ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-
【あすとろぼーい てつわんあとむ あとむはーとのひみつ】
| ジャンル | アクション |  
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| 対応機種 | ゲームボーイアドバンス | 
| メディア | 64MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | セガ | 
| 開発元 | トレジャー ヒットメーカー
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| 発売日 | 2003年12月18日 | 
| 定価 | 4,980円 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| レーティング | CERO:全年齢対象 | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | スーパー手塚大戦 アニメ版の忠実ゲーム化ではない
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| 手塚治虫関連作品シリーズ | 
 
概要
本作は手塚治虫原作のSF漫画『鉄腕アトム』のゲーム化作品のひとつで、アトム誕生年記念として2003年に製作されたアニメ版『ASTRO BOY 鉄腕アトム』を原作としている。
ただし、シナリオ、ゲーム性及び各種設定まわり含めて純粋なアニメそのもののゲーム化ではなく、2003年版アトムの世界観をベースとしたオリジナルのシナリオを軸に、他の手塚作品のキャラクターたちが一堂に会するクロスオーバー作品となっている。
登場キャラクター
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アトムやブラック・ジャック、火の鳥といった有名キャラクターから、ヒゲオヤジやアセチレン・ランプ、レッド公といったおなじみの脇役。さらに、プライム・ローズなどのマイナー寄りのキャラクターまで総勢46名の手塚キャラクターが登場。
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これでも手塚キャラとしては一部で、流石に一般人クラスなどは登場していないものも多いが、希少なオールスター出演作品であることに変わりはない。
 
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ゲーム内に登場作品や役割などが解説されたキャラクター名鑑が収録されているため、原作を知らない人も心配御無用。
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後述のアトムの成長システムで新しいキャラクターに出会うことで情報が蓄積していき、「かんたん」モードクリア後では「増補名鑑」、「むずかしい」モードクリア後には「究極キャラクター名鑑」となって内容が加筆され、名前の元ネタや連載時の事情など各種雑学も追加される。
 
ゲーム内容
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オーソドックスな横スクロールアクションとなっており、AボタンのジャンプとBボタンパンチを駆使して進む
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Bボタンと十字ボタンの組み合わせにより「キック」「フィンガービーム」といった派生攻撃が出せる。
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十字ボタンの左右を素早く二度押しで「ダッシュ」、ジャンプ中に十字ボタンとAボタンの同時押しにより「ジェット噴射」で高速移動が可能になる。
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高速移動の瞬間は自機に当たり判定が存在しないため敵をすり抜けることが可能。
 
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一部のステージでは空を飛んで戦うシューティングステージとなり、上下移動も可能になる。
 
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必殺技
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敵を攻撃すると「EXポイント」ゲージが溜まっていく。ポイントが1ゲージ分以上溜まった状態で特定の操作をすると、ポイントを消費して強力な必殺技を放つことができる。
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必殺技は、AB同時押しで「EXダッシュ」、Lボタンで「マシンガン」、Rボタンで「アームキャノン」の3通り。
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マシンガンはお尻から突き出す仕組みになっているが、これは原作漫画準拠の武装で、原作アニメには登場しない。
 
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アトムの成長システム
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ゲーム開始時点では「アトムの能力にリミッターが設けられている」という設定で各種能力が低く設定されており、ゲーム内で新たなキャラクターに逢うことで能力のリミッターが1レベル解除され、以下の能力の内の1つを上げることができる。
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「ライフ」=体力ゲージの上限を上げる。
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「パンチ」=パンチ・キック攻撃の威力が増す。
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「レーザー」=フィンガーレーザーの威力が増す。
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「ショット」=マシンガンの威力が増す。
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「ジェット」=ジェット噴射を連続して使える回数が増える。
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「センサー」=五感が強化され、今まで気付かなかった何かを発見することがある。
 
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成長の対象となるキャラクターは、ストーリー上で必ず出会うものから隠れキャラとして潜んでいるものまでさまざま。
 
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シナリオ
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ストーリーはアニメ版の再現ではなく、様々なエピソードをクロスオーバーさせたオリジナルのもの。
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ロボット暴走事件から始まり、古代王国へのタイムスリップ、ロボットと人間の対立など様々な事件に巻き込まれて行く。
 
 
評価点
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アクションゲームメーカーとして数々の名作を生み出してきたトレジャー製だけあって完成度は高い。
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特別目新しい要素は無いものの、動かしているだけで楽しいと思える出来である。
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操作のレスポンスが良く、パンチやビームによるテンポのいい攻撃と無敵で空を飛びまわれるダッシュ、小気味いい効果音が相まって爽快感は抜群。
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難易度は高めだが、「かんたん」モードでは特殊攻撃の初期ストック数が30・最大ストック数99と非常に多く、初心者ならばゴリ押しでも進める。
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一方「むずかしい」ではストック数が3と大幅に制限され、プレイヤーのテクニックが試されるようになり、初心者から上級者まで楽しめる。
 
 
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シナリオの評価も高い。手塚治虫の「スターシステム」を体現したかのようなお祭り的なシナリオは魅力的。
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音楽についても、GBAのアクションゲームとしてはだいぶ多い37という曲数で、クオリティも十分。
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制約の多いGBA音源ということもあり質的に完璧とまでいえないところはあるが、どれも雰囲気には合っており、戦闘曲も迫力がある。
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効果音を含めたサウンドテストも完備。
 
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キャラクターと主人公の成長システムを結び付けたゲーム性
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「新たなキャラクターに出会うことがアトムの成長のきっかけになる」という設定をゲームシステムとして機能させると共に、新たな手塚キャラを探して会いに行くという楽しみにもつながっている。
 
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クロスオーバーものには必須の原作名鑑も完備
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原作をよく知らない人にとって必見の名鑑もきちんと完備されており、内容も非常に充実している。各キャラの原作には色々と入手しづらい物も多いため、これは非常にありがたい。
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加筆後の「究極」という御大層な名前や、プロデューサーの意向か流石にマニアックすぎて需要の怪しい記述も気にはなるが、質や正確性の面で問題視されるような内容もほぼない。
 
賛否両論点
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シナリオの評価は高いが、手塚ファンから「既存のエピソードの焼き直しでは?」という指摘もされてはいる。
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ファンならさほど不満は出ないであろう人選だが、あえて言うならばアトムの兄(後から産まれてるが兄)であるコバルトが出てこないのは気になるところか。
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ライバルのアトラスやガキ大将の四部垣など、『ASTRO BOY 鉄腕アトム』含む近年の作品でキャラクター造形が変更されたキャラクターは変更後のものに準じている。コバルトが不在なのも、『ASTRO BOY』の設定に準拠した可能性が高い。
 
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アニメ版の要素が中途半端
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前述の通り、デザイン面ではアニメ版に準拠しているが、シナリオ面ではアニメ版の内容に基づいた要素が極めて薄い。アトラスがジオワームを暴走させた犯人になっているなど、意味もなく改変されている個所も多い。
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シナリオ面ではアニメ版の要素が薄い一方で、キャラクターデザイン面は完全にアニメ版に準拠。それどころか、見た目だけでばく性別や能力が変わったり、削除されたキャラクターまでいる。
 
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本作自体が複数の手塚作品のクロスオーバーであるため「クロスオーバーに付き物の改変・脚色の類」であると考えるべきではあるが、
 『アトムの世界観に他作品をクロスオーバーさせることがゲームの軸』であるならば、わざわざ特定のアニメ版を下敷きにする必要があるのかというのもいささか疑問である。ゲーム独自のキャラデザインにする、クロスオーバーであることがわかるようなタイトルにするなどした方がよかったかもしれない。
 
問題点
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とにかく処理落ちが激しい。
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敵が多い場面などではゲームスピードが2分の1以下にまで低下するため、その点では快適でテンポの良いアクションとは言い難い。
 
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難易度が「かんたん」と「むずかしい」の2種類で、中間に当たる難易度が無い。
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上記にもあるように2つの難易度は結構両極端であるため、「普通にゲームはやるけどアクションは苦手」ぐらいのプレイヤーはどちらも合わない可能性もある。
 
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敵の種類が少なく、拡大縮小でバリエーションを出そうとはしているもののマンネリ感は否めない。
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ザコキャラは殆どオリジナルキャラ。中ボスだと「ビッグX」やら「ゴブリン侯爵」に登場する敵キャラが出たりするが。
 
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ラスボスには通用しないものの、「かんたん」「むずかしい」共通でほぼ完全なマシンガンハメが存在する。
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アクション面ボス:パンチとマシンガンがレベル最大なら、(マシンガン→地上で通常パンチ1セット強)×n。
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シューティング面ボス:レーザーとマシンガンがレベル最大なら、(マシンガン→マシンガンの効果が切れる直前までレーザー)×n
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どれかのレベルが最大でなくとも、EXゲージ回復が消費に少し追い付かなくなるだけで半ハメにはなってしまう。
 
 
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シナリオの途中で「ドルメヒカ症候群」という用語(病気の名前)が出てくるが、この「ドルメヒカ」はプロデューサーであるゾルゲール哲の著作に共通する造語。
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言うまでもなく手塚作品とは何ら関係のない単語なので、規模はごく小さいものの作品の私物化とも言える。
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そこそこ重要なシーンで出るとは言え単なる固有名詞なので知らない人はスルーして終わりの話だが、その辺りの内情を知っているとあまりいい気はしない話ではある。
 
総評
主だった手塚キャラを総出演させたというだけでも豪華なお祭り作品であるとともに、内容も看板倒れにはなっていない。
シナリオはキャラ崩れもなく十分なクオリティでまとまっており、アクション部分も爽快でアトムの強さとゲームバランスをうまく両立させている。
難易度調整やキャラ紹介といった配慮も効いており、ゲームは苦手な手塚ファンにも手塚作品をあまり知らないゲームファンにも優しい。
手塚治虫作品関連のゲームを挙げるのであれば外すことのできない良作のひとつである。
海外版について
『Astroboy OmegaFactor』の名で海外版も出ている。
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日本製のGBA、DSでも問題無く動作する。
 海外版では以下のような変更点・追加要素があり、完全版とでも言うべき出来栄えである。
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英語、フランス語、イタリア語、オランダ語、スペイン語、日本語からなる6種類の言語モードを有している。
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日本語モードのシナリオテキストが一部変更されている。
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ザコキャラクターの種類が増えている。
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ステージ構成、敵キャラクターの仕様が一部変更されている。
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難易度がEasy・Normal・Hardの3種類に分かれている。
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ゲーム完全クリア時にステージ3-1・3-4を選択するとエミヤ治療になってしまうバグが直っている。
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ボスキャラクターのライフゲージが表示される。
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アトラス、ブラック・ジャックまわりのイベントが一部変更されている。
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隠れキャラとして、手塚キャラではないゾルゲール哲オリジナルキャラクター「えびいぬ君」が登場するが、これは不評である。
余談
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本作のプロデューサー、ゾルゲール哲(岡野哲)が書いた本作の仕様書のあまりの酷さは一部で有名(こちら)。
 開発担当のトレジャースタッフがアクション面の全面改訂を余儀なくされたそうだ。
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その後ゾルゲール哲は2度目の手塚治虫オールスター作品となる『ブラック・ジャック 火の鳥編』を開発した。
最終更新:2024年03月16日 11:10