズ
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概要
ハドソンのボードゲームとして有名な『桃太郎電鉄(桃鉄)』シリーズの記念すべき第一作で、ルーツは本作の生みの親であるさくまあきら氏が手がけ、その後お蔵入りしたゲーム「日本一周トラブルトレイン」である。
もともと「桃太郎」とは関係なく開発していたが、桝田省治氏のアドバイスをもとに過去に発売したヒット作『桃太郎伝説』にあやかって桃太郎「電鉄」とし、桃太郎などを登場させるに至ったという経緯がある。そのためか「日本一周すちゃらかトレイン」というキャッチフレーズが付けられている。
ルール
自分のターンにサイコロを振り、出目だけ進む双六形式。道中の物件駅で物件などを購入し、それら物件などが生み出す収益で資産を増やしていくと言うのが基本的な流れ。詳細なルールは以下の通り。
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勝利条件は3つありゲームスタート時に選択することが出来る。
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「ねんすう」設定した年数プレイし、収益額が最も多かった者が勝利
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「しゅうえき」設定した収益額に最も早く達した者が勝利
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「ももたろうランド」岡山にある物件「ももたろうランド」を購入した者が勝利(この勝利条件はCOMが参加していない場合のみ選択可能)
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次回作以降と異なり、本作ではプレイヤー毎に
それぞれ異なる目的地
が設定されており、そこに到着すると援助金がもらえる。援助金の額は前回の目的地からの距離に比例する。
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その後のシリーズ作品と異なり、さいころの数がぴったりでなくても、目的地にたどり着けば援助金を得られる。
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一年は春夏秋冬の4ターンと収益が入ってくる「決算」で構成される。
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途中、インフレが起こり、以後はイベントでのプラスマイナス収益・目的地到着時援助金が全て倍になる要素がある。インフレは最大2回発生し、2回目の発生後はインフレが重複してさらに倍(標準時の4倍)になる。
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本作におけるサイコロは移動マス数決定するものと、発生するイベントの内容を決定すものの2種類に分かれており、各ターンでプレイヤーは2回サイコロを振ることになる。
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イベントの内容は季節とその際の出目によって決定される。
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夏はプラス収益イベントが多く、冬はマイナス収益イベントが多く、春はプラスマイナス収益が半々。秋は収益系がほとんどなく一回休み・倒産・目的地ワープなどの特殊効果が多い。一般的に、出目の合計が小さいほど有益になりがちで、大きいほど悲惨。
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物件駅で購入できるのは「物件」と「鉄道」の二種類。両者の違いは「売却の対象になるかどうか」。
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物件は所持金が足りなくなった場合売却対象に入るが鉄道は入らない。シリーズで言うところの「農林物件」に相当する。
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千葉、釧路、長崎ではフェリーに乗ることが出来る。到着までの期間は1年で固定のため、利用中プレイヤーはイベント用のサイコロだけを振ることが出来る。
評価点
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日本全国を巡る楽しさ
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すごろく式のマネーゲームと言う発想はけっして新しいものでは無かったのだが、この作品はとてもマネーゲームとは思えないほど"合理的でない"所に非常に力が入っている。この点が『モノポリーシリーズ』や『いただきストリートシリーズ』などとは一線を画す本作の魅力である。
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まず上記二作のように、マップを同じようにぐるぐる回るのではなく、"自分の意思で自由に動き回れる"点、そしてレンタル料徴収などといった、マスによるペナルティが存在しない点が非常に大きい。サイコロを振ることがストレスにならず、自由で伸び伸びとしたプレイが楽しめる。
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また舞台を日本列島にし、各物件駅も例えば上野なら動物園、青森ならリンゴ園、下関ならふぐ料理屋と言った具合に投資対象をただの無機質な数字ではなく、地域ごとの「色」を付けて見せる事で、プレイをより馴染み深く、親しみやすい物にしている。
このおかげで日本の地理に明るくなった、という方もいるのではないだろうか。
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そして特筆すべきが各物件駅に飾られた一枚絵の数々。これはファミコンでしかもシリーズ第一作目でありながら以降のシリーズ作品にも決して負けていない大きな魅力である。
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大鳥居をバックにバットで牡蠣を「カキーン」と打つ野球帽をかぶったしゃもじ(広島)、バレーボールのトスをする(鳥栖)、時計台を背に羊とビールジョッキがにっこりツーショット(札幌)、砂丘に大きく書かれた「アホ」の二文字(鳥取)等々、それぞれが地域の特徴をコミカルに表現しており、「物件駅に到着する」ただそれだけのことが非常に楽しい。
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駅を巡る道中でも「おはなみれっしゃがベリーベリーこうひょうですぞ!!ハッハのハ!!」、「えんせんのゆうえんちではなびたいかいがファンタスティック!!」といった秘書の軽快なトークとともに訪れる季節ごとのサイコロイベントや、「野外コンサート」「祭りイベント」「隠し物件」などといったサプライズ、ゆったりのんびりしたメインテーマなどがプレイに彩りを添えてくれる。
これらの要素によって本作は対戦ゲームでありながら、なぜかお気楽さと、安心感と、旅の情趣が溢れる心地よい物に仕上がっている。
賛否両論点
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対戦ゲームとしての側面が薄い。
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シリーズ初代である本作には後の作品で登場する「貧乏神」や「借金」、「カードによる他者への干渉」といった要素が全く無く、また目的地も各自別々なため、同じ舞台でありながらそれぞれのプレイが独立してしまっている。
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対戦要素と言えるのは、「他人よりも先に鉄道や物件を購入する」くらいのもの。
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上記のように「らしくなさ」に魅力があるゲームではあるものの、物足りないと感じるプレイヤーは少なからずいたはず。
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もちろん、後の作品のようなギスギスした部分がないことを評価する声もある。
問題点
UI、システム周りが未成熟
シリーズ第一作目であるがゆえに致し方ないところもあるが、色々と不便なところが多い。
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「地域データ」が全体マップのみで駅の詳細などを知ることが出来ない。
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セーブ機能がない。
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桃鉄シリーズをプレイしたことがあれば理解して頂けるだろうがこの点は本当に致命的。
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特に、上述の桃太郎ランドモードで条件達成を満たすのに苦労する。
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収益率がマスクデータ。
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おかげで当時は「全ての物件、鉄道が一律25%」だとか「物件は50%、鉄道は25%」だとか「那覇だけは全て100%」だとか様々な情報が飛び交った。
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一応、説明書にはちゃんと「毎年春の決算時になると、会社の資産の総合計の4分の1(10万円未満切上げ)がもらえます。つまり、たくさんの物件や鉄道を所有している社長は、それ相応の利益を各企業からもらうことができます。業績の悪い物件からは、収益が出ないこともたまにありますので注意してください。」と書いてある。
総評
本作はボードゲームでありつつ要となる対戦要素が薄く、対戦要素の拡充は次作の『SUPER』以降となる。よって本作はシリーズの母でありながらシリーズの中で異彩を放つと言う稀有な存在となっている。
それ故に、「対戦で相手を出し抜くことにあくせくすることなく、のんびりと鉄道の旅を楽しむ」という本作独自の魅力は色褪せる事はなく、現在でも「初代が一番好き」と語るプレイヤーも少なくない。
もしこれから先プレイする機会に恵まれるようなことがあったら是非このどうしようもなく呑気でスチャラカな鉄道の旅を一度体験して欲しい。きっと心に響く物があるはず。
余談
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本作完成後音楽担当の関口氏が「みんな、お金儲けもいいけど、桃太郎みたいな、純粋な気持ちも忘れないでね」と発言し、さくま氏がそれをいたく気に入ったというエピソードがある。
シリーズの本作から最新までの変遷を振り返ってみると色々と考えさせられる物があるだろう。
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流石ハドソンの「桃太郎」の名を冠しただけあって、『伝説』にあった女湯イベントもしっかり継承している。
そしてその条件が「隠しも含めた全国の温泉がすべて購入される」という中々に骨が折れる代物(繰り返しになるがセーブ機能はない)。
製作者のみならず、当時涙ぐましい努力をしたであろうプレイヤーにとっても「合理的でないところに非常に力が入る」ゲームであったと言えるだろう。
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「ジャンプ放送局」の中で、桃太郎シリーズの女湯は結構容量を食う(RPGだと村を4~5個増やせる)事をさくまあきら本人が暴露している。
当時のゲーム製作は「容量との戦い」といえたが、そんな中でも容量を犠牲にしてでも遊び心を入れる精神は後のシリーズにも脈々と受け継がれた。
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ゲーム中、野外コンサート開催イベントが発生する駅が4ヶ所ある。このうち静岡駅の西にある「つまごい」は夏フェスの元祖と称される1975年の吉田拓郎・かぐや姫コンサートやヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)の会場となった掛川市の「ヤマハリゾートつま恋(現・つま恋リゾート 彩の郷)」がモデルとなっている。
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しかし当時発売された攻略本では「群馬県嬬恋村」と紹介している。よくよく考えれば静岡の隣が群馬というのはおかしな話だが意外と勘違いしていた人は多かったようだ。
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またラインナップされている歌手の中で「あみーん」の元ネタ「あみん」は、当時は既に解散して5年近くも経っていたので少々懐かしく感じられる名前であった。
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後のシリーズでは東京・大阪・名古屋・広島といった実際の球団が拠点としている場所に「プロ野球団」という恒例の物件ができるのだが、本作にはそれがなく代わりにその各地に「球場(東京のみこの年3月に完成した「東京ドーム」モデルの「ビッグドーム」)」という物件がある。
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当時は中日ドラゴンズと広島東洋カープ以外は本拠地が東京・大阪近郊に固まっており、首都圏には実に6球団が、大阪・兵庫にも4球団が集まっていた。のちの作品よりマップがかなり大雑把だったこともあって、東京・大阪・名古屋・広島の4か所があれば実質的にセ・パ全球団の本拠地を網羅できていたと言っても過言ではない。
最終更新:2024年01月28日 14:28