ワールドヒーローズ2JET
【わーるどひーろーずつーじぇっと】
| ジャンル | 対戦格闘 | 
| 対応機種 | アーケード(MVS) | 
| 販売・開発元 | ADK | 
| 稼働開始日 | 1994年4月26日 | 
| 発売日 | 【NG】1993年12月22日 【NGCD】1994年9月9日
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| プレイ人数 | 1~2人(同時プレイ) | 
| レーティング | CERO:B(12歳以上対象) | 
| 配信 | バーチャルコンソール 【Wii】2011年12月20日/926ポイント
 アーケードアーカイブス
 【PS4】2017年11月30日/823円(税8%込)
 【One】2017年11月30日/843円(税8%込)
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| 判定 | なし | 
| ポイント | 斜陽のシリーズ3作目 バランスは良くなったのだが…
 時代に逆行してしまったゲーム
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| ワールドヒーローズシリーズ | 
 
概要
『ワールドヒーローズ2』の続編。しかし、内容からアップデート版と思しき部分が多い。
追加キャラクターは2人だが、前作からの使用キャラクターは全員続投している。ラスプーチンを除く全てのキャラクターに、最低でも1つ新必殺技が追加された。
「飛び道具跳ね返し」は継続して残り、さらに「ダッシュ・バックステップ」「タイプセレクト」「通常技のケズリ」などの新システムが導入。
新キャラクターは、方天戟を武器に使うリョフ、全身に仕込んだ刃物で攻撃するジャックと英雄よりはむしろ悪党という面々。
主なルール
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Cボタンを押すと出る挑発が、レバー入力により4種類から選択できるように。挑発専用ボタンとなり、前作のように近距離で投げを入力することはできなくなった。
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レバー後ろだと「タイムオーバー時の負けポーズ」、ニュートラルで「挑発」、前入れで「残り体力が少ないときの勝ちポーズ」、下入力で「ニセ気絶ポーズ」となる。
 
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体力ゲージの下に、各キャラの思惑、心境が表示される「字幕」が導入された。試合中見ている暇はないが、個性が出ていてなかなか楽しい。
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ダッシュとバックステップが全キャラに追加された。レバーを前か後ろに素早く2回入れることで発動。
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前ダッシュからはすぐに技を出すことができ(ガードできない時間はある)、バックステップは終わり際に隙があるものの、全キャラ出掛りに無敵時間が存在。かなり使い勝手は良い。
 
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今作では通常技をガードさせても相手の体力を削れるようになった。ケズリフィニッシュもできる。
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相手キャラクターの防御力と技の攻撃値の組み合わせによって削れるか否かは決まってくる。大抵は強攻撃が該当するが、中には弱攻撃でも削れる技もあり、必殺技にも拘らず削れない技もある。
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後述の「タイプセレクト」次第でも削れる技は変化する。防御力を減少させてしまうと、普段削られない弱攻撃でも削られてしまうことも。
 
 
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対戦時のみ、キャラクターの特徴を変化させることのできる「タイプセレクト」ができるようになった。選べるのは以下の4タイプ。
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「ノーマル」:そのまま。各キャラの初期設定されたステータスで対戦を始める。
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「攻撃重視」:攻撃力がアップするが、防御力とスピードがダウンする。攻撃力は確かに全タイプ中最高だが、防御力に至ってはスピードタイプと同じまで落ちるため、相手の一撃も結構痛い。
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「防御重視」:防御力がアップするが、攻撃力とスピードがダウン。通常技によるケズリをほぼ無効化できる。攻撃力はスピードタイプよりは若干高い。
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「スピード重視」:スピードがアップするが、攻撃力と防御力がダウン。攻撃力と防御力は全タイプ中最低。かなり特殊なタイプで、それ以外にも以下の変更点がある。
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ダッシュ・バックステップが速くなる。
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ジャンプ力が変化。滞空時間は他のタイプと変わらないが、軌道が高く、遠くに飛ぶことができるように。
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特定の必殺技の軌道が大きく変化するように(例:ハンゾウの光龍破)。
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ヒットバックが増加し、連続技を食らいにくくなる。
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突進系の技の移動量が増し、普段は届かない位置から当てることができるようになる。ただし、相手にめり込みやすくもなる。
 
 
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カウンターダメージが明確に設定された。体力差補正のシステムもあり、様々な状況が複合されると1発の技がとんでもないダメージになる。
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しゃがみ状態の相手に対して攻撃を叩き込むと、ダメージが高くなる。実は何気に、『ストリートファイターIII』よりも先にしゃがみ防御に対するアンチシステムを適用している。
 
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技同士の攻撃判定がぶつかった際、「カシィィン!」という音と共に相殺が発生し、両者ノーダメージで間合いが離れるようになった。
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デスマッチモード、投げ返しシステム、立ち弱Pを連打することによる専用連続技システムは削除された。
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CPU戦は「武者修行モード」と「英雄大会モード」から選択できるように。
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武者修行モードは、使用キャラを選択後、戦いたい相手を選んで練習ができる。同じ相手を選択することもOK。タイプセレクトはできず、他は対戦時と同じ。デフォルトだと2本勝負。
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4回勝ち抜くと武者修行モード専用のエンディングになる。後半になるほどCPUの強さは上がっていく。
 
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英雄大会モードは、最初の1日目~4日目までは「プレイヤーキャラ」vs「3人チームで出てくる相手」との対決になる。強制的に1本勝負で、2勝以上しないと次の日に進むことができず、ゲームオーバーになる。出てくるチームの組み合わせは予め決まっている。
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スコアについては前作までの点数形式は廃止され、全試合での「LIFE」「TIME」「BATTLE」ポイント(それぞれ100.0が最高)の平均値という特殊な形式となっている。理論上の最高スコアは300.0ポイントだが、出すことのできるキャラクターは非常に限られている。
 
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2日目の後、ゼウスのペットである「サマンサちゃん」という猛牛と闘うボーナスステージが入る。画面外から突進してくるところに一撃入れて怯ませ、倒れるまでに追い打ちを9回入れられればパーフェクトとなる。
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その後、キッドが乱入→ハンゾウと決勝戦→ジャック→リョフ→ゼウスの順で戦うことになる。キッド戦からは対戦時と同じで、2本勝負。
 
評価点
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前2作がかなりメチャクチャなキャラクターバランスであった関係から、調整には相当力が注がれており、対戦ツールとして充分機能するようになった。
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今作でも格差は存在するが、お手軽に振り回して強い技・戦法という点については大分改善されており、読みと人間性能次第で覆せる組み合わせは大きく増えている。
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不動の最強キャラであった「ジャンヌ」はかなり弱くされた。それでもキャラクタースペックは高く、腕次第でまだまだ最強を狙える。
 
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コマンド系必殺技が出しやすくなった。
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前作までは「26P」「36P」「43P」「613P」等、癖のあるコマンドが多かったのが、一般的な「236P」や「623P」に改められた。
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しかし、何故かブロッケンのハリケーンアームのみは「263P」のままである(同一コマンドだったリョウコの戊殺掌は「214P」に変更されたにも拘らず)。
 
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タイプセレクトによる戦略性。同じキャラクターでも、タイプによって大分使い勝手は違う。
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それによる選択時の駆け引きも存在しており、考えさせられる部分も多い。
 
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演出面は前作よりも強化された部分が多い。
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ストーリー性は乏しいものの、CPU戦のデモ絵はしっかりと描き込まれており、『英雄大会』に参加している実感は充分に味わえる。
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フウマの身体を炎に包んで体当たりする「奥義 爆裂究極拳」やジャンヌのこれまた火の鳥になって突進する「ファイアーバード」など、派手な必殺技も存在。使いにくい技が多いが、それだけにヒットさせた時の快感はひとしお。
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また、今作は3作目という事もあり、数多くの新規アニメが書き下ろされている。
 上述の必殺技やダッシュ、バックステップの追加は勿論のこと、ニュートラル時の構えが前作と異なっていたり、勝利ポーズが差し替えられたキャラが存在していたり、ラスプーチンの「バリアを貼る→石化」の様にガード時のモーションも差し替えられたキャラも存在する。
 中でも前作から参戦したエリックについては、モーションの追加や勝利アニメの差し替え、デフォルトのカラーチェンジだけでは飽き足らず、何とキャラのグラフィック自体が丸々今作独自の物が採用された上での参戦。通常技も前作から別物になっている物も存在するので、実質今作からの新キャラの様な物と言っても良い。
 
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フィニッシュした相手に何度も技を当てる、いわゆる「死体蹴り」に意味を持たせている。
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CPU戦ではこれがバトルポイントを大きく稼げる行為であり、公式で推奨されている。本作をやりこんだ人ならば、リョフの「槍撃破」で意図的に止めを刺した経験は誰もが持っているだろう。
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ただ、試合決着と同時に動けなくなるため、多段ヒット・ガードさせられる技で止めを刺さなければ本作では発動しない。
 
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当時はあまり否定的な意見は見られず、ゲーメストでは「ムチ打ち技」などと特集ページを組んでおり、むしろ好意的に受け止められていた。
 
賛否両論点
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「差し合い重視」「一撃の技が重い」格闘ゲームであったこと。
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連続技については入りにくく調整されており、技の隙も大きめで、ジャンプスピードも遅いキャラクターが多い。
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飛び道具系の技は隙が増えているものが多く、(跳ね返しのせいもあって)かなり使いにくくなっている。
 
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それに加え、本作のカウンターダメージ補正はかなり強烈。迂闊に技を出して返されると大ダメージとなり、負けに繋がる。そのため、ガンガン攻めるという行動は取りにくい。
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つまらないというわけではないのだが、当時のゲーマーには受け入れがたかった部分が多かったのは事実である。
 
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投げが非常に弱くなっていること。
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通常技全ての出掛りに投げられ判定のない時間があり、当て投げは通常技を出せば簡単に阻止できる。画面端でなければ、バックステップでも簡単に逃げられる。
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さらに、投げにはカウンターによるダメージアップが適用されない。そのため、反撃技としては通常打撃技を入れるよりも、攻撃力が低くなってしまう局面が多い。
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コマンド投げもこれまた威力が全体的に低め。相手の近くで複雑なコマンドを入れて狙うリスクと、報酬の割が合いにくい。
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これらの影響から、コマンド投げをメインに戦うリョウコとマッスルの2人はかなり厳しい戦いを強いられることになった。
 
 
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ラスボスのゼウスが、どう見ても『北斗の拳』のラオウ。
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ADKの開発スタッフはこれについて「特にモチーフはありません。歴史上の闇の帝王というイメージで作りました」「オリジナルキャラです」と言い張った。
 
問題点
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CPU戦周りの仕様に問題が多く、不便な点があること。
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タイプセレクトを行うことができず、強制的にノーマルタイプとなってしまう。そのため、他のタイプを練習できない。
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特にスピードタイプは他と大分使い勝手が違うのだが…。折りしもアーケードは格闘ゲームブームの最中で、「置きコイン」の順番待ちが多かった中で修練を重ねるのはとても難しかった。
 
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難易度がさらに高くなり、初心者にはとても厳しくなった。
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「武者修行モード」なら楽なのだが、たったの4戦しかプレイできないので割高感がぬぐえない。
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かといって「英雄大会モード」では、超反応でこちらの技を返してくることが多く、パターンに持ち込まないととても厳しい。さらに、CPUキャラの体力が3分の1なくなるごとにアルゴリズムが切り替わるため、パターンを使い分ける必要があるキャラクターが多い。対戦の練習としてもあまり適していない。
 
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エンディングが全キャラで共通となり、物足りなくなった。さらに、ベストエンドを見るための条件が厳しい。
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「ゼウス戦で最後に勝利したラウンドで、自分の体力がどれだけ残っていたか」で決まるのだが、最高のエンディングを見るためにはほぼ攻撃を喰らわずに勝利しなければならない。
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3種類あるエンディングのうち、ベストエンドでないとスタッフロールを見ることができない。他の二つは尻切れトンボ的な、良く分からない結末で終わってしまう。しかもベストエンドの内容はデフォルメされたジャックとの掛け合いというそれまでの雰囲気を覆すギャグオチ。
 
 
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キャラクター格差はマシになったものの、弱キャラはやはり手ひどい。そういったキャラクターで勝つには相当な修練が必要。
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先に挙げた「リョウコ」「マッスル」に加え、飛び道具を無くされ牽制が弱くなった「J・マキシマム」、ジャンプスピードが極端に遅く高く、地上技の威力も低めに設定されている「C・キッド」などがその候補。
 
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本作では全体的にガード硬直時間が長い。一部のキャラは、めくり強攻撃を続けられるだけで抜け出すのが厳しかったりする。ダッシュやバックステップ、無敵技を使いこなすことが必須。
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さらに、しゃがみガードから立ちガードに切り替える際にタイムラグがあり、『技をしゃがみガードさせて中段となる攻撃を出す』と、ヒット確定してしまう。
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一番酷いのはマッスル。しゃがみ弱B→登りギロチンドロップがヒット・ガードに関わらず入り、相手はダウンしてしまうので死ぬまでハメることができる。ただし、マッスルは病気持ちのため、それでも弱キャラである。
 
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ガチで勝ちに行こうとすると、タイプセレクトの格差がかなり大きいこと。
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通常技によるケズリをほぼ無効化できる「防御重視」と、移動力が高くなることによって(永久を含めた)コンボが狙いやすくなる「スピード重視」の2タイプが抜きんでて強いと言われており、自分のキャラクター&戦法によって、このどちらかを使い分けるのがセオリーとされている。
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残る「ノーマル」「攻撃重視」の2タイプはあまり旨味がないため、弱いとされている。
 
総評
シリーズ中、一番対戦バランスに拘った作品であり、ある意味で異色。
当時は評価されず、すぐに勢力を失ってしまった作品でもあったが、現代では再評価する向きも一部で進んでいる。
決してADKが手を抜いて作ったわけではない…はずなのだが、ゲーマー達の心をとらえることができなかった、悲しい作品と言えるだろう。
移植
最終更新:2024年11月03日 00:45