メタルスレイダーグローリー
【めたるすれいだーぐろーりー】
| ジャンル | アドベンチャー |  
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| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| メディア | 8Mbit+64kRAMROMカートリッジ | 
| 発売元 | ハル研究所 | 
| 開発元 | ハル研究所 ライブプランニング
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| 発売日 | 1991年8月30日 | 
| 定価 | 8,900円(税別) | 
| 配信 | バーチャルコンソール 【Wii】2007年12月18日/600Wiiポイント(税5%込)
 【WiiU】2015年7月1日/617円(税8%込)
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| 判定 | 良作 | 
 
概要
8Mbit大容量ROMと拡張チップMMC5の搭載により、ファミコンとは思えないほど緻密なグラフィックの描き込みと、リアリティに溢れた演出を実現したSFアドベンチャー。
制作期間が延び(桜井政博氏へのインタビューで触れられているが開発に6年を費やした)、発売当時すでにロボットアニメやSFのブームが下火になっていたこと、市場やユーザーの関心が既にスーパーファミコンへ移行していたことなどが災いし、当時はほとんど注目されなかった。
後に再評価されるようになると、生産数が少なかったこともあり中古価格はみるみる高騰し、高額プレミアソフトの代表格の1つとして知られるようになった。
ストーリー
主人公の日向忠(ひむかい・ただし)は、妹のあずさ、学校時代のクラスメートであるエリナと一緒に
よろず機械のオペレートを引き受けるという仕事をしていた。
ある日、作業用の機械を買い付けにいった忠は、店主のゲンに薦められるままに一体のメタルギアーム(作業用ロボットの事)を購入した。
ところが、そのメタルギアームはパイロットを忠だと認識すると、謎のメッセージとともにその形を軍用ロボット・メタルスレイダーへと変化させた。
「創造主を捜せ 地球は危機に瀕している」
メッセージの真意を解明するために宇宙へ飛ぶ忠たち。
追い求めていくうちに明らかになる8年前の真実とは…?
世界観
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舞台は2062年の未来。人類全体が1つに統一され、「地球は保全されるべきもの」という観点から政治や経済の舞台は宇宙へと移り、地球は呑気な片田舎と化している。
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月が新たな生活の場として開発され、周辺にはいくつかの居住区(スペースコロニー)も作られている。作中では03区や35区へ行くことから、少なくとも30以上の居住区が存在しているということだろうか。
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地球からは定期便のスペースシャトルで衛星軌道上にあるターミナルステーションに出て、そこから各方面へ向かう宇宙船に乗り換えるというシステムになっている。
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個人でも小型宇宙船を所有できる時代になっており、月や居住区間の移動も自由にできる模様(もちろん、描かれていないだけで航路申請などは必要になると思われるが)。
 
 
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全高15mほどの人型ロボットが実用化され、作業用や軍事用などに利用されている。なお、作業用がメタルギアーム・軍の戦闘用がメタルスレイダーと呼び分けされる。
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ある居住区の反乱により5年間に及ぶ戦争が発生したが、8年前に鎮圧され終結している。
ゲームシステム
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いたって普通のコマンド選択式アドベンチャー。
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シーンに応じてほぼ最低限のコマンドしか表示されないため、基本的には総当たりで進めていくタイプ。
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選択肢のミスによる途中でのゲームオーバーも部分的に存在する。
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コンティニューは直近の中断地点(パスワードが聞けるシーン)からとなり、それまでの展開はすべて「居眠りしていた忠が見た夢」という扱いになる。すべての謎が解明したあとでのコンティニューはなかなかシュールな光景である。
 
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一部のシーンでは「主観視点で居住区内を捜索」「調べたいところへカーソルを移動させてクリックする」という脱出系のような操作形態に切り替わる。
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さらに終盤では疑似シューティングという驚きの展開も(後述)。
 
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セーブはパスワード方式。
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10文字前後の比較的短いもので、意味のある文章(「えりな もう おきなよ」など)になっているため暗記も容易。ただし空白部分も正確に空ける必要がある。
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パスワードが聞けるシーンは決められているため、次のシーン直前で電源を落とした場合でも前のシーンからやり直しになる(=初プレイ時はいつ聞けるのか分からない)という欠点はあるが、一通り控えておけば「気に入ったシーンをもう一度見たい」「他の選択肢を選んだらどうなるのか確かめたい」というときに簡単にやり直せる長所もある。
 
評価点
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ファミコンの限界を超えた美麗かつ膨大なグラフィック。
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キャラクターも背景もシンプルで平面的に描かれるイメージのある(というよりスペック的にそうせざるを得ない)ファミコンで、美麗かつ奥行きを感じさせる徹底的に描き込まれたグラフィックは驚愕。若干の贔屓目はあるが、スーパーファミコンと比べてもそう見劣りはしていない。
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発売前の広告でも、この膨大なグラフィック枚数は大きくアピールされていた。もっとも、「数の多さだけがゲームのすべてではありませんが」という断りは入れてあったが。
 
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よく動くアニメーション。
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まばたきはもちろん、喜び、怒り、悲しみなど表情豊かに動く。
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話(セリフ)の途中でも内容に合わせて表情が随時切り替わり、その変化は驚くほど自然。
 
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表情以外にも「カードキーを投げて寄越す」「画面右から(実際の挙動に近い感じで)歩いてくる」など、他のファミコンソフトではあまり見られなかった凝った演出をあらゆるシーンで見ることができる。特にターミナルステーションであずさが飛び跳ねるシーン(とエリナのツッコミ)は、別の意味でも記憶に残るだろう。
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ぼーっと背景を眺め続けるだけでも意外な変化や発見があったりすることも。
 
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卒なくまとまったシナリオ
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シナリオに関しては、良く言えば「王道」、悪く言えば「どこかで見たような展開」。
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既視感のある素材を寄せ集めて組み合わせたような部分が目立つが、逆に言えばSFもののお約束が詰め込まれているということでもあり、SFが好きな人ならば十分楽しめる。物語の構成自体も目立つ破綻もなく上手くまとめられている(細かく突っ込んでいけば疑問はそれなりに出てくるが)。
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楽しいシーン、悲しいシーン、緊迫したシーン、感動するシーンなど起伏はしっかりしているため、決して適当だったり単調だったりするわけではない。プレイヤー自身に「あっ」と気づかせることを意識した伏線の回収などは見事である。
 
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魅力的な女性キャラクター。
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SFもののストーリーには欠かせない魅力的な女性キャラクターもばっちり完備。ストーリーに関わるキャラクターからモブまで10数名。可愛い子から綺麗な人まで魅力的な女性が次々と登場し、目移りすること必至。
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そのほぼ全員に対して女性好きな忠はナンパ(もどき)をしまくって、その度にエリナに呆れられるというお約束な展開を繰り返す。
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多少軽薄にも映るが、基本的にシリアスで重いストーリーであるため、こうしたコミカルなシチュエーションがほどよい良い息抜きにもなっている。実際のところ、大抵は名前を聞くくらいで満足してそのまま終わる程度であり、そこまで深く突っ込むようなことはない。
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ナンパ自体は必須コマンドではないため、真面目な忠を演じるのも自由である。
 
 
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要所で発生する文字入力。
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パネルに記されていた機種番号など、事前に得た情報の入力を求められる箇所が要所で発生する(選択肢から選ぶのではなく、実際に入力する)。漠然と読み流していると引っかかること確実。
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思い出せなくても最終的にはエリナが助けてくれるが、何ともばつの悪い思いをすることになる。間違い続けるのもそれはそれで楽しいけれども。
 
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カーソル移動を利用した疑似シューティングの存在。
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アドベンチャーゲームでありながら「敵が時間経過で迫り、攻撃してくる」「アニメさながらの挙動で飛んでいくミサイル」「エリナと協力してミサイルと敵を同時に撃ち抜く」「ジャミングでミサイルの軌道を逸らす」などかなり本格的で、迫力満点かつ緊張感ある演出。
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その戦闘の合間合間で残された謎を解いていき、敵要塞VS味方戦艦の激しい応酬を経て最終決戦に向かう流れ(そして最後の最後に仕込まれた巧妙な罠)もまた素晴らしい。
 
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難易度自体は高くないため、反射神経に自信がない人でもこれが原因で詰まることはまずない。最低限「攻撃サイトを合わせて撃ち落とす」「回避コマンドを選んで避ける」の2つだけでも対応でき、猶予時間も十分すぎるほどにある。
 
問題点
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いくつかの文字には漢字が使われているが、一つの単語でも漢字と仮名が入り乱れて表示されるため、やや不自然で読み難い。
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終盤のとある探索がかなり難易度が高い。ノーヒントで広大なマップを歩き回り、様々な選択肢を試さなくてはいけない。後述のディレクターカット版では若干ヒントが追加されている。
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特定のシーンでは、BGMと同期させるためにメッセージ速度が一定化される。やや遅い表示のため、二度目以降は多少まどろっこしく感じられる可能性も。
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最終セーブポイントからエンディングまでが長い
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全般にわたって演出が長いうえに飛ばせず、前述の疑似シューティングによる戦闘シーンもかなりの数をこなさなければならないため、二度目以降はだるく感じる人も居るだろう。
 
総評
本来ならばもっと内容面で評価されて然るべきもののはずが、時期を外してしまったために注目されず、後にはプレミアソフトということばかりが有名になってしまった不運な作品。
工夫を凝らし、試行錯誤を繰り返したであろう数々の演出も、スーパーファミコンでは当たり前にできてしまった点も痛い。
しかし、ファミコンのアドベンチャーとしては間違いなくトップクラスの完成度を誇る良作なので、SF嫌いでもなければぜひ触れてみて欲しい作品である。
移植・配信
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ニンテンドウパワー『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』
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容量の都合でカットされたシナリオの一部を復活させ、グラフィックの手直しも行われたリメイク版。書き換えの他に、メモリカセットとポストカードを同梱した注文限定版も発売された。
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新たな選択肢や文字入力なども追加されているが、シナリオの根幹や結末は同じ。
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終盤の戦闘ではパートナーにキャティやエンカイを選ぶことができるようになった。パートナー(機体)によって使える攻撃や命中率が異なるという細かさも。
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版権の都合によりBGMは総入れ替えとなっている。ファミコン版のアレンジ曲が聴けないのは残念だが、こちらもゲームの雰囲気によく合っていて優劣つけがたい出来。
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エンディングでは忠、あずさ、エリナ、キャティ、エンカイの描き下ろしイラストが見られる。
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上記のように大体が強化されている一方で、敵要塞出現の際のアニメーションなど、ファミコン版より劣化してしまっているシーンもある。
 
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このリメイク版は、スーパーファミコン及びニンテンドウパワーにおける最後の任天堂公認ソフトとなった。
 
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バーチャルコンソール(Wii/WiiU)
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BGM制作にライブプランニング(現カゼ・ネット)が関わっていたため権利問題が危惧されたが、現在はめでたく配信されている。
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なお、ファミコン版のBGM作曲者はプロの作曲家の京田誠一氏である。
 
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Wiiではファミコン版が、WiiUではファミコン版とスーパーファミコン(ニンテンドウパワー)版両方が購入できる。
 
余談
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忠、あずさ、エリナの3人以外はプロデューサー(兼キャラクターデザイン)の☆よしみる氏の漫画「亜空転送フィクサリア」からの流用であったため、本作の影響を受けて単行本にもの凄いプレミアがついたこともあった。
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氏がストーリー原案兼イラスト担当している小説「E.G.コンバット」や、氏がイラスト担当した小説「五霊闘士オーキ伝」の氏によるコミカライズ版などにも流用キャラが登場している。
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ちなみに☆よしみる氏は1988年2月1日に発売されたファミコンディスクシステム用横スクロールアクションRPG『ファイヤーバム』でアニメーターを担当したことがあった。
 
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ゲーム本編の後日談を描いた漫画「最終機攻兵メタルスレイダーグローリー エイミアの面影」も連載された。
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単行本化の際に再編成がされており、1巻のみ発売されている。未完。電子書籍版もあるので、現在でも読むことは容易。
 
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ゲームと同時にファンブック(2013年に改編&リマスターされて復刻)、2008年にドラマCD、2014年にオリジナルサウンドトラック(ファミコン版)、2017年にはLINEスタンプが発売された。
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開発当初、敵の忌避するものが「特定の音」という設定であったが、開発中に「ジーザス」が発売され、設定が被るという事で別の物に変更された経緯がある。
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HAL研究所の倒産危機
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本作のの完成度と知名度の低さから、「本作の開発費がかさんでHAL研究所が倒産した」という都市伝説が流れ、「ゲームセンターCX」では、事実であるかのように放送された事がある。
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上記のファンブックの中で、開発者がこの件を否定している。実際は売れ行きが好調で、制作費は無事に回収できたとのこと。
 
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ただし、本作を発売する段階に至っても開発費回収の見込みが殆ど無く、HAL研究所が本作の資金繰りで切迫していたのは事実である。
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桜井政博氏へのインタビュー(参考)で触れられているが、呑気にしてた営業に対して珍しく岩田聡氏が怒る程の事態だったとの事。
 
 
最終更新:2025年01月18日 19:43