ワンピース ROMANCE DAWN 冒険の夜明け
【わんぴーす ろまんすどーん ぼうけんのよあけ】
ジャンル
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海賊ロマンRPG
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対応機種
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プレイステーション・ポータブル ニンテンドー3DS
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発売元
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バンダイナムコゲームス
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開発元
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スリーリングス ゼレオ (プログラム) ピラミッド (PSP/制作) リベル・エンタテインメント (PSP/開発協力)
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発売日
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【PSP】2012年12月20日 【3DS】2013年8月8日
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定価
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5,800円(税別)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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テンポ悪し イベント長すぎ RPGとしては凡作 あれ?エネルは?
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ONE PIECEゲームリンク
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概要
怪物的人気を誇る海洋冒険漫画『ONE PIECE』のRPG。
このシリーズのRPGは『From TV Animation ONE PIECE めざせ海賊王!』から始まり、以降様々なRPG作品が何作か出ているが、
本作はオリジナル要素をほとんど入れず、原作再現にこだわったスタイルで「サバイバルの海 超新星編」(コミックスで言うと、1巻から61巻まで)のストーリーを再現している。
ちなみに随所にアニメが入るが、アニメ版の要素は皆無である。
システム
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ゲーム全体はワールドマップと実際に冒険をするフィールドの2種類で構成されている。
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ワールドマップ上の島は、イベントしかない緑アイコン、戦闘とイベントのある黄色アイコン、アイテム売買ができるショップがある青色アイコン、ストーリーには関わらないダンジョンがある赤アイコンの4種類がある。
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緑と黄色の島を巡ってストーリーを進めることになる。青と赤についてはストーリー上は行く必要はない。
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緑・黄色の島に行くとクリア済みでも最初の時と同じイベントが発生する。ちなみに、これにより一部の負けイベントに成長させたキャラを連れて行って再挑戦し、無理矢理勝つことも可能。
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フィールドでの移動は普通の3DRPG。パーティーは3人構成で、シナリオ上重要な島ではメンバーの一部が固定される。敵との戦闘は、基本的にはシンボルエンカウントで、特定のポイントへ侵入すると強制エンカウントする。
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黄色アイコンの島での進行は「イベント→フィールド探索→イベント」の繰り返し。街などの要素はなく、イベントは全てオート進行で選択肢などによるイベント分岐もない。操作ができるのは敵が徘徊するダンジョンのみ。
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フィールド上では電伝虫を調べてセーブができる。セーブの他パーティー入れ替えやアイテムを預ける(引き出しは不可)、撤退も可能。黄色アイコンの島で撤退した場合、再挑戦する際は全てのイベントがリセットされた状態になる。
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電伝虫には2種類あり、青は基本的な機能だけだが虹色はそれに加えて体力とアビリティ使用回数回復が可能。
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戦闘システムはやや独特。アクションRPGと言うほどアクション要素は強くないが、相手との位置取りという独自の要素がある。
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戦闘順はWT(ウエイトターン)方式で、素早さの高いキャラほどWTを早く消化して次の順番が早く回るというごく普通の形式。
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順番が回って来たキャラはフィールド上を自由に動ける。ただし、そのターン開始時の本人の立ち位置を基準に黄色と赤の2種類の「ペナルティリング」が設定される。内側が黄色、外側が赤になり、黄色を超えて動くと次のWTが遅くなり赤色を超えるとWTがさらに低下する上、AP(後述)まで減少してしまう。よってペナルティリング内で留まるか外まで行くかの判断が重要になる。
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各種行動にはAP(アクションポイント)を消費する。逃走に失敗すると次回のAPが減少するペナルティあり。APは温存することで、ある程度(レベルで最大数は変わる)蓄積可能。
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攻撃は、各キャラに設定された通常攻撃と必殺技を組み合わせて、コンボを組んでいく方式。必殺技には、通常攻撃を当てることで上昇するTP(テンションポイント)が必要になる。
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戦闘終了時、経験値と一緒に手に入るSPを消費することで、通常攻撃及び必殺技を強化可能(最大レベル5まで)。通常攻撃を強化すると、繋がるコンボが増える。必殺技は基本的に威力強化のみ。使える必殺技の種類はレベルアップ及びストーリー進行で増える。
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通常は必殺技を使うとターン終了だが、レベル5まで強化した必殺技を使い、なおかつAPとTPが残っていれば「グランドチェイン」となり必殺技を連続で使用可能になる。
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戦闘フィールドには「壁」があり、これが非常に重要な要素を果たす。
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普通では相手が吹っ飛びすぎて成立しないコンボも、壁に挟むことで全段当たる。というよりこれが前提になっているとしか思えない吹き飛ばし力のコンボもある。また相手を壁に当てると追加ダメージに加え、宝箱を落とす率も高まるのでその意味でも有用。
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逆もしかりで、自分たちが壁を背にすると相手に吹き飛ばされた際に壁ヒットダメージを受けるため、非常に危険。極力避けるようにしたい。
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敵には円状の「姿勢ゲージ」がある。攻撃を当てる度に減少し、こちらの攻撃の命中率及びダメージが上昇する。ゼロまで削ると、相手をダウンさせて完全に無防備にできる。
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相手のターンが来ると回復してしまうので、全員で一斉に一人の相手を攻撃することで姿勢ゲージを一気に減らすのが有用。
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戦闘では他に特殊能力「アビリティ」も使える。効果は体力回復や能力強化など。各アビリティごとに使用回数が限られておりゼロになると使えなくなる。
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自動発動系アビリティもあり、こちらには使用回数はない。各キャラ固有のアビリティの他、装備品でもアビリティを追加できる。
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ストーリー上において、時折「グランドスクリームアクション」というイベントが発生することがある。
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いわゆるQTE。的確なコマンドを入力することで、戦闘を避けたり障害物を破壊してダメージを軽減できる。また、このイベント発生時は後ろから強力な敵が追ってくることがあり、時間をロスすると強敵との戦闘が避けられなくなる。
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逆に言うと、失敗しても戦闘になるか多少ダメージを受ける程度なので、そこまでプレッシャーは大きくない。
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装備品は頭・胴・腕・足の4か所。武器は原作再現なので全員変更不可。ストーリー進行で自動的に武器が変わるキャラもいるが、それによる性能変化は特にない。
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アビリティが設定されているものも多く、それらも考慮する必要がある。
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一部装備品はキャラクターの外見に反映される。帽子系アイテムは特に顕著。
3DS版の変更点
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一部ステータス表示の変更・コマンドが3DSのボタン表記に変更。
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ダッシュが可能になり、フィールド探索の快適性が向上。
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マップが下画面に常に表示されるようになり、視覚面での見やすさが向上。
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一部アイテムの入手順やキャラクターパラメーターの変更。これにより、全体的にやや難易度低下。
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これ以外の違いはほぼ皆無。タッチ操作・3D表示には一切対応しておらず、追加要素も全くない移植である。
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なお、ダッシュ機能の有無だけでもPSP版を選ぶメリットは現状存在しない。3DSを持っているならばそちらを選択するのが無難。強いて言うならよりシビアなゲームを求めるならPSP版もありだが、3DS版もヌルゲーではないのでそこまでしてPSP版を選択する意味もあまりない。
評価点
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流石と言ってもよい原作再現度。戦闘面に限って言うならほぼ完璧である。
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各キャラのモーションや技の選定も、不自然さがなくファンならまず納得。必殺技の演出も長すぎずそれでいながらキチンと格好いい。
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ただ一部不満なところがないわけでもない。チョッパーの必殺技が刻蹄(こくてい)シリーズばかりだったり、ルフィがギア3(サード)を使えなかったりなど。
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グラフィックレベルは非常に秀逸。迫力あるグラフィックはかなり圧倒的。
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戦闘中はダメージを負うごとに服がボロボロになりキャラクターも傷つく。死闘感を演出するのに一役買っている。
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ストーリー進行に伴うキャラクターの服装変化も細かく反映しており、ファンならニヤリとできる。
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ただし、キャラクターの表情が動かないのはマイナスポイントかもしれない。
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挿入アニメは新規作画であり、こちらもクオリティが高い。掛川ミホーク演じるバラティエの決闘はファンなら必見。
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ゲームバランスは昨今のキャラゲーRPGには珍しくかなりシビア寄り。ボス連中はいずれも非常に手強く、対策を怠るとあっさり敗北の憂き目に会う。
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原作的にも強敵ばかりなので十分納得である。
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ちゃんと育成すればキチンと勝てる程度にはなっている。強力なアイテムを合成しておくのもポイント。
問題点
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端折りが酷く、原作を読みこんでいないと「???」となるエピソードの連続。
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各キャラクターの過去話はほぼ例外なくカット。にもかかわらずストーリーはそれらの過去エピソードを知っている前提で進むため、「くいなって誰?」「ベルメールって誰?」状態。
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序盤からバギー一味との戦いでモージ&カバジの存在がなかったことにされる有様。これ以降も、敵幹部戦は大体カットされてしまう。間延びを防ぐためとはいえ、もう少しどうにかならなかったのか。
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アーロンパーククリア後、ローグタウン、双子岬、ウィスキーピーク、リトルガーデンとこれだけのエピソードが全て緑アイコン扱いになっている。全部回っておおよそ5分。アーロンパークから5分後にはもうドラム王国到着である。
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ローグタウンのイベントがほとんどカットされているせいで、スモーカーはチラッと出てくるだけ。ドラゴンに至っては影も形もない。ゾロの刀も気が付くと新しいものに変わっている有様である。
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その後、ドラム王国、アラバスタと黄色アイコンの島が連続するのだが、こちらは逆にとんでもなく長い。チョッパーの過去はなぜかほぼノーカットで最初から最後までやる上にワポルとの戦いまであるドラム王国、とにかく会話が長いアラバスタ、どちらも非常に時間がかかる。
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会話さえスキップしてしまえば、半分以下の時間で終わるが。それぐらい会話イベントの量が異常に多いのである。
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そして最大の問題。まさかの空島編、デービーバックファイト編オールカット。緑アイコン扱いですらなく、アラバスタをクリアするとそのままウォーターセブン行きである。それらの存在は、ウォーターセブン冒頭で「空島での冒険を経て~」と一言触れられるだけ。
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空島はシステム上自由な行き来が難しく、デービーバックファイトはRPGとしてはあまり面白くなりようのないエピソードであるという事情はあるにしても、どちらもシナリオ上かなり重要な役割を果たしていることはファンなら周知の事実である。
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そしてそのせいで、ロビンが加入した次の島でもう離脱イベントに巻き込まれると言う急展開にもなっている。
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終盤に至るにつれて次第にまともにはなる。そのせいで、中盤の省略の仕方が余計酷く見えるのだが。
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紙芝居ですらない会話イベント。
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各キャラクターのアイコンから、吹き出しが飛び出て会話をするというシンプルな形式。表情こそ動くが、アクションが皆無なので何が起きているのか非常にわかりにくい。
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アイコンの動きでキャラクターの動作を表現しているため、例えばゾロとミホークの戦いなどゾロのアイコンがずりずりとミホークに近寄る何とも情けないものになっている。
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そして前述の通りとにかくこれが長いため、イベントを余さず見ようとすると大変時間がかかる。
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ストーリーは原作再現で追加要素が一切ない。そのため、終盤加入のキャラほど出番がなくなってしまう。
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特にロビンとフランキーとブルックは、寄り道しないと本気でスリラーバーク編しか活躍の機会がない。原作ではこの後シャボンティ諸島編になってしまうので、仕方ないのだが。
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新規加入キャラは全員技レベル1からのスタートなので、SPを意識的に集中させないと技もまともに使えず戦闘面での活躍の機会も失われてしまう。
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雑魚戦が面白くない。
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中盤以降は大抵ルフィの「ゴムゴムのムチ」でほぼ一掃可能。各雑魚ごとの個性も薄く、ほとんど障害物でしかない。
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RPGとして見ると、マップ構造が単純すぎて面白味がない。
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マップ上のギミックなどは特になく、大半のマップは入り口と出口が一つずつあるだけの迷路である。宝箱がたくさんあるので探索の楽しみはあるが、移動速度が微妙に遅めなのでストレスが溜まる。ダッシュのないPSP版ではより顕著。
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特にシナリオに絡まない赤アイコン島は、大量の雑魚を倒しながら宝を回収するだけの単純作業であり、ボスも若干強い雑魚だけととにかくつまらない。しかし、ここでキチンと稼いでいかないと、シナリオボスが強いため稼ぎは必須。
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原作ファンとしては、ビビが一度も仲間として戦わないのが気になるところと思われる。
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原作でも戦闘描写はそう多くなかったとはいえ、ファンの多いキャラなので見せ場がほとんどないのが残念である。
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過去のRPG作品である『幻のグランドライン冒険記!』では仲間キャラとして戦闘が可能であっただけに、せめてNPC戦闘員扱いでも良かったので戦闘に参加してほしかったところ。
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アイテム合成関連。
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どのアイテムとどのアイテムが合成できるかわかりにくい。名前だけでは用途が不明な素材がやたら多いのが問題。「砂に負けない町」や「魚人こそ万物の霊長」というアイテムに至っては、一体どういった代物なのか想像も付かない。
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アイテム解説詐欺。「コイン系アイテム」「インゴット系アイテム」「カブトムシ系アイテム」は他の合成素材同様「合成に使う素材です」と書かれているのだが、実は全て換金専用で合成に使うことはできない。貴重品だと思って大事に取っておくと大損する。
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合成の際素材として選択することができないので、勘のよい人なら気付けるかもしれない。だが、わざわざ間違った解説文を乗せる意味も分からないが。
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シナリオクリア後に出現する隠しボス「青キジ(2年後)」がなぜかシナリオボスとして登場する「青キジ(現在)」より弱体化している。しかも、シナリオボスの方の青キジは、マリンフォードでの連戦で出現する一方で2年後の方は赤アイコンに登場するので戦況的にもこちらの方が遥かに楽。
総評
グラフィックこそきれいだが、RPGとしての完成度は確実に1世代か2世代時代遅れな代物。
PS・SS時代のRPGを彷彿とさせる稼ぎ必須、雑魚戦作業なゲームバランスはある意味では懐かしい感覚ではある。
端折りが酷いとはいえ、原作再現度はそこそこ高いので、ファンならプレイしても損はしないだろう。
余談
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本作以降、長らく『ONE PIECE』のRPG作品は発売されていなかったが、2022年にRPG最新作『ONE PIECE ODYSSEY(ワンピース オデッセイ)』が発表され、2023年1月12日(steam版は1月13日)に発売された。
最終更新:2023年09月09日 16:37