モンスターワールドIV
【もんすたーわーるどふぉー】
ジャンル
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ARPG
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対応機種
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メガドライブ
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発売元
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セガ・エンタープライゼス
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開発元
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ウエストン
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発売日
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1994年4月1日
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定価
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8,800円(税別)
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配信
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バーチャルコンソール【Wii】2008年1月15日/600Wiiポイント PlayStation Store【PS3】2012年5月23日/572円
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判定
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良作
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ワンダーボーイ/モンスターワールドシリーズ
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概要
ある日、助けを求める謎の声を聴いた一人の少女アーシャは戦士としての称号をえる試練を終え街に向かうと、王女より世界を司る4人の精霊が封じられてしまったことを聞かされる。
王女より勇者の称号を得たアーシャは、謎の珍獣「ペペログゥ」を相棒に封じられた精霊を助け出す壮大な冒険に旅立つ。
モンスターワールドシリーズ最終作。
事実上はワンダーボーイシリーズの6作目なのだが、女性が主人公なのでワンダーボーイの名は無い。
評価点
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さらに進化したアクション
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過去作品と違い、剣によるアクションが強化。斜め下に切りつけるジャンプ切りのほか、真下を攻撃する下突きと真上に攻撃できる上突きが追加され、ジャンプアクションの幅が大きく広がった。
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さらに相棒「ペペログゥ」を使ったさまざまなアクションも本作の魅力の一つ。アーシャはペペログゥを持つことで、ジャンプの落下速度が緩やかになりジャンプ距離が伸びるほか、ペペログゥを使った2段ジャンプなど過去作品と比べアクション面が大幅に進化した。
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過去作の装備・ブーツが廃止されたが、ダッシュが追加されている。ブーツはあまり性能が高すぎると速度が速すぎて細かい移動がしにくくなったので、この点もありがたい調整だろう。
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ただ、ダッシュしなくても十分速いので、特に問題は無い。
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また、新要素に関してのチュートリアルも随所にあり、慣れるのが容易なのも良い。
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丁寧に作られたキャラモーション
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本作を語るうえで欠かせないのが丁寧に作られたキャラクターのモーションだろう。特に主人公のアーシャは攻撃モーションや各種アクションを始め、各種ダンジョン探索時、即ミストラップにはまった時など非常に細かい。
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宝箱を開けるときのモーションや排水溝を潜るときのアニメーションは一部の人に語り草。
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敵もこん棒を回しすぎて転倒するオークを始めアニメーションが豊富で見ていて飽きさせない。
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クリティカルヒットにあたる「マジカルヒット」のほか、対応する属性ダメージを一定確率で無効化する「マジカルガード」が追加。
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マジカルヒットは与えるダメージが2倍になるが、剣を振って5回目の攻撃で発動という性質。したがって、5回目の振りを多段ヒットする下突きを食らわすと恐ろしい速度で敵を倒せるのでいかに5回目の攻撃をうまく多段ヒットさせるかでBOSS戦の難易度も変わってくる。
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完成度の高いストーリー
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アーシャとペペログゥとの絆を強調したストーリーは評価が非常に高い。
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シナリオの進行に伴って街の雰囲気が様変わりしていく様子の描写も見事。
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特に終盤にかかるころには絶望感も相当高くなるものの、それを打ち壊すカタルシスはかなりのもの。
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ポップな絵とは裏腹に難易度はそこそこ高め。
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しかし理不尽な程ではなく、この手のゲームに精通している人なら慣れればパターン化も容易。
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だからと言って不得手な人ではクリアできないほど難しいわけでもなく、ちょうどよい歯ごたえが楽しめるだろう。
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セーブ方法はパスワード制が廃止されバックアップRAMに。
問題点
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攻略のヒントの欠落
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攻略が一方通行で探索可能範囲も狭いとはいえ、全般的にどうすればいいかのヒントや導きが少なすぎる。
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例では、ボタンの順序で扉を解錠、間違えるとダメージなところで、そのボタンの順序のヒントがほぼ全く無い。ひたすらダメージ食らいつつ試行錯誤するしかない。
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極めつけは序盤の一か所にある、嘘のメッセージ。
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最初の街で王女に謁見し、宝物庫から先に進むのに必要なキーアイテムを入手した後に進むエリアで「あたらしいよろいをよういしたほうがよい」と言われ先に進めないが、新しく鎧を購入しても先に進めない。
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実は先に進むにはペペログゥを孵化させる必要があるのだが、その説明も孵化のさせ方も説明がない。ペペログゥさえ孵化させていれば、鎧を新調しなくても進める。
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誤植なのか定かではないが、初見プレイでは混乱すること請け合いである。
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攻撃と攻略の単調化
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過去作には魔法が存在したが、アーシャの攻撃方法は剣のみ。
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剣アクションは豊富になったが遠距離攻撃が出来なくなったため、戦闘が単調になりがち。敵には盾でガードしまくったり武器を振り回しつつ接近する敵もおり、そういった敵には特定の攻撃方法しか通用しないため倒すのも単調。
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物理攻撃限定でも剣のアクションは増えたが、槍もあった前作に比べればバリエーションは少ない。追加された上突き・下突きもジャンプ中しかできずリーチが短い。(まあ、下突きはジャンプ中しかできないのは仕方ないのだが、上突きは地上でもできた方が便利だったろう)
下突きの使える場面は限定的、上突きに至ってはほぼ使いものにならず普通のジャンプ攻撃したほうがいい、と手段が豊富になった割に使い所が少ない。
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オトモの攻撃でみても、ペペログゥは一切攻撃しないし、攻撃バリエーションに貢献するのは2段ジャンプくらい。
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これは敵ザコやボスも同じで単調になっており、プレイヤーの体力が増えたこともあって、従来の隙をついて丁寧に当てていく攻略法より、ゴリ押しの方がラクな場合も。
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ボリュームの低下
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一度クリアしたダンジョンには戻れない。一個あたりのダンジョンもあまり長くなく、その数も少ない。敵ザコも敵ボスもバリエーション、数とも大幅減しているので、前作に比べるとかなり短い。
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これと攻撃手段の単調化もあって、攻略がどうしても単調なパターン的なものになる。
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ワンダーボーイシリーズは第一作から結構な攻略ボリュームがあったので、そういった意味でも本作は「ワンダーボーイではない」と言える。
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もっとも、最初の精霊のダンジョンはそこそこ長いし、3つめも謎解きしつつ3つのダンジョンをクリアしなければならない構成のため、それなりに時間はかかる。
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物価が高い
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繰り返しの探索が容易だからか過去作に比べて物価がかなり高く、敵をスルーし続けるとロクに装備が買えない。
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後半になるほど高騰が顕著なので、武具を新調するのに小銭稼ぎに駆り出されることもしばしば。
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もっともかなり稼がなければ進めなかった前作から見れば、武器防具を新調しなくても攻略は一応可能だし、敵をしっかり倒して宝箱を回収しておけばそれほど稼がずとも良い程度など、大幅に緩和されている。
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また金塊を即売っていけば更に緩和されるのだが、買取価格が後になるほど値上がりするため持っていたい…と持っていると、のちのダンジョンで多数の像を持つ必要があり保持アイテムは全部で8個までなので、結局売る羽目になったりする(ダンジョンに入るとクリアするまで出られないので、最悪捨てるハメにも…)。
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微妙な面倒さ
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ダッシュからジャンプしたり段を降りると、ダッシュが終了して歩きになるため、再度ダッシュ入力をする必要があり、正直面倒。また、ダッシュからジャンプしても、高さや速度、飛距離は普通にジャンプした時と同じ。つまり、
ダッシュからジャンプしてもダッシュジャンプにならず、ただダッシュが終わって普通のジャンプが出るだけ。
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ペペログゥを使うアクションの部分でも、床の仕掛けに対しジャンプからの下投げでは駄目で横からの投げでないと反応しない、など無意味な制限がある。
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盾は任意発動で出が遅め。剣は構えっぱなし・槍は任意だが即時だった前作と比べると、もっさり化は否めない。
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トラップなどに見える意地の悪さ
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間違えてもやり直すだけで済んだ前作と違い、本作では間違えるとダメージな場所が多い。
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流される先でそのままだとダメージでやりなおし。ロープを登ろうとすると上から岩が執拗に落ちてくるなども。
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敵やステージが大幅に減っているのにプレイヤー体力が大幅に増えていることから、トラップでダメージとゲームボリュームを稼ぐ方針と思われるが、それを面白いと思うのは難しい。
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一応、全トラップとも1ダメージ食らうか体力-1でやりなおしと安くはある。そんな何度も繰り返したいかは別問題だが。
賛否両論点
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ペペログゥの扱い
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相棒という割には、火の玉の弾除けに使ったり、マグマの間欠泉に投げ入れたりと妙に扱いが雑である。
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因みに作中で「ペペログゥは熱に強い」と説明がありこれぐらいは何ともない。
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信じているからこそできる所業なのだが、あまり気をよくしない人もいるだろう。
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なおこうした点も概ね説明が少ないので、できるのかどうか、大丈夫なのかどうかも不明で試すしかない。制作側的には探索させたかったのかもしれないが…
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ちなみにペペログゥはストーリーを進めるとどんどん成長して大きくなる。ペペログゥとの絆を実感できるだけでなく連携して行えるアクション要素が変わっていくため飽きさせない。
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ペペログゥが成長することで行えるアクションもあるが、逆にできなくなるアクションもある。これにより発生する問題もある。(後述)
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後戻りができないゲーム構成
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今作は一つの街を拠点として順番にダンジョンを攻略していく流れなのだが、ダンジョンをクリアすると同じダンジョンには二度と入れない。
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そういうゲーム自体は珍しくはないが、前作であるモンスターワールド3は故郷の村からさまざまな地域を渡り歩いていく、いわば普通のRPGのような構成である。もちろんクリアしたダンジョンもボスこそ不在だがいつでも入れる。(そしてボスと再戦できる機会もある)アイテムのコンプリートにも、戻って隠し通路などから行ったことがない領域に入る必要がある。
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だが今作はダンジョンは順番まで固定であり、一つのダンジョンをクリアするとそのセーブデータではもうそのダンジョンには入れない。さらに「命のしずく」というゼルダシリーズでいうハートのかけらに相当するアイテムがあるが、ダンジョン内のものを取り損ねた状態でクリア・セーブすると、もう取れる機会は永久に無い。
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にもかかわらず2周目への引継ぎという要素もないので、命のしずくをコンプリートするためには計画を立ててプレイする必要がある。といってもクリアするだけなら取りこぼしても支障はないが。
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おそらく前述のペペログゥの成長システムの兼ね合いと思われる。ダンジョンを攻略して話を進めるごとにペペログゥが成長し、次のダンジョンは成長したペペログゥで攻略する前提でギミックが構築されている。そのためクリア済ダンジョンに再度入れた場合、ダンジョンのギミックとペペログゥの成長段階との整合が取れなくなるためこのような仕様になったのだろう。
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もっとも、成長後のペペログゥが前のアクションを全てできるようにしておけば済む話だが。
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最終ダンジョンのネタバレ
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最後の戦いは相棒であるペペログゥがおらずアーシャだけで赴かねばならない。ペペログゥが不在のためギミックを解くなどのアクション面での特色がなく、ひたすらアーシャが自分の剣だけで敵を斬りながらラスボスまで進む。最終決戦ということでカタルシスを感じる演出はあるものの、アクションゲームとして見るならばラストダンジョンがそれ以前より単調という逆転現象が起こっている。
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しかもこのゲームで行える最後のセーブはそのラストダンジョンにいく直前でのセーブ。つまりペペログゥは不在、命のしずくを取りこぼしていたらそれっきり。アーシャができることはラストダンジョンに進入してボスを倒してEDを見ることだけ。それ以外をやり直すにはニューゲームしかない。
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一方、もう一つ欠かせない要素として、このラストダンジョンのBGM『Arabesque court in dream』は本作のメインテーマと歴代ワンダーボーイで用いられたフレーズのメドレー形式になっている。ループは短いものの、雑魚敵オールスターというステージ構成と合わせて、集大成ダンジョンとして印象に残っている人もいる。
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総評
モンスターワールドを締めくくるにふさわしい、丁寧につくられた作品で遊びごたえのある作品。
ただ前作のようなやりこみがいとボリュームを期待すると、短く単調なので拍子抜けする。初心者向けや細かいところの配慮が足りず、爽快感も低い辺り、どういう対象に向けて作られたのか微妙なところになっているのも否めない。
とはいえ、謎解き系の2Dアクションが好きな方には、十分おすすめできる作品。
移植版
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PS2『SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.29 モンスターワールド コンプリートコレクション』に収録。
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メガドライブミニ(日本版)にも収録された。
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ちなみに当時海外版は発売されず、2012年にWiiのバーチャルコンソールとPS3のSEGA AGES ONLINEで英語版を配信したのが海外で最初のリリースだった。
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後述のリメイク版における海外版かつパッケージ版に限り本作が収録されている。もちろん英語版だが。
余談
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2020年8月26日にスタジオアートディンクがリメイク作品『ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド』のリリースを発表。2021年4月22日にSwitch/PS4版が、同年6月29日にWindows(Steam)版が発売された。
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リメイクと銘打ってはいるが原作者である西澤龍一氏の方針により
「内容や要素に関しては原作から一切変えない」
というコンセプトで開発が進められたこともあり、「外側の見え方だけを現代風に修正し、手触り感はメガドライブ版のまま」という内容に仕上がっている。
裏技
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ある条件を満たして進めると最初の街についた時点で、後半に入手する最強の剣と盾と「デバッグのよろい」を入手できる。
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デバッグのよろいは最強の鎧と同じ上昇ステータスに加えて、さらにペペログゥのレベルを操作する機能がある。
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つまり本来シナリオの進行に応じてペペログゥのレベル(姿)が変化するのだが、内部的なフラグに関係なく画面上のペペログゥのレベルを変更できるため、フラグ上はペペログゥがいない時に無理やり好きな成長段階のペペログゥを出すこともできる。
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これを活用すればいつでも好きなレベルのペペログゥと共に冒険が可能だが、あくまでシナリオの進行フラグは別なのでちゃんと成長イベントをこなさないとストーリーは進まない。またダンジョンの仕掛けにペペログゥを投入する際に、本来のものと違うレベルのペペログゥを入れるとバグる恐れもある。
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タイトル画面で特定のコマンドを入力するとサウンドテストモードに移行する。
最終更新:2022年01月23日 01:10