描いて・作って・遊べる デザエモン
【かいて つくって あそべる でざえもん】
ジャンル
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シューティングゲーム作成ソフト
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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4MbitROM+1MbitRAMカートリッジ
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発売・開発元
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アテナ
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発売日
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1994年9月30日
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定価
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12,900円(税別)
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周辺機器
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スーパーファミコンマウス対応
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判定
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良作
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概要
ファミコンで発売されたシューティングゲームコンストラクションソフト『絵描衛門(デザエモン)』の続編。
前作の時点でグラフィックの製作、音楽の作曲といった要素を持ち家庭用コンストラクションとしては一歩抜きん出ていたが、SFCで発売された事で容量などが増加。
商業STGと遜色ないゲームを作りこめるようになった。
特徴
STGとしての内容
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ゲームシステムは、同社のアーケード作品『大王 DAIOH』をベースにした縦スクロールSTGとなっており、外伝的位置付けのサンプルゲーム『DAIOH GALE』が収録されている。
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3種類の武器、武器によって変化するボンバーといった要素もそのまま。
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アイテム類もほぼそのままだが「1UP」「特殊P」が削られた代わりに「スピードアップ」「シールド」が追加。
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残機+スコアエクステンド制で、前作『絵描衛門』の倍の全6面を攻略する事になる。
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オプションから難易度とエクステンドスコアの変更も可能。
コンストラクションソフトとしての内容
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ゲーム製作は主に「グラフィック」「くみたて」「ミュージック」の3系統に分かれており、「くみたて」は内部でさらにステージごとに分かれる。
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また、メインメニューの「ETC.」からキーコンフィグ、エディット時のBGMを変更できる他、ステージデータのコピーが出来る。
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細かい作業が必要なため、スーパーファミコンマウスでの操作に対応している。
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グラフィックは29791色が使用可能で、実際の製作は16色(うち1色は透明色)で製作する。
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登場する全てのグラフィックを製作可能。製作したグラフィックは一覧に登録して使用する。アニメーションの確認も可能。
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使用するパレットは種類ごとに分かれており、製作開始時に選択した種類に応じてパレットデータも変更される。
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また、サイズは固定されているため種類ごとに決められたサイズで描く必要がある。
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くみたては前述の通りステージごとに作成するが、自機や弾、爆発、タイトルなど共通する部分はどのステージを選択しても同じものが呼び出される。
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ここではグラフィックで製作したステージ背景、敵キャラ、ボスなどを設定していくことになる。
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敵キャラ、ボスには動きのパターンを設定して製作する。
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アニメーションの速度から動きの軌道、発射する弾の種類や弾速、防御力やスコア、アイテムの所持判定、当たり判定の有無などを細かく製作出来るようになった。
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ボスキャラはこれらに加え、弾と動作のパターンを3種類、弾の発射位置を個別に設定することが出来る。
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背景はグラフィックを配置する他、スクロール速度やスクロールの仕方、敵配置を細かく製作可能。
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他に、戻り復活とその場復活のいずれかが選べる。各ステージのBGMなども設定出来る。
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ミュージックは前作同様、五線譜を使って作曲する。
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音色は、前作より少なくなったがドラムなどを含めて32種類用意されている。『マリオペイント』のような感覚で作曲する。
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五線譜はメインとベースの2パートを使うことが出来、16小節使用出来る。
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テンポ、エコー、ループの設定も可能。
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シリーズの特徴としてバックミュージックのセット設定があり、これはロックやバラード、オーケストラといったプリセットを使用してリズムや楽器を補強する。用途によって1小節ずつ設定。
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セット設定には9段階の「コード」、コードのメジャー・マイナーなどを設定する「表情」、各プリセットに4パターン用意された「リズム」があり、組み合わせによって誰でも簡単に曲の基本構成を再現する事ができる。
評価点
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当時のコンシューマ用コンストラクションソフトとしては群を抜いた出来
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『RPGツクール2』が、別売りのソフト『音楽ツクール かなでーる』を併用することでようやく自作曲の使用が可能だったのに対し、1本のソフトでグラフィックも音楽もゲームまで全て製作出来るのは画期的だった。これをFC時代からやっていたのだから脱帽である。
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「グラフィック」で描ける絵の数や「ミュージック」で作れる曲数も多く、サンプルとして用意されている曲もサンプルゲームの曲からバッハの「小フーガト短調」「さくらさくら」などの有名曲のアレンジも収録されておりこれだけでも十分遊べる出来である。
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ちなみに、隠しコマンドを使うことで『大王 DAIOH』のアレンジ曲が解禁される。もちろん制作ゲームに使用可能。
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マウス対応やスッキリしたUI、「くみたて」の各種エディタから「グラフィック」に飛べるようになるなど快適性も向上しており、作業もやりやすい。
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自由度も非常に高く、各種設定と頭の使いようで様々な演出が可能となっている。
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もちろん容量などの制限は存在するが、それでもかなり豊富に作りこむことが可能で市販ゲーム並の作品の製作も可能。
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敵キャラは16×16サイズが16種類、16×32と32×16サイズと32×32サイズが8種類ずつ、64×64サイズを4種類製作可能で、実際に製作する際はそれ以下になるものの十分大容量と言える。
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後に開催されたコンテストでは、会話シーンを取り入れたり、無理矢理横スクロールSTGにしたり、演出を重視したゲームが多数生み出された。やろうと思えば弾幕シューティングのようなものまで製作出来る。
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もちろん、ゲームバランスを重視した硬派なタイトルも多数製作されており、中には市販タイトルに勝るとも劣らない名作も存在する。
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これらの一部は、後に発売された『デザエモン プラス』にサンプルとして収録された。
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著名なプレイヤーの中には『ごきんじょ冒険隊』でキャラクターデザイン担当だった漫画家・須藤真澄氏といったプロのクリエイターもおり、そのクオリティの高さが窺える。
問題点
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セーブ周り
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タイトル画面に戻ると自動的にセーブされる仕様のせいで、登録に失敗すると取り返しがつかない事が多い。
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また、容量が多いためかセーブデータが消えやすい。ターボファイルツインなどの外部機器への保存が出来ないのも致命的。
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保存できるゲームは1本分なので、なおさら問題となりやすい。
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デザエモンのセーブデータが1Mbitの大容量だったのがこの点では逆に仇となったといえる。管理するのに1Mbit+αの容量が必要になるため、容量1Mbitのターボファイルツインでは力不足であった。
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なお対応する機器がなかっただけで、ソフトには外部機器への保存機能が存在していた。(余談を参照)
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ゲームシステムには手を加えられないため、誰が作っても同じようなゲームになってしまう部分は仕方ないが、武器も全てバルカン、レーザー、ミサイルの3種固定で個性を出しにくいのも辛いところ。
総評
高機能のエディタで自由自在にSTGを製作出来る、STGファンにとってはまさに夢のようなソフト。
後のシリーズも本作をほぼそのまま受け継いだエディタを搭載しており、この時点で完成度は非常に高かった。本作でゲーム制作の楽しさに目覚めたプレイヤーも多い。
もちろん、それなりに根気は必要だが、市販並のSTGを手軽に製作できるのは非常に魅力的である。
自分でSTGを作りたい人は手を出してみてはいかがだろうか。
余談
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その後、プレイステーション用に本作をよりパワーアップした『デザエモン +』、過去シリーズのコンテスト入選作を多数収録した代わりにツール部分の機能を簡略化して初心者向けに特化した『デザエモン Kids!』が、セガサターンでは横スクロールSTGを制作可能になった『デザエモン2』が、そしてニンテンドウ64ではハード性能を生かし3Dモデルを作成できる『デザエモン3D』が発売された。
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PS版は2作品共にゲームアーカイブスで配信中。配信元のアテナ倒産により一旦配信終了したが、その後トリニティが版権を引き継いで配信再開された。
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発売から22年経った2016年、新しい裏技が発見された。
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スタッフからのメッセージなどが表示されるというもの。
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それだけではなく、そこにはあるやばい「ひみつ」が掲載されていた。
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「ひみつ」
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おしらせ ここでデザエモン3っつのひみつをこうかいします 1 どこだかわからないけどソースリストのいちぶこうかい。 2 バックアップデータのアドレス 3 つうしんきのう のやばいひみつをだいこうかいします。 かなりやばいところはふせてあります。 おといあわせにはいっさいおこたえできません。 (中略) ひみつ3 ジョイパッドポート1をつかって、データのやりとりができる。 つまり、じぶんでつくったゲームをコンピューターですいだしたり、 カセットにてんそうしたりできます。 よういするもの。 せつぞくケーブル つうしんソフト があればなんこでもゲームを つくることができるし、データのほぞんもかのうである。 しかし、せつぞくケーブル、つうしんソフトはじさくしなければ ならないし、しりょうのこうかいはやばすぎて、できません。 アセンブラのちしきとかんたんなハードのちしきとこんきが あればつくれるでしょう。 ここにかかれたひみつにかんしてのといあわせは、いっさい いたしておりません。でんわれんらくなどはごえんりょください。
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そう、データ保存できるジョイパッドポート1接続の外部機器を自作するための資料である。対応する機器がないなら作っちゃえば良いというわけだ。
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ゲーム雑誌などで裏技を公表していたら任天堂の知る所となり怒られていたと思われる。仕込んだものの発表するわけには行かず世間に知られぬままになってしまったのだろう。
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2021年7月に上記の「ひみつ」を実践・成功させ、その内容を動画化した人物が現れた。
デザエモン+
【でざえもん ぷらす】
ジャンル
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シューティングゲーム作成ソフト
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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アテナ
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発売日
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1996年5月24日
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価格
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5,800円(税抜)
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配信
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ゲームアーカイブス:2008年1月30日/600円
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周辺機器
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マウス対応
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判定
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良作
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概要(プラス)
『描いて・作って・遊べる デザエモン』をPSに移植した作品。
基本的な内容に違いはないが、いくつかの部分で変更や改良が加えられている。
特徴・評価点
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敵の動作に拡大・縮小や回転が加わり、回転させたグラフィックを個別に用意する必要がなくなった。
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回転した際に見た目を変えるといった小技が使えなくなったが、作業量の圧縮や別の演出に使える容量が増えたことで製作の幅が広がっている。
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音源の新規サンプリングを行い、音質が向上。
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ただし、SFC版とは別モノになっている楽器が多数のため、既存のBGMはSFC版で鳴らした時とはニュアンスが全く異なり、違和感も大きい。
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前作のコンテスト受賞作をサンプルゲームとして10本も収録している。
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硬派な作品から演出を重視した作品、ほのぼの系からバカゲーなど多彩なジャンルが収録されておりお得感が高い。
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おまけとして映像のみ収録のタイトルも存在する。カセット2本を使った大作「けじめ」はある意味必見。
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もちろん『DAIOH GALE』も収録。ただし、ステージ数の減少などで調整が加えられたバージョンになっている。
問題点(プラス)
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製作できるステージ数が5ステージに減少している。
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また、設定によってエンディングとなるステージを決められるようになったため、それ以下のステージ数にする事も出来る。
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メモリーカードへのセーブとなったため、セーブ周りの問題点をある程度解消したが、新たな問題が生まれた。
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ゲームを1つ保存するのにメモリーカード1枚丸ごと使用し、セーブやロードにも長い時間がかかるようになった。
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SFC版でも若干のロードはあったが、光学メディアになったため読み込みも遅くなっている。
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ボスの弾の発射位置をボスの中心から離れた場所に設定した場合、離れた分だけ自機狙い弾の照準がズレる仕様に変更された。
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説明書では一切説明されておらず、DAIOH GALE Ver.2のボスも多くはVer.1時の設定のままなので、修正しきれなかったバグの可能性もある。
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この仕様によって収録されたコンテスト受賞作の多くはオリジナル通りの内容ではなくなってしまった。
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この仕様を知らないユーザーにより作成された作品もまた、自機狙い弾の狙いがおかしい作品となってしまっている。
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ステージクリア後、ランクが一時的にリセットされるようになった。
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時間経過でじきに今居るステージや武器のレベルに応じたランクになるのだが、これによってコンティニューしなくてもクリアできる上級者とそうでないプレイヤーとの間で格差が生まれる事となり、特に難易度の高い作品はノーコンクリアが当たり前な者なら余裕でもコンティニューを駆使しなければならない者はこれの影響で余計に難易度を上げられ、ドツボにハマるという二極化を生み出してしまった。
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この弱い者虐めとも言えるシステムへの意識に欠けた、非常に難易度の高い作品も数多く作成された。
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拡大機能で拡大した敵は見た目よりも当たり判定が大きくなり易い仕様となっている。
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登録した絵がサイズ一杯まで描かれていないほど、その差が顕著になってしまう。
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背景のスクロール設定によっては、ポーズをかけたタイミングによって配置した敵が消えてしまうバグが存在する。
総評(プラス)
ステージ数の減少など残念な点もあるが、消えやすかったセーブの改善や新たな演出の追加でより作りやすくなっている良移植。
SFC版の完成度の高さはそのまま引き継いでいるので、安心してプレイできるタイトルである。
デザエモン2(DEZA2)
【でざえもん つー】
ジャンル
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シューティングゲーム作成ソフト
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対応機種
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セガサターン
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発売・開発元
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アテナ
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発売日
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1997年10月9日
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判定
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良作
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概要(DEZA2)
『デザエモン+』の機能を更に強化したSSの作品。
特徴・評価点(DEZA2)
プラスと同様、基本的なメイキング内容に違いはないが、様々な機能が大きく拡充されている。
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様々な要素が拡充。
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横スクロールのシューティングが作成可能に。ある意味でようやく作れるようになったとも言える。様々なエフェクトなどは収録サンプルゲームの1つ『Biometal Gust』で遺憾無く発揮されており、デモらしく参考になる作りが沢山。
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最大10ステージまで作成可能に。10ステージをフルに作る事もできるし、1ステージごとに演出用ステージを挟んでも5ステージ分作れる。これによりデモシーンを充実させた作品も数多く作られた。
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パレットとキャンバスの拡充。256色パレットに加えユーザーパレットやグラデーションなども充実。
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ポリゴンレンダリング。ポリゴンから2Dに変換してドット絵で調整できる。ただしポリゴンそのものをゲーム内で使える訳ではない。
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作曲の強化。使用可能な小節数が32、同時演奏できるパートが4つと大幅にパワーアップ。これは後のkidsなどと比べても圧倒的な自由度である。このうちパート3と4はそれぞれパンを右・左に振ったチャンネルとなっており、従来ではできなかった演出も可能になった。音色数も増加。
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サンプルゲームは3つ+隠し2つ。(パッケージ裏面で隠しが2つある事が明記されている)
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『Biometal Gust』前述した正統派横スクロールシューティング。同社が1993年に発売したSFC用STG『バイオメタル』がモチーフ。
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『Ramsie』縦スクロール。蝶をモチーフにした妖しい雰囲気が特徴。
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『DAIOH P!』DAIOH GALEを音楽など基本的な構成は変わらぬままポリゴン化したようなコミカルタッチの縦STG。
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『Vexsarsion 雅』隠し。シュールギャグと悪ノリをちりばめた作品かつ、各ステージ前のデモやエンディングデモなど作り手の視点でも参考になるテクニック満載の横STG。
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『ELFIN』隠し2。ここまでの(差はあれ)硬派なシューティングとは打って変わってファンシーなグラフィックの縦STG。
問題点(DEZA2)
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音楽系の処理落ちが酷い。
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特に顕著なのがバルカン系のメインショットとサブショット、2人同時プレイなどが組み合わさると処理落ちしやすい点。ゲーム進行だけならちょっとした処理落ちで済むのだが、BGMに顕著に影響が出るのが非常にまずく、テンポがのろくなる、一部の音が鳴りっぱなしになって耳障りという事態が常態化している。気にしなければそれまでであるが、折角作曲部分がパワーアップしているのに勿体ないと言わざるを得ない。
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鳴りっぱなしの音は一旦ポーズをかけて解除する事でリセットされるが、稀にこれでも鳴りっぱなしの状態が続く事も…。
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セガサターン本体の内蔵バックアップメモリでは容量がまったく足りずセーブ不可。
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パワーメモリはセーブスロット1つだけなら余裕だが、2つ目以降は不足しやすい。パワーメモリは耐久性に難がありデータが消えやすいという難点もある。
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このため機能をフルに使いこなすにはサターン周辺機器のFDDが欠かせない。
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その他
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デザエモンとしては大幅に拡充されている一方、抜本的な構成や自由度に関しては『プラス』からさほど変化していない。アイテムや武器の挙動などの基本システムも従来通り。従来のプレイヤーには使い易いまま強化されたとも言えるが。
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効果音も3つのプリセットが用意されているとはいえ、もう少し細かくカスタイマイズできたら…と惜しまれる。
総評(DEZA2)
「これまでのデザエモンを遥かに上回る」というキャッチコピーの通り、機能拡大が魅力的なデザエモンの集大成である。
一方で音にまで影響した処理落ちという問題点や、復刻が望みにくいプラットフォームであるためにマニア向けとなってしまっており、現在では目にする事はほとんどない。
知名度の関係で、知る人ぞ知る存在となっているのが惜しい作品と言える。
最終更新:2023年01月13日 00:26