この記事では『魔都紅色幽撃隊』と『魔都紅色幽撃隊 DAYBREAK SPECIAL GIGS』の2本を紹介する。判定はどちらもなし。
魔都紅色幽撃隊
【まとくれないゆうげきたい】
ジャンル
|
學園ジュヴナイル奇伝アドベンチャー+RPG
|

|

|
対応機種
|
プレイステーション3 プレイステーション・ヴィータ
|
発売元
|
アークシステムワークス
|
開発元
|
トイボックス、ナウプロダクション
|
発売日
|
2014年4月10日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
レーティング
|
CERO:B(12才以上対象)
|
判定
|
なし
|
概要
『東京魔人學園伝奇』シリーズで知られる、今井秋芳監督の「學園ジュヴナイル伝奇」作品。
直接的な繋がりはないが、一部に聞き覚えのある名前が出てきたり過去作と関連性を匂わせる要素が含まれている。
シナリオの雰囲気的には、『魔人学園』よりも『九龍妖魔學園紀』を思わせるテイストに仕上がっている。
プレイヤーは転校した先で偶然事件に巻き込まれ、オカルト専門の怪しい出版社「夕隙社」の一員としてゴーストと戦っていくことになる。
システムの特徴
-
五感入力システム
-
『魔人』シリーズなどで行われた「感情入力」の発展系であり、感情と行動をそれぞれ選択して主人公を行動させる。
-
例えば同じ「触」という行動でも、最初の感情が「友」であれば「友好的に握手を求める」となり、「怒」であれば「激高して掴み掛かる」となる。
-
他にも相手のにおいを嗅いだり、何でもかんでも舐めてみたり、様々な行動が導き出される。
-
また、特定の入力で正解の行動をとるとバトルパート終了後のイベントで「心眼」が発動し、シナリオをさらに深く見ることが出来るようになる。
-
行動予測バトル
-
通常のターン制でもリアルタイムでもなく「次のターン開始時には敵味方が同時に移動し、その後素早さの高いキャラから行動する」というシステムで、「相手がどこに移動し、誰に攻撃してくるか」を予測していくことが重要になる。
-
攻撃を空振りしてしまうと物品を破壊してしまいクリア報酬が減少してしまい、敵と同じ位置に移動してしまうと「バッティング」となり一方的に攻撃された上相手は再移動してしまう。
-
SLGというよりはボードゲームに近く、実際インターミッションではバトルの練習にもなるボードゲームで遊べる。
-
「GHOST」
-
Graphic Horizontal Object Streamingの略称で、本作に使われている描画方式のこと。
-
動画ではなく「滑らかに動く静止画」という感じで、公式サイトでイベントシーンの一部が公開されている。文字で書き表して表現するのは難しいため、興味のある方はそちらへどうぞ。
-
また、アドベンチャーパートではVRによる立体的な背景表現を取り入れている。固定された背景に立ち絵を表示させるわけではない…らしい。実際見てみないとどうにも真贋が付かない部分であるが…。
その他過去作から継続して使われている部分もあるため割愛。
人物評価が履歴書だったりアイテム合成など、微妙に進化・変更されてはいるが基本的には大きな変化はない。
アドベンチャーパート → バトルパート → アドベンチャーパート → インターミッション、という流れも『魔人』や『九龍』と同じ。
評価点
-
「GHOST」によるビジュアル力の高さ
-
3DCGやフルアニメが普通に使われているご時勢だが、この「動く静止画」は目新しくそして美麗。
-
ただCGの表情差分や種類は少なく、セリフにそぐわない表情も見受けられる。学生組は私服差分がない。
-
音楽もレベルはかなり高く、声優陣も豪華で結構なインパクト。
-
ただ、メインヒロインが専業声優ではなく芸人の稲垣早希氏なのは少々気になる人もいるかもしれない。決して下手ではないが…。
賛否両論点
-
行動予測バトル
-
奥深さ
-
最初はそれこそ何をすればいいかわかりにくいのだが、段々と理解してくるとこれがなかなかに楽しい。
-
ゴーストの名前に「じっと見る」と書いてある場合は初期位置からほとんど動かない、「女好きの」とある場合は女性キャラ目掛けて一直線に突っ込んでくる、など霊の情報からある程度の傾向は割り出せる。
-
またレベルが低いうちは安価な「食卓塩」で行動範囲を狭めてやれば追い詰めやすいし、逆に敵が強くなってきたら囮を設置して被害を食い止めつつ戦えばいい。
-
かなりレベル差があっても、状態異常の付加率が敵味方ともに高いし「APを0にする」攻撃で行動自体を封じることも可能。
-
主人公はレベルアップによるスキル習得がない代わりに仲間のスキルを学べるので、上手くすれば一方的に行動を封じフルボッコにしてやることも夢ではない。また攻撃せず待機した場合のみ、全敵の位置をマップに表示する「イーグルアイ」なども便利。
-
とっつきにくさ
-
上記のとおりシステムに慣れればハマるのだが、そうでないと単なる運任せの戦闘になる。
-
実際mk2など大手レビューサイトの意見を見ると「戦闘が運任せすぎてつまらない」という声が目立つ。
-
そして、解説書やチュートリアルも不親切でわかりにくい。
-
戦闘だけではなく、全体的に説明不足な面が多い。フリーバトルへ行く為の方法や装備選択のキャラ切り替えなど、書いておいてほしいことが書かれていない。
問題点
-
シナリオの薄さ
-
レビューサイトなどで真っ先に上がる点で、本作のシナリオはボリューム不足の薄味である。詳細は後述するが、雑誌連載などによくある打ち切りENDに近い。
-
話の展開は速いものの、それが災いしプレイヤー置いてけぼりで進んでしまうことも多い。「心眼」で真相を知っても尚シナリオの密度は薄く、全シナリオで心眼を発動させても、トロフィーが出るだけで真エンドなどの追加はない。1周目で心眼をコンプできず「全部見れば真の最終話に…」と思っているとガッカリする。
-
また、メディアミックス前提だったのか続編を出す予定なのかは不明だが未回収の伏線も多い。思わせぶりに出てきた割にシナリオに絡まないキャラがいたり、壮大な陰謀が出た割には影響が小さかったりする。
-
ネタバレになるため詳細は避けるが、ラスボスに関しても行動もその理由も唐突である。
-
そもそも黒幕なのかどうかも今ひとつわかりにくい。ラスト付近で突然主人公を襲ってこなければ、そのまま見過ごされてた可能性も否めない。
-
プロローグの時点で主人公を警戒していたようだが、その理由もよくわからないまま。
-
「自分の死を誰にも知られなければ、永遠に消えずに霊として現世に残れる」という話も急すぎる。また、どうやっても「協力者」がいなければ成立しない筈なのだが、そんな人物は未登場。
-
一応伏線自体は序盤からあるのだが、一回最後まで遊んだユーザーでなければ気づかないレベル。最初のシナリオで出てくる古いガラス瓶や最後で少女の霊が呟く台詞から「この事件は実はもっと裏があるのでは」と読み解ける人間はそうそういないだろう。
-
学校らしい描写が少ないという意見もある。確かに学校行事などは描かれず、多くの時間を編集部や仕事先で過ごすことになる。
-
『東京魔人學園』にあった「好感度によって、登場するキャラが変わったりする」といったイベントはほとんどなく周回する魅力も少ない。
-
一応エンディングは変わるのだが、好感度目当てにフリーバトルを繰り返すと運転担当のキャラの好感度がやたら上がってしまう。一応彼がシナリオで負傷しているときに連続でフリーミッションをすると好感度が下がっていくようだが…。
-
仲間キャラの不遇な扱い
-
仲間キャラは仲間になったとしても、それ以降のシナリオではほぼ登場しない。『魔人』や『九龍』であった交流を深めるようなイベントは皆無。
-
その上、ストーリーでの戦闘は強制参加枠によって埋まりがちで、せっかく育てたとしてもフリーバトル以外で日の目を見ることのないキャラも多い。シナリオで加入以降は出番もないこともあり、キャラの使い捨て感にいっそう拍車をかけている。
-
周回時には装備がリセットされた状態になり、強制加入戦闘では毎回プレイヤー陣の穴になってしまう。初期武器+防具・装飾品一切なしでは的になるだけな上、倒されると好感度が下がって加入しなくなる可能性も…。
-
テンポの悪さ
-
パッチで改善はされたが、戦闘や訓練の描写カットが可能になってなおテンポの悪さの問題は残っている。
-
特に訓練は技能を上げたり、特技取得等で利用することが多いのだが毎度同じ内容を見なければならない割にスキップ出来る量は微妙である。
-
装備品入手がほぼ運任せ
-
一応コンビニで買えるものもあるが、強力なものは特訓での報酬やドロップアイテムに頼るしかない。ただし、上手くすれば序盤で粉砕バットなど強めの装備が入手できる。
-
チャームに関しては、しのびくじを引き続けなければまったく入手できないため、集めようと思うと無駄な売買を繰り返す必要がある。
-
ただ後半はお金が余るので財政上の問題はない。
-
ボードゲーム「HYPERNATURAL」での敵シンボルが見えない
-
仲間はランダムで敵にダメージを与えているが、自分は攻撃してもMISSしまくる。
総評
シナリオ面は今井監督が手掛けた他の作品に比べるとお粗末な出来である。
テンポやユーザビリティには難があり、システムに馴染めれば楽しめるかもしれないが、そこまで行けるユーザーがどれほどいるかが問題になる作品。
「『魔人』や『九龍』が好きだったから」…と手を出すと少々後悔するかもしれない。
魔都紅色幽撃隊 DAYBREAK SPECIAL GIGS
【まとくれないゆうげきたい でいぶれいく すぺしゃるぎぐす】
ジャンル
|
學園ジュヴナイル奇伝アドベンチャー+RPG
|


|

|
対応機種
|
プレイステーション4 プレイステーション3 プレイステーション・ヴィータ Windows 7/8.1/10(Steam) |
発売元
|
アークシステムワークス 【Win】PQube
|
開発元
|
トイボックス ナウプロダクション 【Win】アークシステムワークス
|
発売日
|
【PS4/PS3/PSV】2015年11月26日 【Win】2017年3月18日
|
定価
|
【PS4/PS3/PSV】3,800円(税別) 【Win】980円
|
レーティング
|
CERO:C(15才以上対象)
|
判定
|
なし
|
概要(ギグス)
『魔都紅色幽撃隊』に追加シナリオを加え、戦闘パートも大幅に変更した。PS4版も発売された。
評価点(ギグス)
-
薄いと評された物語に追加エピソードが加えられた。
-
内容は仲間加入後にその仲間を中心に事件を解決するもの。仲間が入ってから全く接点がない前作よりキャラに感情移入ができる。
-
戦闘パートの改善。
-
表示される情報が整理・統合・明確化され読み取りやすくなった。
-
APが残っている間連続行動ができる。罠の効果が変更され種類も増えた。
-
戦闘パートだけ見ると、見た目は同じだがゲーム性が大きく変化し、チュートリアルも行われるためプレイしやすくなっている。
-
改良に伴い敵ステータスも見直され戦闘バランスも調整されている。
賛否両論点(ギグス)
-
改良された戦闘パートは囮系の罠とAPを上げて複数回攻撃する戦法が強すぎ、最終的には効果の優れた囮に敵を引き寄せ、主人公が一人で殲滅する戦法が最適になってしまう。
-
追加シナリオに力を入れた結果、元のシナリオより追加の話の方が長い逆転現象を起こしている。
問題点(ギグス)
-
途中のシナリオが追加されたが、本筋はほとんど手が加えられておらずテキスト分量も少なく、選択肢分岐もない。EDの消化不良もそのまま。
-
手を入れて説明不足を補っている部分があるものの、無印の時から意味不明な浮気男の話には全く手が入っていない。
+
|
ネタバレを含みます
|
-
女性の霊が人を襲う事件が起き、被害者やその周辺を調べていくと「被害者は全員女性」「共通の男性との接触があった」という共通点が浮かび上がった。その捜査線上には「妻を亡くした若い男」の姿が。
-
女性霊はその男の妻であり、「夫の気持ちを自分から離したくない」という感情に支配され接触した(会話した程度も含む)女性を手当たり次第に襲い続けていた。
-
だが主人公達と戦って正気に立ち返り、生前自分が「夫に幸せになって欲しい、夫にも私ではなく自分が幸せになる事を第一に考えて欲しい」と心の底から願っていた記憶を思い出し成仏する。
-
しかし、実は元々夫は妻に対して関心がなく、ただ浮気を繰り返していただけということが最後に明らかになる。「霊と人間の都合は異なる」ということなのかもしれないが、それにしても…。
-
また、無印真相ルートにて省略されていた(何故か通常ルートでは言及がある)「一刻も早く幸せにならなければならないという強迫観念に囚われているように見えた」という証言が真相パートにも追加される。
-
その結果、浮気をしていた理由が「自分の幸せを第一にして欲しい」という生前の妻の望みに固執したためであり正気を失っていた、というのが事実であると受け取れる形になっている。
-
さらに、彼は終盤のシナリオで「心霊事件を専門とする警視庁零課のメンバー」として再登場する。ならなぜ「霊に無縁な一般人」のフリをしたのか釈然としない。
|
-
追加シナリオを複数人で担当しているが、基本設定が脚本家によって若干変わってしまい、全体的にキャラクターや世界観の統一性が薄くなっている。
-
PS3/PSV版は無印のセーブデータがあるとゲーム内で特典が入手できるが、無印が発売されていないPS4/Win版にはその機能がなく、別ハードのデータも認識させることもできない。
総評(ギグス)
無印版で評判の悪かったところをなんとか挽回し、手ごろな値段設定で販売しているので無印をやるよりはこちらの方がいい。
しかし、手を入れても駄作が凡作になった程度。
数少ないファンからも「完全版」どころか「完成版」と呼ばれる状態である。
余談(ギグス)
-
初週売り上げについて、販売数が少なすぎ「全機種計測不能」という発表がなされた。
最終更新:2024年06月12日 22:50